ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』Op.67

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven, 1770~1827)作曲の交響曲第5番 ハ短調 作品67『運命』解説おすすめの名盤をレビューして感想を書いていきます。

誰でも知っている「運命の動機」(運命のモチーフ)から始まる交響曲です。このモチーフはベートーヴェンの作品の中でも、古今のクラシック音楽の中でも最もシンプルなモチーフです。

また「障害を乗り越え勝利を勝ち得る」というストーリーは非常に魅力的で、チャイコフスキー、マーラーなど多くの作曲家が大きな影響を受けています。特にチャイコフスキーは『運命』交響曲に魅了され、4番~6番『悲愴』まで独自の「運命の動機」でまとめられています

『運命』の魅力とは何か?

ベートーヴェン作曲の交響曲第5番『運命』は、何故これほど魅力があり後世の評価を勝ち得たのでしょうか?まず、この曲の魅力を書いていきます

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素晴らしいプロポーション

この交響曲第5番『運命』ベートーヴェンの交響曲の中でも最も素晴らしいプロポーションを持っています。特に第1楽章は「これぞソナタ形式」といえるものですね。

まず前奏がありません。いきなり運命のモチーフが演奏され、このキャッチーで短いモチーフだけで瞬時に聴衆を引き付ける魅力を持っています。

提示部や展開部の小節数など数えても、きれいにバランスが取れています。

ロマン派の出発点

4楽章全体の流れを見ると、全楽章が有機的につながっていて明らかに一つのストーリーを構成しています。障害を乗り越えて、最終的に勝利をつかむ、という構成で、喜劇の典型的な作りなのですが、30代前半のベートーヴェンは、このベタな構成を真正面から真剣に取り組んでいます。

第4楽章の勝利は少し冗長な感じがします。ベートーヴェンの交響曲は常に勝利で終わるのですが、それを強調しすぎたのか、あるいは少し無理があるのかも知れませんね。後世の『運命』に影響を受けた作曲家たちは、勝利を勝ち取るというストーリーに魅せられながらも、途中で捨てている場合が多いのです。

いずれにせよ、ベートーヴェンはロマン派の傾向が強く、人の感情を表現したストーリーが目立ちます。純粋な音楽としてみても、こんなにシンプルで王道を突っ切っているのに、いつ聴いても、どんな演奏で聴いても大きな充実感を得られるところは、本当にすごいと思います。

解説:作曲~初演まで

ベートーヴェン交響曲第5番『運命』の作曲から初演、楽曲構成などについて解説します。

『運命』という愛称

『運命』という名前はベートーヴェン自身の命名ではなく、弟子シンドラーがベートーヴェンから聞いた「このように運命は扉をたたく」という言葉から来ています。すなわち、『運命』はこの交響曲第5番の正式名称ではなく、愛称ですね。ベートーヴェン自身は初演の際、「大交響曲」と呼んでいます。

作曲の経緯

交響曲第5番『運命』は、1804年に作曲のためのスケッチが開始されました。しかし、オペラ『フィデリオ』交響曲第4番ヴァイオリン協奏曲、などを優先させたため、交響曲第5番の作曲は後回しにされました。1807年~1808年に、本格的に作曲され、完成しています。

初演と評価

交響曲第5番『運命』初演は、1808年12月22日にベートーヴェン自身の指揮により、ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場にて行われました。ただし、貴族の私的演奏会では既に披露ずみです。

この1808年の初演のコンサートはベートーヴェン自身が主催したものですが、ひどいものでした。その頃は今のようにコンサートの様式は確立していなかったようです。ベートーヴェンは今の2時間程度のコンサートの2倍程度の作品を演奏したのです。その中には交響曲第6番『田園』も入っていました。

演奏会は2部構成で、第1部は初演の交響曲第6番『田園』、アリア、ピアノ協奏曲第4番で構成されていました。第2部は初演の交響曲第5番『運命』、ミサ曲ハ短調より2曲、トリは『合唱幻想曲』でした。

4時間を超える長いコンサートの中で、さらに色々な事件が起こります。出演予定の歌手が当日急遽出演できなくなり、代役の歌手は緊張で歌えなくなってしまい、アリアの演奏は中止しました。また最後の合奏幻想曲では練習不足もあって、途中で止まってしまい、最初から演奏しなおすという有様でした。

作品の評価以前の問題で、コンサート自体が大失敗に終わりました。

しかし、何度か再演されるにつれ、交響曲第5番『運命』の評価は高まっていきました。

おすすめの名盤レビュー

ベートーヴェン交響曲第5番『運命』の名盤をレビューと感想を書いていきます。

超有名曲なのでお薦めの名盤は沢山あります。不思議なのはフルトヴェングラーのような古い演奏であっても、ガーディナーのような古楽器オケのクールな演奏であっても、どちらでも楽しめる、ということです。同じ曲でも違う方向からアプローチしていて、色々な演奏を聴くほど凄さがよく分かる曲です。

カルロス・クライバー=ウィーン・フィル

スリリングなテンポ設定、沸騰するウィーン・フィル!
  • 名盤
  • 定番
  • 熱演
  • スリリング

超おすすめ:

指揮カルロス・クライバー
演奏ウィーン・フィルハーモニー

1974年3月,4月,ウィーン

星の数ほどあるCDの中で、一番の名演奏といえばこのC.クライバー=ウィーンフィルです。これを聴かずに『運命』は語れません。速めのスリリングなテンポで熱気あふれる演奏で、歴史的な演奏スタイルの流れに乗りながらも、意図せずにモダンな演奏になっています。この時期はまだピリオド奏法はなかった訳ですが、今から見るとピリオド奏法の隆盛を予見させるような演奏です。ウィーンフィルを沸騰せんばかりに煽り立てていますが、さすがウィーンフィルはテンポが走ったり、アンサンブルが崩れたりすることは全くありません。

第1楽章冒頭「運命の主題」は物凄い切れ味と迫力で、その凝集された弦の響きカルロス・クライバーならではです。基本的に速めのテンポでウィーン・フィルからも凄いやる気を感じます。まだ古楽器奏法も無かった時代にインテンポの強烈なリズムの演奏をしていた訳でそれも凄いですね。第2楽章は一転してスケールの大きさを感じる演奏です。オーストリア的な柔らかな歌いまわしです。ダイナミックな個所はダイナミックでメリハリが強いです。第3楽章はしなやかに始まり、ホルンの咆哮はダイナミックです。トリオは速いテンポでスリリングです。第4楽章熱気とスケールのある演奏です。テンポは速くなりスリリングですが、古楽器オケほどではありません。そのままコーダに突入し、白熱したエンディングを迎えます

半分は歴史的でスタンダードな解釈、もう半分はカルロス・クライバーのセンスを感じます。カルロス・クライバーは父のエーリッヒ・クライバーからスコアを受け継いでいるので、親子二代のインスピレーションが入っているとも言えます。

カラヤン=ベルリン・フィル (1970年代)

正道をまっすぐ攻めていくカラヤン=ベルリン・フィル!
  • 名盤
  • 定番
  • 洗練
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮カラヤン(ヘルベルト・フォン)
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1976年10月,1977年1月,3月,ベルリン

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1970年代カラヤンの「運命」は永遠のスタンダードです。

カラヤンの演奏は、フルトヴェングラーほどのロマンティシズムはなく、トスカニーニの後継者と言われるように楽譜に忠実ですし、ピリオド奏法のように少しクールすぎたり、奇をてらったところは全くありません。ドイツの伝統的な演奏に根差したうえで、譜面を重視し、モダンさのある演奏に仕上がっています。まさに王道ですね

第1楽章主題提示は、まさにスタンダードです。結構テンポも速めです。ベルリン・フィルの厚みのある響きと共に、モダン楽器の『運命』の中で「王道中の王道」を迷わず突き進んでいきます。C.クライバーが人間的な白熱した感情を表現しているのに対して、カラヤンはスコアを中心に置いています。アンサンブルもソロも非常にクオリティが高いです。第2楽章は意外にすっきり始まります。トゥッティになるととても厚みのある響きです。感情を入れ過ぎず、美しいフォルムを保っています。フォルテのトランペットは思い切り鳴らしていますが、とても流麗で第2楽章全体に艶やかな流れを感じることが出来ます。第3楽章はクールに始まり、ホルンの咆哮は迫力ありますが、インテンポで進んでいきます。第4楽章は開放的なダイナミックさです。当時のスタンダードな解釈で、オケが凄く上手いので、ダイナミックになっても音が濁ることは全くなく、艶やかさと透明感も同時に感じられます

若いころのフィルハーモニア管弦楽団との演奏もありますが、基本的には一緒です。若いころの演奏のほうが力強くてさわやかな気もしますが、ベルリンフィルとの演奏は王道という感じですね。

『運命』を聴きたいときに、イメージしたものがすべて詰まっていて、期待が裏切られることはありません。ただ、新しい発見というのも少ないかも知れませんね。良くも悪くもスタンダードであり、完成度の高さは比類ない名盤だと思います。

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮:カラヤン(ヘルベルト・フォン)、フィルハーモニア管弦楽団

カラヤン=ベルリン・フィル (1962年)

力強く重厚でストレートな典型的な『運命』
  • 名盤
  • 定番
  • 熱演
  • 重厚
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮カラヤン(ヘルベルト・フォン)
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1962年3月,ベルリン (ステレオ/アナログ/セッション)

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カラヤン=ベルリン・フィルには主に3つの録音があり、1960年代、1970年代、1980年代があります。1960年代のものはまだ若いころでフレッシュな演奏が多いです。1970年代は一つの完成形に達していて、ベルリンフィルのレガートが特徴です。1980年代は晩年の円熟期で、それまでのカラヤンとは違う銀色の透明感が感じられる演奏になっています。曲によっても違いますが、それぞれに良さがあります。1960年代の『運命』も世評が高い演奏です。筋肉質で力強く、まだレガートはそれほど気になりません。オーディオ機器の発達により少しノイズが目立ちますが演奏は素晴らしいです。

第1楽章の冒頭は力強く主題を演奏しています。とても男らしいというか、何の躊躇もなく演奏しきっています。思い切りティンパニを打ち込み、鋭いリズムを刻み、一機果敢に演奏しています。ここまでストレートだと聴いていて気持ちいいですね。第2楽章は当時のスタンダードなアプローチだと思います。厚みのある弦楽セクションに朗々と歌わせています。特に低音域から積み重ねるドイツ的なサウンド作りが感じられます。後半の盛り上がりも凄いです。パーヴォ・ヤルヴィ盤とは正反対ですね。

第3楽章も力強く、しっかりとリズムを刻み、第4楽章凄くダイナミックです。これぞ、スタンダードな『運命』という感じで、1970年代の演奏と方向性こそ同じですが、1960年代は躊躇が全くない、という所が良く、聴いた後、気分爽快です。

1970年代とどちらがいいか、と言われると、完成度はやはり1970年代のほうが高いので、どちらとも言い難いですね。

小澤征爾=水戸室内管弦楽団

小澤氏の円熟を感じる透明感のある『運命』
  • 名盤
  • 定番
  • 端正
  • 透明感
  • 芳醇

超おすすめ:

指揮小澤征爾
演奏水戸室内管弦楽団

2016年3月(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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小澤征爾は昔から『運命』を得意としていて、今はいくつもの名盤が出ています。ボストン交響楽団との『運命』は、昔はかなり人気がありました。本命のサイトウキネン・オーケストラとの演奏は、完成度は高いのですが、少しテンポが速すぎた感じです。この水戸室内管弦楽団との演奏は、テンポも丁度良く、若いころのようなスピード感は少なめですが、若い時から小澤氏の変わらぬ演奏スタイルも良く反映されていて、アンサンブルの完成度も高いです。

第1楽章はこれまでの演奏よりは少し遅めですが、正確なリズムで端正に演奏されています。ダイナミックさよりは、端正さと小澤氏の円熟を感じます。室内管弦楽団の小編成ですが、この演奏では透明感も感じられます。何か無為の境地のようなものです。第2楽章はとても良い演奏で、味わい深いです。大げさな表現はなく、丁寧で味があります。聴いていてずっと浸っていたいと思わせる響きです第3楽章は少し遅めのテンポで、スフォルツァンドが弱めなのはワザとかどうか分かりませんが、芳醇な味わいが感じられます。第4楽章への移行部は独特の透明感があります。第4楽章小気味良く演奏されていて、ダイナミックさはあまりありませんが、リズムはしっかりスリリングです。適度なダイナミクスで力みはありません。飽きたり疲れることのない、じっくり聴いて楽しめる演奏です。

小澤征爾は昔から水戸室内管弦楽団とのベートーヴェンを視野に入れていて、室内楽編成でのベートーヴェンも良く演奏してきました。その積み上げもあって、サイトウキネンやそれ以前のベートーヴェンと異なる、完成度の高い水戸室内管弦楽団との録音が出来たのだと思います。

アーノンクール=ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

尖ったユニークな表現は変わらないが円熟と充実感がある名演
  • 名盤
  • 古楽器
  • 個性的
  • 円熟
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮ニコラウス・アーノンクール
演奏ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

2015年5月8-11日,ウィーン,ムジークフェラインザール (ライヴ)

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アーノンクールは満を持して手兵ウィーン・コンツェルトス・ムジクスとのベートーヴェンの録音を始めました。未完で終わってしまったのが残念です。ウィーン・コンツェルトス・ムジクスは古楽器オケです。前回はヨーロッパ室内管弦楽団でピリオド奏法でしたが、古楽器奏法とピリオド奏法はどう違うのか、あるいは違いはないのか、楽しみですね。

第1楽章の冒頭主題で前回のヨーロッパ室内管弦楽団の時と同様に思いっきりデクレッシェンドがかかっています。これは気まぐれでは無かったのですね。演奏スタイル自体は前回と大きくは変わりません。ゲネラル・パウゼを長めにとる所があったり、古楽器なので特にホルンの響きが大きく違います。そのため、クールに聴こえたヨーロッパ室内管弦楽団との演奏と違い、暖かみが感じられます。リズムはシャープですが、第1楽章は前回の段階で既に完成度が高かったのだと思います。

第2楽章は興味深い演奏です。線の細い弦楽器で始まります。これはパーヴォ・ヤルヴィ盤に影響されたのかな、と思います。アーノンクールは大御所ですけれど、パーヴォ・ヤルヴィ盤の第2楽章は革命的でしたからね。でも、さらに色々工夫されていて、P.ヤルヴィ盤を超えていると思います。すっきりしていますが、古楽器オケで音に暖かみもあるため、色々な音楽が詰まっています。第2楽章をじっくり聴くだけでもこのディスクの価値はありますね。第3楽章は凄くアゴーギク(テンポの変化)が大げさにつけられていて、G.P.を驚くほど長めにとっています。第4楽章非常にダイナミックで特にトロンボーンが目立って聴こえます。気を抜いていると面白い事をやってくるので、全く飽きることはありませんし、古楽器特有のアクセントを強調して、しつこくなることはありません。その代わりに充実感を感じる不思議な名盤です。

全体的に、アーノンクールはユニークで尖ったこともやっていますが、円熟して味わいが深まったことが特徴だと思います。尖ったことをやっていても『運命』として十分楽しめますし、このページの中でもかなり上位にくる充実度だと思います。

パーヴォ・ヤルヴィ=ドイツ・カンマーフィル

凄いアンサンブルテクニックと目から鱗の透明なサウンド
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • スリリング
  • ピリオド奏法

超おすすめ:

指揮パーヴォ・ヤルヴィ
演奏ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン

2006年8月27-29日,ベルリン,フンクハウス・ベルリン・ナレーパシュトラッセ,ステレオ(デジタル/セッション)

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モダン楽器のオーケストラによるピリオド奏法の名演です。ドイツ・カンマーフィルは室内オーケストラのような少し小さめの編成です。パーヴォ・ヤルヴィの精緻な指揮で、非常に透明感の高い演奏になっています。アーノンクールもそうですが、古楽器オケはガット弦を使っているため、ヴィブラートをつけなくてもある程度ふくよかな音になります。ですがモダンオケでノンヴィブラート奏法を取り入れると、非常に透明感が高くなるのです。まるでスコアを眺めているようです。

この演奏の「運命」は、衝撃的と言えるくらい目から鱗が落ちるところが多いですね。第1楽章は素晴らしいですし、どこまでも透き通った透明度の高い湖のようです。第2楽章の演奏には非常に驚きました。これまで他の「運命」の第2楽章には無かったものです。P.ヤルヴィの演奏は、非常に透明感があり、弦にほとんど厚みがありません。とてもスッキリしているのです。モダンオケでヴィブラートを掛けて演奏すると、厚ぼったくなってしまい、少し野暮な印象がありました。果たしてあのシンプルな第1楽章を作曲したベートーヴェンが、こんなにロマンティックな第2楽章を書くだろうか?と大きな疑問があったのです。この演奏は長年の疑問をスッキリ解決してくれるものでした。

この演奏を聴いて「運命」という曲の凄さを再認識させられました第1楽章から第4楽章まで、一つの塊として聴くことが出来るようになり、ピリオド演奏の可能性がまた一つ広がったと思います。透明感が高すぎて、少しクールなところもあるのですが、「運命」を聴くうえで外せない演奏であることは疑いないと思います。

  • 名盤
  • 定番
  • ピリオド奏法

おすすめ度:

指揮:ヤルヴィ(パーヴォ)、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン

クルレンツィス=ムジカ・エテルナ

特にリズムを追求し、新たな表現の可能性を開拓した名盤!
  • 名盤
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮テオドール・クルレンツィス
演奏ムジカ・エテルナ

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Beethoven: Symphony..

在庫:残り12点レビュー数:79個

クルレンティス=ムジカ・エテルナは、非常にシャープな演奏を繰り広げています。クルレンティスはギリシャ人で、ムジカ・エテルナはロシアのオケです。特に古楽器オケではなく、クルレンティスも特にピリオド奏法を学んだ人ではないようです。特に専門家について学ばなくてもセンスのある人なら、ピリオド奏法に近いものはできると思いますけれど。

第1楽章は速いテンポで進むので、結構あっという間に終わってしまいます。スフォルツァンドがかなり短くシャープに演奏され、ティンパニが目立ちます。途中、強弱でユニークなところがありますね。ラトルの演奏を継承している所はあると思いますが、さらに強烈な個性が付け加わっています第2楽章は、ノンヴィブラートで綺麗に始まったかと思いきや、結構ティンパニが効いています。ロトに似ていますね。第3楽章の中間部は非常に鋭いリズムで満たされています。弦楽器、特にコントラバスはかなり短いスタッカートでリズムを刻みます。第4楽章は最初のトランペットの裏で弦楽器がかなり短い音を弾いているのが分かります。きざみは粒が立っていますね。普通は「以下同様」という風に弱めていくのですが、そうではなく、ずっと同じように刻み続けています。一部しか書いていませんけど、面白い所が沢山あるので、普段冗長に聴こえた第4楽章があっという間に終わってしまいます

ピリオド奏法などと違って、理屈なしで個性で勝負しているようなので、ある意味何でもできます。この演奏を聴いて分かったのは、リズムに関してはまだまだ出来ることがあるということでしょうね。確かにベートーヴェンの時代のオーケストラ編成なら、木管の低音が聴こえたり、ティンパニが目立っていたかも知れません。

ラトル=ウィーン・フィル (2002年)

伝統あるウィーン・フィルでベートーヴェンのリズム革命
  • 名盤
  • シャープ
  • スリリング
  • 白熱
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮サイモン・ラトル
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

2002年4月29日-5月17日,ウィーン,ムジークフェラインザール(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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ラトルはウィーン・フィルとベートーヴェン交響曲全集を作っています。ウィーンフィルも伝統的な演奏ではなく、ピリオド奏法を取り入れた新しい解釈を取り入れていくことを考えたのです。伝統的な演奏スタイルから一線を画した独自の演奏スタイルで、特にリズム感は素晴らしく、以降の演奏に大きな影響を与えています。

第一楽章裏拍を強調したアクセントをうまく生かして推進力を得ていますね。でもこのアクセントは、もともとあったものなんです。ラトルはこれに新しい意味を持たせたのですが、非常に説得力があって、ベートーヴェン自身もそういう意図で書いたのかなと思わせます。映像も昔ありましたが、気を抜くと元の平板な演奏スタイルに戻ってしまうウィーン・フィルラトルが煽り立てている様子がよく分かります。いずれにせよ、その結果生まれた演奏は、ウィーン・フィルを活かして、ピリオド奏法も取り入れたもので、今聴いてもいい演奏だと思います。

第2楽章はそれまでの演奏に比べるとすっきりしていて革新的です。パーヴォ・ヤルヴィ盤には及びませんけれど。それまでダイナミックに鳴らしていた部分を普通に演奏しています。ある意味、古楽器演奏に似ていますが、奇を衒った解釈ではないです。第3楽章は小気味良くまとまっています。トリオかなり速めのテンポでリズミカルです。第4楽章速めのテンポで小気味良く、かつダイナミックです。この小気味良さはウィーン・フィルの持ち味を上手く引き出していると思います。このコンビの演奏だと大げさにならず、気分よく等身大のベートーヴェンが聴けます。

どうも世評の悪いCDですが、カラヤン以前の昔ながらの『運命』との決別をしたわけで、この後の古楽器演奏、ピリオド奏法の隆盛もあって、ベートーヴェンの演奏方法を大分変えてしまったCDだと思います。賛否両論あって当然ですが、もっと前向きな評価をされても良い名盤だと思います。

ロト=レ・シエクル

衝撃的すぎる運命。でも、ちょっとやりすぎ?

運命の主題から衝撃的な演奏です。ロトの個性に「運命」がとてもマッチしていますね。運命の主題はこの位の衝撃がないと、この交響曲のドラマが始まりません。また音質の良さが最初の一音で分かりますね。ロトは、他の曲ではちょっとテンポが速すぎるとか、衝撃が強すぎるようなことが多かったのですが、「運命」はとても相性が良いです。

第1楽章リズムがシャープで、重厚感があります。カルロス・クライバーもこの演奏には勝てそうにないです。もっともC.クライバーは熱い演奏で、衝撃はもともと少なめですけど。第2楽章は、平和な感じになるのが普通ですが、この演奏はどうも第1楽章の続きと捉えているように思います。平穏な感じではなく、強いアクセントがついていて、すっきりしているP.ヤルヴィとは正反対です。こんな第2楽章は初めて聴きました。後半、スフォルツァンドの無い所は綺麗に響いていますね。

第3楽章は逆に少しソフトに聴こえます。当時の楽器の音かも知れませんが、ホルンのアクセントは弱めです。弦楽器は強めのアクセントが付いていますが、楽器によってはそうはいかないということでしょうね。第4楽章トランペットをしっかり鳴らして、弦楽器は詰めていく感じでテンポを設定しています。この演奏は普段の男性的で長くて、たまに辟易してしまう第4楽章があっという間に終わってしまいます。本来、こういうものなのかも知れません。

最先端の解釈を取り入れた面白い演奏をしてやろう、という感じです。カップリングのゴセックもいい演奏です。

ケーゲル=ドレスデン・フィル

神に捧げるベートーヴェン!

ケーゲル=ドレスデン・フィルハーモニーが来日した際の、サントリーホールでのライヴ録音です。ケーゲル=ドレスデン・フィルはこれまで、東ドイツの音源でしか聴いたことが無かったので、ドライな印象があったのですが、実は残響の豊富なホールで演奏すると、結構スケールの大きい響きなのですね。どのホールで演奏してもドレスデン・フィルの独特の響きも変わりませんね定評のあるこの「運命」は、何か他とは全く違うものがあります。それはもうケーゲル=ドレスデンフィルに染みついてしまった「何か」です。ヒンデミットを演奏しても、同じ「何か」を感じます。

響きはのびのびした所があるのに、重さのある第一楽章は、特に強い衝撃は無いですが、聴いていると重さを感じます。それがケーゲルの「運命」であって、突然やってきて扉を叩くものとは別の「運命」のようです。確かにドラマティックなのですが、ケーゲルの場合、そういう風に演奏せざる負えないもののようです。考えてみれば、ベートーヴェンのように突然耳が聞こえなくなるような衝撃的な「運命」は、実際は滅多になく、普通の人間の運命というのは、ずっと続いてきたものであり、これからもずっと続いていくものです。

第2楽章の中間あたりでは、光が差し込むようなところもあります。宗教的なものもあるのかもしれませんけれど、その部分はとてもさわやかです。そしてまた元に戻っていきます。第3楽章はスケールの大きな演奏です。第4楽章もスケールが大きくテンポも遅めで広々としていて、澄み切った宗教的な雰囲気すら感じてしまいます。やはり、この手の歴史的な演奏スタイルで第4楽章を演奏する場合、単純な勝利だと、不自然なのだと思います。ケーゲルの第4楽章は自力で掴んだ勝利というよりも、天啓を聴いているような感じがします。

深みやある種の重みのある演奏で、ベートーヴェンの想定とは違うかも知れませんけど、東ドイツでハイドン『四季』からヒンデミット、そしてノーノに至るまで、名曲を演奏しつくしたケーゲルとドレスデンフィルの結論と言ってもいいような『運命』です

テンシュテット=ロンドン・フィル (1990年)

重厚な上、凄い熱気を感じる演奏!
  • 名盤
  • 白熱
  • スリリング
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮クラウス・テンシュテット
演奏ロンドン・フィルハーモニー

1990年8月30日,ロイヤル・アルバート・ホール(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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テンシュテットの「運命」は、凄い熱気を感じる熱い演奏です。熱い演奏と言えばカルロス・クライバーもそうですが、クライバーは基本的に軽快なリズム感が基本にあるので、テンシュテットの重厚な熱気とは大分違います。

第1楽章から、凄い熱気と厚みです。マーラー7番ライヴの壮絶な名演とまではいきませんが、基本的にその路線です。第2楽章はすっきり始まったと思いきや、後半の盛り上がる所は思い切り熱気を帯びています第3楽章はシリアスでテンポが速く、ホルンの3連符は熱く響き渡っています。低弦の活躍する中間部も同じですね。第4楽章は遅めのテンポで初めて幅広く響かせています。熱い演奏なうえ、テンポが遅めなので、第4楽章は長大に感じます。あくまでテンシュテットは人間の感情を全開にして表現するタイプなので、ケーゲルのように神の力に頼ることもありません。同じような大音響の第4楽章ですが、内容には大きな違いがあります。

最後は凄いブラボーの嵐です。当日ホールにいたら、もの凄く圧倒されたと思います。ライヴですが音質は当時の普通の水準で、安心して聴けます。

フリッチャイ=ベルリン・フィル

「テンポの遅い運命」の中で代表的な名盤
  • 名盤
  • 歴史的名盤
  • 奥深さ
  • 熱演

おすすめ度:

指揮フェレンツ・フリッチャイ
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1960年10月3-5日,ベルリン,イエス・キリスト教会

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昔から名盤と言われているフリッチャイの「運命」です。まず冒頭の主題は、遅いテンポで始まります。衝撃的というよりは、重い衝撃を感じます。他の曲では速めのテンポを取ることが多いフリッチャイなので、少し意外です。遅いテンポのまま、しっかり演奏されています。オケがベルリンフィルなので、響きが良く、重厚ですがしなやかさがあります。

第1楽章遅いテンポです。ガツンと衝撃的な運命というのは、ベートーヴェン自身のように耳が聴こえなくなってしまったり、といった突然の病気などだと思います。しかし、一般の人にとって「運命」は、必ずしも突然やってくるものではありません。そう考えると、テンポの遅い演奏というのは、そういった「運命」を表現していると感じます。

第2楽章遅く重く、かつ力強い演奏です。平穏に演奏されることが多い楽章ですが、このアンダンテは重い運命を背負ったままのように聴こえます。こういう演奏も意外と合うものですね。テンポは遅いのですが、中身はかなりエネルギーのある演奏で、パッションも感じられます。第3楽章も遅いテンポです。この楽章はじっくり演奏されています。第4楽章テンポが遅めで重心が低い演奏です。この手の演奏は表現が大げさになりすぎる場合も多いですが、フリッチャイはそんなことはなく、シャープさが必要な個所はシャープですし、余計なタメやルバートはありません。しっかりした演奏で、必要十分なダイナミックさです。

全体的に完成度も高く、「テンポの遅い運命」の中でも代表的な名盤と言えると思います。

ガーディナー=オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク

古楽器演奏の定番と言えばガーディナー
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • ダイナミック
  • 古楽器

おすすめ度:

指揮ジョン・エリオット・ガーディナー
演奏オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク

1994年3月,バルセロナ,カタルーニャ音楽堂(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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古楽器でベートーヴェンを聴くなら、まずはガーディナーがお薦めです。ガーディナーの特徴はテンポがとても速いことですが、ベートーヴェンが記譜したテンポに従ったものです。特に「英雄」の第一楽章のスピードは衝撃的でした。他の番号でも同じで、『運命』でも同様に刺激的な演奏になっています。オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティクはフランスの古楽器オーケストラですが、速いテンポに対応してスリリングで超絶技巧のアンサンブルを繰り広げています。古楽器オケですが透明感は少なく、筋肉質な音楽になっています。

第1楽章冒頭も奇をてらった解釈はなく、職人的ともいえる演奏で、いまでも速いテンポで迫力がありスリリングさも楽しめます。古楽器ピリオド奏法だとリリースされて数十年経つと古くなってしまうことが多いですが、ガーディナーは新鮮味を失っていません第2楽章パーヴォ・ヤルヴィを先取りしたかのようなスッキリした演奏で、面白いです。P.ヤルヴィほどクールでは無いので、こちらのほうが好みの人も多いかも知れません。

第3楽章は弦とホルンのバランスも良いです。相変わらずテンポは速いですが、良く演奏できるな、と感心します。第4楽章はインテンポですね。最初を遅めにする指揮者もいますが、ガーディナーは出来るだけインテンポで演奏しています。曲に込められたドラマも忘れていません。

古楽器だけを売りにしている訳ではなく、ガーディナーの演奏は長い期間、飽きられないし、古くもならないですね。音質も良いです。

M.T.トーマス=サンフランシスコ交響楽団

余分な力みがなく、スコアをしっかり音化した演奏
  • 名盤
  • 端正
  • スタイリッシュ
  • 高音質

おすすめ度:

指揮マイケル・ティルソン・トーマス
サンフランシスコ交響楽団

2009年,サンフランシスコ

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2009年のM.T.トーマスとサンフランシスコ交響楽団の『運命』です。いつも知的でしっかりした演奏を聴かせてくれるコンビです。

『運命』冒頭は少し落ち着いたテンポで始まります。特に革新的なものがある訳ではありませんが、スコアをしっかり音にした演奏で、好感が持てます。音質も良いです。最初から最後まで堅実に演奏しています。オーボエのソロなど、堅実なだけではなく味わいもある位です。第2楽章はノンヴィブラートのピリオド演奏ではないので、意外と重厚感があります。スケールの大きさを感じます。余裕のあるテンポで録音も良いので、色々な楽器の音が聴こえきて立体的です。細かいアーティキュレーションもしっかりしています。第3楽章すっきりした響きで始まります。低弦のアンサンブルもしっかりしています。第4楽章はスケールの大きな広々とした演奏です。余裕のあるテンポの中で、力むことなくしっかり演奏しています。ダイナミックに演奏するディスクが多いですが、第4楽章は力みがないほうが聴きやすいです。また全体的になめらかさのある演奏ですね。

特別、新しいことは無いのですが、全く奇を衒った所のない信頼できるしっかりした演奏です。『運命』だから、といって気負うこともありません。こういう演奏は貴重ですね。

ベーム=ウィーンフィル (東京ライヴ)

歴史的名盤

戦前から1950年代付近にかけて、スケールの大きな演奏が主流だった時期がありました。恐らくはワーグナーの影響が非常に大きかったのだと思います。重厚長大という感じですね。今のピリオド奏法とは似ても似つかぬ演奏スタイルです。でも、当時はこんな演奏がスタンダードだったのです。今でも、こういうスタイルの演奏の根強いファンは多いです。非常にロマンティックで感情を前面にだした演奏です。

フルトヴェングラー=ベルリン・フィル (1954年)

ダイナミックでスケールの大きな『運命』
  • 名盤
  • 情熱
  • スリリング
  • 重厚
  • ダイナミック
  • モノラル

おすすめ度:

指揮ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1954年5月23日,ベルリン,ティタニア・パラスト (モノラル/アナログ/セッション)

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フルトヴェングラー=ベルリン・フィル (1943年)

ダイナミックでスケールの大きな『運命』
  • 名盤
  • 情熱
  • スリリング
  • 重厚
  • ダイナミック
  • モノラル

超おすすめ:

指揮ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1943年6月27-30日,ベルリン,旧フィルハーモニー (モノラル/アナログ/セッション)

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そんな中で多くの名演奏が残されていますが、聴いておくべきはフルトヴェングラーですね。当時のオケの技術や録音技術の古さもあって、下手に聴こえるかも知れませんが、じっくり繰り返し聴いていると良さが見えてくると思います。1943年の録音は、リマスタリングなど行われて1943年録音とは思えない良い音質です。特に少しお高めのCDはエルプ社のレーザレコードプレイヤーでリマスタリングしたものです。各ページで確認してみてください。

第1楽章冒頭の運命の主題がダイナミックでスケールが大きく凄みがあります。主題の最後の音の伸ばしはとても長く、昔の演奏の典型ですね。テンポはかなり揺れが大きく、自由自在です。主部は結構スピード感もありスリリングです。ラストはダイナミックに盛り上がって終わります。第2楽章は昔風のテンポの遅い演奏ですが、フルトヴェングラーは基本的に肩の力を抜いています。ただ、引き出される演奏は圧倒的にスケールが大きいです。第3楽章はおどろおどろしく始まります。ホルンは力強く咆哮し、トリオはスリリングです。第4楽章への移行部は非常に遅いテンポで神妙に時間をかけて第4楽章に入ります。第4楽章テンポが速く白熱しています。物凄い盛り上がりの熱気です。テンポが速いので長くは感じません。

フルトヴェングラーの演奏は、独特な解釈でまるでワーグナーのオペラを聴いているように感じる所もあります。でも「運命」はもともとストーリー性の高い曲なので、そういう解釈でも十分成り立つのです。ブルーノ・ワルター、クナッパーツブッシュなど、個性的な名指揮者の多い時代です。色々な演奏に触れてみるのもいいですね。

シューリヒト=パリ音楽院管弦楽団

さわやかで軽妙なベートーヴェン、『運命』はC.クライバー並み!
  • 名盤
  • ダイナミック
  • 自然
  • モノラル

超おすすめ:

指揮カール・シューリヒト
演奏パリ音楽院管弦楽団

1957年9月25,27-29日,パリ,サル・ワグラム (モノラル/アナログ/セッション)

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シューリヒトといえば、モーツァルトからブルックナーまで得意とするドイツの名指揮者です。ただ、活躍したのがフルトヴェングラーと同時期か少し遅い位で、ステレオ録音は限られます。そんな状況であるにも関わらず、シューリヒトの『運命』は非常に録音も良く、パリ音楽院管弦楽団とは思えないほど、引き締まった響きで、オーストリアのオケを聴いているかのようです。

第1楽章はテンポが速く、軽妙さを併せ持つ演奏で、C.クライバーやラトルに似ています。だた奥の深さもあり、似ているのは表面的な部分のみです。第1楽章の爽快感は素晴らしいですし、引き締まった響きをパリ音楽院管から引き出しているのは凄いです。ほぼインテンポで最後まで演奏しきります。ラトルのような裏拍のアクセントはありませんが、当時としても画期的な運命だったのではないでしょうか。第2楽章は決して重くならずに上手く表現していて、P.ヤルヴィの演奏を思い出します。ダイナミックな所は鳴らしていますが、パリ音楽院管の響きに重さや粘りはありません。木管のソロが心地よいです。第4楽章ダイナミックですが、ベタにならず、しつこさがありません。パリ音楽院管がこれだけ凝集したサウンドを出してくるのは滅多にないと思います。

誰がシューリヒトとパリ音楽院の全集を企画したのか分かりませんが、絶妙な組み合わせだですね。この軽妙さにもかかわらず『運命』を聴いた後の充実感はとても高いです。昔の録音でも最近の名演奏に十分互角に比較できる名盤です。

シューリヒト=フランス国立管弦楽団

ドライな音質だが、熱気のあるライヴの運命
  • 名盤
  • ダイナミック
  • 自然
  • モノラル
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮カール・シューリヒト
演奏フランス国立管弦楽団

1956年9月27日,モントルー音楽祭 (モノラル/アナログ/ライヴ)

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シューリヒトとフランス国立管弦楽団の演奏です。CDのほうはリマスタリングされているようですが、アマゾンミュージックで聴けるものは音質がドライです。演奏は引き締まった名演なので、リマスタリングされたCDならば、もっといい音で聴けるかも知れません。

冒頭から速いテンポで熱気があります。ライヴなのでアンサンブルはパリ音楽院管の演奏のほうがいいです。ただ同時期の録音ですが、細かいアゴーギクは大分違います。急に遅くなりしなやかになる所があり、シューリヒトは結構即興的に演奏する指揮者だったのだ、ということが分かります。ライヴだからか、終結部はテンポを落としてダイナミックにしています。第2楽章は自然で軽妙です。ドイツ的な厚みは少ないです。トランペットのヴィブラートが年代を感じさせます。第3楽章は比較的遅めです。他の演奏に比べると速いですけれど。第4楽章は開放的に盛り上がります。ダイナミックですが軽快さのある音楽です。ライヴなので最後はかなり熱気があっていいですね。

正規盤のパリ音楽院との演奏に比べると、少し荒い所もありますが、当時のライヴ録音なので仕方ないですね。ドライな音響は聴いていると慣れてきます。

アーノンクール=ヨーロッパ室内管弦楽団

ベートーヴェンのピリオド奏法の草分け
  • 名盤
  • スリリング
  • ピリオド奏法

おすすめ度:

指揮ニコラウス・アーノンクール
演奏ヨーロッパ室内管弦楽団

1990年 (ステレオ/デジタル/セッション)

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最初にリリースされたときには随分話題になったアーノンクールとヨーロッパ室内管弦楽団ピリオド奏法の演奏です。ヨーロッパ室内管弦楽団はとても素晴らしい演奏をしています。月日が経つのは早いもので、ピリオド奏法は既に当たり前のもので、それほど珍しく無くなりました。特にベートーヴェンは常に最先端の演奏がリリースされますからね。今はパーヴォ・ヤルヴィが優れた演奏を出しています。歴史的な意義はとてもあったのですが、今、この「運命」を聴くと、それほど衝撃はないですし、むしろアーノンクールの個性的なメッサデヴォーチェ的な表現が面白いです。

第1楽章主題のロングトーンがあまりに弱いので、物足りないですね。透明度もP.ヤルヴィが上ですし、リズムを聴きたいならラトルがいい演奏をしています。第2楽章は普通の演奏に聴こえます。もともとピリオド奏法でもなかなかしっくりこなかったのですが、少しすっきりしているものの、まだ少し厚ぼったさがあるんです。それがP.ヤルヴィの演奏で見事に解決されて、目から鱗だったのです。第3楽章モダンさがあって新鮮さがまだ感じられ、良い演奏だと思います。中間部もなかなか良いですね。第4楽章シャープさと厚みが上手くバランスしていて良い演奏です。後半の2つの楽章は今でも楽しく聴けます。

ピリオド奏法は日進月歩なので、新しいほうがいいに決まってますよね。でも、P.ヤルヴィのクールさについて行けない、という方には丁度いいかも知れません。

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ベートーヴェン交響曲第5番の楽譜・スコアを紹介します。

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クレンペラ-=ウィ-ンフィル(Deutsche Grammophon 1968ライヴ(1991))

スヴェトラーノフ