セルゲイ・ラフマニノフ (Sergei Rachmaninov, 1873~1943) 作曲のピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18は、1900年秋~1901年春の間に作曲されたラフマニノフを代表する作品の一つです。ラフマニノフで一番人気がある作品です。なにしろ、全3楽章の中にいくつもの有名な聴きどころが存在するのです。冒頭のピアノソロ、その後の弦セクションのトゥッティからして相当有名ですね。このページでは、ピアノ協奏曲第2番の解説のあと、お薦めの名盤をレビューしていきます。
人気が高いので、ディスクの数も多いですし、名盤も多いです。リヒテルとアシュケナージが長い間名盤として君臨しています。アルゲリッチは第2番はリリースせず、第3番しか弾かないみたいです。第2番を弾かない著名ピアニストも結構多いんですよね。グリモーあたりは新世代の名盤になるかも知れません。辻井伸行にもがんばってほしいですね。ロシアの土の香りがするVakhnadzeとトリビシ交響楽団も名盤だと思います。
これは、フィギュアスケートの音楽として、幅広く使用されていることもあると思います。浅田真央選手、伊藤みどり選手、高橋大輔選手、村主章枝選手らが使っています。
また、アニメの「のだめ・カンタービレ」でも使われています。
この手の曲は、有名なメロディが多いだけで、あまり音楽として質が高くないことも多いですが、ラフマニノフピアノ協奏曲第2番はそんなことは全くありません。
お薦めコンサート
解説
ラフマニノフ作曲のピアノ協奏曲第2番の解説をしていきます。
エリートの大スランプ
ラフマニノフは幼少時から才能を現し、学生時代もエリートコースを順調に歩みました。同級生だったスクリャービンを差し置いてラフマニノフは金メダルを授与され、首席で卒業します。卒業後、前奏曲嬰ハ短調で熱狂的な人気を獲得するなど、ほぼ順風満帆なエリートコースを辿っています。
しかし、1895年に満を持して作曲した交響曲第1番が初演で大失敗し、先輩作曲家や評論家から容赦なくこき下ろされます。その後、オペラ歌手シャリアピンと知り合い、知人の紹介でトルストイと面会することが出来たのですが、トルストイとの面会で歌曲を披露すると、トルストイの不興をかってしまいます。
これら一連の出来事から、ラフマニノフは信喪失し、神経衰弱の状態になってしまいます。数年間作曲も出来ないという大スランプに陥ってしまったのです。友人のすすめで精神科医ニコライ・ダーリの催眠療法を受けます。それから半年ほど経ってラフマニノフはやっと創作意欲を回復しました。
初演の大成功
全曲初演は1901年11月9日モスクワにて、ピアノはラフマニノフ、指揮ジロティ、モスクワ・フィルハーモニーが担当。初演は大成功でした。ラフマニノフの出世作となった。この曲は精神科医のニコライ・ダーリに献呈されました。
これに先立ち、まだピアノ協奏曲第2番の作曲が遅々として進まなかったころ、従兄でありピアノの師でもあったジロティ(1863~1945)は、ヨーロッパでラフマニノフの作品を大々的に宣伝していたのです。そのため、早々に国外初演も決まっていたのです。
1902年1月9日にライプツィヒで行われた国外初演はピアノ独奏ジロティ、指揮をニキシュが担当しました。国外初演も大成功に終わります。これでラフマニノフの名声は世界的に広まることになりました。
恋愛の曲
このピアノ協奏曲第2番は、恋愛の曲というイメージがあります。ロマンティックな曲想もそうですが、有名なイギリス映画『逢びき』(1945年)に使用されたから、ということです。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番がクラシック・ファンだけでなく、一般に広く知られるようになったのはラフマニノフ没後、1945年のデヴィッド・リーン監督のイギリス映画『逢びき』(DVDは現在廃盤)によってです。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の切なく甘美な旋律が、中年の淡い不倫の恋を描いたメロドラマのムードをいやが上にも高め、多くの映画好きを魅了しました。
この映画は1946年のカンヌ国際映画祭のグランプリと批評家賞を受賞。日本でも1948年に公開され、人気を呼びました。このときに「ラフマニノフの2番」=「恋愛の曲」というイメージが結びついたようです。
Towerレコード(ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番)
ピアノ協奏曲第2番の構成
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、メロディがロマンティックで素晴らしく、ロシア・ロマン派を代表するピアノ協奏曲の一つと言われています。それだけでなく曲自体のクオリティも高いです。
またピアノソロが非常に難しいことでも知られています。
演奏時間は約35分です。
第1楽章(Moderato)
ソナタ形式です。ピアノソロから始まり、これはロシア正教の鐘の音を模したものです。次にロシアの大地のような厚みのある弦セクションのトゥッティが第1主題を奏でます。ここまでで既に有名ですが、ロシアの情景に一気に引きずり込まれてしまいますね。
第1楽章第2主題はまずピアノに現れますが、ロシア正教会の小さな鐘を模しています。情熱的でダイナミックな第1主題、神経質で官能的な第2主題が対比されつつ、進んでいきます。
第2楽章(Adagio sostenuto)
複合三部形式で、情緒的な緩徐楽章です。ピアノはアルペッジョを奏で、主題は木管楽器で受け継がれ、ヴァイオリンに至ります。このアルペジオは1891年作曲の六手のピアノのための「ロマンス」の序奏から来ています。ラフマニノフが書いた音楽の中でも特に美しい音楽と言われています。後半にはピアノソロのカデンツァがあります。
第3楽章(Allegro scherzando)
ロンド形式です。華麗なピアノの主題と、異国情緒あふれる副主題が交互に現れ、熱狂的に盛り上がります。
遅れてやってきたロマン主義者
既に20世紀に入っていますが、ラフマニノフは現代音楽の技法に興味を持たず、最後までロマン派の流儀で作曲を続けます。「遅れてやってきたロマン主義者」とも言われますね。
この曲もところどころでチャイコフスキーを感じさせる瞬間があると思います。冒頭も弦のトゥッティなどチャイコフスキーのピアノ協奏曲に似ています。第2楽章の冒頭の弦もチャイコの交響曲第5番から採ったものかも知れませんしね。
しかし作曲技術の質の高さは、非常に高いものがあったといえます。ラフマニノフの作品はロマンティックさと質の高さと併せ持つが故に、現在でも交響曲、ピアノ協奏曲など、非常に人気の高いレパートリーとなっています。
独奏ピアノ
フルート×2、オーボエ×2、クラリネット(B♭管およびA管)×2、ファゴット×2
ホルン×4、トランペット×2、テナートロンボーン×2、バストロンボーン、チューバ
ティンパニ、バスドラム、シンバル
弦楽5部
おすすめの名盤レビュー
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のお薦めの名盤をレビューしていきます。人気曲なので沢山のCDがリリースされています。定番とされてきたCDに加えて、最近リリースされたものを加えてレビューしてみたいと思います。
ブニアティシヴィリ,パーヴォ・ヤルヴィ=チェコ・フィル
- 名盤
- 定番
- 情熱的
- 民族的
- 高音質
超おすすめ:
ピアノカティア・ブニアティシヴィリ
指揮パーヴォ・ヤルヴィ
演奏チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
2016年11月11,12日,プラハ,ルドルフィヌム (ステレオ/デジタル/セッション)
カティア・ブニアティシヴィリによるピアノとP.ヤルヴィ、チェコフィルの伴奏です。ブニアティシヴィリはジョージア(グルジア)出身です。それにエストニア出身のP.ヤルヴィとチェコフィルを組み合わせているという、異色の組み合わせです。特にP.ヤルヴィとチェコフィルの組み合わせは意外と少ないです。ですが、弦楽セクションの響きに優れたチェコフィルがラフマニノフのピアノ協奏曲第2番で良い演奏をするだろうことは予想できますね。実際聴いてみると、ピアノのブニアティシヴィリはロシア的で民族的な響きを出していてエキゾチックですらあります。アルゲリッチに近い感性を感じます。
ピアノのテクニックは非常に高く、独特のタッチで第1楽章から力強く華麗な超絶技巧を余すことなく聴かせてくれます。テンポ取りはスタンダードですが、スピーディに盛り上がる所もあります。この曲のイメージ通りです。結構テンポの変化は大きいですが、ラフマニノフの雰囲気を情熱的によく出しています。第2楽章は妖艶で艶やかです。ペダルの使い方が上手く、色彩感に溢れ透明感のある響きで、深みも感じられます。中盤は軽やかに凄い超絶技巧を聴かせてくれます。第3楽章はとても華麗な演奏です。速めのテンポで細かいパッセージを滑らかに弾いていきます。特に後半は圧巻です。P,ヤルヴィは速いテンポでも細部までコントロールし、ピアノと各楽器のアンサンブルも精度が高いです。
第1楽章や第2楽章の冒頭のチェコ・フィルはビロードのような弦の響きでコクがあります。また、弦の繊細な響きも随所に聴かれ、チェロフィルの良さが良く出ています。P.ヤルヴィの持ち前の知的なクールさと、チェコフィルの響きが上手くサポートしていて、華麗になりすぎることもなく、品格を保っています。木管の味わい深いソロも聴き物です。
華麗なテクニックを期待する人も、じっくり味わいたい人にも、お薦めできる名盤です。また、この曲を始めて聴く人にもお薦めです。
ピアノ:リヒテル、ヴィスロツキ=ワルシャワ国立フィル
このディスクはチャイコフスキーのピアノ協奏曲共々、昔から定番とされている名盤です。「伝説のラフマニノフ」とすら言われています。何しろ1959年の録音ですから、きれいに録音されていることに驚きます。リヒテルは、演奏の出来・不出来が大きめに出るピアニストのようですが、この演奏はリヒテルの中でも一番を争う程、出来が良いです。
テンポは第1楽章、第2楽章は特に遅めで、現在でもスタンダードといえる沈美的な演奏です。リヒテルは浮かすようなタッチでさまよいます。第3楽章はかなりテンポアップして盛り上がります。
ラフマニノフはバックが一般的にはそれほどメジャーではないワルシャワ国立フィルですが、ショパンコンクールなどで有名なオーケストラであり、またペンデレツキやルストワフスキといったポーランドを代表する現代作曲家の音楽をメインのレパートリーとしています。
それらの曲は近代・現代音楽なので決して簡単ではなく、オーケストラのレヴェルも低くありません。人気のあるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のバックはお手の物です。ただ、古い演奏なので最近のスタイリッシュな演奏に比べると、少し演奏スタイルが古いかも知れません。
ピアノ:カッチェン,ショルティ=ロンドン・フィル
ジュリアス・カッチェンのピアノ独奏、ショルティとロンドン・フィルの演奏です。録音は少し古めですが、音質はしっかりしており、カッチェンの激しいまでの表現とショルティ=ロンドン・フィルの熱い伴奏を楽しむことが出来ます。
第1楽章はカッチェンが速いテンポで盛り上げ、そこにショルティとロンドン・フィルの燃え上がるような弦に圧倒されます。カッチェンとショルティはまさに相応しい組み合わせです。緩急の大きな演奏で、盛り上がる所は白熱し、ロマンティックな所は、思い切り情緒豊かに歌っています。
第2楽章は落ち着いたロマンティックさのある繊細な表現です。スケールが大きくなってくると、カッチェンの力強いタッチでピアノが響き渡ります。伴奏は透明感があり、表現の幅が大きいですね。後半、超絶技巧はダイナミックさを伴って凄い迫力です。
第3楽章はオケの激しい演奏で始まり、速いテンポでまくし立てるように進んでいきます。ピアノの超絶技巧は本当に凄いです。ロマンティックな個所では思い切りテンポを落とし、味わい深く聴かせてくれます。その後、激しく盛り上がり、元の速いテンポで圧倒的な演奏を聴かせてくれます。ラストはスケール大きく燃え上がるオケと強靭なピアノで締めくくります。
最初から最後まで圧倒される壮絶な演奏ですね。ラフ2好きには是非一度聴いてほしい名盤です。
ピアノ:反田恭平、バッティストーニ=RAI国立交響楽団
反田恭平とバティストーニという、若いコンビとRAI交響楽団というイタリアの伝統あるオケの組み合わせです。最近の録音で音質は折り紙付きです。
第1楽章はロマンティックで自由なテンポ取りです。RAI交響楽団はイタリアのオケですが、最初の主題はじっくりと歌っていて、味わいがあります。テンポは遅めでロマンティックですが、スケールも大きいです。
第2楽章は、非常にゆったりしたテンポで、ロマンティックに歌いこんでいます。バティストーニの伴奏も息があっていて、ゆっくりしたテンポの中で、ここまでピアノと伴奏のアンサンブルが上手く絡んでいるのは、相当相性が良いのだと思います。
第3楽章は冒頭速めのテンポで華麗な演奏です。対位法でピアノとオケが絡む個所は高音質で分離が良いので、きれいにアンサンブルを聴くことが出来ます。中間の主題はとても雄大に演奏されており、味わいがあります。ラストはアッチェランドしていき、オケの主題は雄大なスケールの大きな演奏です。
全体的にとてもロマンティックですが、ロシア的というよりは熱い情熱を感じる演奏です。情熱的で遅めのテンポで、ロマンティックさを前面に押し出していますが、同時に丁寧でテクスチャの細部まで良く詰められた演奏です。RAI交響楽団は、今でもかなりのレベルを保っていますね。特に弦の響きは味わあって素晴らしいです。
アシュケナージ,ハイティンク=コンセルトヘボウ管
アシュケナージはラフマニノフが得意なピアニストとして知られています。ピアノ協奏曲第2番は十八番ですし、4つのピアノ協奏曲を全て録音しています。ロシア的な表現やしなやかで、しっとりとしたタッチがラフマニノフに合っています。
第2楽章はロシアの寒さも感じさせるようなロマンティックな演奏です。第3楽章はダイナミックなところと味わい深い個所で大きな落差をつけています。しかし、どんな表現をしてもどこか静謐なところがあり、野蛮になることはありません。
伴奏もハイティンク=ロイヤルコンセルトヘボウ管と非常にレヴェルの高い組み合わせで品格があります。弦のトゥッティに限らず、要所で上手くピアノにからんで、玄人好みの伴奏をつけています。
ピアノ:グリモー、アシュケナージ=フィルハーモニア管弦楽団
エレーヌ・グリモーは女流ピアニストです。ラフマニノフが得意なピアニストであるアシュケナージが伴奏の指揮を務めているのです。それだけ、才能のあるピアニストということでしょうね。
テンポは速めでどちらかというとスタイリッシュで、なるほどフランス人らしいかも知れません。リヒテルやアシュケナージと比べると、モダンで色彩的な演奏をするピアニストですね。
テンポは速くロシア的な重厚さはあまり無いのですが、それでいて物足りない所はまったくありません。とても新鮮さを感じる演奏で、アシュケナージの伴奏がロマンティックすぎるんじゃないかと思えるくらいです。弦のトゥッティの個所などは、オケに合わせてテンポを落としていると思います。
どこかで、テミルカーノフとの共演の話題がありましたが、テミルカーノフのほうが相性良さそうですね。
シェリー,トムソン=ロイヤル・スコティッシュ管
ラフマニノフ弾きとして知られるハワード・シェリーのピアノによる全曲録音です。伴奏のトムソン、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団も色彩感のある音色で良い伴奏を付けています。録音は残響が適切で高音質です。
第1楽章は力強くダイナミックに芯のある音色で演奏しています。時にロマンティックで色彩的になりますが、紳士的でラフマニノフの自作自演を思い起こさせます。オケの伴奏はレヴェルが高く、色彩的であると共に、ホルンなど管楽器のソロのレヴェルが高いです。弦のサウンドも色彩感と透明感があります。
第2楽章はシェリーの超絶技巧と紳士的な中にも様々な表現を楽しむことが出来ます。オケとのバランスも非常に良いです。第3楽章はオケがダイナミックに始まります。速めのテンポでリズミカルであり、余裕のある超絶技巧を楽しめます。ピアノの音色の透明感が常にあり、伴奏の弦も透明感があります。
ロマンティックで民族的な演奏が多く、シェリーのピアノもロマンティックで色彩的ですが、過剰にロマンティックに浸ることは無く、ラフマニノフの協奏曲が本来持っている魅力をストレートに引き出しています。
ピアノ:辻井信行、佐渡裕=ベルリンドイツ交響楽団
日本人のピアニスト辻井伸行は、このページの上のほうでも紹介しているイギリスのPromsの動画に登場するくらい、ヨーロッパで人気があります。このディスクでは佐渡裕とベルリンドイツ交響楽団という豪華な伴奏でラフ2を演奏しています。
第1楽章はオケの厚みのある弦の響きが印象的です。佐渡裕は思い切りスケール大きくロシアの大地を感じさせるような演奏です。辻井伸行のピアノはダイナミックでスケール大きく聴かせてくれます。オケとの相性もばっちりで細かいアンサンブルもしっかり合わせて、響きが昇華している所がいくつもあります。第2楽章の冒頭のオケは落ち着いた中にもワーグナーのような雰囲気があります。ピアノはロマンティックすぎず、品格を保った上で情緒のある演奏を繰り広げます。後半のピアノが難しいパッセージを弾く箇所では、正確で確実なタッチに驚かされます。第3楽章はピアノもオケも速いテンポでダイナミックな演奏です。ただ、アッチェランドしていくことはなく、しっかりした土台の上にスリリングな表現で弾かれていきます。途中、穏やかな所はピアノは繊細ですがスケール感があり、広々としたロシアの大地を感じさせます。ラストはダイナミックに曲を締めます。
ピアノ:Vakhnadze、カヒッゼ=トリビシ交響楽団
ガイーヌ全曲版で爆演をリリースしている指揮者ガヒッゼとトリビシ交響楽団の組み合わせです。トリビシはグルジア(ジョージア)の首都で、以下の場所です。ハチャトゥリアンの生まれ故郷ですね。結構、この近辺出身の指揮者も多いですよ。
ピアニストは、、読めませんでした。George Vakhnadzeという方です。ロシア語はアルファベットでも読めないですね。でも、聴いた感じ、しっかりしたタッチで味のある演奏をしています。
昔、買ったCDよりも、Amazon Unlimited HDのほうが断然音質が良いようなので、この名盤も認められてリマスタリングなどされたのだと思います。いや実は違う演奏なのかなぁ?
ちょっとレビューに辿り着くのに時間がかかりましたが、とにかく民族的な演奏で、ピアノは力強く情熱を秘めた感じです。特にオーケストラはダイナミックで、トリビシみたいな田舎のオケがこんな凄い演奏をするのかと感心します。第2楽章はピアノとオケは対等に対話していますが、やはり弦楽器は民族性が出やすいですね。第3楽章ではソ連時代によくあったワザとらしいスフォルツァンドが気になりますが、これは仕方ないので大目に見てください。
ラフマニノフは、もっと北のほう出身なので、地元ではないのですが、土の香りがする演奏はラフマニノフにぴったりで、なかなかの名盤です。
ピアノ:ラフマニノフ(自作自演)、ストコフスキー=フィラデルフィア管
ラフマニノフは、基本的に20世紀の人なので自作自演が残されています。ラフマニノフは本当にピアノが上手く、表現も洗練されていて今聴いても十分楽しめます。アメリカでレヴェルの高い演奏で有名なフィラデルフィア管弦楽団と共演したものが、ディスクとなって残っています。
もちろん戦前の古い録音ですので、音質が良いとは言えませんが、自作自演の中では非常にクオリティが高いので、一度は聴いておきたい演奏です。ラフマニノフ自身の演奏は、情緒に流れることなく、高い品格を持ってしっかり弾いています。弾き方やテンポなど、いろいろな発見があるはずです。
ピアノもオケも当時の演奏スタイルは今とは少し違っていたのです。自作自演のピアノソロは自由にテンポを変え、今の標準的な演奏より速めのテンポで演奏しています。オケはポルタメントを掛けます。さらに昔はヴィブラートよりもポルタメントのほうが多用されていたと言われています。
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楽譜・スコア
ラフマニノフ作曲のピアノ協奏曲第2番の楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュアスコア
No.273 ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 (Kleine Partitur)
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