チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Peter Ilyich Tchaikovsky, 1840~1893)が作曲したピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23です。

冒頭の弦楽器の主題が非常に有名な曲です。ピアノ協奏曲として非常に人気のある曲です。

解説

チャイコフスキーのピアノ協奏曲 第1番を解説します。

このピアノ協奏曲は1874年に作曲を開始します。そして、1875年ハンス・フォン・ビューローのピアノとベンジャミン・ジョンソン・ラングの指揮によりアメリカのボストンにて初演が行われました。初演は大成功で、ヨーロッパ各地でも好評を博しました。

しかし、当時のモスクワ音楽院の院長ニコライ・ルービンシテイン (1835~1881)からは酷評されました。チャイコフスキーは深く傷つきました。書簡で

「取るに足るのは数ページ」

といわれたことを書き残しています。結局、その時は、改訂などは行わずに出版しました。

しかし、現在、演奏されているものは改訂されたものです。1879年および1888年12月の2度、改訂されています。そして1888年のものが最終稿となっています。

そのときに有名な序奏のピアノはアルペッジョから和音に書き換えられ、大分印象が変わりました。

ニコライ・ルービンシテインは、後になって自らの酷評を撤回し、以降このピアノ協奏曲 第1番の普及に努めました。

構成

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は一般的な3楽章構成です。

第1楽章:

序奏は独立しており、主部に入ると繰り返されたり、回想されることはありません。

主部はソナタ形式です。第1主題はウクライナ民謡のリズムを使用しています。再現部では第1主題が変形され、回帰するので展開部の続きのような印象を受けます。

第2楽章:

3部形式です。主部はカンタービレ、中間部はスケルツォ風の音楽です。

第3楽章:

ロンド形式です。この楽章の主題もウクライナ民謡に基づいています。激しい主要主題が繰り返されます。最後は雄大に曲を閉じます。

おすすめの名盤レビュー

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の名盤をレビューしていきます。

アルゲリッチ,アバド=ベルリンフィル

アルゲリッチとアバドの丁々発止のスリリングなアンサンブル
  • 名盤
  • 定番
  • ダイナミック
  • スリリング

超おすすめ:

ピアノマルタ・アルゲリッチ
指揮クラウディオ・アバド
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1994年12月,ベルリン,フィルハーモニー,ステレオ(デジタル/ライヴ)

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アルゲリッチとアバドという、二人の天才の競演です。そして伴奏はベルリンフィルという、これ以上ゴージャスな組み合わせは無いと思われるほどの組み合わせです。しかもコンサートのライヴ録音です。

冒頭はアバド=ベルリン・フィルの重厚な演奏で始まります。この伴奏のゴージャスさは他のディスクではなかなか聴けないですね。アルゲリッチは独特の色彩感あふれるピアノ演奏を繰り広げています。

アバドはロシア的な表現をしていますが、イタリア人なのでロシア的な凍てついた大地のような響きはあまり出てきません。しかしリズミカルでアルゲリッチの自由な表現を好サポートしています。細かい所を聴くとその繊細さよく分かります。

アルゲリッチは好サポートを得て、本当に変幻自在な音色で弾いていきます。アルゲリッチはもう何度チャイコフスキーのピアノ協奏曲を録音したのでしょうか?アルゲリッチは、コンドラシンといったロシアの名指揮者やデュトワとの共演もありますが、伴奏の演奏家のキャラクターにも合わせてしまうのですから、本当に凄い才能というしかないかも知れません。

1994年録音という音質の良さとライヴということもあって、ロシア的なリズムと熱気と色彩がよく録音されています。アルゲリッチは自由自在に弾きまくっている感じで、アバド=ベルリンフィルはどんな表現にもぴったりつけていきます。いや、双方が丁々発止にやりあっている雰囲気でしょうか?スリリングなアンサンブルだと思います。

第2楽章は、ベルリンフィルの木管の主題提示の響きが良いです。そしてピアノが超絶技巧で入ってきます。凄いテンポですが、アルゲリッチもきれいなタッチで弾ききり、伴奏もぴったりつけてきます。スリリングですね。

第3楽章は最初から物凄い盛り上がりです。アルゲリッチが速いテンポで弾いたかと思えば、オケはスピーディで激しく入ってきます。その次の瞬間にはベルリンフィルの弦セクションが美しい主題を奏でます。これだけ聴きどころの多い第3楽章は聴いたことが無いです。

終盤は、チャイコフスキー交響曲第4番のラストを聴いているんじゃないか、と思えるくらいピアノもオケも凄いテンションです。アバドは遠慮なくアッチェランドで追い込んでいきます。

こんなにゴージャスで楽しい演奏は滅多にないと思います。

カップリングは、2台のピアノによる組曲『くるみ割り人形』です。(オーケストラではないので、ご注意を)これも生き生きしていてとても楽しい演奏です。

アルゲリッチ,シャイー=ベルリン放送響

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
リッカルド・シャイー、ベルリン放送交響楽団

アシュケナージ,マゼール=ロンドン響

  • 名盤
  • 定番
  • しなやか

おすすめ度:

ピアノウラジミール・アシュケナージ
指揮ロリン・マゼール
演奏ロンドン交響楽団

1963年4月,ロンドン

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アシュケナージとマゼール=ロンドン響の組み合わせのチャイコフスキーです。この中ではマゼールは少し個性的なので、アシュケナージと組むとどんな演奏になるのか、ですね。

さて第1楽章の冒頭ですが、オケがいきなりダイナミックで燃え上がるような演奏です。ロンドン響もかなりダイナミックなオケですけど、マゼールはそれを前面に出してきて、数あるチャイコンでもダイナミックで重量感のある伴奏になっています。

対するアシュケナージは意外と冷静で、ダイナミックな所は力強いタッチでスケールが大きな演奏、ロマンティックな所はアシュケナージらしいしなやかなタッチを使い分けています。また所々鋭いタッチの所もあって、普段よりメリハリのある表現の演奏になっています。

マゼールは要所で思い切り鋭いスフォルツァンドを決めてきます。アシュケナージは落ち着いて自らのテクニックを披露し、鮮やかに弾ききります。

そしてカデンツァに入るとアシュケナージの世界ですね。ファンタジー溢れる表現から、次第にダイナミックになっていきますが、普段よりもメリハリがありシャープな表現が目立ちます。テクニックと表現のヴォキャブラリーの多さには舌を巻きます。

伴奏が入ってくると、また鋭いアクセントが多くメリハリがついています。アシュケナージとマゼールはタイプが大分違うので、相互補完で良さが出ているように思います。

第2楽章もそれほど遅いテンポではなく、リズミカルさが中心の音楽になっています。チェロのソロなどが印象的です。その後のピアノはテンポも速いですし、凄いテクニックと表現の多彩さで圧倒してきます。とてもスリリングです。ロンドン響はスフォルツァンドを容赦なく強く演奏してきます。もちろん、おだやかに伴奏する場面もありますけれど。

第3楽章は凄く速めです。マゼールはリズムを強調し、野性的ですらあります。ピアノは鮮やかで生き生きと弾いていて、テンポの速さは何の障害にもならないみたいですね。弦の主題は綺麗に入ってきます。凄いメリハリですね。後半になるとさらにアッチェランドしてきて、これぞヴィルトゥオーゾという凄い迫力です。伴奏も負けてはいません。ダイナミックにクレッシェンドしてきて、まさに野性的な伴奏ですが、アシュケナージはその上に華麗でテクニカルな音楽を加えて、それでバランスが取れています。

ヴィルトゥオーゾのアシュケナージ、奇才マゼールと、ダイナミックなロンドン響、3者の個性が良く出て化学反応したかのような、スリリングで圧倒的な名演奏です。実は筆者は、アシュケナージの演奏はあまり好みでは無いのですが、この演奏はアルゲリッチ、アバドの丁々発止の演奏と同じ位のスリリングさがあり、アシュケナージも全力を出し切った爽快感があります。

アリス=紗良,ヘンゲルブロック=ミュンヘン・フィル

透明で色彩感のある音色でチャイコフスキーを弾き通す
  • 名盤
  • 透明感
  • 色彩感
  • 高音質

超おすすめ:

ピアノアリス=紗良・オット
指揮トーマス・ヘンゲルブロック
演奏ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

2009年11月,ミュンヘン(ライヴ)

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アリス=紗良・オットは、ミュンヘン・フィルというドイツの名門オケをバックにチャイコフスキーのコンチェルトを録音しました。ダイナミックでかつ響きの美しい演奏です。

冒頭は、ドイツのオケらしい重厚でくすんだサウンドで始まります。アリス=紗良・オットはダイナミックで確実なタッチで演奏していきます。透明感のある色彩的な響きの所もあり、ダイナミックな響きと軽妙な響きの2つの音色を上手く使い分けています

この透明感のあるピアノの響きはとても印象的です。オケは重厚ですが、ダイナミックなシャープさもあります。オケは柔らかい表現の時でも、くすんだドイツ的な響きを持っていて、ピアノの透明感のある響きと上手く溶け合っています。

カデンツァでは、ダイナミックな響きから始まり、それを土台として途中にファンタジーあふれた軽妙で色彩感のある表現を上手く入れて、立体感のある響きを構築しています。透明感のある中高音域の軽妙さは彼女ならではの色彩感にあふれています。

第2楽章は色彩的でファンタジーが感じられる音楽です。オケも音色はドイツ的ですが、安定感がある上で木管などが歌っています。ピアノも安定した土台の上で軽妙な演奏を繰り広げていきます。技巧的な所でも響きの透明感もやはり素晴らしいですね。

第3楽章はティンパニの強打から始まり、ピアノは標準的なテンポで響きの透明感を第3楽章でも保ったまま弾いていきます。オケのほうは荒いフォルテになったり、色々な音色を使い分けています。ピアノのほうは荒くなることはなく、テンポは速く様々な弾き方や超絶技巧が出てきて楽しめますが、透明感や色彩感は失わない所が凄いですね。終盤テンポはさらに速くなっていき、ペダルも入れてダイナミックになりますが、最後まで正確なタッチで透明な音色で弾ききっています。

ロシア的で土の香りがする演奏が多いですが、こんなに最初から最後まで透明感のあるチャイコフスキーはなかなか聴けないと思います。

辻井伸行, 佐渡裕=ベルリン・ドイツ交響楽団

  • 名盤

おすすめ度:

ピアノ:辻井伸行
指揮:佐渡裕、ベルリン・ドイツ交響楽団

リヒテル,カラヤン=ウィーン響

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

ピアノリヒテル
指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ウィーン交響楽団

1962年9月,ウィーン,ムジークフェラインザール,ステレオ(セッション)

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リヒテルはカップリングのラフマニノフのピアノ協奏曲は絶対的な名盤であり最高の演奏とされています。チャイコフスキーのピアノ協奏曲はどうでしょうか?録音年代は1962年で音質的には最近のディスクには敵わないです。一般的にはラフマニノフ程ではないですが、歴史的名盤とされています。

冒頭のカラヤン=ウィーン響による主題は、ダイナミックで厚みがあり壮大です。チャイコのピアノ協奏曲第1番に抱いているイメージをそのまま聴かせてくれます。リヒテルもダイナミックで硬質な音色のピアノで、ダイナミックな音響を作り上げています。

リヒテルは次の舞曲風の主題は、標準的なテンポで弾いていますが、熱気を帯びてくるとアッチェランドします。その後、ゆったりとした静かな部分に来ると、今の流行でいえば、カラヤンの伴奏は少し遅いテンポだと思います。カラヤンは、後日「リヒテルは速すぎる」と言っていたようですけれど。

次のバレエ音楽風な部分は、優美なピアノを聴かせてくれて、表現のヴォキャブラリーの多さを感じさせます。やはり録音が古いので、アリス=紗良・オットのような色彩的でファンタジックな音色まではいきませんが。

短調になり情熱を帯びてくると、カラヤン=ウィーン響はスケールの大きい力強い伴奏を繰り広げます。リヒテルもそれに全く負けずに互角に演奏しています。カラヤンもピアノ協奏曲の伴奏で、そこまでやるか、という位、情熱的な演奏をしています。このディスクのウィーン響は多彩な表現で、普段の実力以上のものを発揮しています。

カデンツァもダイナミックで情熱的に盛り上がります。もちろん、チャイコフスキーなのでバレエ音楽のようなファンタジクな所は軽妙に弾いています。テクニックは本当に素晴らしく、急に超絶技巧が出てきて驚きます。この演奏はダイナミックなタイプのチャイコンのスタンダードだと思います。

第2楽章は、若干早めのテンポですが、おだやかに始まります。ウィーン響の響きは少し曇りがありますが、録音が古いからかも知れません。ピアノの難所が始まるとリヒテルは凄いテクニックです。他の演奏に比べるともう少し情熱があったほうが面白いかも知れませんが、スタンダードとして高いクオリティの演奏です。

第3楽章はリヒテルとカラヤンで、速いテンポの激しい舞曲のような音楽を作っていきます。ピアノもオケもしっかりとした土台があります。ロンドの中で様々な表情を見せますけれど。ラストはオケの分厚い弦楽セクションに導かれて、とてもダイナミックです。

リヒテルはやはりダイナミックさが中心で、弱音の所もタッチはしっかりしていて、音もしっかりしています。カラヤン=ウィーン響も聴衆がこの曲に期待するようなダイナミックでロマンティックな演奏です。録音の古さは力強いスタンダードな演奏を聴きたいのであれば、全く問題ないレヴェルです。ウィーン交響楽団も非常にレヴェルの高い演奏を繰り広げています。

ラフマニノフの2番も素晴らしい演奏ですから、最初の一枚としてはうってつけの名盤です。

ベルマン、カラヤン=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

ピアノ:ラザール・ベルマン
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン、ベルリン・フィルハーモニー

録音:1975年

プレトニョフ,フェドセーエフ=フィルハーモニア管

おすすめ度:

ピアノミハイル・プレトニョフ
指揮ウラジーミル・フェドセーエフ
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1990年3月

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ピアノをプレトニョフ、指揮をフェドセーエフが務めるという、ロシア人の組み合わせです。特にフェドセーエフだと最初の弦の主題は良さそうですね。ただ、オケはイギリスのフィルハーモニア管弦楽団です。

さて、第1楽章の冒頭から聴いてみると、予想を超える素晴らしい演奏です。予想通りロシアの土の香りがするフェドセーエフのスケールの大きな指揮に、フィルハーモニア管弦楽団は見事に応えています。

モスクワ放送管弦楽団ならもっとロシア的だったでしょうけれど、このCDは録音の音質も非常によく、西側の技術で録音されたことが、とても良い方向に出ていると思います。管楽器のブレスまで聴こえる録音というのは、1990年だとかなり良い音質といえます。

プレトニョフは速いテンポで最初から圧倒的ヴィルトゥーゾ系の演奏を繰り広げています。フェドセーエフのロシア的なリズムの伴奏に上手く乗って、華麗ながらロシア的な色彩のある演奏です。

短調になって盛り上がっていく所は、他の演奏に比べるとテンポは遅めで、フェドセーエフらしいスケールの大きな演奏でロシアの大地を感じますね。プレトニョフは色彩的で鮮やかなピアノです。フィルハーモニア管弦楽団からロシア的な響きを引き出すフェドセーエフとの掛け合いは、とても聴いていて楽しいです。

しばらく掛け合いを楽しんだ後、カデンツァです。プレトニョフのまず色彩的でファンタジーのある演奏ではいり、段々と盛り上がっていきます。録音の良さもあって非常に響きが綺麗です。オケに引き継がれるとバレエ『眠れる森の美女』のようなファンタジー溢れる音楽になります。

第2楽章はピアノ、オケ共に非常に色彩的です。オケの木管のソロ、チェロのソロは息遣いまで良く伝わってくる音質の良さです。ピアノの超絶技巧な所に入ると、急激にテンポアップして、色彩的で凄いです。伴奏もロシア的なリズミカルな演奏です。

第3楽章は非常に速いテンポです。ピアノもオケも色彩的でロシア的なリズムを感じます。オケの弦セクションのレガートのメロディはロシア的な哀愁があります。

テンポも速いですし、段々スリリングになってきます。ピアノはアッチェランドして超絶技巧ですね。ラストはダイナミックですが、ロシア的で重厚ではありません。軽快なリズムと速いテンポで颯爽を演奏を終えます。

プレトニョフはロシア人ですが色彩的ですね。フェドセーエフはフィルハーモニア管からロシア風の響きを引き出していますが、冒頭のロシアの大地のような弦を除いて、バレエ音楽のような色彩感とリズム感を伴っています。良い演奏だと思いますが、ほぼ廃盤寸前で勿体ない名盤です。

ファジル・サイ、テミルカーノフ=サンクトペテルブルク・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

ピアノ:ファジル・サイ
指揮:ユーリ・テミルカーノフ指揮、サンクト・ペテルスブルク・フィルハーモニー

録音:2001年

シフ、ショルティ=シカゴ交響楽団

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

ピアノ:アンドラーシュ・シフ
指揮:ゲオルグ・ショルティ、シカゴ交響楽団

録音:1985年10月,シカゴ

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楽譜

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の楽譜・スコアを紹介します。

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