シベリウス 交響曲第5番Op.82

ジャン・シベリウス (Jean Sibelius, 1865~1957)交響曲第5番 変ホ長調 作品82について、解説と、おすすめの名盤をレビューしていきます。

シベリウス交響曲第5番は、シベリウスの交響曲の中でも規模が大きく、構造もしっかりしていて聴き易いこともあり、人気曲です。

解説

シベリウス作曲の交響曲第5番の解説をしていきます。

シベリウスを代表する交響曲

ジャン・シベリウス交響曲第5番 変ホ長調 Op.82は、完成度の高さでも曲の内容の充実さで考えても、シベリウスの交響曲を代表する名作です。

第3楽章:ベルグルンド=ヨーロッパ室内管弦楽団

もちろんシベリウスは全部で7曲の交響曲を作曲していますので、交響曲第6番第7番も深みのある名曲です。ただ、曲の規模が段々と小さくなっています。交響曲第7番は単一楽章しかありません。

交響曲第5番は気力が充実していた時点で書かれた交響曲です。

交響曲第5番の改訂

1915年初演時は4楽章構成でした。初演は大成功を収めましたが、1919年に大きな改訂を施して、第1楽章が、元の第1楽章と第2楽章を続けて演奏する形となったため、3楽章構成になりました。改訂版では第1稿で感じられた冗長さがなくなり、全体的に引き締まった構成になりました。改訂して良さが失われることも多いのですが、シベリウスの交響曲第5番では改訂によって大幅に良い作品になりました。現在では改訂版が演奏されます。

民族楽派的な交響曲といえるか?

曲の内容は、当時の第一次世界大戦に大きな影響を受けています。しかも、その直後フィンランドが独立するため、かなりの混乱がありました。民族の独立という、民族主義の音楽家にとっては大事な場面なのですが、シベリウス交響曲第5番は穏やかに始まり、フィンランドの自然を描いたり、内省的な音楽になっています。第3楽章は透明感の高いアレグロに始まり、最後はスケールの大きな音楽で終わります。やはり第5番なのでベートーヴェンの「運命」は意識しているでしょうね。

ただ、聴いていると最後のスケールの大きな音楽は少し冗長に聴こえます。祖国の独立を喜びつつも、どこか不完全燃焼に思えるのは、第1次世界大戦の被害が大きかったからでしょうか?それともシベリウス自身、内省的な傾向が強まって、このあとうつ病になってしまうのですが、その所為もあるかも知れません。シベリウスの音楽はとても民族的ではあるのですが、民族主義だけでは語れないものがありますね。

icon
[PR] 作曲家シベリウスの家(アイノラ邸)を訪問!
アイノラ・オプショナル・ツアー<5~9月/日本語/ヘルシンキ発>(VELTRA)
icon

お薦めの名盤レビュー

シベリウス作曲の交響曲第5番のおすすめの名盤をレビューしていきます。

ベルグルンド=ヨーロッパ室内管弦楽団

ヨーロッパ室内管の高い技術で本質を突いた名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮パーヴォ・ベルグルンド
演奏ヨーロッパ室内管弦楽団

1996年12月(デジタル/セッション)

シベリウス:交響曲全集
在庫情報:残り5点 レビュー数:26個

ベルグルンドはフィンランドの指揮者ですが、シベリウスや北欧のニールセンなど、少数の作曲家の作品をとても得意としていました。左手で指揮棒を振る独特のスタイルです。指揮者は左利きでも右手で指揮棒を持つのが普通です。

シベリウスの演奏にかけては、単なる北欧のロマンに収まることはありません。ベルグルンドは容赦なく、人間の心の内側に入っていきます。独特の演奏スタイルで、他のロマンティックな演奏しか聴いていないと、この表現は本当にショッキングです。あっという間に、人間の心の中の旅へ連れていかれます。この点は、どのオーケストラでも変わらないですね。

ヨーロッパ室内管弦楽団との演奏とヘルシンキ・フィルとの演奏がありますが、どちらも素晴らしいです。違いは民族性と技術レベルの高さでしょうか。ヨーロッパ室内管弦楽団は、特に北米的な性質をもったオケではありませんが技術レヴェルが高く、交響曲第5番では特にそれが生かされています。第3楽章の前半のひんやりとした透明感は他の演奏ではなかなか聴けないものです。交響曲第5番では、ヨーロッパ室内管弦楽団のほうが良いと思います。

ベルグルンド=ヘルシンキ・フィル

ヘルシンキ・フィルの演奏による内容の充実した名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 民族的
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮パーヴォ・ベルグルンド
演奏ヘルシンキ・フィルハーモニー

1986年12月(デジタル/セッション)

Sibelius: The Symphonies, Kullervo, Finlandia, Tapiola, Oceanides
在庫情報:残り4点 レビュー数:126個

ベルグルンドは全部で3種類のシベリウス交響曲全集を残しています。一つ目はイギリスのボーンマス交響楽団、2番目はフィンランドの名門であるヘルシンキ・フィル、3番目はヨーロッパ室内管弦楽団です。

ヘルシンキ・フィルとの演奏は、独特の温かみがあり、特に交響曲第1番、第2番では素晴らしい演奏になっています。交響曲第5番では先述のようにヨーロッパ室内管弦楽団のほうが良いと考えていますが、ヘルシンキ・フィルもまた別の良さがあります。ベルグルンドもヨーロッパ室内管弦楽団の時ほどストレートな表現ではなく、クールになりすぎず暖かみのある表現をしています。響きが民族的で大分違うので、両方入手して聴き比べるのもお薦めです。

カラヤン=ベルリン・フィル (1965年)

カラヤン得意の第5番、重厚な名演
  • 名盤
  • 定番
  • 重厚
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1965年2月,ベルリン,イエス・キリスト教会

シベリウス:交響曲第4番&第5番
在庫情報:残り2点 レビュー数:2個

シベリウス交響曲第5番は、オーケストラの技術がモノをいう交響曲です。となれば、技術的には世界最高レベルで、近代以降の音楽を得意としているカラヤン=ベルリンフィルは外せないですね。

カラヤンは余程この曲に相性が良いのか、普通に演奏しているだけに見えて、名演奏になっています。もちろん、ベルリンフィルの高いテクニックと安定感があってのことです。

透明感はヨーロッパ室内管弦楽団ほどではないですが、重量級の演奏で本当に聴きごたえがあります。人間の心の内部に抉りこんでいくような個所もあくまで譜面に忠実で、わざとらしさは全くなく、それでいて物足りないということもありません。これはショスタコーヴィチ交響曲第10番でも言えることなのですが、よほど曲と相性が良いのだろうと思います。

ヴァンスカ=ミネソタ管弦楽

ヴァンスカと技術のあるミネソタ管弦楽団の新盤
  • 名盤
  • 定番
  • 自然
  • 芳醇

超おすすめ:

指揮オスモ・ヴァンスカ
演奏ミネソタ管弦楽

2011年6月,ミネアポリス,オーケストラ・ホール(デジタル)

シベリウスを得意としているオスモ・ヴァンスカとアメリカのミネソタ管弦楽団とのシベリウス交響曲全集です。オーケストラのレベルが高く、演奏が素晴らしいうえ、録音のクオリティも素晴らしく、新しい時代のスタンダードになることが期待される名盤です。

基本はヴァンスカ=ラハティ響の演奏スタイルとそれほど変わりません。やはり演奏レヴェルは地方オケであるラハティ響とは比べられません。ミネソタ管はホルンや管楽器がとても上手く、透明度の高い響きで、最初から北欧的な雰囲気を上手く出しています。

第3楽章の上手さはさすがです。速めのテンポで爽快に演奏しています。オーケストレーションの素晴らしさが良く伝わってくる快演です。録音も良く響きも素晴らしいですが、ベルグルンド=ヨーロッパ室内管弦楽団ほどストレートではなく、すっきりとした響きで北欧風の情緒もあります。細かいところまでアンサンブルの目が行き届いていて、充実した演奏です。

ヴァンスカ=ラハティ交響楽団

フィンランドの地方オケの味わいある名盤
  • 名盤
  • 自然
  • 芳醇
  • 民族的

超おすすめ:

指揮オスモ・ヴァンスカ
演奏ラハティ交響楽団

1995,97年,フィンランド,ラハティ,十字架教会(セッション/デジタル)

シベリウス:交響曲第5番変ホ長調
在庫情報:残り2点 レビュー数:6個

[タワレコ]シベリウス: 交響曲全集
在庫情報:在庫ありレビュー数:1

このCDは、唯一初稿のシベ5を聴けるものです。そして後半は改訂版が収録されているので比較できます。

ヴァンスカの指揮も素晴らしく、あまり知られていないラハティ交響楽団で、説得力のある演奏を繰り広げています。初稿を聴いてみて、あまりの印象の違いに驚きました。改訂版の後、初稿を聴くとシベリウスが目指した有機的な楽章の統一で第1楽章と第2楽章が一緒になったことで音楽的に連続性が出てきたことが分かります。

ラハティ交響楽団は技術はまあまあですが、民族性のある音色を持ったオケで上記の第5番の場合、ミネソタ管弦楽団とどちらがいいか迷う所です。ヴァンスカ=ラハティ交響楽団の第5番はフィンランドの自然を感じる演奏で、くすんだ民族的な響きに浸れる演奏です。

ネーメ・ヤルヴィ=エーテボリ交響楽団

北欧の民族的な響きとダイナミックさ
  • 名盤
  • 自然
  • 民族的
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ネーメ・ヤルヴィ
演奏エーテボリ交響楽団

2002年12月,エーテボリ,コンセルトフセット(ステレオ/デジタル/セッション)

Symphony 5 / Andante Festivo
在庫情報:レビュー数:4個

エーテボリ交響楽団ノルウェーの響きを活かして、民族的で厚みのある豊かな響きの演奏です。録音会場の残響も少し長めで、北欧らしい少しくすんだ土の香りを上手く引き出しています。さすがネーメ・ヤルヴィです。もちろん、シベリウスはフィンランドの作曲家ですけど、民族的な響きはかなり近いです。

また、フィンランドのオケよりも上手いので、管楽器のソロが良く映えます。第1楽章前半は、北欧の自然を表現した雰囲気で、豊かな響きを醸し出しています。第1楽章後半は、かなりテンポアップして、ヤルヴィらしい個性的なテンポ取りです。第2楽章は非常にゆっくり、ゆったりと歌い上げます。豊富な響きで、音楽表現のヴォキャブラリーも多いので飽きることはありません。ゆっくり浸ることが出来ます。

第3楽章は、ベルグルンド=ヨーロッパ室内管弦楽団のような透明感は出せませんが、民族的なくすんだ響きの中で速めのテンポで進みます。民族的な響きの演奏です。最後はダイナミックに終わります。

大体、ベルグルンド=ヘルシンキ・フィルの上手さと、ラハティ交響楽団のくすんだ音色を合わせたような雰囲気でしょうか。味わいのある名盤です。

尾高忠明=札幌交響楽団

自然と感情を繊細に絡めた演奏
  • 名盤
  • 繊細
  • 自然
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮尾高忠明
演奏札幌交響楽団

2015年2月13・14日,札幌コンサートホールKitara(ライヴ)

シベリウス:交響曲第1番, 第7番
在庫情報:残り1点 レビュー数:6個

イギリスのBBCウェールズで活躍し、円熟の境地にある尾高忠明とフィンランドと同じ北国の札幌交響楽団の演奏です。録音も新しいので音質も悪くないですし、音響も素晴らしいキタラでの演奏です。

自然な速めのテンポで始まります。札響は北国のオケですが演奏には暖かみがあります。あるいは尾高忠明が暖かみを付け加えているのかも知れません。木管のアンサンブルは、徐々に憂鬱さを増していきます。繊細で綿密なアンサンブルです。第1楽章後半は速めのテンポ、コンパクトな音楽で、少し神経質な所も。第2楽章は色彩的な情感に満ちた演奏でとても味わいがあります。第3楽章は少し迫力不足ですね。特に低音域が弱いように思います。ラストの盛り上がりは札響も全開ですが、あまりパワフルなオケではないですね。

全体的に味わい深い演奏で、特に第1楽章、第2楽章などは名演です。独特の暖かみと北国ならではの透明感があり、シリアスな部分も含めて味わい深く聴けます。普段、聴くのにいいかも知れません。

CD,MP3をさらに探す

国内盤CDをさらに探す 海外盤CDをさらに探す アマゾンUnlimitedをさらに探す

楽譜

シベリウス作曲の交響曲第5番の楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュア・スコア

大判スコア

楽譜をさらに探す

アマゾンで楽譜をさらに探す アマゾンで輸入楽譜をさらに探す