ドヴォルザーク 交響曲第9番『新世界より』

アントニン・ドヴォルザーク(Antonin Dvorak, 1841~1904)作曲の交響曲第9番 ホ短調 OP.95『新世界より』の解説とおすすめの名盤をレビューしていきます。

ドヴォルザークの新世界交響曲といえば、第2楽章のコールアングレのメロディは知らない人はいないと思います。大抵の自治体で午後5時になると流されますし。聴くと家に帰りたくなってくるメロディですね。

それだけではなく、この交響曲はドヴォルザークで一番の名作です。交響曲としてのプロポーションもしっかりしていますし、その中でメッセージが明確に表現されています。ロマン派の交響曲の中でもブラームスに匹敵する曲だと思います。

第2楽章:ビエロフラーヴェク=チェコ・フィル

解説

ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番『新世界より』の解説をします。

アメリカに渡る

ドヴォルザークはニューヨークのナショナル音楽院の依頼で、音楽院の院長に就任することになりました。ドヴォルザークは、いったん申し出を断っていますが、創立者ジャネット・サーバー女史の説得と好待遇のため、最終的に承諾することにしたのでした。

ドヴォルザークは1892年9月に家族と共にアメリカに渡ります。そして、アメリカの地で弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」チェロ協奏曲ロ短調などの名作を作曲しています。その中でも最も有名なのが、この交響曲第9番『新世界より』です。

第4楽章:カラヤン=ウィーン・フィル

この交響曲には五音音階やシンコペーションの多用など、アメリカの影響が随所に見られます。『新世界より』の標題について、

アメリカ大陸から故郷の人々に送る印象記

と書いています。

一方で、自然の豊かなボヘミアから、当時、既に摩天楼が林立していたニューヨークへ移り住んだわけで、ドヴォルザークが故郷への郷愁の念に駆られたことは、簡単に想像できます。曲自体もアメリカ的、というよりは、故郷への郷愁を誘うような印象です。一番、有名な第2楽章のコールアングレのメロディは、夕方、子供たちに帰宅を促すために使われる位ですしね。

初演

初演は1893年12月16日に、ニューヨークのカーネギー・ホールで、アントン・ザイドルの指揮によりニューヨーク・フィルハーモニーにより行われ、大成功しました

『新世界より』の構成

ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番『新世界より』は、4楽章構成の交響曲です。

第1楽章:アダージョーアレグロ・モルト

序奏のついたソナタ形式で書かれています。序奏は、チェロによる郷愁に満ちた旋律で始まりますが、この雰囲気は作品全体を支配しています。主部ではホルンが五音音階を使用した第1主題を吹奏します。

第2楽章:ラルゴ

第2楽章は3部形式です。コールアングレが有名なメロディ(「家路」)を演奏します。

第3楽章:スケルツォ,モルト・ヴィヴァーチェ

溌剌とした情熱的なスケルツォです。トリオでは農民の舞曲のような音楽となります。

第4楽章:アレグロ・コン・フォーコ

力強い序奏に導かれる、第4楽章はソナタ形式です。有名なメロディをトランペットとトロンボーンが吹奏します。最後はダイナミックなフィナーレとなりますが、デクレッシェンドして消えるように終わります。

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チェコの自然を味わうなら、チェスキークルムロフとその周辺が一番です。きっとドヴォルザークの祖国へ対する気持ちも良く分かります。
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お薦めの名盤レビュー

ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番『新世界より』名盤をレビューしていきます。

この曲は非常に有名なので、お薦めの名盤はどうしても沢山出てきます。お気に入りの名盤の評価が低くても、筆者が聴いて感じた偏見ですので気にしないようにお願いします。

現在、特に一般に名盤とされているのは、カラヤン=ウィーンフィル盤ノイマン=チェコ・フィル盤(1993年)あたりでしょうか。クーベリック=ベルリンフィル盤ビエロフラーヴェク=チェコフィル盤は必聴の名盤です。またショルティ=シカゴ交響楽団盤(1983年)は魅力的な名盤です。最後にマーツァル=チェコフィル盤は、実は一番完成度が高い名盤ではないか、と思います。

クーベリック=ベルリン・フィル(1972年)

強い曲への共感と激しい位にチェコの音楽を再現した超名演!
  • 名盤
  • 定番
  • 感動的
  • 爆演

超おすすめ:

指揮ラファエル・クーベリック
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1972年6月,ベルリン,イエス・キリスト教会(ステレオ/アナログ/セッション)

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クーベリックはチェコから亡命してきた指揮者です。昔のチェコフィルとの映像も残っていますが、かなり名演で将来を嘱望されていたのではないかと思います。しかし、亡命して以降はアメリカや隣の西ドイツで活躍することになります。

ドヴォルザークの『新世界より』は、情熱的という意味では敵う演奏はありません。ベルリンフィル以外の演奏もありますが、どのオケであってもシャープで感情的な演奏を繰り広げています。特にバイエルン放送交響楽団とは長い期間関係が続き、名演奏が沢山あります。後にベルリンの壁が崩れたときチェコ・フィルの指揮台に立ちますが、既に引退していたので、以前ほどの名演奏は出来ませんでした。それでも十分感動的でしたけれど。

ベルリン・フィルとは全集を作っていて、録音年代は少し古めですが、演奏はとても素晴らしいです。最初の弦がピアニシモで入った瞬間にクーベリックの新世界に引き込まれてしまいます。その後も情熱的で力のこもった演奏で、第1楽章の最初のほうで既に感動してしまいます。第2楽章も情熱のこもった美しい演奏で、コールアングレも素晴らしいですが、ベルフィン・フィルの高弦の響きの美しさが印象的です。録音は少し古めですが、聴きにくい音質ではないです。

第3楽章、第4楽章は、非常に情熱的でダイナミックです。ダイナミックという言葉にするしかないですが、クーベリックとベルリン・フィルは他の演奏に比べても格が違います。爆演と書いてもいい位かも知れません。感情が強く入っているのですごく共感も誘いますし、でも別にネガティブな感情ではなく、聴いた後の充実感は素晴らしいです。

ビエロフラーヴェク=チェコ・フィル

チェコフィルの美点である弦の響きを堪能できる名盤!
  • 名盤
  • 定番
  • 芳醇
  • 民族的

超おすすめ:

指揮イルジー・ビエロフラーヴェク
演奏チェコ・フィルハーモニー

2013年11月プラハ,芸術家の家,ドヴォルザーク・ホール(ステレオ/デジタル/セッション)

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ビエロフラーヴェクチェコフィルの指揮者になって、チェコフィルの特に弦楽のクオリティは向上したと思います。昔から、ビロードのような弦の響き、と言われていましたが、それがさらに美しい響きになりました。

ビエロフラーヴェク自然体でしなやかな音楽づくりをする指揮者です。これは若い時、NHK交響楽団に客演していたときから、ずっとそういうキャラクターです。そして円熟してきて、これが凄くチェコフィルのサウンドにあっています。ただ知名度が低いですかね。

第1楽章から、自然さの中に高級ワインでも味わっているかのような芳醇さがあります。このサウンドを聴いているだけでも、あっという間に第1楽章が終わってしまうのですが、感情もかなり入れているので、感動的でもあります。第2楽章も郷愁がありますが、同時に響きに品格があるところがいいところです。コールアングレのソロも名演です。

第3楽章はインテンポでリズムをパッチワークのようにはめ込んでいます。ここは大雑把になりやすいのですが、ビエロフラーヴェクは職人的指揮者なので、こういう所もしっかりまとめてきます。中間部はとてもしなやかです。第4楽章は低音が効いていて迫力があります。金管はそこまで派手には鳴らさず、透明感を感じるほど響きのきれいな演奏です。リズムもしっかりしていますし、迫力もあります。雑になるところがほぼ無いですね。

第4楽章などは弦の響きが弱いと感じるかも知れませんが、録音会場となったヌドルフィヌムの音響はこんな感じで、弦楽器を上手く響かせると、とても良い音がします。録音は2013年と新しく音質は素晴らしく良いです。

カラヤン=ウィーン・フィル

円熟したカラヤンと磨き抜かれたウィーンフィルの響き!
  • 名盤
  • 定番
  • 格調

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ウィーン・フィルハーモニー

1985年1月,2月,ウィーン

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カラヤンの1980年代の録音です。既に円熟の境地で、1970年代までのダイナミックさは影を潜め、ウィーン・フィルで非常に美しい響きを響かせています。響きは磨き抜かれていてまさに黄金のホールに相応しい音色です

もちろんダイナミックな所もしっかり演奏していますが、かつてのベルリンフィルとの演奏のような強力なドライヴ感は薄れ、ウィーン・フィルの響きの長所を活かした演奏となっています。ウィーン・フィルはふくよかな音色も持ってもいるのですが、カラヤンはふくよかな響きではなく、しなやかで艶のある響きを引き出しています

第1楽章は落ちつたテンポで、少しスケールの大きさも感じさせます。ウィーンフィルの弦は艶やかで、ポルタメントも使いながら、滑らかな美音を響かせています。スケールが大きいこともあり、全体的に充実感のある演奏です。第2楽章は、この演奏の白眉です。抑制された響きの中で、ソロの磨き抜かれた音色を堪能できます。この演奏のクオリティは素晴らしく、響きの綺麗さだけではなく、感情的な要素も適度に入っています。表面だけの美しさではない超名演です。

第4楽章はダイナミックな演奏です。トランペットも活躍し、ティンパニもしっかり鳴らしてダイナミックです。テンポも少し速めなくらいです。カラヤンの円熟のせいか、弱音のところも非常に美しく演奏していて、わざとらしさもありません。完成度がとても高いです。ダイナミックでスケールも大きいので、難しく考えなくても楽しめる演奏でもあります。

カラヤン最後の録音だけあって『新世界より』の一つの完成形だと思います。

ショルティ=シカゴ交響楽団(1983年)

筋肉質でスケールの大きな名演
  • 名盤
  • 定番
  • 共感
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ゲオルグ・ショルティ
演奏シカゴ交響楽団

1983年1月,シカゴ,オーケストラ・ホール,ステレオ(デジタル/セッション)

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ショルティはハンガリー人ですが、70歳を過ぎて初めて『新世界』を録音しました。しかもオケは強力な手兵のシカゴ交響楽団です。

ショルティ=シカゴ交響楽団らしい、筋肉質でダイナミックな演奏です。第1楽章でフォルテで弦が出てくる所で、既にダイナミックさに度肝を抜かれます。その後は、少し遅めのテンポでしっかりした演奏を繰り広げています。これぞ『新世界』の第1楽章という感じで、ツボを心得た演奏で、充実感が高いです。考えてみるとシカゴ交響楽団はラファエル・クーベリックが指揮者だった時代があります。

第2楽章はゆっくりしたテンポで、じっくり歌っています。シカゴ響は弱音になると、とことん小さな音を出せるので、機能的に素晴らしい反面、もう少し力を抜いて余裕があると、さらに味わい深い演奏になるのにな、と思います。でも、予想を超えて味わい深い名演だと思います。

第3楽章は鉄壁のアンサンブルです。テンポも速すぎもせず、遅すぎもせず丁度良いテンポ設定です。第4楽章速めのテンポでリズミカルかつダイナミックです。重厚な響きはチェコフィルの演奏とは大分違いますが、素晴らしいです。情緒的なところは遅めのテンポで味わい深く演奏しています。

人によっては、シカゴ響は少しドライかもという先入観があるかも知れませんが、ショルティがタクトを取ると、ストレートなので聴いていて気持ちいいですね。このドライさがこのコンビの特徴で良さでもあるんです。他にここまでのレヴェルの演奏が出来るコンビはなかなか無いと思います。

マーツァル=チェコ・フィル(2003年)

鬼才マーツァル時代のチェコフィルのレヴェルの高さを堪能できる
  • 名盤
  • 定番
  • 熱演
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ズデニェク・マーツァル
演奏チェコ・フィルハーモニー

2003年10月9,10日プラハ「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホール

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マーツァルは2003年~2007年までチェコフィルの首席指揮者だった指揮者です。良い演奏がいくつか残されていますが、知名度が低いでしょうか。

第1楽章はダイナミックで中低音が効いていて、ティンパニの強打など、筋肉質で非常に充実した演奏が繰り広げられます。2003年録音ということもあり、音質もバランスが取れていて大変良いです。第2楽章はしなやかに感情を入れた味わい深い演奏です。アンサンブルも見事でマーツァル時代のチェコフィルのレヴェルの高さが感じられます。録音の良さもあってか、コール・アングレはとても綺麗に鳴り響いています。

第3楽章は正確なアンサンブルと音の密度の高さが印象的です。非常に情熱的です。第4楽章は中庸のテンポでダイナミックに始まります。チェコフィルの弦の厚みと金管楽器群レヴェルの高さに驚かされます。ノイマン時代は金管はあまり上手いとはいえないときがありましたから。弦セクションの厚みの上に情熱的な音楽を展開していきます。

この『新世界より』は、特別新しさがある演奏ではありませんが、正道をまっすぐ歩んだ名演です。チェコの民族的な要素も、感情的な要素も入っていて、高い技術レヴェルで演奏されています。鬼才マーツァルによるこの演奏はチェコフィルの『新世界より』を代表する一枚だと思います。

小林研一郎=チェコ・フィル

チェコの指揮者からは聴けない自然に対する感性
  • 名盤
  • 熱演
  • 自然美
  • スケール感
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮小林研一郎
演奏チェコ・フィルハーモニー

2008年2月3-6日,プラハ,ヌドルフィヌム,ドヴォルザーク・ホール

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第1楽章中庸か少し遅い程度のテンポでじっくり演奏しています。丁寧な演奏でチェコ・フィルの特に弦楽セクションの美点を活かしています。時にテヌート気味になるのは日本人指揮者の特徴ですかね。それも含めてチェコフィルにコバケンの音楽を植え付けています。密度の濃い充実した熱演です。第2楽章は音量を小さくし過ぎず、ふくよかとも違いますが、コール・アングレや木管群から自然な響きを引き出しています。チェコ人と日本人は自然に対する感覚が近い、と思います。後半は味わいが濃くなってきて、チェコフィルから「わびさび」を引き出しています

第4楽章遅く余裕のあるテンポ取りでスケールの大きな音楽を作り出しています。ここまで遅くてスケールが大きい演奏は、他にはあまりなく後半は濃厚な味わいがあり、終盤のダイナミックさと熱量は凄いものがあります。

コバケンはチェコフィルから、かなり濃厚な味わいを引き出していて、小澤征爾のしなやかさとはまた大分違います。やはりチェコの現地で評価が高い理由が分かります。録音はライヴだからか新しい割には少しだけ弦にザラツキがあり△位ですかね。木管は綺麗に録音できています。

ケルテス=ウィーン・フィル

ウィーンフィルを活かしつつも、情熱的な名演!
  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮ケルテス(イシュトヴァン)
演奏ウィーン・フィルハーモニー

1961年3月22-24日,ウィーン,ゾフィエンザール

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ケテルスは全体的に速めのテンポで、感情を入れて熱い演奏をしています。

第1楽章の序奏は控えめに演奏していますが、弦セクションのフォルテはかなり劇的に入ります。かなり感情の入った劇的な演奏です。主部は速めのテンポで熱い演奏です。さらに盛り上がっていって最後はダイナミックに終わります。第2楽章はウィーンフィルらしい音色が良いです。コールアングレも良い演奏をしています。徐々に盛り上がっていき、なかなか感動的です。

第3楽章は熱気があります。チェコフィルと違って熱気がありすぎて、アンサンブルが崩れがちです。良くあることですけど。第4楽章かなりダイナミックです。ウィーンフィルも情熱的で名演です。これぞ『新世界』という感じの典型的なテンポ取りと、ウィーン・フィルの味わいが楽しめます。

録音は少し古さを感じさせますが、聴きにくさは無く、今でも通用する定盤的な名盤です。

ノイマン=チェコ・フィル(1972年)

ボヘミアの広々とした自然を感じさせるスケールの大きさ!
  • 名盤
  • 定番
  • 民族的

おすすめ度:

指揮ヴァーツラフ・ノイマン
演奏チェコ・フィルハーモニー

1972年2月23日,プラハ

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ノイマン=チェコ・フィル1972年正規録音でドヴォルザーク交響曲全集の内の一つです。全集はレコード・アカデミー賞を受賞しています。ノイマンは他のチェコの指揮者と比べても個性的な所があり、テンポ取りや細かい所のまとめ方も少し独特です。しかし、ノイマンの良い所はチェコの誇る自然を感じさせる所です。

ノイマンは『新世界より』でも決して感情的になりすぎることはなく、かといってわざとらしく自然さを強調することもありません。ノイマン流に演奏すれば、バランスの取れた演奏になるわけです。

例えば、クーベリックのように感情的なアクセントはほとんどつけません。スケールの大きさを演出するためにテンポを過剰におそくしたり、ルバートをつけることもありません。テンポはかなり動かしていますけれど。それでもボヘミアの自然を感じるのですよね。生来染みついたテンポ感なんでしょうね。

ノイマンの力の抜けた自然体の演奏は、オーケストラにも反映していて、金管の音がつぶれたり、木管が力んで響きが薄くなるようなことはありません。結果、非常に芳醇な響きが生まれます。最近アンチェルのほうが人気があるようですけど、ノイマンは少し個性的ですが独特の良さがあります。

1972年盤でも十分聴ける音質ですが、ノイマンはドヴォルザークの『新世界より』や7番、8番、9番の三大交響曲の録音をとても重視していました。1980年代1993年ライヴ(ドヴォルザーク生誕100年)1995年ライヴのディスクがあります。結構人気があったので、ディスクが多く残されていて、それぞれが名盤です。

ノイマン=チェコ・フィル(1981年)

心を揺さぶる深みのあるダイナミックさとシリアスさ
  • 名盤
  • 定番
  • 民族的
  • 格調
  • 奥深さ

超おすすめ:

指揮ヴァーツラフ・ノイマン
演奏チェコ・フィルハーモニー

1981年10月,プラハ,芸術家の家(ヌドルフィヌム)(デジタル)

ノイマン=チェコ・フィル『新世界より』など、ドヴォルザークの後期の交響曲にかける思いは特別なものがあります。1972年に交響曲全集を作っていますが、今回はデジタル録音技術を使って再録音です。ノイマンの『新世界より』は1972年で演奏の既に完成度は高いのですが、単に音が良くなった以上の違いがあります。

第1楽章深みのあるダイナミックさとシリアスを持っています。デジタル録音で名演を残そうという気合いが伝わってきます。またデジタル録音でアクセントのエッジが立ったシャープさがあります。単にチェコの自然を懐かしむような民族的な音楽ではない独特の厳しさがあります。第2楽章コールアングレが遅めのテンポでじっくり演奏します。徐々に深みを増し、感動的になっていきます

第3楽章は落ち着いたテンポで正確なアンサンブルです。トリオは民族的な雰囲気満点で聴き物です。第4楽章は王道といえる演奏です。『新世界より』の第4楽章といえばコレ、というテンポ取りです。ノイマンらしくアーティキュレーションが、丁寧につけられています。最後はダイナミックに盛り上がって充実したフィナーレです。

ノイマンの若さと円熟味が上手くバランスした名盤で、特に深みが増したと思います。

ノイマン=チェコ・フィル(1993年ライヴ)

ノイマン=チェコフィルの『新世界より』の完成形
  • 名盤
  • 定番
  • 熱演
  • 芳醇
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮ヴァーツラフ・ノイマン、チェコ・フィルハーモニー

1993年,初演百年記念コンサート・ライヴ

ドヴォルザーク『新世界より』の初演100周年記念演奏会のライヴです。とても人気のあるCDで、おそらくカラヤン盤と並んで一番売れている『新世界より』だと思います。

ノイマンのアプローチは1981年盤と大きな違いはありませんが、特別なライヴのためか熱気があり、テンポが速めで迫力があります。また、1972年盤では明らかに個性的な個所がありましたが、この演奏はスタンダードに近づいています。第2楽章も大らかに金管を鳴らして広々とした世界を描いて見せます。コールアングレのソロは深い味わいです。ノイマンのさらなる円熟も感じられ、憂鬱さと深みがあり、良さがすぐに分かる名演です。第4楽章は少し速めのテンポで始まります。スタンダードな音楽づくりで、『新世界より』の第4楽章の期待通りの名演奏です。

ノイマンとしては個性的な所が少ない演奏です。スタンダードな『新世界より』であり、もう百回以上演奏し、スコアの隅々まで頭に入っているであろうノイマンとしては、もうどんな表現でも出来るという余裕を感じます。もっと色々ユニークな解釈も出来るでしょうけど、あえて必要最小限にしている、という雰囲気です。

ノイマン=チェコ・フィル(1995年ライヴ)

ノイマン最後の『新世界』
  • 名盤
  • ライヴ

指揮ヴァーツラフ・ノイマン
演奏チェコ・フィルハーモニー

1995年1月4-7日,プラハ,芸術家の家,ドヴォルザーク・ホール(デジタル)

佐渡裕=ベルリン・ドイツ交響楽団

力強く重厚な響きと佐渡らしい熱気ある盛り上がり
  • 名盤
  • 熱演
  • ダイナミック
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮佐渡裕
演奏ベルリン・ドイツ交響楽団

2008年10月,ベルリン・フィルハーモニー(ライヴ)

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
在庫情報:残り2点レビュー数:10個

佐渡裕とベルリン・ドイツ交響楽団ライヴ録音です。ベルリン・ドイツ交響楽団は重厚でダイナミックな響きを持つオーケストラです。ワーグナーが得意で油絵のような響きを持っていると思います。その代わり緻密なアンサンブルは得意では無いようで、ヴァントが昔、客演したときもヴァントらしい緻密さが少ないなぁと思いました。今回、佐渡裕はオケの長所を生かして、力強く引き締まった演奏を繰り広げています。このコンビのCDはいくつか出ていますが、その中でも『新世界より』は名演です。

第1楽章はドイツのオケだけあって、結構低音が効いていますダイナミックさと共にマッシヴ(筋肉質)で引き締まった演奏で、充実感のある演奏です。第2楽章は豊富な響きの中にコールアングレが味わい深いです。第3楽章は中間部に佐渡の個性が出ていますね。第4楽章が一番良く、ダイナミックで情熱的に盛り上がります。

全体的に重厚さを活かしていることと、アンサンブルが引き締まっていて聴いていて充実感がありますね。また録音も新しくライヴですが、低音がしっかり入っていて高音質です。ベルリンのフィルハーモニーでの録音ですが、ベルリンフィルとのキャラクターの違いに驚かされますね。

セル=クリーヴランド管弦楽団

曲への理解の深さと演奏レヴェルの高さが両立
  • 名盤
  • 定番
  • 熱演

おすすめ度:

指揮ジョージ・セル
演奏クリーヴランド管弦楽団

1959年3月20日&21日,クリーヴランド,セヴェランス・ホール(ステレオ/2020年DSDリマスタリング)

ドヴォルザーク:交響曲第9番
在庫情報:残り1点レビュー数:9個

セルとクリーヴランド管弦楽団はドヴォルザークを得意としていました。三大交響曲は昔は定番といっていい位置づけでした。ただ最近はチェコの情緒があまり感じられないクールな演奏という位置づけでしょうか。それで、また再評価されてきたようです。他の演奏では聴けない面白さがある名盤でもあります。

第1楽章は、かなり激しい演奏です。テンポはかなり変化します。アンサンブルは全く崩れません。感情的な要素も入っていて、実際はそこまでクールな演奏では無いことが分かります。確かにチェコフィルに比べるとクリーヴランド管弦楽団は、技術は高いものの、あまり民族的な響きはないため、その辺りが物足りないかも知れません。第2楽章は非常に味わい深い演奏です。しなやかでテンポは変化が大きいですが、不自然なところはありません。それだけ良く曲を理解しきっていることが感じられます。少しウェットでドヴォルザークの心情を現すような丁寧な表現が素晴らしいです。

第3楽章はかなり速く情熱的です。この部分のリズムは意外と演奏しにくいのですが、そんなことは意にも介しません。特にトリオの民族的な舞曲は非常に素晴らしく、ジョージ・セルはハンガリー人ですが、地理的にも近いので、リズムが身にしみついている感じです。第4楽章もかなり速いテンポです。典型的な演奏ですが、ちょっと軽いかなと思いました。他の演奏に比べるとダイナミックさや情熱よりも、速くてテンポでスピーディです。遅くなる個所では情緒や味わいも感じられます。

セルは、何か別のものを表現したかったのかも知れませんけれど。例えばアメリカ音楽の影響など、他の演奏ではあまり感じられないですから。

小澤征爾=ウィーン・フィル(1991年)

ウィーンフィルの自然な音楽と小澤の精緻な指揮が見事にブレンドした名演
  • 名盤
  • 端正
  • 熱演
  • 民族的

おすすめ度:

指揮小澤征爾
演奏ウィーン・フィルハーモニー

1991年5月,ウィーン

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小澤征爾はウィーン・フィルといくつか録音を残していますが、賛否両論です。しかし『新世界より』は十分名演といえる演奏です。

第1楽章から熱のこもった演奏が繰り広げられます。ただ情熱的に押し切るのではなく、とても理知的な所もあります。アンサンブルはウィーンフィルとしてはしっかりしていて、音楽も整理されています。その上で情熱的な演奏を繰り広げています。なお、提示部の繰り返しがあります。第2楽章は味わいのある名演です。わびさびを感じますね。ウィーンフィルの持つ民族的なサウンドを活かして、少し影のある表現で、味わい深くじっくり歌いこんでいます。

第3楽章は速めのテンポで進みますが、小澤征爾らしくアンサンブルを正確にまとめています。中間部はウィーンフィルの響きを活かして、民族的な世界を作り上げています。第4楽章はエネルギッシュに始まり、有名なテーマを提示します。ダイナミックで情熱的な演奏になっていきます。

チェコの演奏家とは違う演奏ですが、中欧の自然や民族性を感じる演奏です。カラヤンのような神々しさはなく、等身大のウィーン・フィルらしい音楽を引き出し、それと小澤征爾の精緻な音楽をブレンドさせたような自然な名演です。

ドヴォルザーク・イン・プラハ(小澤,ヨーヨー・マ,他)

豪華なソリストの競演!ドヴォルザーク生誕の地での記念演奏会
  • 名盤
  • 熱演

チェロヨーヨー・マ
ヴァイオリンイツァーク・パールマン
メゾソプラノフレデリカ・フォン・シュターデ
合唱プラハ・フィルハーモニー合唱団
指揮小澤征爾
演奏ボストン交響楽団

1993年12月

アンチェル=チェコ・フィル(1961年)

アンチェル時代の機能的なチェコフィルの演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 知的
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮カレル・アンチェル
演奏チェコ・フィルハーモニー

1961年12月6日,プラハ,芸術家の家(ルドルフィヌム)

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アンチェルは、ノイマンの前のチェコフィルの指揮者です。ちょっと古い録音なので、なぜ今人気があるのか、よく分からない所もありますが、ノイマンは個性的なので、アンチェルのほうが理解しやすいかも知れませんね。アンチェルの『新世界より』はシャープで力強いものです。アンチェルは結構理知的な指揮者でストラヴィンスキーやショスタコーヴィチも指揮する人ですから。

やはり録音が1961年と古く、ダイナミックレンジが狭い気がします。ただノイマン時代のチェコフィルとは違い、かなり機能的なオーケストラだったことが分かります。アンチェルは歴代チェコフィルの中でも例外的な理知的な指揮者ですね。

第1楽章は速めのテンポで、一般的な演奏に近いですね。レガートをあまり使わない所も今のチェコフィルと大分違うところだと思います。第2楽章も遅いテンポですが、感情に流されすぎず理知的な所を感じます。コールアングレや木管楽器のからみはとても良いです。あまり遅くならず、自然なテンポで進んでいきます。中間部はかなりテンポが速くなります。ここは聴きどころです。第3楽章はリズムが正確に刻まれています。第4楽章は、意外に少し遅めのテンポで出てきます。ダイナミックに盛り上がります。やはり正確なアンサンブルです。テンポの変化が少なめなので、遅い所では速めに聴こえます。最後は、シャープにダイナミックに盛り上がって終わります。

フリッチャイ=ベルリン・フィル(1959年)

強力なベルリンフィルと情熱的で燃え上がる名演!
  • 名盤
  • 共感
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮フェレンツ・フリッチャイ
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1959年10月,ベルリン

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名盤の誉れ高いフリッチャイの『新世界より』です。このディスクではフリッチャイは手兵ベルリン放送交響楽団ではなく、ベルリンフィルを指揮し、『新世界より』の熱演を繰り広げています。やはりベルリンフィルはスケールもありますし、非常に響きが綺麗です。

第1楽章はシャープさのある演奏で、ベルリンフィルの金管を良く鳴らしていて凄い熱気です。一方、弱音の個所、歌う所などはテンポを緩めてじっくり聴かせてくれます。1959年と少し古い録音ですが、良い音質です。第2楽章は遅いテンポでじっくり聴かせてくれます。ここでは少し録音の古さを感じます。どうも再弱音がこもり気味になっている気がします。録音の問題はありますが、非常に感動的で味わい深いです。

第3楽章は速いテンポの情熱的な演奏です。ベルリンフィルのアンサンブルも完璧です。第4楽章の金管がシャープな演奏で始まります。弦も情熱的に盛り上がります。テンポ取りが自由ですね。スケールの大きさも感じさせます。終盤の燃え上がるように盛り上がります。

ベルリンフィルの場合、クーベリックとのドヴォルザーク交響曲全集があり、これが物凄く情熱的なのです。どちらも名演ですが、さすがにクーベリックと比べるとフリッチャイは基本がしっかりした演奏、という感があります。

フルシャ=バンベルク交響楽団

2018年録音の高音質、小気味良い名演

ヤクブ・フルシャは新進気鋭の指揮者でバンベルク交響楽団と録音を残しています。ただ、『新世界より』はなかなか良い演奏ではあるのですが、並みいる重鎮に囲まれて厳しい争いですね。このページでここまで紹介してきたディスクは相当レヴェルの高い名盤ばかりです。

フルシャの演奏は普通に良い演奏で、コンサートでこの演奏だったらかなり高評価だと思います。さらに2018年録音でとても音質が良いです。バンベルク交響楽団はパワーが少し弱いですが、小気味良い演奏で好感が持てます。バンベルクは地図で見るとチェコに近いこともあり、響きがチェコのオケに近い部分もあります。第2楽章のコールアングレや木管楽器群は、チェコフィルに似た味わいがあります。

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楽譜

ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界』の楽譜・スコアを紹介します。

ミニチュア・スコア

No.36 ドヴォルザーク 新世界交響曲 (Kleine Partitur)

OGT-2140 ドヴォルジャーク 交響曲第9番 ホ短調作品95 新世界より (Ongaku no tomo miniature scores)

スコア ドヴォルジャーク:交響曲 第9番 ホ短調 《新世界から》作品95 (zen-on score)

大型スコア

ドヴォルザーク: 交響曲 第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」/ブライトコップ & ヘルテル社/指揮者用大型スコア

ドヴォルジャーク: 交響曲 第8番 ト長調 Op.88、第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」/ドーヴァー社/大型スコア

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