モーツァルト 交響曲第40番 ト短調 K.550

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart, 1756~1791)交響曲第40番 ト短調 K.550について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

解説

モーツァルト作曲の交響曲第40番 ト短調について解説します。

交響曲第40番 ト短調は、第39番第41番『ジュピター』と合わせて「モーツァルトの三大交響曲」と呼ばれます。最初から3曲セットで構想され、連続して作曲されました。結果としてモーツァルトの最後の交響曲群になりました。

交響曲第40番1788年7月25日に完成しています。

ト短調交響曲

三大交響曲の中でも交響曲第40番はト短調です。ト短調といえば、同じ短調の交響曲である交響曲第25番と同じ調性です。

モーツァルトは短調の交響曲を第25番、第40番のわずか2曲しか作曲していません。この2曲は、基本的に同じ方向性で作曲されています。物凄くストレートなのです。第40番は技法的に長足の進化を遂げていますが、インスピレーションのレヴェルでは交響曲第25番 ト短調の段階で、既に時代を超えた交響曲といえると思います。

曲調は非常にロマンティックで感情的です。ストレートな表現であり、一つの感情が交響曲を貫いています。非常に特徴的な作曲技法です。

モーツァルトの場合、ハイドンなど他の作曲家に比べて交響曲に感情表現を見事に入れ込んでおり、第41番『ジュピター』でも良く感じ取ることが出来ます。その中でもト短調の交響曲ロマン派的な強い感情表現が見られます。ベートーヴェン以降のロマン派の時代を先取りした交響曲の一つと言えます。

編成も大きめで三大交響曲で、唯一、オーボエとクラリネットが使われています。意外なことに一番スケールの大きい第41番『ジュピター』にはクラリネットが入っていません。一方、第39番にはオーボエが入っていません。そのため、アマチュアのオケでは、第35番『ハフナー』と同様、選曲しやすい曲目です。

楽曲構成

モーツァルト交響曲第40番ト短調は、通常の4楽章構成を取っています。

第1楽章:モルト・アレグロ

短い伴奏を先行させて、すぐに有名な主題が登場します。アウフタクトで主題が始まるのがその理由です。

このような開始方法は交響曲としては異例、とのことです。ハイドンは序奏を置くことが通例ですし、モーツァルトのこれまでの交響曲も序奏がある場合が多かったです。第25番ト短調は伴奏なしでいきなり主題が演奏されます。20番台以前は序奏なしが多いですね。

確かに序奏ではなく短い伴奏を置くというのは珍しく第40番の特徴と言ってもいいようです。アウフタクトの主題で短い伴奏をつけて始まるのは、例えばメンデルスゾーン交響曲第4番『イタリア』も同様ですし、常套手段です。ブラームスの交響曲第4番は、あえて伴奏をつけずに、いきなりアウフタクトの主題を提示したため、表現の難しい交響曲になっています。

第2楽章:アンダンテ

弦楽器が動くモチーフがあるアンダンテは、けっこう特徴的で印象深いです。和音もかなりエグい響きの不協和音が使われていたりして、第1楽章とは対称的な音楽となっています。

ハイドンもオラトリオ『四季』の「冬」でパロディとして取り入れています。半音階的要素も使われています。

第3楽章:メヌエット~アレグレット

主題は3小節という普通のメヌエットとは異なる奇数の小節数になっています。メヌエットなど3拍子系の音楽は、2小節でワンセットであり、バロックダンスでもそのように踊られます。

また、半音階的技法に満ちていて、晩年のモーツァルトの特徴を示しています。

第4楽章:フィナーレ~アレグロ・アッサイ

激しい民族舞曲を思わせる主題提示に始まります。展開部の開始8小節には、12音技法を思わせるような大胆な和声処理が見られます。短調の属九の根音省略(=減7)を多用することで、調整の確立を避けています。

もっとも調性の変化を続けた後、減7和音を介して元の調整に戻る、という技法は、ベートーヴェン以降では一般的な気もしますけれど、12音技法というには性急な気がしますが、ベートーヴェン以降の技法を既に使っている、とはいえると思います。

おすすめの名盤レビュー

モーツァルト作曲の交響曲第40番 ト短調おすすめの名盤をレビューしていきます。

一番有名な第一楽章は速いテンポで始まるものと、遅いテンポで始まるものの2種類があります。モルト・アレグロなので速いほうが譜面通りなのですが、遅いテンポの演奏も多いです。

ヘレヴェッヘ=シャンゼリゼ管弦楽団

速いテンポで感情の詰まった神々しさのある名演
  • 名盤
  • 情熱的
  • 芳醇
  • 古楽器
  • 高音質

超おすすめ:

指揮フィリップ・ヘレヴェッヘ
演奏シャンゼリゼ管弦楽団

2012年4月12-15日 (ステレオ/デジタル/セッション)

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ヘレヴェッヘと古楽器オケであるシャンゼリゼ管弦楽団の演奏です。第九の衝撃的な名演で、注目のコンビです。古楽器オケですが、かなり激しい感情が入った演奏です。

第1楽章速いテンポでかなり強く感情を入れていて、同時に古楽器オケ特有の格調高い響きがします。後半はそのまま盛り上がり白熱してきます。第2楽章は速めですが、ノリントンよりは少し遅めで、落ち着きが感じられるギリギリのテンポです。精妙な感情表現で、古楽器演奏の良さを失わずに上手く表現しています。所々神々しさが感じられる位です。第3楽章は小気味良い演奏です。トリオは特に良く透明感があり、ホルンの響きも天上の響きです。第4楽章は速いテンポで感情を入れて疾走していきます。

感情的な部分と、格調がバランスした名盤です。第2楽章など自然な神々しさを感じる位で、モーツァルトの後期の三大交響曲に相応しい名演です。

ワルター=コロンビア交響楽団

ロマン派的な情感豊かで親しみやすい名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱的
  • 芳醇

おすすめ度:

指揮ブルーノ・ワルター
演奏コロンビア交響楽団

1958年12月 (ステレオ/アナログ/セッション)

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ワルターとコロンビア交響楽団の第40番は、このコンビの最大の遺産の一つです。当時、古楽器奏法など無かったですから、モダン楽器でかなりロマンティックな表現です。

第1楽章は遅めに始まります。ワルターらしいロマンティックさで、名演ですが親しみやすさがあります。後半になると熱してきて、かなり深みもある演奏になります。ロマン派的な表現だからこそ可能な表現です。不協和音も良く響かせていて、それでも親しみやすさを失わない、という演奏です。第2楽章とても遅いテンポで深みのある名演です。大編成なのでスケールもかなりあります。丁寧に一つ一つの音符を演奏し、憂鬱な不協和音を響かせています。とても感情的に共感できる名演です。古楽器オケだと、第2楽章は速めにしがちですが、モーツァルトの時代には、速めなテンポだったかも知れませんが、ロマンティックに演奏したほうが良い演奏になるというのは、モーツァルトらしいですね。

第3楽章は遅めですが、モダン・オケの演奏としてはそれほど遅くはなく違和感は感じません。メヌエット楽章にも感情を入れて、味わい深い演奏です。第4楽章は標準的なテンポです。編成が大きいので、結構迫力があります。特に展開部は迫力があります。短調になるとテンポを遅くしてとても味わい深いです。

モダン楽器での演奏ではやはり素晴らしい名盤です。ただ、ヘレベッヘのように古楽器奏法でも神々しさが出せる訳で、モダンオケだから素晴らしい、という訳ではないですね。

ブリュッヘン=18世紀オーケストラ

元祖古楽器奏法のブリュッヘン、モーツァルトはどれも最高の演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 円熟
  • 古楽器

超おすすめ:

指揮フランス・ブリュッヘン
演奏18世紀オーケストラ

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ブリュッヘンはアーノンクールよりも上の世代で、古楽器オケを始めた世代です。18世紀オーケストラは古楽器オケの可能性と大きく示して、モダンオケを聴いていた普通のリスナーも、新しい物好きのリスナーも納得のいく演奏をしてきました。

第1楽章の冒頭はかなり速いテンポで始まり、情熱的な演奏です。展開部に入ってからの盛り上がりもかなり凄いです。第2楽章は古楽器オケとしては、少し遅めでじっくり聴かせてくれます不協和音もそのまま響かせていて、効果的です第3楽章は感情を入れて始まります。中間部ではバロックのホルンが素朴で非常にいい音を出しています。第4楽章も少し速めです。ストレートな曲調に合わせるように感情を入れて演奏しています。テンポがちょうど良く、展開部の複雑な個所も綺麗に各声部が聴こえる様な丁寧さもあります。

第40番のような感情的要素の強い曲では、ブリュッヘンのアプローチはとても良く合います。

アーノンクール=ウィーン・コンツェルトス・ムジクス

古楽器でもスケールの大きな『ジュピター』
  • 名盤
  • 円熟
  • 古楽器

超おすすめ:

指揮ニコラウス・アーノンクール
ウィーン・コンツェルトス・ムジクス

2012年12月,ウィーン,ムジークフェラインザール(ライヴ)

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アーノンクールはこれまでロイヤル・コンセルトヘボウとの名盤がありました。これも透明感があってかなりの名盤でしたが、昔の演奏で最近では大分違ってきていることは分かっていました。実際聴いてみると同じ指揮者とは思えないほど進化しています。

第1楽章は少し遅めです。感情的に疾走するのではなく、しなやかに歌っています第2楽章は速めのテンポで演奏していますが、そんなに速くは聴こえません。むしろ音の厚みに少し驚きました。内容の濃い演奏です。細かい演奏の仕方にこだわっていますね。後半、フォルテになる所もかなり大胆にやっています。速いテンポなのに味わいを楽しめる演奏です。第3楽章は凄く速いです。アクセント、というよりも何か突き刺すような感じです。トリオのホルンは素晴らしい音色です。第4楽章は遅いテンポです。アクセントは突き刺すような感じで感情的な盛り上がりがあります

全体として、「交響曲第40番はロマン的で感情的に疾走する曲」という先入観があれば、そこから解放される名盤だと思います。ボキャブラリーの多さには、驚くばかりです。ト短調だから特別な曲、という訳ではなく、やはりモーツァルトの交響曲の仲間であって、同じ演奏法で良さがでるのだ、ということが改めて分かります。

ノリントン=シュトゥットガルト放送交響

表現豊富になってきたピリオド奏法、小気味良い演奏が心地良い
  • 名盤
  • 定番
  • フレッシュ
  • 情熱的
  • ピリオド奏法
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ロジャー・ノリントン
演奏シュトゥットガルト放送交響楽団

2006年9月17日 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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ノリントン得意のモーツァルトです。最近ではモダン楽器のピリオド奏法も随分発展してきて、軽快なサウンドはドイツのオーケストラであることを忘れてしまうくらいです。

第1楽章意外に速いテンポでまさに疾走するように始まります。ノリントンなので基本は軽快で明るいのですが、感情も結構入っています。それにしてもシュトゥットガルト放送響はモダンオケなのに軽快な音を出しますね。北ドイツ放送響のようにたまに重厚さがでてくるようなことはなく、激しく演奏しても軽快さは失いません。ピリオド奏法の完成度が高いですね。これまでにない斬新な響きで、新しい発見も多い演奏です。

第2楽章も速めのテンポです。ノリントンはいつもアンダンテ楽章が速めでモーツァルトの場合、速すぎなんじゃないか、と思うことが多いのですが、特徴である「タラッ,タラッ」の音型がちょっと追いつかず、発音のニュアンスが変わっています。綺麗に演奏されていますが、しみじみと味わうには速いかなという気がします。でも、不協和音があまり目立たないので、本来はこの位、さりげなく流す中に少しだけ不協和音が聴こえることを意識していたのかも知れませんね。あからさますぎると、シリアスになりすぎますしね。第3楽章も速めですかね。リズミカルでヘミオラが強調されています。第4楽章はかなり疾走しています。とても速いですね。筆者的には第40番は速いほうが好きなこともあり、結構このテンポはいいと思います。

ノリントンとしては、テンポ取りが普通なので、逆に意外なのですが、ノリントンはいつもこのテンポ取りでやっているので、たまたま現代の演奏にあっただけだと思います。

ヴァント=北ドイツ放送交響楽団

考え抜かれた端正さ、円熟して深みが増した名演
  • 名盤
  • 定番
  • 端正
  • 円熟
  • 格調

超おすすめ:

指揮ギュンター・ヴァント
演奏北ドイツ放送交響楽団

1994年3月6日-8日,ハンブルグ,ムジークハレ(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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ヴァントは以前は緻密で厳しい音楽を作る指揮者だったのですが、1990年代に入って大きく変わってきます。スコアを読みこんで緻密な音楽を作る所は変わりませんが、少し余裕を持たせてそこに感情を入れるようになってきたのです。円熟してきて大器晩成と言われていますが、音楽のベースはケルン放送交響楽団の指揮者をやっていた時代から変わらず、完成度が十分増したところに円熟味がでてきました。

第1楽章テンポは中庸くらいで始まります。北ドイツ放送交響楽団は重厚な響きを持つオケですが、あまり重厚さが出ないようにしなやかに演奏しています。感情的に突っ走るようなことはなく、丁寧で理知的な所もあります。端正で円熟した演奏です。言葉では表現しにくいですけれど充実感があります。第2楽章は遅めのテンポで、味わい深い響きです。この楽章はヴァントの円熟ぶりが良く出ています。しみじみ聴けるとともに、さらにシリアスさすら感じられます。第3楽章も感情的というより、シリアスさのほうが勝っている気がします。第4楽章は速めのテンポで、感情的に疾走するような雰囲気です。ヴァントなので常に理性的ですけれど、テンポは速めです。

感情的に熱く演奏するのではなく、端正さ、シリアスさが目立つので、聴いていて他の演奏と印象が違う熟したワインのような名盤です。

フルトヴェングラー=ウィーン・フィル

ロマン派的な演奏、第40番は名演
  • 歴史的名盤
  • 情熱的
  • ダイナミック
  • モノラル

おすすめ度:

指揮ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1948年12月7,8日/1949年2月17日,ムジークフェラインザール (モノラル/セッション)

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ヴィルヘルム・フルトヴェングラーのモーツァルトには、賛否両論あるようです。しかしモーツァルトはロマン主義的な要素もかなり持っていて、自分自身の感情を交響曲に入れ込んでします。その辺りが一番分かりやすいのがト短調の2つの交響曲です。第25番の録音もありますが、これはそのページで書くとして、ここでは交響曲第40番 ト短調ですね。ギャラント様式の交響曲と思えないほど、ストレートな感情表現をしている曲です。ハイドンに疾風怒濤期というのがありますが、モーツァルトほどの感情表現はできていないと思います。

フルトヴェングラーは、第1楽章は冒頭からかなり速いテンポで情熱的に演奏しています。まさに感情的に疾走している感じです。これはこの交響曲の本質の一端だと思います。古典派的な細かい技法については、深く考えず演奏しているようにも思いますが、第40番に関してはフーガや対位法は、第41番『ジュピター』ほどには出てこないので、あまり気になりません。第2楽章かなり遅くて、味わい深い演奏です第3楽章は意外と今の古楽器オケと変わらないテンポだと思います。むしろ今のモダンオケはテンポが遅すぎな気がします。第4楽章はテンポが速いですが、ここは現在の古楽器オケよりもテンポが速いんじゃないか、と思う位疾走しています。そしてダイナミックな感情表現でスリリングです。

ベーム=ウィーン・フィル

温和で聴きやすい名盤、これぞモーツァルト
  • 名盤
  • 定番
  • 円熟

おすすめ度:

指揮カール・ベーム
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1976年4月

ベームのモーツァルトは評価がかなり分かれそうですね。正直、筆者はあまりベームが好きではないんです。中高生のころは、ベームのモーツァルト、ブラームスを聴いて「これが本物」と思っていたのですが、今、考えるとベームの演奏は一つの完成形ではあっても本物とは言いにくいですね。

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楽譜

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