ジャン・シベリウス (Jean Sibelius,1865-1957)作曲の『悲しきワルツ』Op.44 (valse triste Op.44)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。
『悲しきワルツ』は、とても美しく有名なメロディで、シベリウスの作品の中でも繊細な名曲です。
解説
シベリウスの『悲しきワルツ』について解説します。
シベリウスは、アルヴィド・ヤルネフェルト作の戯曲『クオレマ』に劇音楽を付けました。『クオレマ』はフィンランド語で「死」を意味しています。『悲しきワルツ』は、その中で最も有名な曲です。
『クオレマ』は全6場からなり1903年に初演されました。1904年には第1曲を改訂し、『悲しきワルツ』Op.44として初演しています。1905年には出版され、人気を得ています。
『悲しきワルツ』は以下の筋書きに対応しています。
幼い息子のパーヴァリが見守る中で、若い母親が病床に伏しています。
母親は舞踏会の夢を見ます。夢から覚めた母親は、病床から起き上がって踊り始めます。すると死んだ夫が彼女を踊りに誘います。しかし、夫と思っていた幻影は死神で、母親はそのまま息絶えてしまいます。
悲哀に満ちた曲想ですが、長調になる部分があり、その対比が非常に素晴らしいです。
おすすめの名盤レビュー
それでは、シベリウス作曲『悲しきワルツ』の名盤をレビューしていきましょう。
カラヤン=ベルリン・フィル
カラヤンとベルリン・フィルの演奏です。カラヤンはシベリウスを得意としていますし、こういった小品の表現が上手いですね。ベルリン・フィルの重厚で透明感のある響きも『悲しいワルツ』にぴったりです。
冒頭は聴こえない位のピアニシモから始まりますが、透明感があり、クールな響きは北欧のシベリウスに相応しいです。有名な長調のメロディの所は、ハッとするような演出で、とても上手いです。弦は重厚で渋く、木管はクオリティが高く、美しさが際立っています。その後、ダイナミックな音響となりますが、ベルリン・フィルの厚みのある弦の響きが素晴らしいです。
ザンデルリンク=ベルリン交響楽団
ザンデルリンクと手兵ベルリン交響楽団の演奏です。ドイツの重厚さと温かみのある演奏です。ザンデルリンクのシベリウスに対する強い思い入れが感じられます。
冒頭は遅いテンポで一音一音じっくり演奏されています。有名なメロディが登場する所でテンポが早めになり、対比が上手くつけられています。その後もじっくり遅いテンポでとても味わい深い演奏が続きます。ザンデルリンクの思い入れが感じられ、ベルリン交響楽団の重厚な響きが印象的です。
ネーメ・ヤルヴィ=エーテボリ交響楽団
ネーメ・ヤルヴィとエーテボリ交響楽団の演奏です。民族的な演奏を得意とするコンビです。
厚みのある深い弦の響き、色彩的な木管の響きで、味わい深く聴かせてくれます。ワルツというより素朴で民族的なリズム感のある演奏です。後半は熱気を帯びてきて、感情的な表現も素晴らしいです。
ロリン・マゼール=ピッツバーグ交響楽団
マゼールはユニークさのある指揮者ですが、このシベリウスからもマゼールらしさが感じられます。好みは分かれそうですが、他では聴けない名演ですね。
冒頭からテンポが速めでワルツを意識したリズム感があります。繊細なテンポの揺れがあり、繊細な表現です。他の演奏と違いあまり暗さは感じません。曲が盛り上がってくるとさらにテンポを速め、リズムの鋭さが増していきます。ワルツを意識すれば、こういう演奏もアリだと思います。
ピッツバーグ交響楽団は精緻なアンサンブルで素晴らしいですね。
『クオレマ』全曲版
セーゲルスダム=トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団、他
劇音楽『クオレマ』は全6曲から成り立っています。全曲の録音もいくつか存在しますが、『悲しきワルツ』がダントツで有名で、名演奏が多いので全曲を聴く機会は少ないですね。この録音はカラヤンやザンデルリンクの後に聴くと、感情移入が物足りない所もありますが、劇音楽らしい表現でしっかりしたクオリティの高い演奏です。
第1曲『悲しきワルツ』は遅いテンポで演奏され、ザンデルリンクのテンポ設定に近いです。有名なメロディはしなやかで丁寧に演奏されています。単独で演奏される『悲しきワルツ』とは楽譜上の違いがあり、上記のシナリオにあった曲であることが分かります。第2曲は透明感が高く神妙に始まり、テノールの歌唱が入ります。全体が「死」をテーマにした音楽ですが、第2曲もまた透き通った名曲です。
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楽譜・スコア
シベリウス作曲の『悲しきワルツ』の楽譜・スコアを挙げていきます。
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