ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第5番『春』(スプリング・ソナタ)

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven,1770-1827)作曲のヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 第5番『春』Op.24 (Sonata for violin F-Dur No.5 “Spring”)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

誰でも知っている有名なメロディで始まる名曲で、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの中でも特に人気の高い作品です。

解説

ベートーヴェンヴァイオリン・ソナタ 第5番『春』について解説します。

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ヴァイオリン・ソナタ第5番『春』は、9曲のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの中でも特に有名な曲です。誰でも聴いたことがあるとても有名な主題で始まります。第9番『クロイツェル』と共にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを代表する曲です。作曲はベートーヴェンが30歳頃の1800年~1801年に行われました。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ

ヴァイオリン・ソナタは、ヴァイオリンとピアノで演奏されますが、番号が進むにつれ、ヴァイオリンの比重が増しています。ヴァイオリンとピアノを対等に扱った作品として、第9番『クロイツェル』が重要ですが、それよりも前のこの第5番『春』もヴァイオリンの持つ役割が大きく、シンフォニックともいえる作品になっています。時期的にも、ちょうど交響曲第1番を作曲した時期に当たります。

『春』の愛称

表題の『春』は後世の人が付けた愛称です。ヘ長調でさわやかな明るさを持つ作品であり、『春』という愛称はこの曲にふさわしいと言えます。

曲の構成

第1楽章:アレグロ

ソナタ形式です。いきなり爽やかに有名な第1主題から始まり、とてもキャッチーです。当時のヴァイオリン・ソナタとして、しっかりしたソナタ形式で展開部も十分な長さを持つ、堂々たる楽章です。

第2楽章:アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ

三部形式の緩徐楽章です。中間は繊細かつロマンティックで流麗な音楽です。明るさと共に渋さがあって味わい深い音楽です。

第3楽章:アレグロ・モルト

スケルツォです。リズミカルな主題にシンプルな形式を持った曲です。この曲は吹奏楽をやっていた人は、聞き覚えがあると思います。アルフレッド・リードの『春の猟犬』という曲によく似ていますね。

第4楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ

ロンド形式です。明るいメロディによる典型的なロンド形式です。もちろん、短調に転調する場面もありますが、ベートーヴェンは長調の作品でも十分聴きごたえのある曲を作曲しています。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ベートーヴェン作曲ヴァイオリン・ソナタ 第5番『春』名盤をレビューしていきましょう。

ヴァイオリン:デュメイ、ピアノ:ピリス

艶やかで明るい音色で始まり、情熱的にスリリングに盛り上がる
  • 名盤
  • 定番
  • 艶やか
  • 情熱的
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリンオーギュスタン・デュメイ
ピアノマリア・ジョアン・ピリス

1997年12月,ロンドン,ヘンリー・ウッド・ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

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デュメイとピリスの録音です。円熟したデュメイの満を持した名盤ですね。デュメイの艶やかで明るい音色は『春』に相応しいですが、単にそれだけではなく、円熟して深みがあります。録音は新しくしっかりしています。

第1楽章最初の主題はデュメイの明るい音色を活かして、とても鮮烈に始まります。パッションに溢れ、速めのテンポでとてもスリリングです。ピリスはデュメイのヴァイオリンをしっかり支えつつ、色彩的なピアノを聴かせてくれます。展開部以降はさらに情熱的でシャープさを増し、激しく盛り上がり、切れ味の鋭い演奏になっていきます。

クレーメル盤も良いですが、デュメイ盤も素晴らしく完成度の高さが感じられます。

ヴァイオリン:クレーメル、ピアノ:アルゲリッチ

実力派の2人による丁々発止のスリリングな名演
  • 名盤
  • 定番
  • クオリティ
  • 力強さ
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリンギドン・クレーメル
ピアノマルタ・アルゲリッチ

1987年3月,ベルリン (ステレオ/デジタル/セッション)

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クレーメルとアルゲリッチの録音です。近年のディスクの中でもこの実力派2人の組み合わせの本盤は、新しい定番と言えます。クレーメルとアルゲリッチらしい丁々発止の演奏が聴けます。またデジタル録音で音質も良いです。

第1楽章クレーメルのしなやかな演奏で始まり、すぐにシャープになり、スリリングな演奏になっていきます。アルゲリッチは彼女らしいリズム感と色彩感に溢れる演奏です。クレーメルとアルゲリッチの競演はスリリングに盛り上がって行き、展開部以降はこのコンビでなければ聴けない迫力です。ロマンティックに自由に盛り上がっているように聴こえて、ベートーヴェンらしい構築力をしっかり持っている所も凄いですね。第2楽章は瑞々しいピアノで始まります。ヴァイオリンは情感に溢れ、かつシャープさのある表現です。

第3楽章は小気味良いリズミカルな音楽です。スリリングなアンサンブルは他では聴けないレヴェルでさすがです。第4楽章はヴァイオリンの明るく艶やかな音色で始まります。ピアノも小気味良い演奏で、丁々発止のアンサンブルで盛り上がっていきます

風格のあるオイストラフ盤とはまた違ったスタンダードな名盤と思います。クレーメルの楽譜の読みの深さが感じられます。

ヴァイオリン:庄司さやか、ピアノ:カシオーリ

深化した庄司さやかとカシオーリの表情豊かな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 艶やか
  • 表情豊か
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリン庄司さやか
ピアノジャンルカ・カシオーリ

2011年9月,ハンブルク=ハールブルク (ステレオ/デジタル/セッション)

庄司さやかとジャンルカ・カシオーリの録音です。庄司さやかはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲でも素晴らしい演奏を聴かせてくれました。情熱的な表現でベートーヴェンと相性が良く、このスプリング・ソナタも名演です。日本人だから、ということではなく、十分に世界レヴェルの名演ですね。新しい録音で音質も良いです。

第1楽章冒頭の主題は大人の表現で、高音質で細かい息遣いまで良く聴こえて来て、庄司さやかのロマンティックで奥ゆかしい音楽を楽しめます。カシオーリのピアノも表情豊かで、ヴァイオリンとピアノのインスピレーション溢れる掛け合いがとても良いです。展開部以降は、さらに表現のヴォキャブラリーを増していき、ベートーヴェンの仕込んだ工夫を前面に引き出し、楽しませてくれます。第2楽章はピアノの芳醇で色彩感を感じさせる響きで始まります。ヴァイオリンの音色は艶やかで繊細で、聴きごたえがあります。

第3楽章は落ち着きのあるスケルツォです。第4楽章は力強く情熱的になったかも思えば、しなやかな表現になったり、変奏ごとにボキャブラリーがとても豊富で、次はどんな音楽が出てくるんだろう、とワクワクさせてくれます。根底に流れる強いエネルギーが流れていて素晴らしい盛り上がりを見せてきます。

庄司さやかと言えば情熱的なイメージがあります。このスプリングソナタでも力強さや情熱はありますが、情熱を前面に出すというより、ベートーヴェンらしくしっかりした音楽作りが印象的で、さらに進化した庄司さやかのヴァイオリンを聴くことが出来る名盤です。

ヴァイオリン:オイストラフ、ピアノ:オボーリン

オイストラフの風格としっかりしたオボーリンの伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 力強さ
  • 情熱的
  • スケール感

おすすめ度:

ヴァイオリンダヴィド・オイストラフ
ピアノレフ・オボーリン

1962年6月,パリ (ステレオ/アナログ/セッション)

オイストラフとオボーリンの昔からの定番です。少し古めではありますが、レコードに合いそうな味のある響きです。しっかりした録音で、今でも十分通用する音質です。

第1楽章有名な主題はふくよかで風格のある音色で楽しませてくれます。ピアノもオイストラフの音色に合ったしっかりしたタッチでベートーヴェンらしい安定した演奏でオイストラフを上手く支えています。展開部も秘めた情熱もありますが、落ち着いていて、ベートーヴェンらしいしっかりした土台の上に名演が築き上げられています。第2楽章歴史的名盤らしいいぶし銀の音色が楽しめます。

第3楽章はリズミカルですが、オイストラフのベートーヴェンは常に安定感があって、奥ゆかしさを感じます。第4楽章明るい主題をロシア人らしい少し憂いのある響きで味わい深く演奏して行きます。転調の妙を上手く表現していて聴きごたえがあります。

安定した定番の歴史的名盤らしく、聴きこむほどにさらに良さが分かってくる飽きの来ない名盤です。

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楽譜・スコア

ベートーヴェン作曲のヴァイオリン・ソナタ 第5番『春』の楽譜・スコアを挙げていきます。

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