モーツァルト 交響曲第39番 変ホ長調 K.543

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart, 1756~1791)交響曲第39番 変ホ長調 K.543について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

解説

モーツァルト作曲の交響曲第39番 変ホ長調 K.543について解説します。1788年6月26日に作曲されました。

モーツァルトの中でも特にユニークな交響曲です。これを三大交響曲に入れていいのか、よく分かりませんが、一般的には三大交響曲に入っていますね。

まるでモーツァルトが交響曲で遊んでいるかのような、ジョークがたくさん詰まった交響曲です。

あるいは、貴族的でなく、農民のような庶民生活を描いているような面白さ、行ってしまえばダサさをわざと交響曲に入れたように感じます。ハンガリー辺りの地名が愛称だったら、とても良く合いそうですね。

モーツァルトの交響曲の様式は30番台で段々とスケールを増していきますが、交響曲第38番『プラハ』で一旦完成の域に達し、その後の三大交響曲は3つの性格を持った交響曲ですね。

編成も少し変わっていて、オーボエが無く、代わりにクラリネットが入っています。

楽曲構成

モーツァルトの標準的な交響曲の様式に従っています。序奏つきの第一楽章を持つ、4楽章構成です。

第1楽章:アダージョ~アレグロ

序奏付きのソナタ形式です。三大交響曲で序奏があるのはこの曲だけです。

序奏は、バロック時代のフランス風序曲に似た付点音符のリズムです。もっともこれをフランス風序曲に聴こえる様にするには、かなり速いテンポにするか、音を詰めるかする必要がありますけれど。主部は3拍子でこれも少し珍しいです。

第2楽章:アンダンテ・コン・モート

展開部と呼べる部分がなく、ロンド・ソナタ形式に似た構造を持ちます。何を描いた曲なのか分かりませんが、自然を描いた曲に思えます。主題も付点と跳躍が多い少しユニークなものですね。調性や転調の自由さが特徴です。急に転調して激しい感情表現が出てきたりと面白い曲です。

第3楽章:メヌエット~アレグレット

メヌエット楽章です。主題がユニークで田舎風であか抜けないというか、やはりハンガリーの田舎を思い出してしまいます。中間部のクラリネットが印象的です。

第4楽章:フィナーレ~アレグロ

少しユニークな主題を持つフィナーレから始まります。演奏しにくいこの主題は主部にも現れて、曲に統一感を与えています。まるでシャベルで穴でも掘っているかのような面白いモチーフが現れます。その後も面白いモチーフのオンパレードです。

  • 名盤
  • ピリオド奏法

おすすめ度:

指揮:飯森範親、山形交響楽団

おすすめの名盤レビュー

モーツァルト作曲の交響曲第39番 変ホ長調おすすめの名盤をレビューしていきます。

アーノンクール=ウィーン・コンツェルトス・ムジクス

速めのテンポで楽しめる名盤!古楽器の新しい定番!
  • 名盤
  • 古楽器

超おすすめ:

指揮:ニコラウス・アーノンクール,ウィーン・コンツェルトス・ムジクス

アーノンクールはこれまでロイヤル・コンセルトヘボウとの名盤がありました。これも透明感があってかなりの名盤でしたが、昔の演奏で最近では大分違ってきていることは分かっていました。実際聴いてみると同じ指揮者とは思えないほど進化しています。

それに、手兵の古楽器オケであるウィーン・コンツェルトス・ムジクスとの演奏は素晴らしいです。アーノンクールが少し変わったことをやってもちゃんと消化した上で演奏しているのですから。

まず序奏ですが、ノリントンと同じくとても速いです。個人的にはそんなに早くなくて良いと思うのですけど。主部に入ると速めながら、しっかりした演奏ができるテンポに落ち着きます。古楽器オケなのでバロックティンパニやトランペットのアクセントが付くことで、音楽が滑っていくのを防げます。面白いモチーフや急な転調など聴かせ所は十分に聴かせてくれます。ノリントンほとではありませんが、テンポは頻繁に変わり、アクセントの位置が変わり、アーティキュレーションも随分ヴォキャブラリーが増しています。

第2楽章は速めですが、聴かせどころでは一旦立ち止まったり、インパクトある響きを聴かせたり、大胆なメリハリをつけて強調したりしています。そういう意味では楽しみ方が、分かりやすい演奏でもあります。他の演奏を聴いていた方は新しい発見があると思います。

第3楽章は凄い速さです。冒頭などはメヌエットらしからぬ演奏ですね。中間部のクラリネットはとても良いです。やはり古楽器オケの中にクラリネットが入ると良い意味で目立ちますね。それにしても、凄いテンポの揺らし方です。これはアーノンクールの個性なのか、何かの研究の結果なのか分かりませんけれど、面白いです。

第4楽章は普通の速さです。やはりガット弦がきちんと鳴る速さ、となるとこの位であって、ヴァントほどの速さには出来ないように思います。テンポの変化は大きめで、実質ゲネラルパウゼになっている個所もあります。特に楽しめる所を教えてくれるかのようです。普段、ブリュッヘンで慣れているので、順次進行のレガート気味の演奏がすぐに馴染めないのですが、時間の問題でしょうね。

やはり内容の豊富さから考えても、この演奏は今、この曲の代表盤でしょうね。聴き通すと短い曲なのにおなか一杯です。

ブリュッヘン=18世紀オーケストラ

元祖古楽器奏法のブリュッヘン、モーツァルトはどれも最高の演奏!
  • 名盤
  • 定番
  • 円熟

超おすすめ:

指揮:フランス・ブリュッヘン、18世紀オーケストラ

録音:

モーツァルト:交響曲第40番&第41番
レビュー数:9個
残り1点

ブリュッヘンはアーノンクールよりも上の世代で、古楽器オケを始めた世代です。18世紀オーケストラは古楽器オケの可能性と大きく示して、モダンオケを聴いていた普通のリスナーも、新しい物好きのリスナーも納得のいく演奏をしてきました。

冒頭の序奏は普通のテンポで始めます。この曲のもつユニークさが分かりやすい演奏です。主部もゆっくり素朴に演奏されます。第2主題の弦の下降音階など、大事なパッセージを丁寧に演奏しているため、自然と面白さが出ている感じです。

筆者はこの第39番が何を描いた作品なのか、良く知らないのですが、第2楽章は自然を描いているかのような曲です。動物の鳴き声のような、付点と跳躍の多い主題を長調、短調で繰り返し、段々深みが増していきます。ブリュッヘンは肩の力を抜いて、マイペースに演奏しています。急に転調し、感情的に激しい主題が現れますが、この部分もはっきり演奏してくれていて、とても楽しめます

第3楽章は速めのテンポです。なんとなくあか抜けないメヌエットを流暢にせずにそのまま演奏しています。

第4楽章は速めのテンポですが、主題が難しいのでそれに合わせてテンポ設定しています。色々なモチーフが現れますが、そのままのテンポで行きます。クラリネットを効果的に使っていることもよく分かります。

ちなみに、最後はデクレッシェンドして終わる時があります。新しめの録音では最後の最後で急にデクレッシェンドして何だろうと感じてしまいます。ブリュッヘンは晩年、新日本フィルに客演していましたが、この時も面白い演奏を楽しんでいた所、急にデクレッシェンドして終わったので、何かトラブルがあったのか?と思いましたが、そういう演奏なんですね。CDは古めの録音なのでデクレッシェンドなしだと思います。アマゾンUnlimitedの演奏はデクレッシェンドありです。

全体的に丁寧で聴きどころを一つ漏らさず、聴かせてくれる名盤です。

ヘレヴェッヘ=シャンゼリゼ管弦楽団

  • 名盤

おすすめ度:

指揮:フィリップ・ヘレヴェッヘ,演奏:シャンゼリゼ管弦楽団

2012年4月12-15日ステレオ(デジタル/セッション)

Last Symphonies
レビュー数:4個

Mozart: The Last SymphoniesMP3
レビュー数:4個

ヴァント=北ドイツ放送交響楽団

考え抜かれた演奏に、円熟して深みが増した名演!
  • 名盤
  • 定番
  • 円熟

超おすすめ:

指揮:ギュンター・ヴァント、北ドイツ放送交響楽団

録音:1990年5月6-8日,ハンブルグ,ムジークハレ(ライヴ)

ヴァントは以前は緻密で厳しい音楽を作る指揮者だったのですが、1990年代に入って大きく変わってきます。スコアを読みこんで緻密な音楽を作る所は変わりませんが、少し余裕を持たせてそこに感情を入れるようになってきたのです。円熟してきて大器晩成と言われていますが、音楽のベースはケルン放送交響楽団の指揮者をやっていた時代から変わらず、完成度が十分増したところに円熟味がでてきたのです。

第39番の場合、ヴァントのしっかりしたスコアの読み込みはとても良い方向に出ています。それに変に個性的なこともしないですし、円熟して味が深まることはありますけれど。

第1楽章は堂々と演奏していますが、ユニークさのあるモチーフやフレーズは残らずきちんと演奏してくれています。ブリュッヘンに近いです。モダンオケなので少し重厚ですけど。

第2楽章は真摯な演奏です。ブリュッヘンでは自然を描いている感じましたが、ヴァントの場合は特に自然という感じでは無いですね。何かといわれると困りますが。真摯な演奏ですが、基本的にブリュッヘンほど分かりやすくは無いにしろ、面白い所はきちんと押さえていて、楽しめる演奏です。

第3楽章は少し遅めです。スケール感がありますが、ブリュッヘンに似ています。

第4楽章は少し速めのテンポで少し流麗に演奏しています。ブリュッヘンと違って弾きにくさが伝わってこないので、ユニークさには欠けるかも知れません。北ドイツ放送響ならどんなパッセージも軽々弾けるわけですから、意図的に強調しないと分からないですね。でも他の細部に工夫が見られ、ただ流麗に通すだけ、ということではありません。そこまで速いテンポでもないですし。

モダンオケですが、ヴァントがスコアをこだわり抜いた結果として、ブリュッヘンと同じような結論に達しているというのが面白いですね。

ノリントン=シュトゥットガルト放送響

  • 名盤
  • 定番
  • ピリオド奏法

おすすめ度:

指揮:ロジャー・ノリントン、シュトゥットガルト放送交響楽団

ノリントン得意のモーツァルトです。最近ではモダン楽器のピリオド奏法も随分発展してきて、軽快なサウンドはドイツのオーケストラであることを忘れてしまうくらいです。

第1楽章の序奏は、凄い速さです。これなら、付点がフランス風序曲に聴こえるかも知れません。ありきたりのリズムなので、モーツァルトがフランス風序曲を意識しているか分かりませんけど、スケールの大きな序奏のように考えていたので、新鮮な衝撃ですね。ところが主部に入ると落ち着いたテンポになります。主部はスケールの大きさを感じます。この曲のユニークなところを素通りしています。この演奏だと「三大交響曲の最初を飾る曲に相応しい」といえそうです。第2楽章はとても速いテンポで、こじんまりと演奏しています。ノリントンとしても異常な速さですね。第1楽章との落差が凄いです。面白いですが、かなりチャレンジングだと思います。途中、かなりきつい短調の部分もありますが、そこはテンポを頻繁に変えて上手く演奏しています。味わいもあるといえばあるし、、でも初めてこの曲を聴くなら、他の演奏のほうが良さそうです。

第3楽章は割と普通に始まります。高音域に行ったり、低音域から始まったりと、素朴でユニークな音楽ですが、あまり素朴さ強調されていないですね。普通のメヌエット楽章として、綺麗にまとまっていますし、力強くスケールの大きな演奏です。第4楽章は演奏しにくい主題ですが、それもあってか遅めのテンポで演奏しています。

なんとも全体のレビューの難しい演奏ですね。第39番に関してはまだ実験中というところでしょうか。

  • ピリオド奏法

おすすめ度:

指揮:ロジャー・ノリントン、シュトゥットガルト放送交響楽団

クリヴィヌ=シンフォニア・ヴァルソヴィア

すっきりした美しい演奏、面白さも健在!
  • 名盤
  • 円熟

おすすめ度:

指揮:エマニュエル・クリヴィヌ,

1990年,ワルシャワ,ショパン・アカデミー

エマニュエル・クリヴィヌフランスの名指揮者です。何故か、シンフォニア・ヴァルソフィアというオケを指揮して第31番『パリ』第39番を録音しています。1990年録音ということで、音質は良好です。これまでの演奏と違って、エマニュエル・クリヴィヌはフランス風というかギャラント風に颯爽とまとめてきています。そして、表面は颯爽としているのに、内容がしっかりしていて、楽しく聴ける演奏でもあります。

第1楽章は、標準的か少し速めの演奏です。オケのレヴェルは高くクリヴィヌは結構トレーニングしたのか、クオリティの高い演奏です。モダンオケなので当然ですがヴィヴラートが結構かかっています。これを聴くとヴァントもヴィブラートを抑制していたんだ、ということが分かります。表面的にはかなり磨きのかかった貴族的な演奏です。でも面白い所はスルーせずにちゃんと聴かせてくれます。第2楽章はモダンオケでの標準的なテンポです。遅めに感じますけど。響きはフランス的なところがあるかも知れません。そして、感情を入れる所もきちんと入れてきます。こんなに美しい演奏なのにモーツァルトが仕込んだ面白さを表現しているのだから、凄いです。第3楽章は少し速めでしっかりしたリズムのメヌエットです。トリオのクラリネットはこのオケの響きによくブレンドされています。ホルンも上手いですね。第4楽章はかなり速いです。これは弦楽器は超絶技巧ですね。

全体的にフランスの指揮者らしいスタイリッシュな名盤です。表面だけでなく、この曲の面白さを理解していて、ちゃんと聴かせてくれるので、なお素晴らしいです。

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楽譜

モーツァルト作曲の交響曲第39番 変ホ長調の楽譜・スコアを挙げていきます。

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