ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven,1770-1827)作曲の格安でコストパフォーマンスがよい交響曲全集 (Complete Symphonies)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
ベートーヴェンの交響曲全集、略して「ベト全」です。新譜はクオリティが高く、面白い演奏が多いですが、やはり5000円~1万円を超えてきます。ここで紹介するのは、少し古めのCDだったり、演奏家の知名度が低かったりして、安価になったものです。3000円~4000円で十分クオリティの高いベト全が買えます。1000円台もありますが、聴きにくそうな演奏なので、避けたほうが無難な気がします。コスパの高そうなベト全が現れたら、追記してきます。
ベト全、どう選ぶ?
ベートーヴェンの交響曲全集については色々な演奏があります。番号によって名盤が違いますし、全てが名演の全集というのもありません。第1番~第4番は古典派、第5番~第9番はロマン派に近く、両方で名演奏、というのは難しいです。
ベートーヴェン交響曲全集は、大きく分けて2種類(または3種類)あると考えています。モダンオケによる全集、古楽器オケによる全集、モダン楽器のピリオド演奏による全集です。古楽器オケの全集が欲しい場合は、それを探す必要があります。ピリオド演奏は新しい演奏には少しずつ浸透しているため、特に書いていなくてもピリオド演奏的な全集もあります。
それでは、ベートーヴェン作曲交響曲全集のおすすめの名盤をレビューしていきましょう。
スター指揮者編
有名な指揮者で、安くリリースしているベト全をピックアップします!
ヤノフスキ=ケルン放送交響楽団 (4676円~)
ヤノフスキの新しい録音が、なんと格安で出てきました!ほとんどの曲が高音質でハイレヴェルな演奏で楽しめるという、格安ベト全の中でも出色の出来です。ヤノフスキの知的な演奏で、ベートーヴェンを楽しめます。オケはドイツの名門ケルン放送交響楽団です。
第5番『運命』は速いテンポでスリリングな名盤で、P.ヤルヴィやラトルなどに匹敵する名演です。知的なだけではなく情熱的でもあり、とても充実感があります。第2楽章もすっきりしたアプローチで、かつ味わいもあります。第4楽章は速いテンポでダイナミックです。
第1番、第2番は速めのテンポで軽快ですが、細かい部分まで表現がしっかりしていて、さすがヤノフスキです。第1番は全体的に良く詰められていて充実感があります。第2番はリズムのノリが良く、とても楽しめます。
第3番『英雄』は、第1楽章は速いテンポでシャープな演奏です。ガーディナー盤のようなスリリングさがあります。第2楽章は遅めのテンポでじっくり聴かせてくれます。第4楽章はすっきりしていてセンス良く盛り上がります。アンサンブルのクオリティも高いです。
第4番は名盤です。第1楽章の序奏から緻密さもあり、アレグロはスリリングです。第3楽章の複雑なリズムも速いテンポでクオリティの高い演奏を繰り広げています。第4楽章は凄いスピードで白熱しています。木管も素晴らしいです。
第7番の第1楽章は軽快でリズミカルです。リズムの神化と言われる交響曲を存分に楽しめます。第2楽章は少し速めのテンポですが、感情表現も豊かでじっくり浸れます。第4楽章は速いテンポで捲し立てるようなスリリングな演奏です。
第9番『合唱』は速めのテンポの演奏で、ヘレヴェッヘ=シャンゼリゼ管弦楽団の名盤を思い起こさせます。第1楽章も充実感のある演奏です。第3楽章も速めですっきりしていますが、同時に味わいもあり物足りなさはありません。第4楽章はクオリティの高さがあり、オケのアンサンブルも良いですし、独唱、合唱のレヴェルも高いです。情熱的な盛り上がりもあり、聴いた後の充実感も素晴らしいです。
1万円以上するような全集にも匹敵するレヴェルの新譜がこの価格というのは驚きで、初めてベト全を買う人から玄人まで万人にお薦めできるディスクです。
カラヤン=ベルリン・フィル(3738円~)
カラヤンの1970年代のベト全です。安い理由はもっと新しい1980年代録音の全集があるからです。しかし、カラヤンが一番カラヤンらしいのは1970年代です。ベルリン・フィルももっともレヴェルが高かった時代です。ダイナミックでスタンダードな演奏であり、このサイトでもカラヤンの演奏をお薦めするときには、1970年代の場合が多いです。他より若干高いものの、そんな凄いベト全がこんなにお安く入手できるのは驚きです。
ロマンティックで艶やかさがある演奏で、カラヤンの理想とするベートーヴェン演奏に最も近づいた時代と言えます。最盛期のベルリン・フィルのアンサンブルのクオリティの高さや力強さは半端ではありません。これが格安なんですから、コスパの高さでは群を抜いています。機能的にはピークであるこの全集が一番スタンダードで、カラヤンのディスクの中でも一番聴いておくべき演奏である、とも言えます。
第9番『合唱』は名盤であり、単独でも非常に人気のあるディスクです。第4番の演奏は非常にクオリティが高く、一二を争う名盤です。
バレンボイム=シュターツカペレ・ベルリン(1676円)
さて、今もっとも忙しい指揮者の一人であるバレンボイムのそれほど古くないベト全が格安でリリースされてしまいました。なんと1676円です!
バレンボイムのベートーヴェンはあまり聴いたことが無いのですが、最近のバレンボイムはワーグナーを得意とするオペラ指揮者でスケールの大きな演奏が得意です。昔からスケールが大きくて、シカゴ交響楽団と頻繁に録音していたころの幻想交響曲はとてもスケールが大きい演奏でした。
またバレンボイムは、昔からフルトヴェングラーの信奉者でした。この全集も大分テンポが遅いようです。オーケストラもシュターツカペレ・ベルリンは、スウィトナーが鍛えたオケであり、元々ベートーヴェンやモーツァルトが得意です。今はワーグナーなども得意かも知れませんね。
ベートーヴェン好きには、ワーグナーのような壮大な音楽を得意とするバレンボイムのファンが少ないのかも知れません。とはいえ、バレンボイムはワーグナーが得意とはいえ、ベートーヴェンでもクオリティの高い演奏ができる実力のある指揮者です。
ベト全:王道編:昔からの定番の全集
今回はいくつかに分けてみたいと思います。次は「王道編」です。
ワルター=コロンビア交響楽団 (2338円~)
ブルーノ・ワルターとコロンビア交響楽団による全集です。1950年代後半のステレオ録音で、現在でも通用する名演奏がいくつも入っています。ブルーノ・ワルターは、マーラーの弟子で20世紀を代表する名指揮者の一人です。コロンビア交響楽団は主に録音のためにアメリカで結成されたオケでレヴェルは高いです。
このワルターの晩年の録音は聴きやすい演奏であると同時に、内容がしっかりしています。一番有名なのは交響曲第6番『田園』で、同曲で一番の名盤の一つに数えられます。第1楽章の有名な主題が始まった瞬間に、田園の世界に連れていかれる名盤です。その意味で、今でもワルターに敵うCDはありません。
第3番『英雄』もスケールが大きく、悠々とした演奏で人気があります。第5番『運命』はダイナミックで第1楽章は速めなテンポでスリリングであり、第4楽章はとてもスケールが大きく聴きごたえがあります。第9番『合唱』も名盤として知られています。充実した第1楽章、堂々とした第4楽章など、とても聴きごたえがあります。
第1番は速めのテンポで小気味良く、土台のしっかりした演奏です。第2番は軽快でリズミカルでスリリングであり、必ずしもテンポが遅めな訳ではありません。第7番はスケールの大きな演奏で、第1楽章のしっかりした演奏、第2楽章のしなやかな表現など、曲の良さを十分に味あわせてくれます。第4楽章は速いテンポで白熱しています。
どの番号も安定して優れた演奏であり、それがこの価格で揃ってしまうのは凄いことです。
スタインバーグ=ピッツバーグ交響楽団(2806円)
ウィリアム・スタインバーグとピッツバーグ交響楽団によるベト全です。幻の全集と言われていて、今聴いても新鮮さを失わないクオリティの高い名盤です。ピッツバーグ交響楽団の演奏もアンサンブルのクオリティが高く、ヨーロッパのオケに全く引けを取りません。
第7番はダイナミックかつスリリングで、テンポ取りも王道です。第1楽章はアマオケで演奏する人にも良い参考になる位、実にしっかりした演奏です。第2楽章は遅めのテンポでロマンティックに盛り上がります。第4楽章はダイナミックかつリズミカルで充実感のある演奏です。
第3番『英雄』も名盤です。の第1楽章は速めのテンポでシャープでスリリングで、熱く燃え上がります。第2楽章は遅いテンポでじっくり聴かせてくれます。第4楽章はダイナミックかつシャープで、聴きごたえがあります。第6番『田園』も秀演で、活力あふれる演奏ですが、田園らしい雰囲気を持っています。第4楽章の嵐の迫力は素晴らしいです。
第9番『合唱』は名盤です。第1楽章はしっかりした演奏で、非常に充実感があります。第3楽章は遅めのテンポで味わい深いです。第4楽章はアンサンブルのクオリティが高く、情熱的にスケール大きく盛り上がる、感動的な名演です。合唱のレヴェルの高さも印象的です。
幻の全集というに相応しい聴きごたえのあるベト全です。
ムーティ=フィラデルフィア管弦楽団 (1599円)
リッカルド・ムーティは若手として登場したころから、マッシヴ(筋肉質)でダイナミックな指揮をしていました。現在では、オペラ界の重鎮です。演奏はフィラデルフィア管弦楽団ですが、色彩的なサウンドで近現代音楽を得意としていた同楽団にムーティはヨーロッパ的な響きを付け足し、同時に筋肉質なリズム感を持たせることに成功しています。このベト全は分売したCDも人気があり、ムーティの妥協の無い指揮とフィラデルフィア管弦楽団のアンサンブルのクオリティで、格安にするには勿体ない名盤です。
特に第3番『英雄』は名盤です。第1楽章からゆったりしたテンポの力強い名演で、味わいもあり、とても聴きごたえがあります。コスパを抜きにしても『英雄』でトップを争う名盤と思います。第2楽章も悠々としていて味わいがあります。第4楽章は堂々としていてスケールが大きく熱気があります。
第5番『運命』はダイナミックで、定番と言うに相応しいしっかりしたスケールの大きな名演です。第7番もスケールが大きく、リズムは筋肉質でダイナミックです。第2楽章は悠々と艶やかに歌い込みます。
第9番『合唱』は正道を行くスタンダードなアプローチとスケールの大きさ、力強さでまさに定番といえる名盤です。オケのアンサンブル精度の高さ、独唱、合唱の上手さなど、さすがアメリカの演奏家です。フィラデルフィア管の響きはアメリカを感じさせず、ヨーロッパのオケと同様の歴史を感じる響きです。
オケがヨーロッパのフィルハーモニア管弦楽団であれば、また違った評価になったと思いますが、アメリカのフィラデルフィア管弦楽団とのベト全も筋肉質でリズムのしっかりした聴きごたえのある名盤です。
セル=クリーヴランド管弦楽団 (2515円)
世の中には不当に低く評価されている演奏家がいます。ジョージ・セルもその一人だと思います。その原因はドヴォルザークだと思います。ジョージ・セルはドヴォルザークのスペシャリストと言われていましたが、実際チェコやヨーロッパの演奏家と比較すると、少しクールな演奏が多かったのです。
ジョージ・セルはスコアの読み込みが深く、精緻な演奏をする指揮者です。ベートーヴェンでも1960年前後とは思えない解釈で傾聴に値する演奏をしていますし、驚くような名演が混じっていたりもします。鋭いスフォルツァンドや情熱的な表現も多いです。クリーヴランド管弦楽団は非常にクオリティの高いアンサンブルを繰り広げています。
第3番『英雄』はとてもシャープな演奏で、第1楽章の切れ味の良さは他を寄せ付けません。一方、第2楽章は味わいがあります。第4楽章は速めのテンポでセンスの良い演奏です。今、聴いても新鮮さがある名盤です。
第4番は深いスコアの読みが出た正真正銘の名盤です。テンポ取りも適切ですし、とてもスリリングでアンサンブルのクオリティが非常に高いです。第3楽章も正確なアンサンブルです。第2番も名演です。速いテンポでとてもリズミカルでスリリングで、ピリオド奏法を先取りしたかのようです。
第5番『運命』も第1楽章は速めのテンポでシャープでスリリングな名演です。第4楽章はクリーヴランド管弦楽団の機能を活かして非常にダイナミックでクオリティの高い演奏です。第7番もスリリングな演奏で、聴いていてすっきりする位、リズミカルです。第2楽章は速めのテンポで艶やかさがあり、情熱的に盛り上がります。
玄人も納得のクオリティの高い全集で、格安なのは勿体ないですね。格安ベト全の醍醐味を感じる名盤です。
歴史的演奏編
主にモノラル録音で音質が悪いですが、1950年前後に昔の巨匠と言われる指揮者たちがいました。フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ、シューリヒト、トスカニーニなどなど。彼らは主にワーグナー、ブルックナー、マーラーなど後期ロマン派の影響を強く受けていて、スケールの大きな演奏を得意としていました。
しかし、先述したように録音状態が良くないCDが多いため、音質改善の努力はなされていますが、カラヤン以降のようにはいきません。またスタジオ録音が一般的ではなかったため、コンサートのライヴと大分違う演奏になったりしています。
そんなわけで、重宝される程ではないが、売れないほど悪くはない、といった録音が格安で売られています。
フルトヴェングラー=ウィーン・フィル、他(1006円)
フルトヴェングラーの新品のベト全を発見しました!しかも第九はバイロイト音楽祭のものです。他の番号はウィーン・フィルとのセッション録音が中心で8番はロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニーという、知名度は低いですが、上手いオケの演奏です。
セッション録音なので、フルトヴェングラーの場合はライヴ特有の熱気に欠けるかも知れませんが、落ち着いて聴くには良い演奏だと思います。モノラルですがライヴよりも音質が良いです。フルトヴェングラー晩年の円熟した演奏です。『エロイカ』、『バイロイトの第九』などは、他に名演がありますので、それは別途入手するのがいいと思います。
ドイツ風の演奏家
ドイツ・オーストリアのいぶし銀の演奏や、自然を感じるを挙げていきます。
コンヴィチュニー=ライプツィヒ・ゲヴァントハウス(2420円)
今では、コンヴィチュニーという指揮者の名前を知っている人も少ないかも知れません。でもこの人はかなり凄い名指揮者です。昔、ブルックナー5番を買ったときには、「凄い硬派だなぁ」という印象でした。ブルックナーはもう少し余裕があるといいのですが、ベートーヴェンは重厚で引き締まった演奏をしていて、とても良いと思います。
録音は1959年なので、ステレオ初期です。このページの中でも一番古い部類に属しますね。しかも東ヨーロッパです。
でも実際聴いてみると、ノイズなどは多いものの、思ったより聴きやすいです。全部を聴いたわけでは無いですが、硬派なコンヴィチュニーの名盤で全曲聴けるのなら、かなりレヴェルが高く、お買い得です。
クレツキ=チェコ・フィル(5565円)
アンチェル時代のチェコフィルは黄金期と言われています。東ヨーロッパだったため、録音はスプラフォンですが、チェコフィルの技術的なレヴェルが高く、ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチなどの近現代作品も演奏していました。個人的には今のチェコフィルも弦セクションに味があって好きなのですが、当時は技術的にも一流であり、東ヨーロッパでは随一でした。
そんなチェコフィルですが、重要なベートーヴェン全集はアンチェルではなくクレツキが指揮したのです。そして、歴代のベト全の中でも聴きごたえのあるクオリティの高いベートーヴェン全集になっています。クレツキのスコアの読み込みの深さが伝わってきます。ベートーヴェンに対する共感も深いのですが、感情に溺れるようなことはありません。
安価な全集を探している人には、少し高めに感じられるかも知れませんが、それだけの価値がある演奏内容です。
ブロムシュテット=シュターツカペレ・ドレスデン (1776円)
このベト全が安いのは、新しくライプツィヒ・ゲヴァントハウスとのベートーヴェン全集を録音したからです。新しい全集は円熟したブロムシュテットの総決算と言えるものであり、録音の音質も素晴らしいです。古いほうの全集は、ブロムシュテットの壮年期で、東ドイツでの録音ではありますが、美しい自然さのあるサウンドです。ベートーヴェンよりもブルックナーの4番と7番が有名かも知れません。
なので、自然で素朴なベト全を聴いてみたい人には、お薦めしたい全集です。上記のブルックナーほどの音質は出ていない曲もありますが、ここまでナチュラルな演奏は滅多にありません。
スウィトナー=シュターツカペレ・ベルリン(3961円)
スウィトナーは、オーストリアの音楽が体に染みついたような指揮者で、ベートーヴェンでもオーストリア的な軽妙さと自然さを伴っています。こんな名指揮者がNHK交響楽団に頻繁に来ていたなんて、驚きです。シュターツカペレ・ベルリンは実はとても長い歴史のある劇場付属のオケです。スウィトナーに鍛えられて、モーツァルトやベートーヴェンのような古典派の音楽でも名演を残しています。
東ドイツで、いぶし銀の響きも楽しめます。演奏内容は素晴らしく、自然かつ素朴で長い歴史を持ったオーケストラの響きを味わえます。
ブロムシュテット盤と似ているのでどちらがいいか?ですが、難しい選択ですね。録音の良いほうをお薦めしたいのですが、たぶんスウィトナー盤のほうが聴きやすい音質かなと思いますが、難しいところです。
古楽器編
古楽器オケのベト全をレビューしていきます。
ガーディナー=オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク(3239円)
とうとう古楽器オケ最高のベートーヴェン全集であるガーディナー盤が3000円台で買えるようになってしまいました!ガーディナーはベートーヴェンを古楽器オケで、しかも譜面に書いてある速いテンポのまま演奏しました。その後、多くの古楽器演奏やピリオド演奏がリリースされましたが、ここまで完成度の高い全集は結局リリースされていません。
そのため、古楽器オケの名盤を聴きたければ、何のデメリットもありません。迷わずこの全集を選んでください。
第3番『英雄』など、ベートーヴェンが記譜したメトロノームテンポで、凄い速さの演奏になっており、モダンオケで演奏しても難しいと思いますが、古楽器オケで演奏してしまうのは本当に凄いです。
古楽器オケでベートーヴェン全集を録音したパイオニアとして、とても気合いが入っています。一つ一つの交響曲は練りに練っており、演奏レヴェルも半端ではありません。
第5番『運命』もとても聴きごたえがあります。第9番『合唱』も古楽器とは思えない厚みのある響きで、合唱のクオリティも高い堂々たる名演です。第1番、第2番、第4番など、古楽器オケならではの古典的アプローチでリズミカルでスリリングな演奏を繰り広げています。
新しくピリオド奏法や古楽器オケの録音がリリースされるたびに、今でもガーディナー盤を基準にしています。もちろん単独で聴いてもとても面白く、密度の高い演奏が多いです。
ピリオド奏法編
ピリオド奏法を使った格安のベト全をみていきます。
アーノンクール=ヨーロッパ室内管弦楽団(2607円)
アーノンクール=ヨーロッパ室内管弦楽団のベト全と言えば、リリースされたころは、刺激的な全集でした。古楽器のガーディナー盤と同じく、新時代のベートーヴェン演奏が沢山詰まっている感じだったのです。ピリオド奏法は、モダン楽器なのでヴィブラートを外すとクールになってしまいます。その辺りをメッサデヴォーチェ他、色々な表現を使って補いつつ、ベートーヴェンの音楽を作り上げていくのです。
でも、今、聴き直してみると、実験的な所も多くて、効果的な表現もありますが、奇抜な表現も多いです。いずれも考え抜かれたクオリティの高い表現です。他では聴けない表現が沢山あり、新鮮でユニークなベト全です。
アーノンクールのベト全は工夫に満ちていて、楽しめるものです。もっと典型的なピリオド奏法が良いなら、パーヴォ・ヤルヴィ盤が一番で、ノリントン盤がまた色々な表現を試していて面白いです。
アントニーニ=バーゼル室内管(3901円)
アントニーニのベートーヴェンは2016年に完結したばかりの全集であり、評判も良かったはずです。筆者はまだ2曲程度しか聴いていませんが、面白い演奏ですし、クオリティも音質の高いです。これからじっくり聴いていこうと考えていた演奏です。
オーケストラはバーゼル室内管弦楽団で、こちらもホグウッドに鍛えられてピリオド演奏が得意なオケです。
正直、安くなった理由が分かりません。お買い得、ということで、安いうちに入手しておくべきCDだと思います。
その他
いろいろな理由で格安になります。無名の指揮者が演奏している、何人かの指揮者の演奏を混ぜて全集にした、などです。
このベト全はギリギリ1000円台という破格の安値です。もっともバレンボイム盤はもっと安いですけど。それと指揮者が分かりません。ロイヤル・フィルはもちろん知っていますし、初代指揮者がビーチャムなのも知っています。
クラシック音楽は、指揮者と録音年代が大きく内容に関わってきます。録音年代により大きく演奏スタイルが異なるので、せめて録音年代を記載してほしいところです。また、録音年代により音質も大きく変わります。
さまよっていた所、ロイヤル・フィルのベト全の海外盤を発見しました。番号によって指揮者が異なります。知らない指揮者ばかりでなんとも言えませんが、録音年代は新しく、1993年以降なので音質はそれなりに良いと思います。
もっとも輸入盤と国内版が同じか、はっきりとは言えないので、海外盤のほうがいいと思います。
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楽譜
ベートーヴェン作曲の交響曲のスコアが全て入ったものはありませんが、全交響曲ミニチュア・スコアが出ています。
また、ドーヴァーの大型スコアが見やすいです。最近売り切れが多いですが、比較的安価に大型スコアを揃えられるのでお勧めです。
ただし、ベートーヴェンはスコアにしっかり指示を書き込んだ最初の作曲家です。あまりきれいな譜面ではないようなので、写し間違いが発生したことが良く指摘されます。
また歴史の中で新しい楽器向けに書き換えられたり、ロマン派の時期にはレガートやポルタメントなど、その時期に流行した演奏スタイルが反映されて、蓄積してきています。
そこで近年はベーレンライター版など、校訂して出来るだけオリジナルに近い譜面が出版され、アマチュアにまで普及しています。さらに新ベーレンライター版なども出版されています。
スラーやスタッカートなどのアーティキュレーションの指示、テンポの指示など、ブルックナーなどに比べれば些細な違いですが、その辺りを重視するならば、きちんと版の名前が書いてある楽譜を入手する必要があります。
ただ、アマゾンではサイトでは不十分な場合もありますので、ヤマハの銀座店、アカデミア・ミュージック、カマクラ・ムジカなど本格的なお店で相談されたほうが安心です。
長くなりましたが、このページではアマゾンで入手可能なドーヴァーを挙げておきます。また、その下の検索ボタンを使うと、ベーレンライター版ならば、大抵簡単に入手できると思います。