ベートーヴェン 交響曲第2番

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven,1770-1827)作曲の交響曲第2番 ニ長調 Op.36 (Symphony No.2 D-dur Op.36)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

解説

ベートーヴェン交響曲 第2番 ニ長調 Op.36について解説します。

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ベートーヴェンの交響曲第2番は、工夫の多い交響曲第1番の陰に隠れてベートーヴェンの9曲の交響曲の中でもとりわけ目立たない存在になっています。しかし、一度聴いてみれば分かりますが、とてもエネルギッシュで楽しい音楽だと思います。若いベートーヴェンのエネルギーが一気に爆発したかのようです。実際聴いてみてこの曲のファンになる人も多く、実は隠れた人気曲です。

ベートーヴェンは1801年から翌1802年にかけて、交響曲第2番を作曲しました。1802年10月に完成しています。この時期、ベートーヴェンは難聴が進行し、「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いていた時期にあたります。ですが、この交響曲第2番は長調の交響曲ですし、そのような苦悩は反映されていないように聴こえます。

初演は1803年4月5日にアン・デア・ウィーン劇場で行われました。交響曲第2番はリヒノフスキー侯爵に献呈されています。

楽曲構成

古典派的な4楽章構成で作曲されています。

第1楽章:アダージョ・モルト~アレグロ・コン・ブリオ

序奏付きのソナタ形式です。壮大な序奏で始まり、主部に入ると強烈なリズムを刻みます。この強烈なリズムは既にベートーヴェンの第5番『運命』につながるものがあります。

第2楽章:ラルゲット

ソナタ形式の緩徐楽章です。メロディーラインが非常に美しく、ある意味、ベートーヴェンらしからぬ楽章とも言えます。

第3楽章:スケルツォ

古典派交響曲では、通常メヌエットが置かれますが、ベートーヴェンはここにスケルツォを置きました。交響曲第1番ではテンポの速い3拍子の楽章となっていて、実質的にはスケルツォですが、メヌエットと書かれています。そのため、この交響曲第2番はベートーヴェンで初めてスケルツォを使用した交響曲です。

第4楽章:アレグロ・モルト

アレグロ・モルトとあるように、速いテンポの音楽です。ここでも強烈なリズムが特徴で、第4番、第7番を思わせます。生命力あふれる力強い音楽です。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ベートーヴェン作曲交響曲第2番名盤をレビューしていきましょう。

ラトル=ウィーン・フィル

強烈なリズムを活かしたエネルギー溢れる名演
  • 名盤
  • 白熱
  • スリリング
  • 迫力

超おすすめ:

指揮サイモン・ラトル
演奏ウィーン・フィルハーモニー

2002年,ウィーン,ムジークフェラインザール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ラトルとウィーン・フィルの録音です。サイモン・ラトルはリズム感に優れた指揮者で、ベートーヴェンの書いた強烈なまでにリズミカルな音楽を、ピリオド奏法の考え方も取り入れながら、見事に消化して演奏しています。この交響曲第2番はそれほど奇を衒った演奏でもなく、といっても全集を改めて聴き直すと、結構良い演奏が多いですけど、少なくともベト2は正道を行く演奏だと思います。

第1楽章前奏シャープで力強いです。そのままの勢いで主部に入ると強烈なリズムを刻んでいて、確かにそれまでの演奏にはあまり無かったスタイルですが、現在はスタンダードといってもいい位、時代が変化しましたね。クルレンツィスなどもその流れの中にいると思います。特に裏拍にあるアクセントを強く打つことで、音楽の力強い推進力を得ています。『運命』と同様ですが、第2番は特に名演だと思います。

第2楽章レガートは少な目で、もう少し流麗に演奏してもいいかなと思いますが、後半はリズミカルなモチーフが増え、盛り上がっていきます。なかなか味わいのある演奏です。第3楽章もリズムと強弱が強くつけられています。シャープな弦の響きは素晴らしいですが、ウィーンフィルも普段と違う演奏スタイルですが、よく理解して弾いているように聴こえます。第4楽章も同様ですね。この曲はリズムが占める割合が多いですね。途中、短調の所が非常に激しく、ベートーヴェンが障害を乗り越えようとしているエネルギーを感じます。

聴いていてスリリングなので、とても楽しく、何度も聴きたくなる名盤です。

カラヤン=ベルリン・フィル

ベルリンフィルをダイナミックに鳴らし、本質を突いた名演
  • 名盤
  • 定番
  • スケール感
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1961年12月,1962年1月,ベルリン,イエス・キリスト教会

1960年代、カラヤンとベルリン・フィルの初回の録音です。音質はとてもしっかりしたアナログ録音です。

第1楽章序奏から非常に力強い演奏です。古楽器オケ・ピリオド奏法全盛の今では、ベト2とは思えない位のスケールです。今、聴くともっと小気味良い演奏の方がいい気もしますが、この辺りは時代の変遷ということで理解するとして、さすがカラヤンで、この曲の本質は見事に捉えています。思い切って低音域から鳴らし切っていて、リズミカルであると共にとてもダイナミックです。リズムもアクセントも遠慮なく強調しています。ラトルにも似ていて、ベルリンフィルを煽り気味にリズムを刻んでいます。その上、響きの迫力はそれ以上だと思います。1960年代のカラヤンの面白さをストレートに発揮した演奏です。

第2楽章聴き物で流麗で非常に美しい演奏になっています。レガートもある程度かかっており、しっかりしたメロディラインのあるベト2の第2楽章として相応しいと思います。後半もあまりリズムを強調せず、最後までメロディを豊かに歌わせています。第3楽章は中庸のテンポで力強く切れの良いスケルツォになっています。トリオは同じテンポですね。第4楽章速めのテンポで力強く爽快な演奏です。力強いリズムを刻んで交響曲第2番らしい演奏です。カラヤンの演奏でここまで細かくリズムを刻んでくる演奏は珍しいかも知れません。最後の盛り上がりも素晴らしく、ダイナミックかつスリリングです。

重厚でダイナミックなのが好みが分かれそうですが、カラヤンの1960年代らしい音楽を躊躇なくストレートに演奏していて、爽快な名演です。

ショルティ=シカゴ交響楽団

スケールが大きくキビキビとした演奏
  • 名盤
  • クオリティ
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ゲオルグ・ショルティ
演奏シカゴ交響楽団

1989年 (ステレオ/デジタル/セッション)

ショルティとシカゴ交響楽団の録音です。リズム感の良い指揮者ということで、ショルティを聴いてみたいと思います。

第1楽章序奏はダイナミックですが、一般的なスタイルですね。この時代だとまだまだ古楽器オケやピリオド奏法は異端扱いでしたから。しかし、主部のアレグロに入ると急に変わり、なかなか鮮烈なリズムです。ショルティらしい引き締まったリズムと速いテンポでスリリングです。最初にラトルを聴いてしまったので、スケールの大きさが気にはなりますが、おそらく当時としてはかなり強烈にリズムを刻んだ演奏だったのではないかと思います。展開部に入るとなお重厚な音楽が聴けます。ショルティ=シカゴ響は技術的にはかなりの名演だと思いますが、シカゴ響としても少し「ベートーヴェン初期の古典派の交響曲」という先入観から抜け切れていないかも知れませんね。

第2楽章名演です。最初はメロディラインを綺麗に浮かび上がらせ、段々とリズミカルなモチーフがメインになっていきます。レガートのモチーフとリズミカルなモチーフを上手く使い分けて充実した音楽づくりをしています。途中、いろいろな表情を見せてくれます。短調になる所など聴き物です。第3楽章は中庸のテンポですが、なかなかマッシヴなリズムが効いていて充実感があります。キツいリズムやアクセントはありませんが、十分リズミカルです。同じテンポでトリオに入っています。

第4楽章は速めのテンポになります。といっても、今の古楽器やラトルの演奏に比べると遅いですけど。基本的に落ち着きがあって、そこをベースに盛り上がっていきます。最後はとてもダイナミックでスリリングです。

1990年録音ですので、当時としてはダイナミックすぎるという見方もあったと思いますが、今聴くと普通に良い演奏です。逆に遠慮なく低音を効かせてガシガシやってくれたほうがショルティ=シカゴ響らしくていいと思いました。

マタチッチ=NHK交響楽団

マッシヴなリズムとスケールが大きな名演
  • 名盤
  • ライヴ
  • 円熟
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ロヴロ・フォン・マタチッチ
演奏NHK交響楽団

1984年3月14日,NHKホール(第926回定期公演ライヴ)

マタチッチ=NHK交響楽団は余程相性が良く、マタチッチの音楽を上手く再現していますし、まるでヨーロッパのオケのような響きがします。マタチッチが振ると、普段のお堅いN響の響きもダイナミックで硬質な響きという良い面が出て、ヨーロッパのオケと言われても納得してしまう位、良い響きが出てきます。

このベト2はマタチッチ=NHK交響楽団が残した最良の遺産の一つですね。マタチッチのマッシヴな演奏スタイルはまさにベト2にぴったりです。それをNHK交響楽団が演奏すると、正直マタチッチがヨーロッパのオケと残したベートーヴェンよりも素晴らしいサウンドになります。少し管楽器にミスがあったりしますが、マタチッチのやりたいのは、こういう響きの演奏だろう、と思います

第1楽章は冒頭からマッシヴ(筋肉質)で、あまりテンポは速くありませんが、筋肉質なリズムがしっかりしていて、ベト2のリズムの面白さを上手く表現しています。全体的に重厚さのある響きでドイツ的です。マタチッチは聴かせどころをよく理解していて、ツボはしっかりついています。最後はダイナミックでスケールの大きな音楽です。

第2楽章オーストリアの田舎を思わせるような、味わい深さです。音楽が進むにつれて深みが増していき、マタチッチらしい民族的な味わいを存分に味合わせてくれます。第3楽章は少しテンポの遅いスケルツォですね。まるで熊が踊っているようです。マタチッチが手刀で指揮をしている様子が見える様です、笑。テンポを変化させて、田舎の雰囲気が良く出ています。

第4楽章は速めのテンポですが、そこまででも無いですね。ライヴなので少しテンポが定まるまで時間がかかったようです。これも田舎の雰囲気が入っていて、ダイナミックですが、速めのテンポで詰める、といったことはしていません。しかし、遅いテンポのおかげか、アレグロ・モルトでも味わいを楽しめます

今のN響は凄く上手くなりましたが、昔のN響も名指揮者との名演があったということで、是非聴いてみてほしい演奏です。DVDもあります。

マタチッチ=NHK交響楽団

マッシヴなリズムでダイナミックに盛り上がる名演!
  • 名盤
  • ライヴ
  • 円熟
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ロヴロ・フォン・マタチッチ
演奏NHK交響楽団

1984年3月14日,NHKホール(第926回定期公演ライヴ)

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楽譜・スコア

ベートーヴェン作曲の交響曲第2番の楽譜・スコアを挙げていきます。

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