ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770~1827)作曲の交響曲第8番 ヘ長調 Op.93の解説のあと、名盤をいくつかレビューしていきたいと思います。最後にスコアをご紹介します。
交響曲第8番は9曲あるベートーヴェンの交響曲の中でも異色の存在です。お薦めの名盤も沢山ありますが、譜面通りの演奏から、個性的なものまで色々あり、レビューしがいのある曲です。
解説
ベートーヴェン作曲の交響曲第8番、通称ベト8を解説します。
第8番の作曲と恋愛事件
交響曲第8番を着想したのは、自然の多いチェコのボヘミアの温泉地テプリッツで、1812年にテブリッツで作曲されています。
1812年10月にリンツで完成しました。ベートーヴェンがリンツに行ったのは、自身の健康のためと弟のヨハンがリンツで薬屋を営んでいたからです。
ヨハンはテレーゼ・オーバーマイヤーという女性と親しくなり、家に住まわせていました。このことは良からぬ噂となって町中に広がっていました。ベートーヴェンはヨハンの元へ駆けつけ、激しい口論となります。しかし、ヨハンはテレーゼと結婚します。
ベートーヴェンは非常に不快な思いをしたわけですが、そんなことがあった時に書かれたのが、この交響曲第8番です。確かに、この第8番は大きな声で口論しているようにも聴こえますね。
さらに、その頃、ベートーヴェン自身も恋愛をしていました。ただ相手はアントーニエという既婚女性です。しかし、アントーニエに子供ができたため、ベートーヴェンとアントーニエは破局してしまいます。「不滅の恋人」事件と呼ばれています。アントーニエに手紙を書きますが、ベートーヴェンは投函しませんでした。ちょうど交響曲第8番作曲中の出来事です。
結局、弟は無事結婚し、ベートーヴェンは失恋してしまいます。ベートーヴェンに与えた影響は想像できます。ただ、その恋愛事件が、実際にどの程度の影響を与えたのかは分かっていません。その後、創作できない時期がしばらく続いてしまいます。交響曲に関しては第9番作曲まで10年以上経っていました。
ただし、この10年に関しては戦争により交響曲の需要が一時的になくなり、ベートーヴェンの創作意欲は衰えていなかった、とも言われています。
うーむ、これらと第8番の分かりにくさは関係していそうですが、具体的にどう関係したのかは分かりません。そんな話を分かりやすく曲に入れたいなんて誰も思わないですよね。
少なくとも交響曲第8番は微笑ましい冗談交響曲、なんてものではなさそうです。
初演の不評
初演は、交響曲第7番は成功しましたが、交響曲第8番はかなりの不評だったようです。しかし、ベートーヴェンは不評を予想していたのか、
だからこそ、この曲はいいのだ
と言っています。カール・ツェルニーによれば、
ベートーヴェンは第8番を第7番よりも「はるかに優れた」ものと考えていた
とのことです。確かに、第7番は普通に楽しめる交響曲です。きっと第8番はもっと新しいことをやったのでしょう。
そして、この時点で既に交響曲第9番の構想があったと推測されています。すなわち第7番、第8番、第9番の3部作という形になる予定だったようなのですが、上記した創作意欲の落ち込みで第9番には10年のブランクが空いてしまいました。
古典派への回帰?
交響曲第8番の持っているメッセージが結局よく分からないのです。ベートーヴェンが次に第九を作曲するにあたって古典派に回帰した、という風な説明も見受けられます。しかし、このベト8は表面的には古典派のような雰囲気もありますが、大分違う交響曲です。
古典派に近いといえば、交響曲第1番、第2番、第4番あたりだと思います。ハイドンやモーツァルトに交響曲第8番に近い交響曲があるか?と言われると思いつきません。古典派はもともとギャラント様式やロココ様式などスタイリッシュな音楽を目指していて、第8番のような朴訥(ぼくとつ)とした曲、もっとハッキリいえばダサい曲は少ないです。
ただ、近年の古楽器オケやピリオド奏法はかなり速いテンポで、まるでハイドンのように演奏しています。でも、何か違和感を感じます。ハイドンのような冗談音楽を作曲したのだ、ということなら、理屈としては納得なのですが、第8番の場合は、どうも速すぎるとしか思えないのです。
冗談音楽なの?
第8番は冗談音楽、といえばある程度は納得できるかも知れませんね。
でも、強弱ばかり目立って、とても雄弁に聴こえますが、正直言って何をいいたいのかさっぱり分からずです。何十年も聴いていますが、いまだによく分かりませんでした。
ノリントンは冗談音楽としては理想的な演奏をしていますが、あまり曲にあっていません。(ノリントンなのできっと「わざと」でしょうね)
生(自然)への賛美
最後に筆者の現在の考えを書いておきます。もちろん色々調べた結論なので、「当たり前」と思う人もいれば、「間違い」と思う人もいると思います。予想の部分が多いので、本人もそこまで確信をもって書いているわけではありませんけれど。
色々な演奏を聴いて考えてみたことですが、ベートーヴェンはこの交響曲第8番のインスピレーションをチェコの自然の中で得たということです。そして、これ以降、ハイリゲンシュタットの遺書に関連した作品は少なくなり、交響曲第9番『合唱付き』では、自由を歌い上げています。
『運命』でダイナミックに勝利を歌い上げながら、筆者は実際は勝利していなかったと思われるのです。この交響曲第8番では、表面的には冗談音楽的な感じですが、「生への感謝」や「生への賛美」が感じられます。第1楽章には『運命の動機』のリズムが引用されています。そうであれば、確かに交響曲第7番よりもずっと名曲といえるでしょうね。
他の交響曲は誰かに献呈されていますが、この交響曲第8番だけは誰にも献呈されていません。誰かに依頼されて作曲した訳ではないから、です。交響曲第8番はベートーヴェン自身のための交響曲なのでしょう。あまり、その内容について、他人に語ることはありませんでした。
きっと恋愛事件も含めて小さな人間と大きな自然を、分かりにくく表現した曲なんでしょうね。
おすすめ名盤のレビュー
ベートーヴェンの交響曲第8番のおすすめの名盤をレビューしていきます。
モントゥー=ウィーン・フィル
モントゥーは余計な力の抜けた自然体の演奏です。オケはウィーン・フィルですから、非常に良い組み合わせです。とても素朴でありながら、響きに品格が感じられます。さすが、この組み合わせだとどこにも文句のつけようがない名演です。
モントゥーは第8番が冗談を含んでいることを表現していて、第2楽章ではその部分も強調されています。それにしてもウィーン・フィルの響き、特に木管のソロは神々しい位、美しいです。録音が新しい訳ではないのに凄いですね。第3楽章のホルンも素晴らしいです。
交響曲第8番の定番として、聴いておくべき名演ですね。
イッセルシュテット=ウィーン・フィル
ドイツ的で重厚なイッセルシュテットの名盤です。特に第8番が名演と言われています。実際聴いてみると、イッセルシュテットらしい重厚さのある真面目でしっかりした名演です。自然体かと思いきや、結構雄弁に語りかけてくる演奏です。これが普通の第8番ですね。
特別に面白いことをやっているわけではなく、当時のロマン派の指揮者と違い、譜面に対して誠実に取り組んでいます。非常に端正で重厚に演奏しているため、古典派風の交響曲として聴くなら、一番の質の高さだと思います。
ただ、交響曲第8番が何を言いたいのか分からないのは、イッセルシュテット盤が典型的です。楽譜をしっかり読みこむと、こういう演奏になると思うのですが、雄弁になるほど、言いたいことが分からないという、やはり理解しにくい曲ですね。でも何故か同じ路線のヴァントはしっくりくるので、何かが違うのでしょう。
バーンスタイン=ウィーン・フィル
バーンスタインはウィーン・フィルの良さを活かした演奏をしているように見えます。自然体で音楽を楽しんでいるといった風情です。
第1楽章の展開部もあまり感情が入っていない感じですし、深刻な音楽になることを避けているようにも見えます。ウィーン・フィルとしては重厚さの少ない演奏となっています。軽い冗談音楽という捉え方でしょうか。第1楽章の最後のほうは、平和な曲想なのでこういう演奏も成り立ちますね。第2楽章以降も似た雰囲気です。第3楽章は中間部のホルンが素晴らしいです。
トータルとして自然体で雰囲気の良い演奏で名盤です。
ノイマン=チェコ・フィル
ノイマンの演奏は自然体というか、チェコの自然そのものかも知れません。古いスタイルの演奏といえば、そうかも知れませんが、それだけでも無いと思います。やはりチェコらしい魅力がある演奏だと思います。
その自然賛美的な演奏は、そのままベト8を作曲した時のベートーヴェンの心境かも知れないと思います。交響曲第8番は、自然の多いチェコのボヘミアの温泉地テプリッツで着想されたのですから。この曲はノイマンのように普通に自然に演奏すると、自然に楽しく聴ける曲です。
ある意味、ベト8は『田園』のような交響曲なのかも知れません。そのほうがしっくりきます。他の演奏では色々なことをやって格闘している感じすらするのですが、答えは意外に簡単なところにあるのかも知れません。
他にこういうタイプの演奏は無く、現在、廃盤になっているのが勿体ないディスクです。
クナッパーツブッシュ=ミュンヘン・フィル
クナッパーツブッシュは、第8番をものすごく遅いテンポで演奏していて、この曲を古典派と見做してはいないです。
ベト8の面白い演奏を聴いてみたいなら、この演奏は外せません。ベートーヴェンの他の番号で録音が残されていない交響曲も多いので、第8番は気に入っていたのでしょうね。他にもいくつか録音があるので、コンサートで良く取り上げていたのでしょう。
カップリングはお得意のブラ2です。ベト8が気に入らなくても多分ブラ2は気に入るんじゃないかと思いますよ。
ショルティ=シカゴ交響楽団
ショルティ=シカゴ響の第8番は完璧な演奏です。アンサンブルは精緻で、ショルティは円熟して少し遅めのテンポで演奏しています。おそらく今このページの中で一番ハイレヴェルなアンサンブルですね。
しかし、ただスコア通りであって、ベートーヴェンが埋め込んだメッセージが伝わってくるかというと、あまりそういうものは感じられないですね。透明感があるので、壮麗な演奏であるとは言えますが、あまりメッセージに繋がるものでは無さそうです。ショルティもベートーヴェンのメッセージを掘り出して表現しようとはしていないと思います。
ただ完璧な演奏であっても、第8番に関して言えば、元々ダサい曲なので、それが綺麗にされて完璧に演奏されているだけ、のような気がします。凄い演奏だなと感心しながらも、そういう風に感じた次第です。
ヴァント=北ドイツ放送交響楽団
ヴァントの交響曲第8番はドイツ的で雄弁なのに押しつけがましくない、シューリヒトに似た雰囲気を持っています。この第8番ははっきり言って名演です。他の曲ではかなり厳しい演奏をしていることもありますし。
ヴァントの演奏には全く冗談などは感じません。譜面をしっかり音にすることに徹しているとも言えますし、むしろ短調の部分を強調しているようにも聴こえます。気軽に冗談をいうような雰囲気とは違うのですが、ベト8はそれをちゃんと飲み込んでいて、むしろ充実した生気のある演奏になっています。
うーん、第8番って不思議な曲ですね。
アバド=ベルリン・フィル
アバドはベルリンフィルとの演奏、ウィーンフィルとの演奏の2つがありますが、全然違います。
ベルリンフィルとは全集を作ったのですが、非常に尖った演奏になっています。賛否は分かれるでしょうけれど、第8番を聴いたときは妙に納得したような気がしました。
アバドのベト8は、これでもかと強弱を強調し、鋭いアクセントを施し、古典派的ではなく感情的な衝動を前面に押し出した演奏です。冗談の要素をかなり前面に出していますが、押しつけがましくはありません。結構、すっきり聴ける名盤です。
アバド=ベルリンフィルのベートーヴェン全集に対しては、全ての曲を高く評価してはいませんが、ベト8は特別な名演だと思います。
ラトル=ウィーン・フィル
ラトル=ウィーン・フィルの新ベーレンライター版を使用した全集の中でも、交響曲第8番は少しユニークで軽快な好演です。
他の番号はウィーンフィルを煽(あお)っている感じが強いのですが、第8番は力が抜けた自然体で、しかもラトルらしい工夫に満ちた演奏です。この演奏は日本でももっと評価されていいと思うのですが、どうなんでしょうね。
ノリントン=シュトゥットガルト放送交響楽団
ノリントンはこんな演奏の仕方があるのか!と冒頭から驚かせてくれます。ただ良く聴いてみると、基本的には速めのテンポで、エネルギッシュな第一楽章です。そういう意味では新しい解釈とまでは行かないですが、デュナーミクを工夫して面白く聴かせてくれます。
バロック風なティンパニの強打とか金管楽器の突き刺すような音色などです。第8番がピリオド奏法に合っていることがよく分かります。
第2楽章も速いですね。ノリントンにはもう少し遅めのテンポで新しい発見がある演奏を期待したのですが、ピリオド奏法では標準的なテンポかも知れません。第3楽章は普通ですが、トリオのホルンは良い響きでした。
第4楽章は超高速です。よく考えると全体的にハイドンを聴いているようですね。ハイドンの交響曲とベト8は全然違うような気がするのですが、ノリントン得意のハイドンの演奏に近いです。ということは、ノリントンは古典派への回帰として第8番を捉えているのでしょうね。
ユーモアやしゃれている所も十分表現したうえで、ハイドン流のテンポ設定にしているし、決して不自然ではありません。でも何か足りないような、しっくり来ないような気もします。
アントニーニ=バーゼル室内管弦楽団
アントニーニはパロック界では有名なフルート奏者です。バロック音楽では、バロックアンサンブルのイル・アルジャジーノ・アルモニコでヘンデルなど、主だった作品はほとんど録音済みです。また、革新的な演奏をするバロックアンサンブルで有名です。最近はベルリン・フィルに客演したり、とモダン・オーケストラに活躍の場を広げています。
ベートーヴェンの第8番はノリントンのようにハイドン風の古典的な演奏になるかと思いきや、意外とそうでもなく、テンポは速めですが、十分落ち着いて聴ける名演です。
第1楽章は自然体で、あまり感情を強く表現せずに、うまくまとめています。録音の音質の良さも特筆すべきですね。第2楽章でもきつくなることなく、冗談音楽になっています。楽しく聴ける演奏です。第3楽章はバロックらしく一拍目を強調しています。基本的に自然で素朴です。
第4楽章は、かなり速いですね。録音の良さもあって、きつくはなっていないので、自然に聴けます。スピーディで楽しい名演だと思います。冗談音楽ではありますが、自然さのほうが勝っていて、よく分からない冗談を大声で叫ぶような演奏ではないですね。
全体としては、小編成でスピーディで爽快なベト8だと思います。
ペーター・マーク=パドバ・ベネト管弦楽団
ペーター・マークの第8番は、非常に自然体です。テンポは、普通ですが、ピリオド演奏が多くなった現在では、遅いといえるでしょうね。自然体ですが、スフォルツァンドはしっかりやってしますし、実は細かくテンポを動かしたり、色々なことをやっている演奏と思います。それはやはりペーター・マークの円熟によるものだと思います。
第1楽章は、割とスケールの大きさを感じます。あまり冗談音楽という印象は受けません。第2楽章は少しテンポを上げています。丁寧な演奏です。冗談音楽というより、聴いていて癒される感じです。真面目さのある演奏ですが、重さとか重厚さがあまりないですね。第3楽章はふくよかさがあります。細かい所で丁寧さがあります。第4楽章はそれなりの速さなのですが、自然さを失いません。
表現が難しいのですが、このベト8は表面的には真面目な演奏なのですが、基本的に軽さと少し透明感があります。感情は入っていますが、しつこくなることはありません。この絶妙な感覚はやはり円熟した指揮者がなせる技なんでしょう。聴き終わった後、清々しさを感じます。
パウル・クレツキは作曲家です。その視点で交響曲第8番を見ていると思います。第8番に対しても先入観がなく、長調も、展開部で出てくる短調も必要とあらば容赦なく演奏しきっています。冗談音楽とか古典派音楽とか、そういう先入観はありません。そういう意味ではトスカニーニの直截的な演奏に似ていますね。トスカニーニは曲の理解の難しさを思いっきり強調する結果になっていますけど。
第1楽章は、余分な盛り上がりも無ければ、余分な情緒もありません。印象的なのは展開部以降の盛り上がりですね。余分に強調されていないため、アバド=ベルリンフィル盤を聴いたほうが分かりやすいかも知れませんけれど。
第2楽章は何故かffがあまり強調されていないですね。第3楽章はしなやかなメヌエットになっています。ちょっとダサいメヌエットという感じがする楽章ですが、しなやかに演奏されていて品があります。
第4楽章はまたストレートさが戻ってきます。弦楽器をかなりシャープに鳴らして、展開の速い音楽を上手く整理しています。後半になると大事な音を強調するかのようにテンポを落としたりしています。
トスカニーニ=NBC交響楽団
トスカニーニはベト8についてどんなイメージを持っているのか聴いてみたい位ですが、普通にスコア通りに演奏しているように思います。ただ、思い切りメリハリをつけていて、結果として爆演ですね。
第1楽章から凄いダイナミクスです。何の疑問も抱いていないかのようにストレートに演奏していますが、凄い迫力です。何を言いたいのか分からないが、声が大きい演奏の典型です。第2楽章以降も同様です。
第4楽章は面白いかも知れません。変わった音が出てくるので、楽譜通りにやれば、面白くなるはずです。うーむ、まあまあですかね。基本的に明るい曲と捉えているように思います。
この演奏はある意味、名盤ですが、あまり聴いていて面白くはないような気がします。いくら大声を出しても面白くはならないということなんでしょうね。
フルトヴェングラー=ベルリン・フィル
フルトヴェングラーは意外と速めのテンポで演奏しています。トスカニーニのように強弱のメリハリが相当ついています。短調の部分もじっくり演奏してくれるところがいいですね。思い切り盛り上がってから再現部に入ります。これだけ壮大に演奏しながら、うるささはほとんど感じません。
第2楽章は意外にぬるい感じですね。緩徐楽章が来る部分ですから、そういう演奏なのかも知れません。第3楽章も凄く遅いです。
第4楽章は、テンポの変動が大きいですが、結構ツボをついた演奏です。
聴き終わった後の満足感は大きいですね。
シューリヒト=パリ音楽院管弦楽団
モーツァルトやブルックナーを得意としているシューリヒトの録音です。そもそもシューリヒトはモーツァルトとブルックナーの両方が出来る時点で奇才なのです。ベートーヴェンは意外にもパリ音楽院管弦楽団との演奏でした。得意のブルックナーもマイナーオケだったりするので、本領をなかなか発揮できなかった指揮者かも知れません。
聴いてみると、交響曲第8番は、最初パリ音楽院管弦楽団らしく、冒頭からしばらくして壮大にアンサンブルが崩壊しています…録音も年代を考えると悪いといえますね。でもこうやってCDで生き残っているのは、良い演奏だからだと思います。
冒頭はちょっと不安にさせてくれましたが、その後は安定したアンサンブルで録音は悪いですが、慣れれば十分聴けます。
シューリヒトはモーツァルトのようにベト8をサラッと軽い感じで演奏しています。軽快ですけど、譜面はきちんと守っていて、強弱もきちんとつけていますし、テンポも少し速い程度で、普通のアプローチです。それでも軽快さがあるのがシューリヒトの不思議な所です。これはブルックナーでも同じで、壮大な第8番を速めのテンポで軽快に演奏してしかもトップを争う名盤なんです。
それに加えて自由奔放な昔のパリ音楽院管弦楽団なので、ドイツ的な重厚さは全くありません。シューリヒトはかなり雄弁に語らせていると思いますが、イッセルシュテットのような重厚さはなく、押しつけがましい所が一切ありません。
全曲、聴き終わるととてもさわやかな感じです。多分、このページの演奏の中でもトップを争う名盤になるはず、ですが、録音が悪いので、さすがに減点してしまいました。
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スコア
ベートーヴェン交響曲第8番の楽譜・スコアを紹介します。
ミニチュア・スコア
大判スコア
Beethoven: Symphonies Nos. 8 and 9 in Full Score
4.7/5.0レビュー数:53個