ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Peter Ilyich Tchaikovsky, 1840~1893)が作曲したバレエ音楽『白鳥の湖』(Swan Lake)の解説と、お薦めの名盤をレビューしていきます。
解説
チャイコフスキーのバレエ音楽『白鳥の湖』の解説をします。
『白鳥の湖』はチャイコフスキー最初のバレエ作品です。1876年に作曲されました。
このバレエの台本は、ドイツ中世の伝説に基づく幻想的な物語を元にしています。
あらすじの大枠を紹介します。
悪魔によって王女オデットとその侍女たちは白鳥の姿に変えられてしまします。
しかし、真夜中の短い時間だけは、人間に戻ることができました。
湖に白鳥狩りにやってきたジークフリート王子は、たまたま人間の姿に戻っていたオデットを出会い、愛を誓いあうようになります。
しかし、2人の仲を裂こうとした悪魔はジークフリートの妃選びの舞踏会に、自分の娘をオデットに似せて出席させます。ジークフリートはその罠にかかり、騙されてしまいます。
騙されたことに気づいたジークフリートは、すぐに湖に行き、本物のオデットに謝りますが、オデットは永久に白鳥の姿から戻れないようになってしまいました。
そして、ジークフリートとオデットは、絶望のあまり身を投げます。
しかし、その瞬間、2人の強い真実の愛の力によって魔法が解け、オデットとジークフリートはめでたく結ばれます。
有名な音楽
バレエ『白鳥の湖』は、全曲で聴くと2時間半かかる大作です。そのため普段、管弦楽曲として聴くときには、聴き映えのする抜粋や組曲を聴くことが多いと思います。組曲『白鳥の湖』の演奏時間は約28分です。
組曲は以下の曲から構成されています。なお、組曲はチャイコフスキー自身が選曲したものではなく、出版社ユルゲンソンがセレクトしたものです。チャイコフスキー自身も組曲版を編曲する必要があることは考慮していて、出版社とも話をしていたようですが、結果としてはチャイコフスキー自身による組曲は編曲されなかったため、出版社で組曲を作成したようです。
1.情景(第2幕)
2.ワルツ(第1幕)
3.4羽の白鳥たちの踊り(第2幕)
4.王子とオデットのグラン・アダージョ(パ・ダクシオン) (第2幕)
5.ハンガリーの踊り(第3幕)
6.終曲(第4幕)
そのため、聴きごたえのある曲目が抜けており、指揮者が追加したり、全曲から直接抜粋することも多いです。
有名な楽曲をご紹介します。
序奏
オーボエのソロの後、情熱的にクレッシェンドし、全オーケストラのトゥッティで再度主題が演奏されます。かっこいい序奏ですので、組曲には入っていませんが、抜粋ではよく演奏されます。
情景
「情景」といっても沢山ありますが、組曲にある情景は、とても有名な音楽です。第2幕の冒頭に演奏され「白鳥の主題」をオーボエが奏でます。非常に美しく有名なメロディで、『白鳥の湖』といえば、この曲です。
ワルツ
ジークフリート王子の希望で、村の若い娘が踊る音楽です。非常に有名な音楽です。
4羽の白鳥の踊り
この曲もとても有名な音楽で、知らない人は多分いないでしょう。リズミカルな伴奏の上で、オーボエがメロディを奏でます。第2幕の「白鳥たちの踊り」の中に含まれています。
情景(パ・ダクシオン)
ロマンティックで夢見るような音楽です。ジークフリート王子とオデットの愛の踊りの場面で演奏されます。
ハンガリーの踊り
第3幕で演奏されます。チャルダッシュというハンガリーの民族舞踊です。
ナポリの踊り
スペインの踊り
カスタネットとタンバリンが入った有名な舞曲です。
マズルカ
「マズルカ」はポーランドの踊りです。独特のリズムパターンを持ち、情熱的で華やかさもあるため、バレエでは良く出てきます。
終曲
ダイナミックな音楽でオーケストラ全体で盛り上がり、スケールの大きなフィナーレとなります。
おすすめの名盤レビュー
チャイコフスキーの『白鳥の湖』のおすすめの名盤レビューをしていきます。
ただ一通り聴いてみたところ、名盤はいくつかありましたが、決定盤には欠けるように思います。特に選曲が難しく、レヴェルの高い演奏は、選曲が良くなくて良い面を出し切れていないときがあります。それにしてもレーグナー、モントゥーなど、いろいろな選曲がありますね。選曲で一番満足感が高かったのは、やはり昔ボリショイ劇場の指揮者として名盤を残しているロジェストヴェンスキーの演奏です。
レーグナー=ベルリン放送交響楽団
レーグナーは東ドイツのベルリン放送交響楽団の指揮者でした。同じベルリン放送交響楽団でも西ドイツのオケとは別です。音質は1981年の旧東ドイツということで、響きの良い音質ですが、好みが分かれそうです。『白鳥の湖』はもともとシンフォニックな所があり、バレエ作品としてそこが批判されたくらいです。レーグナーはドラマティックかつロマンティックな表現を聴かせてくれます。オケの音色は暖かみがある響きです。
抜粋した曲もドラマティックで、序奏とフィナーレを含んでいて非常に良い選曲と思います。
1.序奏
2.第2曲 ワルツ(第1幕)
3.第5曲 パ・ド・ドゥ(第1幕)
4.第13曲 小さな白鳥たちの踊り(第2幕)
5.第14曲 情景(第2幕)
6.第20曲 ハンガリーの踊り(第3幕)
7.第21曲 スペインの踊り(第3幕)
8.第22曲 ナポリの踊り(第3幕)
9.第23曲 マズルカ(第3幕)
10.第28曲 情景(第4幕)、
11.第29曲 フィナーレの情景(第4幕)
序奏からとても味わい深い演奏で、オーボエのソロが素晴らしいですし、その後のダイナミックな盛り上がりも弦楽器のサウンドが、とてもしなやかです。次の曲もシンフォニック云々以前に、レーグナーはリズム感はある指揮者なのでバレエ音楽として十分通用する演奏です。オペラ座のオケではないのに、これだけの演奏が出来ればバレエ音楽として十分だと思います。特に弦セクションのしなやかさと自然なリズミカルさは、他のドイツのオケではあまり聴かれない特徴です。このコンビはブルックナーも得意としていますが、スケルツォ楽章が素晴らしいですね。「ハンガリーの踊り」では、前半はかなり遅いテンポですが、後半は一転してリズミカルになります。抜粋ですが、有名な音楽は一通り抑えていて、音楽の流れも良い選曲です。
独特の歌いまわしの味わい深さと美しさがあり、レーグナーらしい名盤です。
ムーティ=フィラデルフィア管弦楽団 (組曲)
若い時のムーティの演奏です。『眠りの森の美女』は特に素晴らしいのですが、『白鳥の湖』もかなり良い演奏です。基本的にインテンポ、あるいは速めのテンポで、イメージ通りの演奏をしてくれます。しかも、筋肉質でバレエ音楽として、リズム感がしっかりしています。横に流れてしまうことが無いため、多少の演出もバレエ音楽の範疇を出ることはありません。
バレエ的なリズムだけでなく、ダイナミックでシンフォニックな所も水を得た魚のように、筋肉質でゴージャスな演奏をしてくれます。しかも、わざとらしい演出は全くないです。「ハンガリーの踊り」は、前半はインテンポなのが好きなのですが、かなり遅いテンポで入り、後半はかなりテンポアップしています。「スペインの踊り」は、目の覚めるような溌剌としたリズムで名演です。「マズルカ」も同様にいい演奏です。
終曲がないのが、一番勿体ないですね。このコンビだったら絶対にいい演奏だったはずと思います。次の曲が『眠りの森の美女』の序奏で、目の覚める様な名演なので、やっぱり『白鳥の湖』は序奏がなくてフィナーレも無いという、選曲ミスだったかも、とも思います。でもいい所の多いディスクです。
ムーティはこの後、オペラ指揮者としてキャリアを積んでいきますが、この演奏を聴くとオペラ指揮者の才能が最初からあったことが、よく分かります。
レヴァイン=ウィーン・フィル (組曲)
レヴァインとウィーン・フィルの録音です。レヴァインは基本的にメトロポリタン歌劇場のオペラ指揮者です。当然、バレエも上手いです。シンフォニックに積極的に表現していく、というよりは、歌手に歌える場を提供したり、バレエ団に踊れる環境を提供したりするのが仕事なので、わざとらしい余分な表現は不要です。
レヴァインの実力でウィーン・フィルから色彩的なサウンドを引き出していて素晴らしいです。また、録音の音質が良いことも大事な長所です。それにしても、こもりがちなムジークフェラインでもこんな録音ができるんだなと、感心しました。
組曲そのままなので、ドラマティックな盛り上がりはあまりありませんが、親しみやすい有名な曲が並んでいて楽しめます。フィナーレは聴きどころで、なかなかのスケールです。ウィーンフィルは思っていたよりダイナミックに演奏していますが、サウンドが汚くなるところはありません。
組曲版でも『白鳥の湖』の良さは出ていますし、バランスの取れた組曲集だと思います。
バーンスタイン=ニューヨーク・フィル
レナード・バーンスタインが若い時のニューヨーク・フィルとの録音です。全曲盤からの抜粋で、組曲とは関係なく自由に抜粋されています。曲数も多いです。これなら、一枚全部『白鳥の湖』を抜粋すればレーグナー盤のように意図がはっきりしていいと思います。
1.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(導入部)
2.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(II.ヴァリアシオン)
3.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(III.ヴァリアシオン)
4.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(IV.コーダ)
5.第2幕:情景:Moderato
6.第2幕:白鳥たちの踊り(I.Tempo di valse)
7.第2幕:白鳥たちの踊り(II.Moderato assai-Molto piu mosso)
8.第2幕:4羽の白鳥の踊り
9.第2幕:オデットとジークフリートのパ・ダクシオン
10.第2幕:白鳥たちの踊り(VI.Tempo di valse)
11.第2幕:白鳥たちの踊り(VII.コーダ)
12.第3幕:情景:Allegro quisto
13.第3幕:ハンガリーの踊り
14.第3幕:スペインの踊り
15.第3幕:ナポリの踊り
16.第3幕:マズルカ
組曲には入っていない有名曲がいくつか入っています。例えば第4曲、第10曲など、かなり有名だと思います。他にもどこかで聴いたような曲が多く抜粋されていて楽しめます。
バレエファンからみれば、オデットとジークフリートのシーンが沢山入っているのがいいと思います。その代わりフィナーレがやはり無いですね。
若いバーンスタインのしなやかで活発な演奏が素晴らしいです。ロマンティックな曲もロマンティシズムに陥り過ぎずに、自然に表現しています。
音質はなかなか良いです。1969年ですが、1970年代中盤くらいの音質で、今でも不満なく聴けます。
フェドセーエフ=モスクワ放送交響楽団 (組曲)
フェドセーエフとモスクワ放送交響楽団の演奏は、ロシアでもトップを争うモスクワ放送交響楽団の機能性もあって、とても優れた演奏です。テンポのメリハリが強すぎて、かなり個性的でもあります。フェドセーエフはバレエ指揮者ではないので、ロジェストヴェンスキーのようには行かないですね。ちなみにCDでは入手できず、MP3ダウンロードのみです。音質はなかなかです。最近の録音だと思います。選曲は組曲ベースですが、終曲は入っていません。
最初の「情景」は素晴らしい演奏です。時折現れるロシアの大地を感じさせるような土の香りは他国のオケでは真似できないものです。「ワルツ」も素晴らしい演奏です。「4羽の白鳥の踊り」も良いですね。録音が良く適度にエコーがかかっています。「パ・ダクシオン」もソロが素晴らしいと思います。ウィーンフィルなどのほうがもっと繊細な場合が多いですが、十分素晴らしいです。「ハンガリーの踊り」は、前半適度に遅く、後半は爆速です。「スペインの踊り」は最初から最後まで爆速。「ナポリの踊り」はまあまあです。「ポーランドの踊り」の鮮やかな演奏はこのページのディスクの中でもトップですね。マズルカらしく小気味良く演奏されています。
ロシアの演奏家にハンガリー、ましてやスペイン、イタリア南部のナポリの音楽を演奏させてもイメージが湧きにくいかも知れませんね。ポーランドはロシアと関係が深いので、マズルカはロシア人でも知っているが多いです。終曲は入っていませんね。結構、シンフォニックな終曲を入れないディスクが多いのはなぜでしょうかね。面白い演奏で、クオリティも高いので何度も聴いてしまいました。
モントゥー=ロンドン交響楽団
モントゥー=ロンドン交響楽団の演奏は、なかなかダイナミックで音質も十分良いです。抜粋ですが、結構沢山曲が入っていて、楽しめそうです。
さて最初は第2幕の序奏から始まりました。別に良いのですが、これだけの曲数があれば、第1幕の序奏も入れてほしかったですね。ロンドン交響楽団は、ダイナミックで曲にあっています。ただ、録音も新しい訳では無いので、少し音が汚く聴こえる時があるかも知れません。また「ワルツ」は時間の問題なのか、随分繰り返しが省略されています。
モントゥーはロシアの指揮者ではありませんが、『春の祭典』『ペトルーシュカ』などを初演したバレエ指揮者でもあります。モントゥーの凄さはバレエだけではありませんが、曲の本質をつかんで引き出す能力は凄いものがあります。ロンドン交響楽団は、どうも色彩的なところは金管がダイナミックすぎて品に欠ける時がある気がします。3曲目は第1幕だったような気もするのですが、これは良い演奏です。
有名な情景は、それまでのダイナミックさは影を潜め、美しいオーボエソロが聴けます。
カラヤン=ベルリン・フィル (組曲)
カラヤンとベルリン・フィルの演奏は上手いのですが、好みが分かれると思います。とりあえず、ソロは間違いなく上手いです。とてもロマンティックな表現で、カラヤンらしいゴージャスなレガートを使って、華麗な演奏を繰り広げています。
しかしシンフォニックすぎ、リズム感もバレエらしくないです。曲によってはコマーシャルなどで聴いたままなので、おおっ、という感じですが、例えば「ハンガリーの踊り」前半は、遅いにしたってやりすぎです。カラヤンのチャイコフスキーですね。
選曲も組曲のままですね。終曲が入っているのは良かったです。やはりカラヤン=ベルリンフィルの終曲は聴きたいですからね。この曲はやはりカラヤン向きで、わざとらしくても凄い演奏は凄い、ということですね。
カラヤン=ウィーンフィル (組曲)
カラヤンはウィーンフィルとの演奏もあります。こちらは少し古いですが、カラヤン特有のレガートが目立ちにくいこともあり、結構人気のある演奏です。基本的にベルリンフィルとの演奏スタイルに比べて大きな差があるわけではなく、オケの違いによって結果的に大きな出ている、という感じですね。
ベルリンフィルとのディスクで一番違和感を感じる「ハンガリーの踊り」の前半も、基本的に同じ方向性ですが、ウィーンフィルよりもベルリンフィルのほうが徹底されている、ということです。
終曲はベルリンフィルのほうがダイナミックで上手いですが、ウィーンフィルもカラヤンらしい引き締まったサウンドで迫力があり、良い演奏です。
あとは好みの問題です。音の響きはウィーンフィルの美しさがありますし、ベルリンフィルはダイナミックさやソロのレヴェルの高さが凄いですから。
ロジェストヴェンスキー=読売日本交響楽団 (組曲)
この演奏はロジェストヴェンスキー最後の来日のライヴです。ブルックナーの第5番(シャルク版)などと一緒に、大本命と言えるのはやはりチャイコフスキー三大バレエですね。
ロジェストヴェンスキーの指揮者人生はボリショイ劇場から始まりました。LP時代に録音した『白鳥の湖』全曲は、今、聴いても優れた演奏です。シンフォニックになりすぎず、バレエ音楽の範疇でロマンティックでダイナミックな表現をしていて、『白鳥の湖』のバイブルのような演奏でした。しかし、なぜかCD化されず、非常に残念です。
イギリスを中心に活動するようになってもチャイコフスキーのバレエは常に名演でした。BBC交響楽団との『眠りの森の美女』全曲盤が素晴らしかったことを思い出します。
さて、この日のコンサートでは三大バレエの抜粋が演奏されましたが、メインは『くるみ割り人形』の第2幕でした。『白鳥の湖』は組曲+序奏といった所です。
読売日本交響楽団もレヴェルアップしてきて、ヨーロッパのオケまでは行きませんが、ロジェストヴェンスキーの意図通りの演奏が出来るようになってきたと思います。『白鳥の湖』はコンサートの最初の曲なのと、録音が良すぎて粗が見えやすくトランペットのソロや一部のアンサンブルなどで少し不安定な感じがするかも知れません。
ところで、この最後の演奏は、ロジェストヴェンスキーの円熟を示すように物凄く遅いテンポで、じっくり味合わせてくれます。ボリショイ劇場との踊れる『白鳥の湖』とは全く別物で、晩年のスヴェトラーノフのようです。
そういう意味では、バレエ音楽として聴きたい方は他の演奏のほうがいいです。いくつか他の演奏を聴いた方は、この演奏も聴かないと、とても勿体ないですよ。
音質はとてもよく読響も普段よりコクのあるサウンドで、味わい深く演奏しています。このページに取り上げたディスクは皆、名盤と言えるレヴェルだと思いますが、味わいとコクという意味では、このディスクが一番かも知れません。わざとらしさも一切ありません。
テンポが遅いと書きましたが、後半の『くるみ割り人形』に比べると普通に聴けるテンポですね。最後のコンサートだからと気負わず聴いて、味わってみてください。熟したワインのような品格を味わえる名盤です。
全曲版CDレビュー
チャイコフスキーの『白鳥の湖』の全曲盤をレビューしてみます。
サヴァリッシュ=フィラデルフィア管弦楽団
サヴァリッシュとフィラデルフィア管弦楽団の録音です。1993年の新しめの録音で音質も透明感があって良いです。
サヴァリッシュはNHK交響楽団の指揮者として親しまれていますが、ヨーロッパでは劇場でオペラやバレエの指揮で活躍し、オペラ座での活動が中心でした。インテンポでバレエ音楽らしいリズムを大事にしつつ、中庸なテンポを取っています。盛り上がる所では速いテンポになり、スリリングでダイナミックな演奏になります。フィラデルフィア管弦楽団はアメリカの昔からの名門で色彩感のあるオケですが、ここでは透明感のある響きで、ソロがとても上手く、アンサンブルのクオリティも高いです。
サヴァリッシュの円熟もあって、端正な表現で瑞々(みずみず)しく自然な表現で、レガートはそれほど掛けていません。とても奥ゆかしく、じっくり聴くと多彩なボキャブラリーの表現を聴きとれると思います。『白鳥の湖』らしい、凛とした表現も透き通った響きで格調の高さも感じます。
端正で奥ゆかしさがあり、オペラ座の指揮者らしいスケールの大きさも併せ持っています。バレエ音楽としての『白鳥の湖』を質の高い表現で楽しめる名盤です。
ゲルギエフ=マリインスキー劇場管弦楽団 (全曲盤)
ゲルギエフと手兵マリインスキー劇場管弦楽団の録音です。マリインスキー劇場管はバレエとして頻繁に上演する演目ですし、劇場オケらしい臨場感のある手慣れた演奏です。2006年と新しい録音で、音質も良いです。劇場で上演される際のバージョンを用いています。
ゲルギエフは『白鳥の湖』では、それ程速いテンポはとっておらず、スケールが大きくじっくり味わい深く聴かせてくれます。ロシアのコンビなので、ロシアの土の香りがする響きが味わい深いです。序奏や第1幕のワルツなど、ダイナミックでスケールが大きいです。とてもリズミカルで、基本インテンポの自然なテンポ取りです。スペインの踊り、マズルカなど生き生きとしたリズム感です。弦はロシア的なコクのある味わい深い響きです。終曲はとてもドラマティックでダイナミックかつスリリングに盛り上がります。
音質も良いですし、ロシア的な全曲盤の定番として、入門者から玄人まで幅広くお薦めできる名盤です。
ロシア・ナショナル管弦楽団は、レヴェルが高く、速いテンポでもアンサンブルが崩れることはありません。プレトニョフはあまりダイナミックさがなく、テンポは速めですが、少し小さくまとめてしまうところがあるようです。
あたらしい録音なので、音質は良いです。
さらにCD,MP3を探す
バレエのDVD,Blu-Ray,他
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楽譜
チャイコフスキーのバレエ音楽『白鳥の湖』、組曲などの譜面を挙げていきます。