リヒャルト・ワーグナー (Richard Wagner,1813-1883)作曲の楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』 (Die Meistersinger Von Nurnberg)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。スコア・楽譜もご紹介します。
解説
ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』について解説します。
内容と作曲
ニュルンベルクのマイスタージンガーは、昔(13世紀ごろ)ドイツに実在した靴屋の親方を題材にした全3幕の楽劇です。手工業ギルドの親方制に倣い、マイスタージンガー組合ができました。ドイツ南部、神聖ローマ帝国のニュルンベルクなどの都市が中心となり、多くの記録が残っています。リュートを演奏しながら歌う素朴な形態だったようです。
マイスタジンガーたちは歌の試験に合格すると昇格し、最後は親方になります。オペラの中では、歌のコンクールの優勝者に美しい娘エヴァを与える、という鍛冶屋ポークナーの言葉で、歌合戦が行われます。事前の駆け引きや当日の様子などが面白く描かれています。この楽劇はワーグナーが書いた唯一の喜劇なのです。
登場人物の中でも靴屋のハンス・ザックスは優れたマイスタージンガーで4000以上もの歌を作ったということです。ベックメッサーも同時代に活躍したマイスタージンガーでした。
1867年10月24日に作曲が完了しました。翌1868年6月21日にミュンヘンの宮廷劇場で初演され、大好評に終わりました。
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲
前奏曲はスケールの大きな音楽です。最初のモチーフは「親方歌手」のモチーフです。次に「愛の想い」のモチーフ、3つめは「親方歌手の行進」のモチーフです。この3つを中心に劇中のさまざまなモチーフが登場し、最後は力強く曲を閉じます。なお楽劇では、そのまま第一幕に繋がっているので、最後だけ少し序曲用に修正してあります。
筆者はスウィトナー=シュターツカペレ・ベルリンの演奏をエアチェックしたものを聴いていて、第1幕に入ってからフェードアウトする演奏でした。この雰囲気がとても気に入っていました。
おすすめの名盤レビュー
それでは、ワーグナー作曲歌劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の名盤をレビューしていきましょう。
テンシュテット=ベルリン・フィル
テンシュテット、ベルリン・フィルの組み合わせは、近年もっとも優れたワーグナーの演奏を残しています。テンシュテットはオペラ全曲ではなく、管弦楽曲集や抜粋のみ残しています。普段はロンドン・フィルとの組み合わせですが、ベルリン・フィルだとやはり金管が上手いですし、スケールも大きいですね。
この『ニュルンベルクのマイスタージンガー』序曲も、少しスケールが大きめな重厚なサウンドに、技術的に余裕があります。『タンホイザー』序曲と異なり、超絶技巧が必要な曲ではありません。そのためにドイツ的な風格のある演奏になっています。
テンシュテット=ロンドン・フィル
テンシュテット、ロンドン・フィルのライヴ録音です。この時期のテンシュテットは病気から復活した時期で、とても白熱した演奏を繰り広げています。このうねるような弦楽セクションは他の演奏で聴けるものではありません。『ニュルンベルクのマイスタージンガー』序曲でここまで白熱した演奏を筆者は聴いたことがありません。
技術的に上手いベルリンフィル盤、力強く白熱したロンドンフィル盤、どちらを取るかは、物凄く難しい問題ですね。どちらも、それぞれ名演です。
カール・ベーム=ウィーン・フィル (1975年来日ライヴ)
1975年のベーム=ウィーンフィルの来日公演の際に演奏されたライヴ録音です。ベームらしい重厚でスケールの大きな演奏ですが、ライヴの熱気もあって、凄く熱い名演になっています。テンシュテットほど壮絶ではありませんが、それに近い名演です。ベームの円熟もあって、いい具合に力が抜けていて、単に熱気があるだけ、では語れない名演になっています。
バレンボイムとシカゴ交響楽団の録音です。バレンボイムはいくつか『ニュルンベルクのマイスタージンガー』序曲も録音していますし、舞台でも上演しています。いまではすっかりワーグナー指揮者となった感があります。
ここではシカゴ交響楽団との演奏で、パワフルで華麗な演奏を繰り広げています。あまり大きくテンポを動かさず、遅めのテンポで進めています。スケールの大きな演奏ですね。
クライツベルクとオランダ・フィルの録音です。音質はしっかりしています。
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』序曲は、遅めのテンポでスケールの大きな演奏を繰り広げています。ただ金管があまりパワフルではなく、最後の盛り上がりも少し平板かな、と思います。表現はこなれたもので、歴史的な正統派の演奏スタイルで、スタンダードといえるディスクです。
このディスクは選曲が良く、有名な序曲、前奏曲を網羅しているので、これと「リング」の抜粋を買うとワーグナーの管弦楽曲を一通り聴けることになります。
オペラのDVD,ブルーレイ
歌劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』は現在でも良く上演されています。
ガッティ=ウィーン・フィル、他
ガッティの指揮とウィーン・フィルなどの演奏による上演です。ガッティは比較的速めのテンポで、この長時間の楽劇を楽しませてくれます。また舞台セットと演出がとてもよく、歴史的な雰囲気の舞台ですが、中ほどには幻想的な演出をするなど、印象的です。
他のディスクで途中で飽きてしまった方、面白みが分からなかった方にはリベンジで是非観てもらいたい舞台です。
レヴァイン=メトロポリタン歌劇場
レヴァインとメトロポリタン歌劇場の上演です。歴史的な舞台で、メトロポリタン歌劇場の広さを活かしたスケールが大きく分かりやすい上演です。リーズナブルですが日本語字幕もあり、オペラの筋書きを楽しむのに丁度よいです。
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楽譜
ワーグナー作曲の歌劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の楽譜・スコアを挙げていきます。