アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト (オーストリア, 1756~1791)が作曲したセレナーデである『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』(Eine kleine Nachtmusik)K.525解説と名盤のレビューをしていきます。

とても有名なので曲はおそらく誰でも知っていると思います。演奏する側にも人気があり、楽譜的には簡単なので、音楽教室のアンサンブルなどでも取り上げられます。これをプログラムに入れれば必ず喜ばれますしね。

有名な曲ですが、有名すぎるためか、実はCDはあまり多くないです。でも名盤は十分揃っています。コープマンやベームの演奏が定番になりすぎて、他の演奏者はあまり簡単にディスクを発売しないのでしょうかね。でも最近の古楽ブームもあって名盤がまた増えてきています。

また実はモーツァルト最後の作品群の一つで、メロディは誰でも馴染みやすく有名でも、内容は円熟した名曲です。

解説

『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』について解説します。

モーツァルトで一番有名?

もし曲の名前を知らない人でも、聴けばほぼ誰でも知っていると思います。モーツァルトはは有名なメロディが多いですが、その中でも特に有名だと思います。

え、知らない?じゃあ、下のYouTubeを再生してみてください

トン・コープマン=アムステルダム・バロック管弦楽団

どうでしたか?知らなかったら、ある意味、希少価値がありますよ。

弦楽器のみの作品なので、アマチュアオーケストラではあまり取り上げられませんが、弦楽アンサンブルコンサートではよく取り上げられます。指揮者なしでもすぐ通せるくらいです。モーツァルトらしく軽快に演奏するのは難しいですが、ただ演奏する分には、アマチュアからプロまで様々なレヴェルの人が演奏できます。

実は充実した名曲

この有名でシンプルな作品は、実はモーツァルト最後のセレナードです。全部で13曲あるセレナードの中には、有名な曲もありますし、難しい曲もありますが、一番親しみやすい『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』は13番目で最後に書かれた作品なのです。ですから、作曲家モーツァルトがかなり充実した時期に書かれたレヴェルの高い作品なのです。

そして、モーツァルトの遺作の一つでもあります。モーツァルトが亡くなった後に楽譜が見つかったのです。セレナードは機会音楽といって、何かのパーティや祭典で演奏するために作曲する場合が多いのですが、依頼側の都合で急にキャンセルされたりすることもあります。それにしても、こんな有名になる曲を何年も眠らせておいたなんて、勿体ないですね。

本来は5楽章構成なのですが、第2楽章が結局見つからず、現在は4楽章の曲として演奏されています。

モダン奏法とバロック奏法

モーツァルトの時代は、ちょうどバロックから古典派への移行期です。楽器も例えば弦楽器の弓の形が、バロック弓から現在の逆ぞりの弓に変わっている最中でした。鍵盤楽器もまだチェンバロが現役で、ピアノは出始めたところでした。モーツァルトのピアノ協奏曲は初期のピアノを想定して作曲されています。

そうなると、古楽器で演奏すべきか、モダン楽器で演奏しても良いか迷う所です。古楽器が広まったのはここ20年程度のことですから、モダン楽器での演奏が多いですが、テンポ取りやヴィブラートなどは当時のスタイルで演奏していることもあります。これをピリオド奏法といいます。

大体、指揮者としてブリュッヘンアーノンクールガーディナーが登場した1970年代の後半ごろからバロック楽器のオーケストラが登場しはじめました。その後、彼らがモダンオーケストラに招かれて指揮をするときにヴィブラートを外したので(他にも色々変わりましたが)、それらをピリオド奏法 (作曲された時期の奏法)と呼ぶようになりました。今ではモーツァルトやハイドンを演奏するときは、ヴィブラートを控えめにするのが標準的になっています。

例えば、上にあるコープマンバロック奏法のスペシャリストです。下に挙げる演奏は、バロック奏法が広まる前のものです。

カール・ベーム=ウィーンフィル

カール・ベームはモーツァルトを得意としていましたが、特に晩年は遅めのテンポで丁寧に演奏しています。昔の指揮者でもシューリヒトカルロス・クライバーは、バロック奏法が出てくる前から速いテンポで颯爽(さっそう)と演奏しています。センスのある指揮者は、○○奏法などと考えなくてもそういう演奏が出来てしまうものなんですね。

よくモーツァルトの演奏は難しいと言われます。現代の強力な楽器でモーツァルトを演奏しようとすれば、どうしても音が重くなってしまいます。しかし、古楽器は弦のテンションが低いので、割と自然にモーツァルトらしい演奏ができます。まあ、いずれにせよ知的で難しい曲が多いですけど。

古楽器かモダン楽器か、難しいですが、モーツァルトは古楽器のほうが有利な点が多いです。もちろん、聴くほうは好みの問題なので、好きなディスクを聴けばよいと思いますけど。

おすすめの名盤レビュー

『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』名盤をレビューしていきたいと思います。

ヴェーグ=カメラータ・ザルツブルク

この曲の魅力や深みを十二分に表現した超名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 芳醇
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮シャンドール・ヴェーグ
演奏ザルツブルク・モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカ

1993年7月25日,ザルツブルク,モーツァルテウム(ライヴ,ステレオ)

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モーツァルトを適切な編成で演奏するために、パウムガルトナーによって創設された歴史あるカメラータ・ザルツブルグによる演奏です。歴史はありますが、ノリントンを指揮者に迎えるなど、その時代の演奏に適応してレヴェルの高い演奏をしています。

指揮者のシャンドール・ヴェーグは、少し速めですが、速すぎず、遅すぎずの絶妙なテンポで演奏しています。特に『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』は素晴らしく、ヴィブラートは抑え気味にして、センスの良い演奏をしています。それと同時に感情表現がとても上手く、セレナーデでありながら甘美なだけではなく、深みも感じます。ただ有名だから、だけではなく、表現のヴォキャブラリーが豊富なので、とても聴きごたえがあります。

この作品がモーツァルトの円熟期に書かれたことが、よく分かる名盤です。

セレナータ・ノルディカ

実力派セレナータ・ノルディカによる自由でセンスの良い名演
  • 名盤
  • 定番
  • ピリオド奏法

超おすすめ:

演奏セレナータ・ノルディカ

2015年1月,アルグツルム教会(エーランド,スウェーデン)

Mozart: Serenades/Divertimenti
在庫情報:残り1点 レビュー数:3個

比較的小編成で、指揮者のいない弦楽アンサンブルです。とても表現力があり実力派のメンバーが揃っていて、楽しめる演奏をしてくれます。

このアイネクライネは、非常に上品でセンスが良く、いままで聴いてきた演奏に比べると親しみやすさを強調したものではないです。他の演奏でたまに感じる聞き手に媚びてくる感じがあまり無いのです。まるでシンフォニーを聴いているようです。本来、こういう風に演奏すべきなんでしょうね。

セレナータ・ノルディカ(ホルベルグ組曲)

テンポは速めですが、自由自在といった感じで、ゆっくりしなやかに聴かせたほうが良い所ではテンポダウンして上手く聴かせてくれます。緩徐楽章では、きざみを鋭くしてみたり、やわらかくしてみたりと豊富なボキャブラリーで感心します。

第3楽章などは繰り返しの2回目で即興演奏(アドリブ)をしていて、そこもなかなかセンスが良いです。このアドリブはバロック~モーツァルトの時代の習慣に沿ったものです。この曲は有名なだけではなく、実は名作なのだ、ということがよく分かります。

コープマン=アムステルダム・バロック管

バロック演奏らしいスピード感あふれるスリリングな名盤

コープマンのCDは、上にもYouTubeを貼りましたが、テンポが速めで、表情豊かです。

実際にモーツァルトの時代に、どんな響きだったかは誰も知ることはできません。古楽器の復元や研究の上に出来てきた奏法です。実際、今よりもテンポが速かったであろうことは、色々な証拠があります。ただ、モーツァルトの時代のオーケストラが、そんなに上手かったとは思えないですが。

コープマンの演奏は新鮮に聴こえますね。デヴェルティメントのほうが分かりやすいですが、モーツァルトが仕込んだリズムの面白さが良く伝わってきます。

コンチェルト・ケルン

  • 名盤
  • 古楽器

おすすめ度:

演奏コンチェルト・ケルン

2005年11月,ケルン,センデザール

Concerto Koln Plays Mozart
レビュー数:5個
残り1点

コンチェルト・ケルンは、ドイツのバロック3大アンサンブルの一つです。非常にレヴェルの高いアンサンブルで、ヴィヴァルディ、バッハなどのバロック時代の音楽で多数名演奏を残しています。

コンチェルト・ケルンは、通常バロックの小さい曲を演奏するため、指揮者は置きません。「アイネクライネナハトムジーク」は指揮者なしの演奏だと思います。

メリハリが良くついていて、テンポはかなり速いですね。気分爽快です。とても上手いアンサンブルなので、普段から指揮者が居ないのが普通なので、アンサンブルが崩れることはありません。2005年録音で音質も良く、少人数なので透明感もあります。

ちなみに以下はヴィヴァルディを演奏しているコンチェルト・ケルンです。こんなアンサンブルです。こちらも名演ですね。

コンチェルト・ケルン

ベーム=ウィーン・フィル

名匠ベームとウィーン・フィルのもっとも充実した名盤

ベームのCDは、上のYouTubeに挙げたとおりです。スタジオ録音になると、丁寧で遅めのテンポになると感じます。

1980年代付近は、おそらくモーツァルトのテンポが一番遅くなった時代ですね。その時期を代表する指揮者がカール・ベームです。ベルリン・フィルと演奏するときは、もう少し早めのテンポになりますが、ウィーン・フィルとの演奏は、大分遅いですね。

でも、この「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はとても充実した演奏です。ベームもウィーンフィルも実力を出し切っている感じです。

小澤征爾=サイトウ・キネン・オーケストラ

素晴らしいテクニックと軽やかなモーツァルト

『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』サイトウキネン・オーケストラのようなフルオーケストラからすると小品に近い位置づけですが、素晴らしく、レヴェルの高い演奏です。こういった小品の演奏が上手いのがサイトウキネン・オーケストラの特徴の一つです。

大きな編成のオーケストラであるにも関わらず、モーツァルトらしい軽快な演奏をしています。この一体感と弦のテクニックの高さは、度肝を抜かれる位、凄いです。サイトウキネン・オーケストラは、斉藤式のメソッドを律儀に守っていると思います。楽譜に忠実な演奏です。モダン楽器でよくこんなに軽やかに弾けるなぁ、と感心する部分が多い名演奏です。

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楽譜

『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』楽譜・スコアを紹介します。

ピアノ譜

ミニチュアスコア

スコア

パート譜

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