ブルックナー 交響曲第4番『ロマンティック』

アントン・ブルックナー (Anton Bruckner, 1824~1896)交響曲第4番 変ホ長調『ロマンティック』は、解説とおすすめの名盤レビュー、スコアの紹介をします。ブルックナーの中でも一番聴きやすい交響曲ですので、ブルックナーを初めて聴く人にはお薦めの交響曲です。

解説

ブルックナー交響曲第4番『ロマンティック』の解説をします。

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愛称の通り「ロマンティック」な交響曲

ブルックナーは交響曲第3番『ワーグナー』でも改訂を繰り返し、やっと初演にこぎ着けました。しかし、交響曲第3番の初演は失敗に終わりました。聴衆や演奏者に受け入れられる交響曲を作曲しなければいけない。ブルックナーの改訂癖と呼ばれるものが交響曲第4番『ロマンティック』ではピークに達します。この交響曲が作曲されて初演されるまでに、実に多くの改訂がなされました。

第1稿1874年に作曲し、その年のうちに書きあげられました。しかし、第1稿はウィーン・フィルによる試演の後、「演奏する価値なし」との烙印を押されてしまいます。そこでブルックナー自身が全面的に改定することを決意し、1878年12月第2稿を作成します。この改訂により、第3楽章は丸ごと入れ替えられました。

聴いてみると分かりますが、第1稿の第3楽章は正直ちょっと野暮ったい音楽です。それが全面書き換えにより、非常にロマンティックな音楽に生まれ変わりました。

1880年には第4楽章を大幅に書き換え、第3稿を作成します。

そして1881年にウィーンで初演、1886年にはニューヨークでも初演されました。

ブルックナーのスタイルを確立

交響曲第4番はブルックナー自身が改訂を繰り返したため、実に6年の歳月を費やしたのです。そのため完成度の高い交響曲となりました。ブルックナーの音楽では、トレモロによるブルックナー開始、全休止で残響を消すブルックナー休止、他、独特の作曲法を使用していますが、ブルックナー交響曲第4番でほぼ出そろいました。

初演時には、ほぼ改訂の必要はないくらいの完成度になっていました。リヒターがリハーサルをしたときに、ブルックナーは非常に感激したとのことです。

初演は失敗ではありませんでしたが、比較的親しみやすい交響曲の割には、大好評とはいかなかったようです。でも、ニューヨーク初演が行われているということは、曲に対する周囲の評価も最初から高かったのだと思います。

入門者向けの親しみやすい交響曲

交響曲第4番はブルックナー本人も聴衆に受け入れられることを望んだ作品だったようです。「ロマンティック」という愛称もブルックナー本人が友人にあてた手紙の中にバッチリ出てきます。”ロマンティック交響曲”という呼び方をしています。第1楽章のホルンは町の庁舎から朝を告げるものだそうです。第2楽章は普段の生活や歌や祈り、第3楽章が「狩り」の様子を描写していることも書いています。実際聴いてみても、多くの人がそういう情景を思い浮かべると思います。絶対音楽がうんぬんとか、難しい内容ではありませんね。

楽曲の構成

ブルックナー交響曲第4番『ロマンティック』は4楽章構成です。

第1楽章:運動的に、しかし速すぎずに

ソナタ形式です。弦のトレモロによる「ブルックナー開始」で始まり、ホルンのソロが「夜明け」を知らせます。このホルンのソロは印象的で、この楽章全体がホルンのソロ中心に構成されています。「ブルックナーリズム」と呼ばれる2+3のリズムが現れます。もともとこれは5連符で書かれましたが、演奏者のことを考え、2つに分けたようです。

第2楽章:アンダンテ・クワジ・アレグレット

この楽章は、ブルックナー自身が「深い森」と解説したことがあり、短調のチェロの主題で、深い所におりていく雰囲気です。後年の交響曲はここにアダージョが入り、人間の内面に深く入っていくような素晴らしい音楽になります。

第3楽章:スケルツォ

交響曲第4番は改訂により素晴らしいスケルツォとなりました。森の中をこだまするホルンの音は印象的です。ブルックナー自身の説明によれば「狩り」を表現しているようです。

第4楽章:運動的に、しかし速すぎずに

ソナタ形式のダイナミックなフィナーレとなっています。「ブルックナーユニゾン」も第4番が初めてではありませんが、典型的で完成度が高いですね。

おすすめの名盤レビュー

ブルックナー交響曲第4番『ロマンティック』のおすすめ盤をレビューしていきます。

中古CDってどの位、劣化するの?

人気曲のため、実に多くのCDがあります。とても全部を聴くのは難しいです。それに名演奏が少ない曲でもあるのです。難しさのない曲なのですが、普段あまりブルックナーを演奏しない指揮者も交響曲第4番『ロマンティック』は録音していることがあります。いわゆるブルックナー指揮者だと却って難しい演奏になってしまうこともある気がします。

ブロムシュテット=シュターツカペレ・ドレスデン

自然美に溢れたまさに「ロマンティック」な名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 自然美
  • 抒情的
  • スリリング

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・ブロムシュテット
演奏シュターツカペレ・ドレスデン

1981年9月7-11日,ドレスデン,ルカ教会 (ステレオ/アナログ/セッション)

ロマンティックで聴きやすい演奏の代表といえばブロムシュテット=シュターツカペレ・ドレスデンです。初めてブルックナーを聴く人にもとてもお薦めです。自然美に満ち溢れ、音質も非常によく、ブルックナーの第4番の良い所が詰まった名演です。ブロムシュテットとドレスデン・シュターツカペレは非常に相性が良く、響きの良さが素晴らしいです。

第1楽章ホルンは深いドイツの森に響き渡るような名演で、すぐにブルックナーの世界に引き込まれます。弦のブルックナー開始(トレモロ)も味のある響きです。ドレスデン・シュターツカペレはドイツのオケですが、重厚さよりも響きの美しさがあり、まさにブルックナーにうってつけです。後半、曲が深まりを見せてくると滋味あふれた音色で曲の良さをじっくり味合わせてくれます。第2楽章はじっくりと味わい深く演奏していきます。響きが爽やかなので常に自然を感じながら聴いていくことが出来ます。弦の音色も素晴らしいです。

第3楽章のリズミカルさ、爽快さは特に飛びぬけていて、ホルンが素晴らしく、他の演奏には無いドイツの森を思わせる雰囲気と、爽快感に溢れています。テンポは少し速めです。ブロムシュテットらしい自然体の演奏で、テンポを結構動かしていますが、絶妙なテンポ設定です。中間部は木管中心に素朴な演奏です。余計なルバートがなく、自然体で楽しめます。第4楽章最近の演奏からすると速めでシャープさがある表現です。盛り上がってくると結構金管が咆哮してきます。ブロムシュテットはイン・テンポで自然な音楽づくりなので、ロマンティックさや爽快さを失うことはありません。ラストはスケールの大きな演奏で締めくくります。

このディスクは以前から評価の高い定番ですが、これから先もしばらくはスタンダードの座にいるであろう名盤です。

ヴァント=ベルリン・フィル

円熟したヴァントの良さが良く出た名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 自然美
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ギュンター・ヴァント
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1998年1月30,31日,2月1日,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ギュンター・ヴァントは、ブルックナー指揮者として有名になるずっと前からブルックナーに取り組んでいた硬派な指揮者です。晩年の人気の高まりはそういった活動の賜物でしょうね。ヴァントは手兵北ドイツ放送交響楽団との共演が多かったですが、ここではベルリン・フィルを指揮しています。ベルリン・フィルはヴァントの厳しい要求に余裕でついてきて、スケールが大きくクオリティの高い演奏をしています。

第1楽章ホルンソロは圧倒的な上手さで惹きつけられます。ヴァントは最晩年は枯れてきますが、この演奏では自然美と共にクオリティの高い緻密なアンサンブルで、ヴァントの良さが出ています。ヴァントの肩の力の抜けた自然な指揮のもと、ベルリン・フィルの機能性もバランスよく発揮されていて、鮮度の高いサウンドを紡ぎだしています。第2楽章は遅めのテンポで朗々と歌っています。透明感の高い響きで、自然美と共に円熟した深みを感じさせます。カラヤン盤とは違った自然で広大なスケールの大きさも感じさせます。所々で味わい深い個所が出てきて、充実感があります。

第3楽章はとてもリズミカルで、ベルリンフィルの金管の上手さが良く出ていて爽やかです。第4楽章ヴァントの円熟を感じさせる遅いテンポのスケールの大きな名演です。ベルリン・フィルの金管のレヴェルの高さで、美しい響きのまま、壮大な響きを紡ぎだしています。味わい深さも随所で感じられます。

録音も良いですし、自然美があり演奏のクオリティも高く、この曲の良さを深く表現しており、とてもお薦め度の高い名盤です。

ハイティンク=ウィーン・フィル

実直で真摯な演奏だが、奥の深さも感じられる名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 奥深さ
  • 自然美

おすすめ度:

指揮ベルナルド・ハイティンク
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ウィーン、ムジークフェラインザール (ステレオ/デジタル/セッション)

ハイティンクは早くからブルックナーに取り組んでおり、コンセルトヘボウ管とも全集を作っています。このウィーン・フィルとの録音は全集にはなりませんでしたが、評価の高い録音です。どちらが良いか、と考えると難しい所で、コンセルトヘボウ管にも素晴らしい響きがあり、こちらも捨てがたいです。両方とも出回っていますが、今回はウィーン・フィルとの録音をレビューしてみます。

第1楽章はウィーン・フィルのウィンナ・ホルンから始まります。まさにドイツの森の雰囲気です。もっともハイティンクはそれを狙っている訳では無く、自然にそのような響きが引き出されています。なので、純粋にシンフォニックな部分も多いですね。テンポは少し遅めで、盛り上がってくるとスケールが大きくダイナミックです。同じく早い時期に全集を作ったヨッフムに比べると、とても自然なテンポ取りです。第2楽章ウィーン・フィルの音色を良く生かしてフワッとした響きとなっています。自然に深い森の中にいるような気分になってきます。また、ハイティンクも感情表現はしていて、奥の深さが感じられます。後半になるとさらに深みが増し、深い森の中に分け入り、味わい深さが出てきます。ウィーン・フィルの弦の響きも素晴らしいですが、ハイティンクの表現もとても深みが感じられます。

第3楽章まさにロマンティックで、速めのテンポでホルンの響きが素晴らしいです。ウィーン・フィルの音色が最大限に生かされています。クレッシェンドは少しアッチェランドがかかりスリリングです。ハイティンクはとても自然なテンポ設定をしています。この辺りはブロムシュテットと双璧です。第4楽章はスケールが大きくダイナミックに盛り上がります。特にロマンティックさを表現しようとはしていなくて、実直に曲と向かい合った結果の自然な表現だと思います。オケに対しても力強く引っ張っていくのではなく、とても懐の深い指揮をしていて、その中でオケの自主的な響きが生まれているように感じられます。最後はかなりスケール大きくダイナミックなサウンドで締めくくります。

ハイティンクはスコアを良く読み込んだ上で、的確に演奏していく指揮者です。ただ客観的な演奏ではなく、しっかり感情表現もしています。ブルックナーに対しては全集も作っていますから、全交響曲を知ったうえで演奏している訳です。オケに対しても無理はせずにその特色を生かそうとしています。とても実直で真摯な名盤と言えます。

ベーム=ウィーン・フィル

自然でスケールが大きく格調の高い名演
  • 名盤
  • 定番
  • 自然美
  • 格調
  • 重厚
  • スケール感

おすすめ度:

指揮カール・ベーム
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1973年11月,ウィーン,ゾフィエンザール (ステレオ/アナログ/セッション)

カール・ベームは、晩年のブラームスやモーツァルトなど、当時の名演ではあります。ブルックナーも自然なテンポどりです。自然を表現した以上のものを聴くことが出来る、ベームの良さが出た名盤です。ウィーン・フィルのサウンドは、まさに「ロマンティック」交響曲に相応しいです。特にウィーン・フィルのホルンは、ウィンナ・ホルンという、素朴な音色のホルンであるため、狩のホルンにはうってつけです。録音の音質は良く、音場の広さが感じられます。

第1楽章はホルン協奏曲のような楽章ですが、ウィンナ・ホルンの響きを堪能できます。このホルンの上手さは素晴らしく、他のディスクと差を付けています。ベームは柔らかい音色ですが、表面的にはそう見えて堅固な構造を作り上げていると感じます。弱音の部分での弦の音色が神々しく、感情を込めていますね。第2楽章格調が高く深みを感じる、味わい深い名演です。遅めのテンポで丁寧に演奏していきます。丁寧でふくよかですが、一筋の峻厳さが内在しています。後半になるにつれ、さらに奥深い音楽になっていきます。

第3楽章少し遅めのテンポで丁寧さがあります。ウィーン・フィルの柔らかい響きを楽しめます。トゥッティではスケール大きく響かせています。短調の所は感情を入れて遅めのテンポで丁寧に表現しています。中間部は素朴なのですが、丁寧でウィーン・フィルから神々しい響きを引き出して、さすがです。第4楽章スケールが大きくゴシック大聖堂のような壮麗な演奏です。弦の響きは練り上げられた、しなやかさがあります。トゥッティでは金管も重厚かつ壮大に思い切り鳴らしています。一方、弱音部分もきれいにまとめられています。ラストはとても透明感のある弱音から神妙に盛り上がり、ダイナミックなティンパニと金管の咆哮で締めています。

自然なテンポ取りの中にも、晩年のベームらしい重厚さとスケール感があり、内容の濃い名演です。柔らかい響きの中にも強い意志を感じます。ブルックナー第4番を代表する名盤の一つであることは間違いないですね。

カラヤン=ベルリン・フィル (1975年)

ベルリン・フィルの機能を活かした爽快な名盤、一聴の価値あり
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 壮麗
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1975年4月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/アナログ/セッション)

カラヤンとベルリン・フィルの録音です。「ロマンティック」でもシンフォニックで硬派な演奏をしています。カラヤンは実は隠れたブルックナー指揮者で、ブルックナーの交響曲を高く評価し、主要な交響曲は録音していますし、曲に対する理解も深いです。ベルリンフィルのパワーを容赦なく使って、分厚い弦楽器セクション、そして金管楽器のブルックナー・ユニゾンは、他の演奏家にはついてこれない領域の迫力です。ブルックナーの交響曲を「絶対音楽」と見做し、あまり感情面を強調せず、曲自体に語らせています。ブルックナーに関して壮年期のカラヤンを避けている人もいるかも知れませんが、実際聴いてみるとこれはこれで名演です。

第1楽章は冒頭のホルンの上手さも素晴らしいですし、その後出てくる弦も神々しい響きです。そして、金管が入りトゥッティになっていくと、爽快なサウンドを楽しむことが出来ます。ダイナミックですが、重さを感じることはありません。テンポ取りもインテンポでとてもブルックナーに相応しいです。第2楽章は少し速めのテンポで、壮麗さのある演奏です。ベルリン・フィルの透明感のあるサウンドが心地よいです。第3楽章はベルリン・フィルの機能を活かした金管中心のダイナミックな演奏です。第4楽章はベルリン・フィルの重厚でダイナミックな響きが最大限生かされた壮大な演奏です。

ドイツの深い森のイメージとか、狩のホルン、などと想像しながら聴くと、期待を裏切られますが、他の演奏をいろいろ聴いた後でカラヤン盤を聴き直すと、他では聴こえてこなかった音楽が聴こえきて、目から鱗(うろこ)が落ちる思いです。

ヨッフム=シュターツカペレ・ドレスデン

シュターツカペレ・ドレスデンのブルックナー全集より
  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮オイゲン・ヨッフム
演奏シュターツカペレ・ドレスデン

1975年12月1-7日,ドレスデン,ルカ教会 (ステレオ/アナログ/セッション)

オイゲン・ヨッフムは、ヨーロッパでブルックナー指揮者として有名でした。日本では来日公演の交響曲第7番の名演奏が有名です。しかし、譜面通りのスケールの大きな演奏とは異なるスタイルで、ベルリンフィルとの全集は賛否両論という雰囲気ですね。ベルリンフィルと全集を作れる時点でヨーロッパでの評価は高いことは分かります。

ヨッフムとドレスデン・シュターツカペレとの息はピッタリです。ただ、典型的なブルックナー指揮者と違って、かなり自由にテンポを動かし、急激なアッチェランドがあったり、金管もバリバリ鳴らしていて少し驚かされますね。味わい深いですし、手慣れている感じで何をやってもブルックナーの枠の外に出ることはないです。

何度もブルックナー全集を作っていますし、ブルックナーを知り尽くした指揮者です。朝比奈隆やヴァントとは違うアプローチでとても楽しく聴くことが出来ます。もし、いまヨッフムのコンサートがあったら、喜び勇んで出かけるでしょう。

ヨッフム=コンセルトヘボウ管

  • 名盤
  • 定番
  • 熱演
  • スリリング

超おすすめ:

指揮オイゲン・ヨッフム
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

1975年1月16日,アムステルダム (ステレオ/アナログ/ライヴ)

ネルソンス=ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管

いぶし銀のオケの音色、ネルソンスの丁寧な
  • 名盤
  • いぶし銀
  • 高音質
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮アンドリス・ネルソンス
演奏ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

2017年5月,ライプツィヒ (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ネルソンスとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の録音です。2017年と新しい録音で音質は非常に良いです。ネルソンスはショスタコーヴィチ全集など、録音が多いですが、ブルックナーも録音してしまいました。レパートリーがとても広い指揮者ですね。

第1楽章ゲヴァントハウスのホルンがいぶし銀の音色を響かせます。ネルソンスはアンサンブルの細部までしっかりまとめきっていてとてもクオリティの高い演奏です。弦セクションは絹のように艶やかな音色と細やかなアンサンブルで、肌触りの良さを感じます。テンポ取りは奇をてらわず、自然なテンポで進めていきます。後半になってくると情感も出てきますが、ワーグナー風の演奏とも感じます。トゥッティでダイナミックな演奏になっても透明感が感じられ、金管の咆哮が会場に響き渡っているのが想像できます。第2楽章ゲヴァントハウスのいぶし銀の響きと透明感がさらに感じられ、弦が入ってくると味わい深いです。盛り上げ方など、ワーグナーを聴いているのか?と思わせる所もあります。ワーグナーの影響はブルックナーでは大事な要素だと思います。後半はさらに味わい深い演奏を繰り広げていきます。

第3楽章速いテンポでスリリングです。ゲヴァントハウス管はウィーン・フィルなどとは一味違ったコクのある音色で、爽やかかつスリリングです。ホルンの音色もコクがあるし、ホルンばかり強調していないことも好感が持てます。弱音の所で特に響きに深みを感じます。中間部はテンポを微妙に動かしてレントラー風の表現です。第4楽章はゲヴァントハウス管のいぶし銀のトゥッティの音色が印象的です。テンポは総じて速めで金管が爽快に咆哮しています。中ほどの弦のメロディは緩急をかなりつけて表現しており、ここでもワーグナー的な要素が強いですね。ラストは良く練られた盛り上げ方で、ダイナミックにスケール大きく盛り上がります。

ネルソンスは所謂(いわゆる)ブルックナー指揮者ではないと思いましたが、クレッシェンドでのスリリングさも良いし、とても細部まで丁寧にまとめられていて良い演奏です。どこかワーグナーのような立体的な音響で、心地よく聴くことが出来る名盤です。ブル3の初稿も録音して欲しいですね。

ヤノフスキ=スイス・ロマンド管弦楽団

  • 名盤

おすすめ度:

指揮マレク・ヤノフスキ
演奏スイス・ロマンド管弦楽団

2012年10月,スイス,ヴィクトリア・ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

ヤノフスキとスイス・ロマンド管弦楽団の録音です。スイス・ロマンド管弦楽団はかつてアンセルメの指揮のもと、フランス音楽やロシア音楽を得意としたオケでした。それから随分たったとはいえ、ブルックナーは初めて聴きました。自然体の演奏をするオケなので、合うかもしれません。録音は2012年と新しく音質も非常に良いです。

第1楽章は若干遅めのテンポで始まり、ホルンのソロはスイスの山々を思わせる素朴で透明感のある響きです。木管や弦の響きも透明感が高く、特に弱音になると透明度の高さが凄いです。自然を表現したこの曲には相応しいオケかも知れませんね。ヤノフスキはツボを心得ていてブルックナーらしい自然体の指揮を繰り広げています。それにしてもこの爽やかさはドイツのオケでは聴けないレヴェルで、ブル4の新しい魅力を発見した感じがします。第2楽章は穏やかでスイス・ロマンド管の木管の音色と弦の透明感のある響きが楽しめます。ヤノフスキは感情を入れすぎず、清涼感のある音楽を作っています。

第3楽章は少し速めのテンポです。まさにアルプスの雰囲気で、ホルンがとても上手く、ドイツ系のホルンより繊細な感じがします。とても爽やかな音楽になっています。弦の少し短調になる部分も憂鬱さを表現していて、フランスのオケがただブル4を演奏しただけ、ではないですね。ヤノフスキは突然テンポを遅くしたり、アッチェランドさせたりと、細かい表情付けをしています。第4楽章は弱音から始まりますが、情熱的に盛り上がり、テンポも速めです。弦も管もしっかり鳴らしていて、シューリヒトとフランスの楽団の名演を思い出します。金管はスケール大きくダイナミックです。弦の主題の所など感情的でロマンティックな部分があります。

テンシュテット=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮ラウス・テンシュテット
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1981年12月13,15,16日,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/アナログ/ライヴ)

ラトル=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮サイモン・ラトル
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2006年10月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/セッション)

ラトルとベルリン・フィルの録音です。2006年で音質は優れています。ラトルは比較的速めのテンポでスリリングな演奏をしていますが、実はブルックナーもなかなか良い演奏をするのです。

第1楽章は上手いホルン・ソロで始まります。その後、トゥッティになるとベルリン・フィルだけにダイナミックです。ラトルは手兵なので、ベルリン・フィルが鳴りすぎることなく、上手くコントロールしています。

第1稿での演奏

ノリントン=シュトゥットガルト放送交響楽団

  • 名盤
  • スリリング
  • ダイナミック
  • ピリオド奏法
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ロジャー・ノリントン
演奏シュトゥットガルト放送交響楽団

ノリントンとシュトゥットガルト放送交響楽団の録音です。ブルックナーのピリオド演奏の成功例で、ノリントンの指揮が自然体なので、安心して音楽に浸れます。ただ、第1稿なので、折角ピリオド奏法が上手く行っているのだから、第3番以外はハース版でやってほしかった気もします。

第1楽章とても速いテンポで始まります。これまで聴いたことが無い速さなので、先行きが不安になる位です。ノンヴィブラートのトゥッティはにぎやかな感じですね。なるほど、このテンポで演奏すると対位法的な所がとてもよく聴こえてきます。演奏スタイルがこれまでにないものなので、初稿を聴いている違和感がほぼ無いと思います。意外な和声進行もスリリングで、爽快に聴くことが出来ます。ラストは爆発的な大音響で締めます。第2楽章は普通のテンポです。ノンヴィブラートの透明感が心地よいです。普通のテンポと思いきや、結構アッチェランドして速いテンポンになっていきます。後半は今度はテンポを落とし、軽快ながらも感情表現が入っていて、初稿ならではのワイルドさを前面に出していて意外に楽しく聴けます。

第3楽章は、、あのカッコいいスケルツォではなく、少しどんくさい曲ですね。インバルのCDで聴いた時には「なにこれ?」でしたが、ノリントンは速めのテンポで馬が疾走するような爽やかな音楽に仕立てています。別の曲ですけど、なるほど、ワーグナー風の盛り上がりで楽しく聴けます。第4楽章も冒頭から全然違う音楽ですが、ブルックナー・ユニゾンはなかなかダイナミックで爽快です。所々に1880年稿の片鱗が聴こえますが、正直全然違う曲です。リズムも難しいです。ワーグナー的なモチーフも沢山出てきます。インバルの演奏も素晴らしいと思いましたが、ノリントンは初校を音楽的に充実した曲として聴かせてくれます。これが1880年稿に整理されたのですから、6年の間にブルックナー自身の急速な成長もあったのでしょうね。

しかし、第4番の初稿は一番謎なイメージだったのですが、さすがノリントンで説得力ある演奏です。ノリントンはきっとシューリヒト並みのブルックナー指揮者になれた人なんじゃないか、と思います。

シモーネ・ヤング=ハンブルグ・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮シモーネ・ヤング
演奏ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団

2007年12月,ハンブルク、ライスハレ (ステレオ/デジタル/ライヴ)

第1稿での演奏で、興味深いのは女流指揮者シモーネ・ヤングとハンブルグフィルの演奏です。インバルの演奏は、第1稿の少し奇怪なところを強調し過ぎているところがあるので、他に良い演奏はないかな、と思ったのですが、この知的な組み合わせは良いと思います。

それにしても女性のシモーネ・ヤングがブルックナー全集を作っているのは驚きました。しかも原典盤中心の全集です。ブルックナーといえば男性ファンが多いので有名ですからね。

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