ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ 第9番『クロイツェル』

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven,1770-1827)作曲のヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調『クロイツェル』Op.47 (Sonata for violin no.9 a-dur “Kreutzer” Op.47)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。

解説

ベートーヴェンヴァイオリン・ソナタ 第9番『クロイツェル』について解説します。

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1803年に作曲したヴァイオリンソナタで、ベートーヴェンが作曲した10曲のヴァイオリン・ソナタで最高傑作と言われています。ベートーヴェンはウィーンで人気の高かったジョージ・ブリッジタワーのためにヴァイオリン・ソナタを書きました。ブリッジタワーはイギリスのウェールズの楽団の首席ヴァイオリニストでした。

それまでのヴァイオリン・ソナタはピアノが主役で、ヴァイオリンはオブリガートの位置づけとしたものが主流でした。しかし、ベートーヴェンはヴァイオリンとピアノを対等とした曲を作曲したのでした。曲の規模も大きく、最初の2楽章で30分近くもかかります。高いヴァイオリンの技巧も要求されます。

初演

初演は1803年にウィーンでジョージ・ブリッジタワーのヴァイオリンとベートーヴェン自身のピアノによって行われました。

ブリッジタワーの演奏会のために急いで作曲されることになったため、第3楽章はヴァイオリン・ソナタ第6番の終楽章を転用しています。それでも規模の大きな作品であるため、結局作曲は間に合わず、初演では手書きの楽譜を元に一部は即興演奏されたと言うことです。最高傑作、と言われているのに初演は不完全なものだったのですね。

献呈に関するゴタゴタ

ジョージ・ブリッジタワーに献呈される予定でしたが取りやめになります。ある女性をめぐり対立したことが原因でした。その後、ベートーヴェンはパリで最高のヴァイオリニストに献呈することを考え、ロドルフ・クロイツェル(フランス語では「クルゼール」)に献呈することにしました。献呈を受け入れたクロイツェルですが、この作品を一度も演奏することはありませんでした。

ロシアの文豪トルストイはこの献呈に関するゴタゴタに触発されて、小説『クロイツェル・ソナタ』を書いています。

曲の構成

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの最高傑作という評は、実際に聴いてみれば良く分かります。ヴァイオリンとピアノの丁々発止のやり取りが面白い作品で、確かにこんなスリリングな作品はそれまでありませんでした。

第1楽章:アダージョ・ソステヌート~プレスト

序奏付きのソナタ形式です。速いテンポの部分が穏やかな音楽と交互に現れます。

第2楽章:アンダンテ・コン ・ヴァリアツィオーネ

変奏曲です。主題提示の後、第4変奏まで行われます。

第3楽章:プレスト

イタリアの6/8拍子の激しい舞曲タランテラです。ソナタ形式で構成されています。第6番からの流用で、ベートーヴェン中期のソナタの作風となっています。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ベートーヴェン作曲ヴァイオリン・ソナタ 第9番『クロイツェル』名盤をレビューしていきましょう。

Vn:パールマン、ピアノ:アシュケナージ

2人のヴィルトゥーゾが本領を発揮した白熱の名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱的
  • スリリング
  • 白熱

超おすすめ:

ヴァイオリン独奏イツァーク・パールマン
ピアノウラディーミル・アシュケナージ

1973年10月 (ステレオ/アナログ/セッション)

パールマンのヴァイオリン、アシュケナージのピアノとヴィルトゥオーゾの競演です。第1楽章から既にスリリングで情熱的で、白熱して行きます。録音はしっかりした音質です。

第1楽章は重厚さのある序奏の後、主部に入るとパールマンのヴァイオリンは情熱的で白熱しています。アシュケナージのピアノはダイナミックさがあり、ロマンティックさのある演奏で、情熱的なパールマンと上手く掛け合っています。こんなに熱気あふれる演奏はなかなかありません。両者とも技術的にも華麗で力強さがありますが、同時に品格もあり、ベートーヴェンの直情的な音楽をしっかり描き出しています。第2楽章は軽妙で落ち着いた演奏で、アシュケナージがリードしてパールマンはコクのある音色で品格のある演奏を繰り広げています。ベートーヴェンらしい構築的な響きも聴けます。第3楽章力強くテンポが速い演奏です。リズミカルですが、しっかり地に足のついたリズム感で充実しています。

一聴して凄い演奏という感想です。安定した技術力を持つパールマンがここまで情熱的でスリリングに演奏することはなかなか無いと思います。白熱した名盤で、曲が始まってすぐに引き込まれ「クロイツェル・ソナタ」の良さがすぐに分かります。始めて聴く人にもお薦めの名盤です。

Vn:クレーメル、ピアノ:アルゲリッチ

名手同士のスリリングな競演、定番の名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 軽妙
  • シャープ
  • スリリング
  • 高音質

おすすめ度:

ヴァイオリンギドン・クレーメル
ピアノマルタ・アルゲリッチ

1994年3月,モントルー (ステレオ/デジタル/セッション)

ヴァイオリンをギドン・クレーメル、ピアノをアルゲリッチという名手同士の組み合わせです。このコンビだとスリリングな演奏になりますね。しかも、クオリティの高い名盤です。音質も良くかなりの高音質です。

第1楽章は序奏はしっかり始まりますが主部に入るとクレーメルのシャープでスリリングなヴァイオリン独奏と、色彩感溢れるアルゲリッチのピアノで、とても豪華かつスリリングな競演です。それぞれの個性がしっかり出ていますが、アンサンブルのクオリティも高く定番と言うに相応しい演奏です。第2楽章の変奏曲は速めのテンポでリズミカルに進んでいきます。この楽章もヴァイオリンとピアノの掛け合いが素晴らしいです。第3楽章も速めのテンポでとてもリズミカルです。最後まで表情豊かで楽しさのある演奏です。

最初に聴く人にも楽しめる演奏で、初心者から玄人まで万人にお薦めできる定番の名盤です。

Vn:オイストラフ、ピアノ:オボーリン

昔からずっと聴き継がれてきた歴史的名盤
  • 名盤
  • 歴史的名盤
  • 定番
  • 端正
  • 力強さ
  • いぶし銀

超おすすめ:

ヴァイオリン独奏ダビット・オイストラフ
ピアノレフ・オボーリン

1962年,パリ (ステレオ/アナログ/セッション)

オイストラフのヴァイオリン独奏とオボーリンのピアノの録音です。昔から長い間、評価の高い名盤で、しっかりした演奏の中に情熱を秘めた力強さがあります。録音は1960年代としては渋い音色かな、という気もしますが、それが却って味わい深いです。

第1楽章は落ち着いた安定感ある演奏です。オイストラフらしい力強さと懐の深さが感じられ、スケールの大きさを感じます。主部に入っても情熱を秘めていますが安定していて、曲が進むにつれて徐々に熱してきて盛り上がっていきます。ヴァイオリンの音色もいぶし銀で味わい深いです。最近の演奏のテンポが速すぎるのかも知れませんね。オボーリンは奥深さを感じるピアノです。第2楽章はしっかりしていて、落ち着いて曲の良さを味わえます。オボーリンのピアノはしっかりした骨格があり、オイストラフも落ち着きつつもスケールの大きさを感じる演奏です。第3楽章はしっかりした演奏ですが軽妙さもあり、リズミカルで楽しめます。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの王道とも言える演奏で、長い間定番の地位を保ってきただけある素晴らしい名盤です。オイストラフの懐の深いヴァイオリンを堪能できる名盤です。カップリングの『春』も名演です。

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楽譜・スコア

ベートーヴェン作曲のヴァイオリン・ソナタ 第9番『クロイツェル』の楽譜・スコアを挙げていきます。

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諏訪内晶子



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