ブルックナー 交響曲第4番『ロマンティック』

アントン・ブルックナー (Anton Bruckner, 1824~1896)交響曲第4番 変ホ長調『ロマンティック』は、解説とおすすめの名盤レビュー、スコアの紹介をします。ブルックナーの中でも一番聴きやすい交響曲ですので、ブルックナーを初めて聴く人にはお薦めの交響曲です。

解説

ブルックナー交響曲第4番『ロマンティック』の解説をします。

愛称の通り「ロマンティック」な交響曲

ブルックナーは交響曲第3番『ワーグナー』でも改訂を繰り返し、やっと初演にこぎ着けました。しかし、交響曲第3番の初演は失敗に終わりました。聴衆や演奏者に受け入れられる交響曲を作曲しなければいけない。ブルックナーの改訂癖と呼ばれるものが交響曲第4番『ロマンティック』ではピークに達します。この交響曲が作曲されて初演されるまでに、実に多くの改訂がなされました。

第1稿1874年に作曲し、その年のうちに書きあげられました。しかし、第1稿はウィーン・フィルによる試演の後、「演奏する価値なし」との烙印を押されてしまいます。そこでブルックナー自身が全面的に改定することを決意し、1878年12月第2稿を作成します。この改訂により、第3楽章は丸ごと入れ替えられました。

聴いてみると分かりますが、第1稿の第3楽章は正直ちょっと野暮ったい音楽です。それが全面書き換えにより、非常にロマンティックな音楽に生まれ変わりました。

1880年には第4楽章を大幅に書き換え、第3稿を作成します。

そして1881年にウィーンで初演、1886年にはニューヨークでも初演されました。

ブルックナーのスタイルを確立

交響曲第4番はブルックナー自身が改訂を繰り返したため、実に6年の歳月を費やしたのです。そのため完成度の高い交響曲となりました。ブルックナーの音楽では、トレモロによるブルックナー開始、全休止で残響を消すブルックナー休止、他、独特の作曲法を使用していますが、ブルックナー交響曲第4番でほぼ出そろいました。

初演時には、ほぼ改訂の必要はないくらいの完成度になっていました。リヒターがリハーサルをしたときに、ブルックナーは非常に感激したとのことです。

初演は失敗ではありませんでしたが、比較的親しみやすい交響曲の割には、大好評とはいかなかったようです。でも、ニューヨーク初演が行われているということは、曲に対する周囲の評価も最初から高かったのだと思います。

入門者向けの親しみやすい交響曲

交響曲第4番はブルックナー本人も聴衆に受け入れられることを望んだ作品だったようです。「ロマンティック」という愛称もブルックナー本人が友人にあてた手紙の中にバッチリ出てきます。”ロマンティック交響曲”という呼び方をしています。第1楽章のホルンは町の庁舎から朝を告げるものだそうです。第2楽章は普段の生活や歌や祈り、第3楽章が「狩り」の様子を描写していることも書いています。実際聴いてみても、多くの人がそういう情景を思い浮かべると思います。絶対音楽がうんぬんとか、難しい内容ではありませんね。

楽曲の構成

ブルックナー交響曲第4番『ロマンティック』は4楽章構成です。

第1楽章:運動的に、しかし速すぎずに

ソナタ形式です。弦のトレモロによる「ブルックナー開始」で始まり、ホルンのソロが「夜明け」を知らせます。このホルンのソロは印象的で、この楽章全体がホルンのソロ中心に構成されています。「ブルックナーリズム」と呼ばれる2+3のリズムが現れます。もともとこれは5連符で書かれましたが、演奏者のことを考え、2つに分けたようです。

第2楽章:アンダンテ・クワジ・アレグレット

この楽章は、ブルックナー自身が「深い森」と解説したことがあり、短調のチェロの主題で、深い所におりていく雰囲気です。後年の交響曲はここにアダージョが入り、人間の内面に深く入っていくような素晴らしい音楽になります。

第3楽章:スケルツォ

交響曲第4番は改訂により素晴らしいスケルツォとなりました。森の中をこだまするホルンの音は印象的です。ブルックナー自身の説明によれば「狩り」を表現しているようです。

第4楽章:運動的に、しかし速すぎずに

ソナタ形式のダイナミックなフィナーレとなっています。「ブルックナーユニゾン」も第4番が初めてではありませんが、典型的で完成度が高いですね。

おすすめの名盤レビュー

ブルックナー交響曲第4番『ロマンティック』のおすすめ盤をレビューしていきます。

人気曲のため、実に多くのCDがあります。とても全部を聴くのは難しいです。それに名演奏が少ない曲でもあるのです。難しさのない曲なのですが、普段あまりブルックナーを演奏しない指揮者も交響曲第4番『ロマンティック』は録音していることがあります。いわゆるブルックナー指揮者だと却って難しい演奏になってしまうこともある気がします。

ブロムシュテット=シュターツカペレ・ドレスデン

自然美に溢れたまさに「ロマンティック」な名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 自然美
  • スリリング

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・ブロムシュテット
演奏シュターツカペレ・ドレスデン

1975年4月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/アナログ/セッション)

ロマンティックで聴きやすい演奏の代表といえばブロムシュテットですね。初めてブルックナーを聴く人にもとてもお薦めです。少し前の録音ですので、ブロムシュテットには晩年もっとブルックナーを取り上げてもらって、全集も作ってほしかったですね。

ライプツィヒ・ゲヴァントハウスとの録音を合わせるとほぼ主要な曲は揃いますけれど。

ヴァント=ベルリン・フィル

円熟したヴァントの良さが良く出た名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 自然美
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ギュンター・ヴァント
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1998年1月30,31日,2月1日,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/ライヴ)

アマゾンUnlimitedとは?

ギュンター・ヴァントは、ブルックナー指揮者として有名になるずっと前からブルックナーに取り組んでいた硬派な指揮者です。晩年の人気の高まりはそういった活動の賜物でしょうね。しかし、ヴァントの基本路線は昔から変わっていません。朝比奈隆やブロムシュテットとは正反対で、カラヤンよりも厳しい音楽づくりをする指揮者なのです。そのうえで、ブルックナーらしいロマンティシズムを加えています。ヴァントは手兵北ドイツ放送交響楽団との共演が多かったですが、ここではベルリン・フィルを指揮しています。ベルリン・フィルはヴァントの厳しい要求に余裕でついてきて、スケールが大きくクオリティの高い演奏をしています。

第1楽章ホルンソロは圧倒的な上手さで惹きつけられます。最晩年は枯れてきますが、この演奏では自然美と共にクオリティの高い緻密なアンサンブルで、ヴァントの良さが出ています。ヴァントの肩の力の抜けた自然な指揮のもと、ベルリン・フィルの機能性もバランスよく発揮されていて、鮮度の高いサウンドを紡ぎだしています。第2楽章は遅めのテンポで朗々と歌っています。透明感の高い響きで、自然美と共に円熟した深みを感じさせます。カラヤン盤とは違った自然で広大なスケールの大きさも感じさせます。所々で味わい深い個所が出てきて、充実感があります。

第3楽章はとてもリズミカルで、ベルリンフィルの金管の上手さが良く出ていて爽やかです。第4楽章ヴァントの円熟を感じさせる遅いテンポのスケールの大きな名演です。ベルリン・フィルの金管のレヴェルの高さで、美しい響きのまま、壮大な響きを紡ぎだしています。味わい深さも随所で感じられます。

録音も良いですし、自然美があり演奏のクオリティも高く、この曲の良さを深く表現しており、とてもお薦め度の高い名盤です。

カラヤン=ベルリン・フィル (1975年)

ベルリン・フィルの機能を活かした爽快な名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 壮麗
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1975年4月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/アナログ/セッション)

アマゾンUnlimitedとは?

カラヤンは「ロマンティック」でも、意外に硬派な演奏をしています。カラヤンは実は隠れたブルックナー指揮者で、ブルックナーの交響曲を高く評価し、主要な交響曲は録音していますし、曲に対する理解も深いです。ベルリンフィルのパワーを容赦なく使って、分厚い弦楽器セクション、そして金管楽器のブルックナー・ユニゾンは、他の演奏家にはついてこれない領域の迫力です。ブルックナーの交響曲を「絶対音楽」と見做し、あまり感情面を強調せず、曲自体に語らせています。

第1楽章は冒頭のホルンの上手さも素晴らしいですし、その後出てくる弦も神々しい響きです。そして、金管が入りトゥッティになっていくと、爽快なサウンドを楽しむことが出来ます。ダイナミックですが、重さを感じることはありません。テンポ取りもインテンポでとてもブルックナーに相応しいです。第2楽章は少し速めのテンポで、壮麗さのある演奏です。ベルリン・フィルの透明感のあるサウンドが心地よいです。第3楽章はベルリン・フィルの機能を活かした金管中心のダイナミックな演奏です。第4楽章はベルリン・フィルの重厚でダイナミックな響きが最大限生かされた壮大な演奏です。

ドイツの深い森のイメージとか、狩のホルン、などと想像しながら聴くと、期待を裏切られますが、他の演奏をいろいろ聴いた後でカラヤン盤を聴き直すと、他では聴こえてこなかった音楽が聴こえきて、目から鱗(うろこ)が落ちる思いです。

ベーム=ウィーン・フィル

自然でスケールが大きく格調の高い名演
  • 名盤
  • 定番
  • 自然美
  • 情熱的
  • 重厚

おすすめ度:

指揮カール・ベーム
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1973年11月,ウィーン,ゾフィエンザール (ステレオ/アナログ/セッション)

アマゾンUnlimitedとは?

カール・ベームは、晩年のブラームスやモーツァルトなど、当時の名演ではありますが、遅いテンポで少し堅すぎる演奏スタイルになることがありました。ブルックナーはどうかな、と思っていたのですが、杞憂(きゆう)でした。自然なテンポどりで遅すぎるということもないです。単に自然を表現した以上のものを聴くことが出来る、ベームの良さが出た名盤です。

ウィーン・フィルのサウンドは、まさにブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」に相応しいです。特にウィーン・フィルのホルンは、ウィンナホルンという、素朴な音色のホルンであるため、狩のホルンにはうってつけです。第1楽章はホルン協奏曲のような楽章ですが、ウィンナ・ホルンの響きを堪能できます第2楽章格調が高く深みを感じる、味わい深い名演です。第3楽章はウィーン・フィルの柔らかい響きを楽しめます。トゥッティでは厚みのある響きです。第4楽章スケールが大きく大聖堂のような壮麗な演奏です。弦の響きは練り上げられた、しなやかさがあります。トゥッティでは金管もしっかり鳴らしています。

自然なテンポ取りの中にも、晩年のベームらしい重厚さとスケール感があり、内容の濃い名演です。ブルックナー第4番を代表する名盤の一つであることは間違いないですね。

ヨッフム=ドレスデン・シュターツカペレ

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮:ヨッフム(オイゲン)、シュターツカペレ・ドレスデン

オイゲン・ヨッフムは、ヨーロッパではブルックナー指揮者として有名でした。日本では来日公演の交響曲第7番の名演奏が有名です。しかし、日本での評価はそこまで高くはなく、ちょっと作為的なテンポどりや、各所での演奏の癖が目立ちました。ベルリンフィルとの全集も賛否両論という雰囲気ですね。ベルリンフィルと全集を作れる時点でヨーロッパでの評価は高いことは分かります。老成してもヴァントのように急に人気が出るというわけでもなかったです。

ヨッフムとドレスデン・シュターツカペレとの息はピッタリです。ただ、典型的なブルックナー指揮者と違って、かなり自由にテンポを動かし、急激なアッチェランドがあったり、金管もバリバリ鳴らしていて少し驚かされますね。味わい深いですし、手慣れている感じで何をやってもブルックナーの枠の外に出ることはないです。いまヨッフムのコンサートがあったら、喜び勇んで出かけるでしょう。それにしても評価が難しい演奏です。

ヤノフスキ=スイス・ロマンド管弦楽団

  • 名盤

おすすめ度:

指揮:ヤノフスキ、スイス・ロマンド管弦楽団

Symphony No. 4
4.5/5.0レビュー数:9個

ネルソンス=ライプツィヒ・ゲヴァントハウス

  • 名盤
  • ライヴ録音

おすすめ度:

指揮:アンドリス・ネルソンス、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

Bruckner/Wagner: Symphony No 4
4.6/5.0レビュー数:19個

テンシュテット、ベルリン・フィル

  • 名盤
  • ライヴ録音

おすすめ度:

指揮:クラウス・テンシュテット、ベルリン・フィルハーモニー

ブルックナー:交響曲第4番
5.0/5.0レビュー数:6個

ノリントン=シュトゥットガルト放送交響楽団

  • 名盤
  • ピリオド奏法

おすすめ度:

指揮:ロジャー・ノリントン、シュトゥットガルト放送交響楽団

ラトル=ベルリン・フィル

  • 名盤

指揮:サイモン・ラトル、ベルリン・フィルハーモニー

Symphony No 4
4.2/5.0レビュー数:16個

第1稿での演奏

シモーネ・ヤング=ハンブルグ・フィルハーモニー

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮:ヤング(シモーネ)、ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団

第1稿での演奏で、興味深いのは女流指揮者シモーネ・ヤングとハンブルグフィルの演奏です。インバルの演奏は、第1稿の少し奇怪なところを強調し過ぎているところがあるので、他に良い演奏はないかな、と思ったのですが、この知的な組み合わせは良いと思います。

それにしても女性のシモーネ・ヤングがブルックナー全集を作っているのは驚きました。しかも原典盤中心の全集です。ブルックナーといえば男性ファンが多いので有名ですからね。

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