シベリウス ヴァイオリン協奏曲 Op.47

ジャン・シベリウス (Jean Sibelius,1865-1957)作曲のヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47 (Violin concerto d-Moll Op.47)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

いかにも北欧というクールさのある名曲で、そのロマンティックな音楽は人気があります。情熱的なヴァイオリンは、シベリウスの同時期の作品のように、深く人間の内部に入り込んでいきます。20世紀のヴァイオリン協奏曲の中でも人気、内容、共に一二を争う名曲で、頻繁に演奏されています。

解説

シベリウスヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47について解説します。

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若いころヴァイオリニストを目指した

ジャン・シベリウスは14歳の時にヴァイオリンを買い与えられ、この楽器に夢中になりました。若いころはヴァイオリン専攻でした。ヴァイオリンを諦めた理由は、極度のあがり症だった、のが原因です。音楽院でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を弾く機会にあがってしまい上手くゆかなかったので、それ以後、作曲を中心にするようになったのでした。いずれにせよ、ヴァイオリンには詳しい作曲家なんです。

ヴァイオリン協奏曲は、シベリウス唯一の協奏曲作品です。ピアノ協奏曲を残していないというのは珍しいですね。シベリウスの名を冠したシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールもヴァイオリン奏者のコンクールです。1965年から始まり、1980年にヴィクトリア・ムローヴァが優勝しています。1995年には現在人気ヴァイオリニストのリサ・バティアシュヴィリが2位に入賞しています。同年は佐藤まどかが3位です。2000年には、日本勢の玉井菜採が2位、 日下紗矢子が3位となっています。

作曲の経緯

シベリウスヴァイオリン協奏曲は1903年に作曲されました。交響曲でいえば、第2番第3番の間です。

翌1904年にヘルシンキでシベリウス自身の指揮とヴァイオリン独奏にヴィクトール・ノヴァチェクにより初演されました。しかし、初演は成功とまではいえませんでした。

この頃のシベリウスの改訂癖もあり、1905年にヴァイオリン独奏の改訂を行いました。第1楽章に技巧的な2つのカデンツァがありましたが、その一つを削除しました。他の部分も削除し、全体的にコンパクトになりました。

改訂版は同年ベルリンでリヒャルト・シュトラウスの指揮とヴァイオリン独奏にカレル・ハリルにより初演しました。現在ではこの1905年改訂版が使用されています。

曲の構成

シベリウスのヴァイオリン協奏曲は、通常の3楽章形式をとっています。ただ、少なくとも改訂版では第2楽章が重要で中ほどで大きく盛り上がり、大きなピークを築いているため、そのピークを中心にシンメトリックに見えます。これはこの協奏曲の全体の構成で大事な所だと思います。

第1楽章:アレグロ・モデラート~アレグロ・モルト~モデラート・アッサイ~アレグロ・モデラート~アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ

3つの主題による自由なソナタ形式です。カデンツァが展開部に当たるという特殊な構成になっています。

第2楽章:アダージョ・ディ・モルト

三部形式の緩徐楽章です。ヴァイオリンとオーケストラが盛り上がっていき、この曲、最大のピークを築きます。

第3楽章:アレグロ、マ・ノン・タント

3/4拍子のロンド形式です。ヴァイオリン独奏がロンド主題を奏でます。

おすすめの名盤レビュー

それではシベリウス作曲ヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47名盤をレビューしていきましょう。

もしこの曲を深く理解したい場合は、クレーメル盤出来ればオイストラフ盤をまずはじっくり聴きこむことをお薦めします。そうすると、この曲の定番とされる解釈が分かると思いますので。テミルカーノフが指揮した庄司さやか盤もその延長にあることが分かると思います。

Vn:バティアシュヴィリ,バレンボイム=シュターツカペレ・ベルリン

リサ・バティアシュヴィリの繊細で切れ味鋭い表現、スケールの大きな伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 繊細
  • 情熱的
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

バイオリンリサ・バティアシュヴィリ
指揮ダニエル・バレンボイム
演奏シュターツカペレ・ベルリン

2015年6月,ベルリン (ステレオ/デジタル/セッション)

リサ・バティアシュヴィリは非常にこなれた表現で、透明感の高いヴァイオリンの音色はシベリウスに相応しいです。伴奏はバレンボイムとシュターツカペレ・ベルリンです。懐の深い伴奏でバティアシュヴィリの演奏を好サポートしています。新しいの録音で、透明感があり繊細です。

第1楽章ストレートな感情表現が多いですが繊細で柔らかい所もあり、ヴォキャブラリー豊富で変幻自在です。繊細な音色ですがテクニックは凄いです。伴奏はスケール大きく盛り上がります。第2楽章はスケールが大きいです。バレンボイムは迫力のある伴奏をつけています。それに対してバティアシュヴィリはあくまで情熱的で繊細な表現です。情感あふれる表現でクライマックスを迎えます。第3楽章はリズミカルです。細かいフレーズが多いですが、それぞれ表情をつけつつ弾いていきます。

バティアシュヴィリは本当にシベリウスと相性が良いですね。ヴァイオリンの音色のイメージが近いのではないかと思います。歴史的にもトップを争うクオリティの高い名盤です。

Vn:オイストラフ,オーマンディ=フィラデルフィア管

オイストラフの十八番、美しい音色
  • 名盤
  • 定番
  • ダイナミック

超おすすめ:

ヴァイオリンダヴィッド・オイストラフ
指揮ユージン・オーマンディ
演奏フィラデルフィア管弦楽団

1959年12月,フィラデルフィア (ステレオ/アナログ/セッション)

オイストラフシベリウスと余程相性が良いのか、非常な名演奏です。最初から彫りの深い表情をつけて演奏しています。ダイナミックになり独特の太く柔らかい音で盛り上げます。他のシベリウス演奏とは一線を画した表現です。

伴奏もとても良い雰囲気を作り出しています。実はオーマンディはシベリウスのファンでシベリウスが作曲した家まで訪れ、本人に直接会ったことがあるようです。フィンランドの寒さは表現していませんが、ふくよかで色彩的に鳴らしていて、ダイナミックで表情豊かです。

Vn諏訪内晶子,オラモ=バーミンガム市響

しなやかで情熱あふれる名演、伴奏も色彩的で表情豊か
  • 名盤
  • 定番
  • 繊細
  • 情熱的
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリン諏訪内晶子
指揮サカリ・オラモ
演奏バーミンガム市交響楽団

2002年6月,バーミンガム (ステレオ/デジタル/セッション)

シベリウスを得意とする諏訪内晶子のディスクです。伴奏は、センスの良い伴奏で評価の高いサカリ・オラモ=バーミンガム市交響楽団です。サカリ・オラモはシベリウスと同じフィンランド人で、この協奏曲の伴奏も得意です。

シベリウスでは第1楽章からストレートで力強い表現で、感情を爆発させています。諏訪内晶子の長所が良く出ていると思います。しなやかさがありシベリウスの繊細な感情表現も同時に入れ込んでおり、高音域は艶やかでクオリティが高いです。伴奏も割とストレートでテンポの速いサカリ・オラモのシベリウス演奏はやはり素晴らしく、音楽的な広がりを加えています。

第2楽章はオケから始まりますが、木管のソロの部分で、とても録音の音質が良いことが分かります諏訪内晶子のヴァイオリンソロは、しなやかに感情を秘めつつ、広々と演奏していきます。オラモとオケの主題もシベリウスらしい、あるいは北欧らしい伴奏をつけています。伴奏は色彩的な音色で、好サポートです。諏訪内晶子は最後までしなやかに表現し、最後のピークでは広々とかつ感情的に盛り上がります。聴きごたえのある第2楽章です。

第3楽章は、オケの軽快なリズムで始まります。オラモ=バーミンガム市響は、かなり軽快なリズムです。諏訪内晶子もカラッとしたリズミカルな音楽を展開しています。一方で、そんなリズミカルな中でも鋭いニュアンスになったり、ウェットな表現を合間に入れ込んだりしています。技巧的にも難易度が高めだと思いますが、そんなことは全く感じさせず余裕をもって音楽的な表現に集中しています。

諏訪内晶子サカリ・オラモはどちらもシベリウスが得意ですが上手くアンサンブルしていて、両者の長所を出し合って、音楽的表現の幅が広がっている感じですね。なおカップリングのウォルトンヴァイオリン協奏曲は、イギリスの曲ということもあって、オケも気合いが入っていて名演です。

Vnヒラリー・ハーン,サロネン=スウェーデン放響

速めなテンポでストレートな力強い表現の名演
  • 名盤
  • 知的
  • 情熱的
  • 透明感

おすすめ度:

ヴァイオリンヒラリー・ハーン
指揮エサ=ペッカ・サロネン
演奏スウェーデン放送交響楽団

2007年3月,ストックホルム (ステレオ/デジタル/セッション)

ヒラリー・ハーンは技術的には文句なく圧倒的な正確な演奏をするのですが、感情表現が苦手なのではないか?という評価を受けがちです。でも、このCDを聴けばクールな中にも情熱的で感情を爆発させたような演奏が出来ることがよく分かります。伴奏の指揮者はサロネンでヒラリー・ハーンよく合います。スウェーデン放送交響楽団は、北欧の中でも高い能力を持ったオケで、この曲には理想的な組み合わせですね。

第1楽章は、ヒラリー・ハーンらしい力強い演奏で始まります。テンポも少し速めで、熱してくるとさらにアッチェランドしていきます。一方、ゆっくりなテンポの個所もしなやかに弾いていきます。もっと情感に溢れた演奏は沢山あると思いますが、この先はヒラリー・ハーンの個性だと思います。伴奏も熱気にあふれたシベリウスらしい演奏で、さすが北欧の演奏家です。力強い伴奏で、上手くヴァイオリン独奏をサポートしています。第一楽章後半になると、ヴァイオリンの技術に舌を巻きます。軽々と演奏していて、完璧な演奏とは、まさにこのことですね。

第2楽章では深い音色で歌っています。伴奏も速めのテンポと厚い響きの弦楽セクションで応えます。ヒラリー・ハーンも力強く情熱的な表現で段々と盛り上がり、かなり聴きごたえがあります。第3楽章ヒラリー・ハーンのリズミカルで強靭と言える位、力強いヴァイオリンで始まります。レガートで広がりがある部分でも、ハリのある音色で力強さを失いません。言葉で書くと同じ「力強さ」でも、結構ヴォキャブラリーがあって飽きません。後半の技巧的な個所は完璧な演奏です。情熱も伴っていて、オケと一緒にダイナミックに盛り上がっていきます。

ヒラリー・ハーンとサロネンの組み合わせは、シベリウスでは情熱的で力強い、割とスタンダードな表現でした。そのスタンダードな所がこの演奏の良い所だと思います。ソロと伴奏の相性の良さは、滅多にないレヴェルです。ちなみにカップリングのシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲は珍しいですが名演です。

Vnフェラス,カラヤン=ベルリン・フィル

力強く艶やかなヴァイオリンの音色、シベリウスを十八番とするカラヤンの伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 力強さ
  • 艶やか
  • 重厚
  • ダイナミック

おすすめ度:

ヴァイオリンクリスチャン・フェラス
指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1964年10月,ベルリン (ステレオ/デジタル/セッション)

クリスチャン・フェラスのヴァイオリン独奏、カラヤンとベルリン・フィルの伴奏という組み合わせです。フェラスは力強く艶やかなヴァイオリンで音色が素晴らしいと共に、カラヤンとベルリン・フィルの重厚さに十二分も伍しています。こんなに力強い録音は他には無いと思いますが、フェラス、カラヤン共々その方向を極めた名盤です。録音は非常によく1960年代とは思えません。ヴァイオリンの音色の細部まで良く聴こえてきます

第1楽章冒頭から力強いヴァイオリンの響きが素晴らしいです。カラヤン=ベルリン・フィルはかなり重厚な伴奏を付けていますが、ヴァイオリンとのバランスはしっかりしています。フェラスは時に強い感情表現を付けながらダイナミックに弾いていきます。第2楽章は凛とした透明感のある伴奏から始まり、情熱的なヴァイオリンが入ります。そして甘美な表現となっていき、オケと共に盛り上がります

第3楽章はしっかりしたリズムで細かい表情付けで楽しめます。オケの伴奏は遠慮なくダイナミックです。ヴァイオリンも負けずにダイナミックに演奏していきます。そして壮大な音楽となっていきます

シベリウスを得意とするカラヤンの良さを発揮した演奏ですし、フェラスの力強い表現も素晴らしい名盤です。

クレーメル,ロジェストヴェンスキー=ロンドン交響楽団

鋭くストレートで情熱的な名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱的
  • スリリング
  • ダイナミック

おすすめ度:

ヴァイオリンギドン・クレーメル
指揮ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
演奏ロンドン交響楽団

1977年8月12-13日,ザルツブルク大学・大ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

クレーメルの若い頃の名盤です。少し録音に古さが感じられますが、1977年の録音なのでそんなに古くはないのですね。何よりクレーメルの演奏が凄くて、すぐに引き込まれます

第1楽章はクレーメルは非常に鋭くストレートで力強く情熱的な演奏です。ロジェストヴェンスキー=ロンドン交響楽団もスケールが大きく力強い伴奏を付けていますが、全く負けていません。北欧情緒があるかといえば情熱的な所はそう感じますが、ここまでシャープな表現で伴奏もダイナミックで、情緒というよりもっと深みのある演奏です。

第2楽章は第1楽章と異なり、美しい木管の響きで始まり、甘美なヴァイオリン独奏となっています。そして盛り上がっていきますが、喜びに満ちたスケールの大きさがあります。第3楽章は、リズミカルで技巧的です。伴奏もまたダイナミックさが戻ってきます。

五嶋みどり,メータ=イスラエル・フィル

力強くストレートな感情表現
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • ダイナミック

超おすすめ:

ヴァイオリン五嶋みどり
指揮ズビン・メータ
演奏イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

1993年 (ステレオ/デジタル/セッション)

20代後半の五嶋みどりの名演奏です。冒頭から思い切りシャープでストレートに感情をぶつけていきます。さらに盛り上がっていきます。イスラエルフィルもダイナミックすぎる所がありますが、言われなければイスラエルという暑い所のオケと思えないような北欧情緒の感じられる響きを出しています。

第2楽章情熱の中に北欧情緒が感じられる名演です。ヴァイオリンも情熱的に盛り上がり、オケも良い響きで盛り上がっていきます。大きく盛り上がり頂点を築いています。第3楽章は中庸なテンポで、力強く3拍子を刻んでいきます。鋭いヴァイオリンの音色が印象的です。低音域ではコクのある響きです。オケは結構ダイナミックで、リズミカルなのはいいのですけど、主役はヴァイオリンなので、もう少し小編成でも良かったんじゃないか、と思ってしまいます。五嶋みどりのヴァイオリンはテクニカルな所は余裕で弾いていきます。難しい箇所でも常に安定したコントロールしています。

Vn庄司さやか,テミルカーノフ=サンクトペテルブルク・フィル (2017年)

庄司さやかの情熱的な名演奏と個性的な深みのある伴奏
  • 名盤
  • 情熱的
  • 格調
  • 高音質

おすすめ度:

ヴァイオリン庄司さやか
指揮ユーリ・テミルカーノフ
演奏サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー

2017年10月,サンクト・ペテルブルク (ステレオ/デジタル/ライヴ)

庄司さやかのヴァイオリン独奏とテミルカーノフ指揮サンクト・ペテルブルグフィルの伴奏です。それにしてもテミルカーノフのシベリウスは相当奥深いですね。何度か聴いてやっと独特の深みを理解してきました。少しおどろおどろしい世界観を作り上げているようにも感じます。

第1楽章はもっとストレートでスケールが大きいイメージがあるのですが、テミルカーノフはシベリウスの音楽に直接的に切り込むことはありません。鬱々した世界の表現です。庄司さやかは情熱的で表情豊かなヴァイオリンを聴かせてくれます。時折、激しい感情の発露もあって、とてもいい演奏だと思います。時折、伴奏も素晴らしいうねりのある響きを聴かせてくれます。

第2楽章テミルカーノフは格調高くシベリウスの世界に単刀直入に入っていくことはありませんが、どんな音楽を作りたいのか、は良く伝わってきます。庄司さやかは引き続き情熱的演奏を展開していきます。中央付近でスケールの大きなピークのある音楽です。所々でオケがいい音を響かせています第3楽章は、標準的なテンポですが、伴奏がかなり小さい音量でリズムを刻んでいます。第2楽章までに内面に入り込んでいないので、第3楽章も他とは違う少し個性的な音楽になりますね。庄司さやかは情熱的な演奏をしていきます。テクニックも素晴らしいです。全体的にラストに向かって盛り上がっていきます。

テミルカーノフ=サンクトペテルブルグ・フィルは、現在のロシア楽壇の頂点です。そんなコンビと多くの録音をしてきた庄司さやかは凄いし、他の日本人ヴァイオリニストには無い特別な環境です。テミルカーノフの個性は難しいですが、このディスクは聴けば聴くほど、面白みにハマっていく感じです。

Vnムター,プレヴィン=ドレスデン・シュターツカペレ

力強く繊細なムターらしい油絵のような響き
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • ダイナミック

おすすめ度:

ヴァイオリンアンネ=ゾフィー・ムター
指揮アンドレ・プレヴィン
演奏ドレスデン・シュターツカペレ

1995年5月,ドレスデン (ステレオ/デジタル/セッション)

ムターのヴァイオリン独奏です。プレヴィンの指揮にドレスデン・シュターツカペレという異色の組み合わせの伴奏です。録音の音質は良く、クオリティが高いです。

ドレスデン・シュターツカペレはドイツらしく少し重厚でクールさがあり、ムターのドイツ的で厚みのあるヴァイオリンの響きと上手く合います。ムターは冒頭のソロから力強さの中にしなやかで繊細な表現を織り交ぜロマンティックな表現をしています。最初の一音から引き込まれるような吸引力があります。第1楽章のラストは凄いテクニックを魅せてくれます。第2楽章はプレヴィンの上手い雰囲気づくりで始まります。ファンタジックな世界です。ムターもそれに乗せて弾いていき、盛り上がっていきます。第3楽章は、標準的なテンポでロマンティックな表現を繰り広げています。技術的に凄い所が盛り沢山です。

このディスクは演奏レヴェルは最高のクオリティですが、ムターのシベリウスが好きかどうか、好みが分かれそうですね。やはりムターの油絵のような響きやプレヴィンのファンタジックさがシベリウスに合うと思えれば良いですし、合わないと感じる人もいそうです。まあ、万人の好みに合う演奏というのも、あまりいいとは言えませんけれど。

歴史的名盤

歴史的名盤といえばヌヴー盤が素晴らしいです。

Vnヌヴー,ジュスキント=フィルハーモニア管弦楽団

情熱的で強靭さを感じる位の凄い集中力
  • 歴史的名盤
  • 定番
  • 情熱的
  • ダイナミック

超おすすめ:

ヴァイオリンジネット・ヌヴー
指揮ワルター・ジュスキント
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1945年 (モノラル/アナログ/セッション)

ジネット・ヌヴーの録音ほど歴史的名盤というに相応しい録音はありません。1945年という古さにも関わらず、凄いエネルギーで聴き手に訴えかけてきます。音質は古さを考えれば安定しており、ヴァイオリンは十分しっかり録音されています。

第1楽章はストレートに情熱的に始まり、曲が進むにつれ、さらに集中力が増していきます。強靭と言える位の強い感情表現になっていきます。伴奏はやはり音質の古さを感じます。しかし、ヌヴーのヴァイオリンが入ると凄いエネルギーに引き込まれます。第2楽章はさらに凄い演奏です。ヌヴーの演奏は情熱とロマンティックさのある表現で、伴奏も白熱して徐々にクライマックスに達して行きます。単にストレートなだけではなく、高い集中力の中にも美しさがあり、多彩な表現で楽しめます。

第3楽章はしっかりしたテンポで進んでいきます。少し遅めのテンポの中、ヌヴーは色彩感や繊細さある豊かな表情など、様々な表情を聴かせてくれます。

第2楽章の中盤に大きなピークのある集中力の高い名演です。ヌヴーの残した貴重なシベリウスです。

スターン,オーマンディ=フィラデルフィア管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 品格

おすすめ度:

ヴァイオリンアイザック・スターン
指揮ユージン・オーマンディ
演奏フィラデルフィア管弦楽団

1968年2月3-4日,フィラデルフィア,タウン・ホール(ステレオ/セッション)

スターンは冒頭はそこまで感情を入れずにコンパクトに演奏しています。テンポは速めで、伴奏のオーマンディもそのテンポに合わせています。スターンは速いテンポのまま、段々と感情的に盛り上がってきて、後半に入るころにはかなりシャープさがあり感情が入った演奏になっていきます。このテンポだとラストは超絶技巧ですね。第2楽章は遅めのテンポでスターンは少し甘美に演奏しています。伴奏のオーマンディ=フィラデルフィア管は雄大に盛り上がっていき、独奏とオケでピークを作ります。第3楽章は速めのテンポで、リズミカルに超絶技巧を披露しています。

スターンはコンパクトで控えめな表現ですが、第2楽章は甘美になりすぎず、品格のある表現を貫いています。オーマンディとのコンビということもあり、シベリウスは名演ですね。

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楽譜・スコア

シベリウス作曲のヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47の楽譜・スコアを挙げていきます。

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