ホルスト 惑星

グスターヴ・ホルスト (Gustav Holst,1874-1934)組曲『惑星』作品32 (Planets Op.32)といえば、オーケストラファンのみならず、幅広いジャンルで大人気の名曲です。お薦めの名盤も数多くありますので、レビューしていきます。今回はランキング形式で紹介させていただきます。また下のほうにスコアへのリンクもありますのでご活用ください。

解説

組曲『惑星』と作曲者のホルストについて解説します。

「ジュピター (木星)」は大人気

「木星」の中間部のメロディですが、イギリスではエルガーの威風堂々の中間部と同じくらい人気があります。

「木星」から有名なメロディ

上の「木星」はイギリス人で「惑星」の初演者であるサー・エードリアン・ボールドとロンドン・フィルの演奏です。いろいろな演奏がありますが、ここはボールドのイギリスらしさを感じますね。「イギリスらしさ」というのはなかなか説明が難しく、ドイツの重厚さとも違いますし、チェコの芳醇さとも違います。でも確かにイギリスらしい力強さと紳士らしさを兼ね備えた響きがあるんですよね。

https://youtu.be/BvV4WxnxFOU
平原綾香の「Jupiter」

平原綾香は日本人ですが、この曲もとても人気が高いですね。こんな感じで世界的に歌われています。

ホルストは普段は民族的な組曲が多い

ホルストはイギリスの作曲家ですが、普段はどちらかというと地味な組曲などを作曲しています。例えば、イギリスの観光地で有名な「コッツ・ウォルズ」組曲など。そしてホルストの生家はコッツウォルズにあり、チェルトナムの生家はいま「ホルスト博物館」になっています。結構、面白い博物館でした。

また、弦楽合奏の「セントポール」組曲吹奏楽の組曲も有名です。「日本組曲」という曲もあります。普段は、小編成で民族音楽を取り入れた曲を多く作曲しています。

『惑星』へのチャレンジ

そんなホルストが急に組曲『惑星』のようなスケールの大きいスペクタクルな音楽を作曲できるなんて驚きです。スターウォーズの音楽を作曲するときに映画監督のジョージ・ルーカスはジョン・ウィリアムズ「惑星」を引用して「こんな曲を作ってほしい」と言ったらしいです。

ホルストの時代は、宇宙船なんて無かったですし、宇宙のイメージは今のような宇宙船や人工衛星といったものではなく、占星術のイメージだったんです。曲を聴いていると、どうしても宇宙船や人工衛星が出てきそうですけれどね。

忘れられそうになった組曲『惑星』

組曲『惑星』は作曲した時は注目されましたが、その後、忘れ去られた時期ありました
それでも初演指揮者であるイギリス人指揮者のサー・エードリアン・ボールト『惑星』合計6回録音する位、演奏を続けていました。
そしてカラヤン=ウィーンフィル盤が1967年に登場した時に、組曲『惑星』は再評価され、その後多くの演奏家が『惑星』を録音しました。
それに続き、マゼール盤メータ盤デュトワ盤など多くの名盤が誕生しました。「木星」の中間部はポピュラー歌手にもアレンジされて歌われるほどです。

組曲「惑星」の構成

「惑星」の各曲にはそれぞれの星の名前がついています。副題はそれぞれの星の持つ占星術での意味です。

当時は冥王星が見つかっていなかったため、天王星までです。冥王星が見つかったのは1930年です。しかし、近年「惑星の新定義」で、また冥王星は「惑星」にカウントされなくなったため、占星術上の惑星は最初から正しかったのですね。

なお「冥王星」は後から作曲され、ラトルのCDに収録されています。

組曲『惑星』

火星:戦争をもたらす者
戦争を象徴するスネヤのオスティナート(繰り返し)で貫かれています。『惑星』の第1曲にふさわしい迫力のある人気曲です。

金星:平和をもたらす者
ホルンのソロから始まる。平和な音楽

水星:翼のある使者
静かで速いテンポの小気味良い曲

木星:快楽をもたらす者
『惑星』を代表する音楽。3部(A-B-A)構成。エルガーの威風堂々にも似た構成であり、Aの部分のホルンの3拍子の主題が中心。中間部(Bの部分)は有名なメロディで親しまれています。

土星:老いをもたらす者

静かに重々しく始まるが、徐々にクレッシェンドし、クライマックスを迎えます。

天王星:魔術師
意外にダイナミックで面白い曲。演奏家の個性が出やすい音楽です。

海王星:神秘主義者
神秘的で静かな音楽です。後半に女声合唱のヴォカリーズ(歌詞の無い歌唱)が入る。ドビュッシーの『夜想曲』を想起させます。

お薦めの名盤レビュー

それでは、ホルスト作曲組曲『惑星』作品32名盤をレビューしていきましょう。

今回はランキング形式で、名盤レビューしていきます。

第1位:ボールト=ロンドン・フィル

スケールの大きさとイギリス的な格調高さが両立した名盤
  • 歴史的名盤
  • 円熟
  • 格調
  • スケール感

超おすすめ:

指揮エードリアン・ボールト
演奏ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
合唱ジェフリー・ミッチェル合唱団

1978年5月12,30日,6月4日,7月31日,ロンドン,キングズウェイ・ホール,アビイロード第1スタジオ (ステレオ/アナログ/セッション)

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イギリスの指揮者ボールトは、組曲「惑星」の初演者でもありました。その後、何度も録音され、5種類のディスクが残っています。それに敬意を表して、第1位はボールドの最新録音にします!もちろん演奏もイギリス的で素晴らしいです。

録音年代を羅列してみると、BBC交響楽団 (1945年)、ロンドンフィル(1953年)、ウィーンフィル(1959年)、フィルハーモニア管弦楽団(1966年), ロンドンフィル(1978年)となります。最初のBBC交響楽団の録音の時、既に演奏スタイルは確立されていると思います。ウィーンフィルとの録音が意外ですね。これはカラヤンが1961年に録音する2年前ですから、ボールドはカラヤン=ウィーンフィルの名盤のレヴェルアップにも貢献していると言えます。

また、フィルハーモニア管弦楽団との演奏はダイナミックで、ボールトの若さを感じます。最後のロンドン・フィルハーモニーの演奏は堂に入っている感じですが、録音もよく、スケールが大きく、イギリス的な味もあって代表盤といえると思います。

ボールドの演奏はイギリス的で、他のカラヤン以降の現代的な演奏とは少し異なります。宇宙船とか人工衛星などよりは、占星術的なロマンのある「惑星」ですね。他のディスクを聴いて再度ボールト盤を聴いてみると、考え抜かれた表現とテンポ設定に感心させられます。

特に『木星』が素晴らしく、中間部の有名なメロディもエルガーを思い起こさせるようなイギリス風な演奏です。ロンドン・フィルの弦楽セクションはイギリス的な格調のある響きで素晴らしいです。

最後の録音から一つ前のフィルハーモニア管弦楽団との録音も聴いておくべき名盤です。ロンドン・フィル盤と12年違いですが、ちょうどアポロ計画が実行されていた頃の演奏でリアリティが凄いです。カラヤン=ウィーンフィル盤ほどの怪演ではなく、スタイルが確立しています。ある意味、このフィルハーモニア盤がボールトの『惑星』の最盛期かも知れません。聴き比べると演奏スタイルが大分違います。ロンドン・フィルとフィルハーモニア管でそれぞれ良い所があって、どちらが最高とも言い難いです。

ボールト=フィルハーモニア管弦楽団 (1966年)

ボールトのシャープで若々しい名演
  • 名盤
  • 洗練
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮エードリアン・ボールト
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1966年7月21,22日,ロンドン,キングズウェイ・ホール(ステレオ/アナログ/セッション)

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第2位:メータ=ロスアンジェルス・フィル

ダイナミックでスペクタクル、現代的な『惑星』
  • 名盤
  • 定番
  • スペクタクル
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ズビン・メータ
演奏ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

1971年4月,ロサンゼルス (ステレオ/アナログ/セッション)

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ズビン・メータは「惑星」を非常に得意としていて、ロスフィルニューヨーク・フィルハーモニックの2種類のディスクを録音しています。第2位は名盤はロスフィルの方で、最初の一枚を探している方にもお薦めします。この時代はちょうどアメリカのオーケストラの黄金時代でした。メータのみならず、ムーティ小澤もアメリカのオケの指揮者になっています。特に管楽器が上手く、ロスフィルの管楽器は非常に技術力が高くて、ヨーロッパのオケでは、なかなかこのレベルの演奏はできません。

『火星』は少し速めのテンポで重厚かつスペクタクルで現代的なダイナミックさがあります。ユーフォニウムのソロは独特の響きで、異様な雰囲気を醸し出しています。低音から高音までしっかり鳴っていて凄い重厚さです。それと共にテンポは速めで颯爽とした現代的な演奏でもあります。『木星』標準的なテンポでダイナミックな演奏です。パーカッションを効果的に使っていて、重厚ですがモダンな演奏です。ホルンの主題もしっかりしています。中間部の主題色彩感のある弦が朗々と歌っていて、味わいがあります『天王星』は金管がダイナミックで、ティンパニも鋭く打ち込んでいます。ホルストのオーケストレーションを上手く生かし、色彩的でスペクタクルな響きを紡ぎだしています。リズムもしっかりしています。

メータの指揮はダイナミックですが、特別個性的な所がなく、イギリス風とも現代的にシャープな演奏とも言えない中庸な雰囲気です。オケのうまさが際立っていてトータルとして一番お薦めできるディスクだと思います。ハリウッドに近いからか、スターウォーズなどの現代の宇宙に対する雰囲気を作るのが上手いです。

第3位:マゼール=フランス国立管弦楽団

燃え上がる圧倒的迫力と占星術的な表現
  • 名盤
  • 白熱
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ロリン・マゼール
演奏フランス国立管弦楽団
合唱フランス国立女声合唱団

1981年,パリ

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マゼール『惑星』は物凄い迫力で、特に『火星』は燃え上がりそうな演奏です。個性的なところが多いし、フランス国立管弦楽団も精緻な演奏とはいえないです。でもこの「惑星」には言葉で説明しにくい魅力があります。よく考えた結果、第4位にしました!

演奏は『火星』が白熱していて、燃え上がるような名演で特に凄いです。少し魔術的というか占星術的な惑星のイメージがあるのもこの時代の演奏としては珍しいです。『木星』は速めのテンポで颯爽と始まりますが、とてもダイナミックでリズミカルです。3拍子のホルンの主題も速めのテンポで爽快です。そのままかなりアッチェランドしていきます。中間部は芳醇な弦楽器がダイナミックに歌い上げます。盛り上がっていき最後は燃え上がるような情熱です。フランス国立管弦楽団がこれほど凄い熱演をするのは、滅多にないですし、マゼールの気迫に圧倒されます。『天王星』は、中間の6/8拍子のメロディがとても速くリズミカルで心地良く聴けます。ティンパニなども思い切り鳴らして、ダイナミックで異様な雰囲気を盛り上げていきます。クライマックスは金管が全開で、最後のオルガンなど凄いです。

第4位:カラヤン=ベルリン・フィル

カラヤンの現代的ながら深みもある名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 奥深さ
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1981年1月,3月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/セッション)

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カラヤンは忘れ去られそうになっていた『惑星』1961年にウィーン・フィルハーモニーとレコーディングし、再び人気に火をつけた立役者です。そしてカラヤン=ベルリンフィルは完成度が高まり、『惑星』を代表するディスクになりました。カラヤンの『惑星』は、占星術的な雰囲気と、モダンな宇宙時代の演奏の両方を兼ね備えています。ベルリンフィルとの録音は、ウィーン・フィルとのリアリティに溢れたユニークな演奏に比べて、演奏スタイルが安定していて、「カラヤンの惑星」と呼んでいい完成度だと思います。

『火星』はスケールが大きくダイナミックです。ベルリン・フィルは弦楽器の厚みがあり、それが独特の雰囲気を生み出しています。残響が多めの録音で、オルガンを思い切り鳴らしてスケールと異様な雰囲気の両方を出しています。『木星』はこのディスクの白眉です。テンポは速めで主部は金管が活躍し、重厚でダイナミックですが、どこか占星術的なボールト盤に近い雰囲気があります。中間部ベルリンフィルの弦楽器が響きが絶妙で、モダンでありながら味わい深いです。『土星』深みのある弦の響きが印象的で味わい深く、重厚に盛り上がっていく演奏で名演です。『天王星』少し不気味さのあるダイナミックな演奏で、スケール大きく盛り上がります。『土星』~『天王星』は、とてもカラヤン盤の特徴が出ていると思います。

ダイナミックでリズミカルですが同時に重厚で異様さもあり、カラヤンの宇宙に対する感性を良く表していると思います。さらには、味わい深さが出ている部分もいくつかあります。

第5位:スタインバーグ=ボストン交響楽団

迫力と味わいのバランスが良く、芳醇さが味わえる名盤
  • 名盤
  • スリリング
  • 芳醇
  • スケール感

おすすめ度:

指揮ウィリアム・スタインバーグ
演奏ボストン交響楽団
女声合唱ニュー・イングランド音楽院合唱団

1971年3月,ボストン (ステレオ/アナログ/セッション)

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ウィリアム・スタインバークという指揮者はあまり詳しく知らなかったのですが、それほどマイナーな指揮者では無く、ベートーヴェンの交響曲全集なども作っているベテラン指揮者です。この『惑星』は結構スリリングで迫力があります

「火星」テンポが速く弦のリズムが強烈です。ボストン交響楽団もスリリングでダイナミックに演奏していて、ユーホニウムも白熱しています。このテンポの速さは凄いですね。マゼール盤には及びませんが、リズミカルで別の面白さがあります。「金星」などは遅めのテンポで美しくまとめています。アンサンブルのクオリティは少し落ちますが、上手く雰囲気を出していて楽しめる名盤です。

「木星」ちょうど良いテンポで始まりスタンダードでダイナミックな演奏です。ホルンの主題もスケールが大きいです。中間部もゆったり目のテンポで上手く歌わせていて、有名なメロディを存分に味あわせてくれます。後半もダイナミックな演奏で充実感があります。「土星」ボストン響の弦の響きが味わい深く、表現にも深みがあります。「天王星」も少し遅めのテンポで異様な雰囲気をよく出しています。リズム感もあり、色彩感もあって聴きどころが多く楽しめます。

全体的に聴きどころが多く面白い演奏です。ただ少し指揮者とオケのテンポ感が合っていない所があって、そこが好みの分かれ目でしょうね。ボールトの演奏が好きな人はきっと気に入ると思います。ボールトほど、イギリス的では無いですが、ボストン響の金管は上手いですし、「土星」「海王星」などは芳醇に聴かせてくれる名盤です。

第6位:レヴァイン=シカゴ交響楽団

半端じゃない迫力!シカゴ響を鳴らし切るとこうなる
  • 名盤
  • 定番
  • スペクタクル
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ジェームズ・レヴァイン
演奏シカゴ交響楽団
合唱シカゴ合唱団

1989年6月,シカゴ

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良い録音で、強力な金管楽器を聴きたいならば、レヴァイン=シカゴ交響楽団です。シカゴ響は並みの指揮者ではレヴァインはショルティ並みにシカゴ響の響きの良さを引き出せる指揮者で、このコンビでいくつか録音がありますが、いずれも素晴らしいです。シカゴ交響楽団ならではの金管セクションは、『惑星』では凄いものがあり、絶好調なのか『火星』から恐ろしく鳴り切っています。レヴァインはどんな曲でも当たり前のように振っています。ボールトと好対照で、デュトワ盤と並んで、現代の宇宙開発が進んだ時代の『惑星』のスタンダードの一つです。『惑星』にスペクタクルを求めるなら、レヴァイン=シカゴ交響楽団は最右翼ですね。また、クオリティの非常に高い名盤です。

『木星』はシカゴ響らしい重厚なサウンドで、速めのテンポで始まります。土台の安定した低音の上に管楽器とパーカッションが色彩的な演奏を繰り広げます。3拍子のホルンのメロディは筋肉質なリズムで聴きごたえ十分です。中間部はシカゴ響の弦の音色で、パワーと共に透明感・清潔感のある響きです。2回目にフォルテになると金管も入ってスケールの大きなサウンドになります。『天王星』は冒頭からスケールの大きな演奏です。テンポは中庸で、結構リズミカルです。6/8拍子に入ると安定したシカゴ響の響きを味わうことが出来ます。そしてクレッシェンドしていき最後は重量級のダイナミックさです。

ダイナミックレンジも相当あるでしょうけれど、十分録音に入り切っています。透明な静けさの中にチェレスタが響くのですが、凄い世界です。そして透明感のあるレヴェルの高い合唱が入ってきます。

第7位:デュトワ=モントリオール交響楽団

現代的で人工衛星が似合うモダンな『惑星』
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩的
  • 高音質

おすすめ度:

指揮シャルル・デュトワ
演奏モントリオール交響楽団
合唱モントリオール交響女声合唱団

1986年6月,聖ユスターシュ教会,モントリオール(セッション/デジタル)

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デュトワ=モントリオール交響楽団はカナダのオケらしい、非常に色彩的で透き通った演奏を繰り広げています。色彩感では今でもこれを超える演奏はないかも知れません。モントリオール交響楽団は弦も管も透明感があって色彩的なサウンドで、まさに現代的な宇宙船や人工衛星が出てきそうな『惑星』ですね。アメリカのオケに近い技術力スイス出身のデュトワの作り出した新しいモダンなサウンドだと思います。モントリオール交響楽団は、この『惑星』では、非常にパワフルで重厚感もあります

『火星』管楽器が上手く、弦楽器に色彩が溢れた演奏で、パイプオルガンも上手く使って、現代的でスペクタクルな演奏を繰り広げています。中庸のテンポの中、ユーフォニウムのソロもとても上手いです。ホルストのオーケストレーションを活かしたダイナミックさがありますが、荒々しくはなく、あくまで現代的なスマートさがあるクオリティの高い演奏です。そして『金星』『水星』などの比較的静かな曲も透明感の高いサウンドで、とても色彩的な洗練された響きを聴かせてくれます。

『木星』スケール感のある標準的なテンポの演奏です。洗練されたホルンの響きが印象的です。ダイナミックさもありますが、響きはとても色彩的で洗練されています。中間部の主題は、色彩感のある弦楽セクションが朗々と歌っていて、じっくり味わえます『土星』では、透明感のある響きで、洗練されていながらもロマンを感じさせます。『天王星』ダイナミックな金管で始まります。パーカッションも結構ダイナミックに鳴らしています。リズム感がとても良く、スペクタクルな響きを楽しめます。合唱の入る『冥王星』も非常に神秘的な名演です。新しい時代の「惑星」の名盤ですね。

第8位:ユロフスキ=ロンドン・フィル

既成概念を覆す速いテンポ、シャープな『惑星』
  • 名盤
  • ダイナミック
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ウラジミール・ユロフスキ
演奏ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

2009年5月22日,ロンドン,ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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ユロフスキはロシア出身で西ヨーロッパで活躍している指揮者です。オケは、ボールトと名演を残しているロンドン・フィルです。ユロフスキの演奏は、最晩年のボールトとは正反対で、全体に速めのテンポとシャープで質の高いアンサンブルが特徴です。

『火星』は、かなりのスピードで少しせせこましい感じもありますが、かなりシャープでダイナミックな演奏です。後半は特に迫力があります。アンサンブル能力も高く、正確な演奏です。また、2009年録音と他に比べて録音が新しいため、響きの透明度が高く色彩感があります。『惑星』は、細かい部分になるとアンサンブルが大雑把な演奏も多い中で、アンサンブルのレヴェルが高いです。ボールトカラヤンのテンポ取りも、「宇宙」というスケールの大きさを重視したものでした。ユロフスキは普通のテンポなんです。だからホルストの自作自演のテンポに近いのだと思います。

『木星』は相当スピーディです。スケールの大きさより、むしろリズミカルで軽快な演奏と言えます。ホルンの主題はしっかり吹かれていますが、アッチェランドすると凄いテンポになります。中間部はさすがロンドン・フィルで弦楽器のイギリス的な響きが楽しめます。後半は、スコアをしっかり読みこんで正確なテンポ取りをしている所に好感が持てます。

組曲『惑星』で、これまでの演奏であまり聴こえていなかった、リズミカルな音楽が聴けることは新鮮です。でも今までのディスクを聴いていた人が聴くと少し驚くかも知れないし、好みが分かれそうな気がします。とはいえ自作自演のテンポが速いことを知っている訳で、元々そういう要素が『惑星』にはあるのだろう、と思います。

第9位:小澤征爾=ボストン交響楽団

小澤のスタジオ録音らしい端正でしなやかな演奏
  • 名盤
  • 洗練
  • 端正
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮小澤征爾
演奏ボストン交響楽団

1979年12月,ボストン

小澤征爾手兵ボストン交響楽団の『惑星』です。小澤征爾と言えば、凄くダイナミックな演奏を期待するかも知れませんが、この『惑星』はこのページの中では一番フレッシュで丁寧な演奏です。エイドリアン・ボールトデュトワも含めて、ほとんどのディスクがダイナミック路線なので、この小澤盤に順位をつけるのは凄く難しいです。1972年に録音したディスクが今まで生き延びてきて、今でも高く評価されているということは、それだけの内容を持っているからです。

第1曲『火星』は、他の演奏に比べるとそれほどスケールはありませんが、響きがとてもフレッシュです。暴力的な部分や毒々しさはなく、きれいな響きのまま盛り上がります。ボストン交響楽団は金管を中心にハイレヴェルでとてもフレッシュなサウンドです。第4曲「木星」は、すっきりまとまっています。これも他の演奏は重厚なので、これはこれでレヴェルの高い演奏ですね。第6曲「天王星」はダイナミックですが、フレッシュさは失いません。最後の「海王星」も色彩的できれいにまとまっています。ニュー・イングランド合唱団のレヴェルの高さは特筆に値します。

これまでのダイナミックな『惑星』を聴いてきた方には、新鮮さがあって目から鱗がおちる部分もあるかも知れません。特に静かな曲をスッキリと聴きたいなら、小澤盤意外にないように思います。

第10位:ラトル=ベルリン・フィル

冥王星付きの名盤、演奏もベルリン・フィルを上手く鳴らしている
  • 名盤
  • 歴史的名盤

おすすめ度:

指揮サイモン・ラトル
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
女声合唱ベルリン放送合唱団(海王星、冥王星)

2006年3月15-18日,ベルリン,フィルハーモニー(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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「冥王星」付きの「惑星」です。その後、「冥王星」は惑星ではなくなってしまうのですが…。「冥王星」を作曲したのはホルストの研究家でイギリス・ホルスト協会理事の作曲家コリン・マシューズで、「冥王星、再生する者」(Pluto, the renewer)という副題がつけられています。指揮者ケント・ナガノの委嘱に応じて2000年に作曲されました。しかし、「冥王星」は2006年に惑星の新定義により、冥王星は惑星から外れ、準惑星になってしまったので、たった6年間の命だったことになりますね。

ラトルの演奏自体は賛否両論という感じで、盛り上がっても冷静な指揮ぶりを、良いと捉えるか、物足りないと捉えるか、だと思います。

組曲「惑星」の名盤:番外編

ランキング形式でレビューしてみましたが、古い名盤、自作自演、独特な魅力があって、物差しでは測れない名盤たちを番外編としてレビューしていきます。

カラヤン=ウィーン・フィル (1961年)

アポロ計画と組曲『惑星』の復活!
  • 名盤
  • 白熱
  • 迫力
  • リアリティ

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ウィーン・フィルハーモニー
合唱ウィーン国立歌劇場合唱団

1961年9月,ウィーン,ゾフィエンザール (ステレオ/アナログ/セッション)

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この演奏が録音された1961年といえば、ちょうどアポロ計画で最初に月に着陸した頃です。「月」なので惑星ではなく衛星ですけど、確かに組曲『惑星』が再度世に出るのに、とても相応しいタイミングですね。その頃までは人工衛星などもなかった訳ですが、それから10年程度の間に長足の進歩を果たして、宇宙へのイメージが大きく変わっていくことになります。さらにはスペースシャトル計画も実行され、地球の周りには多くの人工衛星が打ち上げられていきます。

組曲『惑星』の再デビューを担ったカラヤン=ウィーン・フィルの演奏は、まるでアポロ計画の一環のような、異様なまでに勇ましい演奏になっています。これがウィーン・フィルだなんて、信じられないですね。しかもこの録音は非常に品質が良いようで、オーディオマニアの間でもハイレゾ化など高音質化技術の恩恵をよく受けられるディスクのようです。

「火星」から凄い気合いが感じられます。細かいテンポとか音程などは少し脇に置いて、このリアリティ溢れる演奏を聴いてみましょう。ユーフォニウムのソロが物凄く前に出ていて、大きなトロンボーンのようです。後半のリズムの打ち込みは凄い気迫で荒々しいですが、物凄い霊感を感じます。

「木星」はカラヤン独特のテンポ取りで間違いではないのですが、ボールトなど歴史的な演奏とは違います。しかし、それは細かいことで、物凄く力強いドイツ的と思える演奏です。テンポ取りは普及しませんでしたが、スタイリッシュな演奏スタイルは後続の演奏家に大きな影響を与えていると思います。中間部の有名なメロディはとてもスケールが大きく、紳士的で控えめなエイドリアン・ボールトとは大分違います。「土星」は洗練されている所と神秘的な占星術を思わせる所が交錯しています。盛り上がる所では物凄い気合いですが、パーカッションが異様な雰囲気を漂わせています。「天王星」はやはりダイナミックで、神秘と異様さがあります。この演奏スタイルも後続の演奏家に大きな影響を与えていそうですね。

カラヤン、ウィーンフィルとは思えない位の気合いと、独特の異様な雰囲気を持った演奏ですが、当時の宇宙に対するイメージと、組曲『惑星』の凄さを聴かせてやろうという気迫、そして実際宇宙開発がまさに進み始めてアポロが月に初めて有人飛行するという、リアリティを「これでもか!」と感じさせてくれる凄い演奏です。実は、カラヤンの前にエイドリアン・ボールトがウィーン・フィルと録音していて、ウィーン・フィルはその影響を受けているはずですが、実際聴いてみると大分違う演奏です。

佐渡裕=NHK交響楽団

高音質でスケールの大きさと品格がある演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 洗練
  • スリリング
  • スケール感
  • 高音質

おすすめ度:

指揮佐渡裕
演奏NHK交響楽団
合唱東京少年少女合唱隊

2005年6月27日,東京オペラシティ,コンサートホール「タケミツ メモリアル」 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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佐渡裕とNHK交響楽団の演奏です。このコンビの演奏はもちろんダイナミックですが、クオリティが高く品格があります。『惑星』というと、ボールト盤であっても占星術的な怪しさがあり、デュトワ盤であっても不気味さがあります。佐渡裕は熱気がありながらも、そういった表現主義に陥ることなく、品格があって奥ゆかしいです。テンポ取りの的確さも特筆すべきと思います。良く聴くと他では聴けない『惑星』であることが分かると思います。

「火星」N響らしくマッシヴ(筋肉質)で迫力があり、スケールが大きく盛り上がりますが、同時に丁寧さがあります。ユーフォニアムのソロなど、しっかりきれいに演奏されています。弦のレヴェルの高さは特筆です。金管もダイナミックです。和音も先入観なくきれいに響いています。「金星」も良い演奏です。これだけ練り上げた金星は他では聴けないものだと思います。ホルンのソロも素晴らしいです。

「木星」は佐渡の上手いテンポ取りが絶妙で、とてもリズミカルでありながら、ユロフスキ盤のように速すぎることはありません。ホルンの主題のアッチェランドもスケール感を失わない程度に速めのテンポです。中間部は遅めのテンポで、透明感のある弦が朗々と歌い、クレッシェンドしても品格があります。「土星」は厚みのあるサウンドで、不気味さはありませんが、じっくり演奏されていて充実感があります。N響の奥ゆかしさの中に佐渡裕の熱気がありますね。「天王星」はダイナミックな金管で始まります。金管はレヴェルが高く、昔のN響と比べると隔世の感がありますね。佐渡裕の軽妙なリズムと熱気のあるテンポ取りが心地よく、盛り上がります。「海王星」は透明感が高く、高音質が効果的です。

(自作自演)ホルスト=ロンドン交響楽団

予想外にテンポの速さ、イギリス民謡風?
  • 歴史的名盤
  • ユニーク
  • 自作自演

指揮グスターヴ・ホルスト
演奏ロンドン交響楽団

1926年,ロンドン

アマゾンUnlimitedとは?

『惑星』に関して、ホルストの自作自演をどう評価するか、難しい所です。このテンポの速さはかなりのものです。最初はCDがおかしいのかと思いました、笑。

聴いていると、これは「吹奏楽のための組曲」「セントポール組曲」など、ホルストが普段作曲しているイギリスの民族音楽に似ています。なるほど、こんな要素が「惑星」にもあったのか、と少し目から鱗(うろこ)で、この曲を良く知りたい方は、必聴です。

「惑星」は良く聴くと、ちょっと変わった音楽です。それはイギリスの民族音楽の要素が入っているからかも知れません。基本的な作曲技法自体は他の民族的な曲とそれほど違わないのでしょうね。

佐渡裕=NHK交響楽団

スケールの大きい『惑星』を高音質で
  • 名盤
  • 定番
  • スケール感
  • 高音質

おすすめ度:

指揮佐渡裕
演奏NHK交響楽団

2005年6月(ステレオ/デジタル/ライヴ)

アマゾンUnlimitedとは?

スヴェトラーノフ=フィルハーモニア管弦楽団

  • 名盤
  • 爆演
  • 個性的名演

おすすめ度:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏フィルハーモニア管弦楽団
女声合唱ザ・シックスティーン

1991年11月,ロンドン,ブラックヒース・コンサートホール (ステレオ/デジタル/セッション)

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スヴェトラーノフ『惑星』です。オケはフィルハーモニア管弦楽団ですが、完全にスヴェトラーノフの術中にハマっています。スヴェトラーノフは晩年テンポが凄く遅くなりましたが、この時点では、そこまで遅くはないですね。

この遅いテンポの「火星」からして凄いスケールを感じます。この重量感はなんなんでしょう?こんな演奏は初めて聴きました。中間の静かなところも響きを噛みしめるようにして、じっくり演奏しています。また盛り上がってきてもテンポはそのまま。金管は遅いテンポでがんばって吹かねばなりません。それも含めて妙な迫力に繋がっているように思います。

ガーディナー=フィルハーモニア管弦楽団

  • 名盤
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ジョン・エリオット・ガーディナー
演奏フィルハーモニア管弦楽団
女声合唱モンテヴェルディ合唱団女声コーラス

1994年2月,ロンドン,ゴスペル・オーク,オールハロウズ教会 (ステレオ/デジタル/セッション)

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まさか、古楽器中心に活動しているジョン・エリオット・ガーディナー『惑星』を振るとは思っていませんでした。しかし、ガーディナーもイギリス人です。同じイギリスのフィルハーモニア管とイギリスのコンビで『惑星』を録音しました。

「火星」は意外にテンポが遅めで重厚。低音域が素晴らしいです。ユーフォニウムのソロも上手いです。迫力はまあまあですが、アンサンブルのクオリティが高いです。オケは迫力を出そうと気合いが入っているが、ガーディナーは別のものを求めているようで、落ち着きを失いません。「金星」も落ち着いています。「木星」速いテンポで小気味良く開始。ホルンの主題になると少しテンポを落としてしっかり聴かせてくれます。有名な中間部はきれいに歌っています。ただイギリス風ということではなく、ボールトの演奏の反動なのかも知れません。「海王星」合唱は特筆すべきで、非常に神秘的でモンテヴェルディ合唱団のレヴェルの高さが分かります。

プレヴィン=ロンドン交響楽団

  • 名盤
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮アンドレ・プレヴィン
演奏ロンドン交響楽団
女声合唱アンブロジアン・シンガーズ

1973年9月28,29日,ロンドン,キングズウェイ・ホール

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楽譜

ホルスト作曲、組曲『惑星』のスコアと楽譜を挙げていきます。

ミニチュア・スコア

OGTー232 ホルスト 組曲「惑星」 (Ongaku no tomo miniature scores)
解説:小鍛冶 邦隆
5つ星のうち4.5 : 2個

電子スコア

タブレット端末等で閲覧する場合は、画面サイズや解像度の問題で読みにくい場合があります。購入前に「無料サンプル」でご確認ください。

The Planets: Suite for large Orchestra, Op. 32 (Eulenburg Studienpartituren) (English Edition)

大型スコア

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P.マーク=ミラノRAI

マータ=ダラス交響楽団

ロンドン交響楽団 & サー・コリン・デイヴィスB07D7PMLG9

ロジェストヴェンスキーB006ZS5G1O

ユウ=フィルハーモニアB003XPZ23O