ジャン・シベリウス (Jean Sibelius,1865-1957)作曲の『カレリア』組曲 Op.11 (“Karelia” suite Op.11)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。
解説
シベリウスの『カレリア』組曲について解説します。
「カレリア」とは土地の名前で、カレリア地方と呼ばれます。フィンランド南西部~ロシアにかけての地域を指します。現在、フィンランド側は「南カレリア県」、ロシア側はカレリア共和国となっています。
劇音楽『カレリア』
シベリウスは結婚旅行でカレリア地方に訪れ、インスピレーションを得て、1892年に劇音楽『カレリア』を作曲しました。野外劇として1893年11月13日にヘルシンキでシベリウス自身の指揮により上演されました。結果は賛否両論だったようです。
序曲
第1景:カレリアの民家、開戦の告知
第2景:ヴィーブリ城の建設
第3景:カキサルミ州で租税を徴収するリトアニア公ナリモント
アレグロ
間奏曲Ⅰ:モデラート
第4景:ヴィーブリ城でのカルル・クヌットソン、バラード
第5景:1580年カキサルミ市門でのポンチェス・ド・ガルディ
モデラート・マ・ノン・レント
間奏曲Ⅱ:古いモチーフによる行進曲
第6景:ヴィーブリ攻撃
第7景,第8景:カレリアとフィンランドの国土の統合
ヴィヴァーチェ・モルト~ピウ・プレスト~マエストーソ・エ・ラルゴ(フィンランド国歌)
序曲と組曲『カレリア』
その後、カレリア序曲Op.10は単独で出版されました。
また3曲選び出し、組曲『カレリア』Op.11としました。
今日、演奏されるのは主にこの2つですが、劇音楽のディスクもあり、意外と聴きごたえがあります。
曲の構成
劇音楽全曲版を聴いてみると、親しみやすさで選曲したのかな、と感じます。
序曲
単独で演奏されることが多いですが、結構内容の濃い序曲で、充実感があります。
第1曲:間奏曲
組曲とは言え、第1曲が間奏曲で始まるのは不思議な感じがします。劇音楽は間奏曲が多くなるので仕方ないかも知れませんけれど。第1曲に相応しい落ち着いた音楽です。
第2曲:バラード
組曲『カレリア』の親しみやすい音楽の中にあって、特に味わい深い名曲です。弦と木管が哀愁のあるメロディを奏で、曲が進むとともに深みを増していきます。
第3曲:行進曲
行進曲、というか「行進曲風に」と指示されています。軽やかな行進曲です。親しみやすいメロディで、この曲が一番有名ですね。
フルート×2、ピッコロ×1、オーボエ×2、コーラングレ、クラリネット×2、ファゴット×2
ホルン×4、トランペット×3、トロンボーン×3、テューバ
ティンパニ、シンバル、バスドラム、トライアングル、タンブリン
弦5部
おすすめの名盤レビュー(全曲版)
それでは、シベリウス作曲『カレリア』組曲の名盤をレビューしていきましょう。
オスモ・ヴァンスカ=ラハティ交響楽団
ヴァンスカとラハティ交響楽団の演奏です。珍しい劇付随音楽『カレリア』の全曲盤です。やはり劇音楽、という形だとストーリーの流れがよく分かるので、この曲の本当の面白さが伝わって来ます。他の演奏家も全曲版にチャレンジして欲しいですね。
序曲からなかなかの名曲です。演奏もフィンランド地元のオケらしく民族的な味わいのあるものです。ナレーションは入っていませんが、歌唱が入ります。組曲では第2曲のバラードは、弦の味わい深い響きが印象的で、深みのある名演です。
全体的に明るい音楽が続くわけでは無く、かといって悲劇的な音楽が続くという訳でも無く、国民楽派的な愛国心に満ちているのですが、さわやかな雰囲気と民族的な哀愁が素晴らしいです。ヴァンスカとラハティ交響楽団の組み合わせは素朴ですが、心に染み入るような哀愁を湛えていて、味わい深く聴くことが出来ます。
ラストは壮大なフィンランド国歌が演奏されて、全曲を締めくくります。
おすすめの名盤レビュー(組曲)
オッコ・カム=ヘルシンキ放送交響楽団
オッコ・カムと地元ヘルシンキ放送響楽団の名盤です。少しシャープで溌剌とした演奏です。
第3曲の行進曲風など、とても生き生きとしていて、オッコ・カムらしい情熱を感じます。ヘルシンキ放送交響楽団もレヴェルの高い演奏と、少しくすんだ民族的な響きで楽しませてくれます。
カップリングはカラヤン=ベルリン・フィルなど、シベリウスを得意とする演奏家の名演で、この手のCDの中でもお買い得なディスクです。
ヤンソンス=バイエルン放送交響楽団
ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団の演奏です。晩年のヤンソンスらしくとても端正にまとめられており、「カレリア」組曲も品格が漂います。また音質の良さも特筆です。
第1曲は少し速めのテンポで端正に動きを持って演奏していきます。コンパクトな響きのまとまりとホルンのレヴェルの高さが印象的です。第2曲ははかない哀愁が表現されており、感情の入れ方がとても絶妙です。テンポは若干速めですが、味わい深さのある名演です。この味わい深さは晩年のヤンソンスでしか聴けないものです。
第3曲は少し落ち着いて演奏され、ただ元気なだけではなく、とてもセンスの良い演奏に仕上がっています。第1曲から聴いてくると味わい深さをスポイルしない演奏で、とても品格があります。
全体的に、組曲「カレリア」ってこんなに味わい深い音楽だったっけ?と思える位、味わい深く、他の演奏にはない気づきが沢山ある名演です。
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楽譜・スコア
シベリウス作曲の『カレリア』組曲の楽譜・スコアを挙げていきます。
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ピアノ楽譜
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