モーツァルト  ピアノ協奏曲 第27番

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart,1756-1791)作曲のピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595 (Piano Concerto no.27 b-dur K.595)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

解説

モーツァルトピアノ協奏曲第27番について解説します。

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モーツァルトは自身の交響曲の集大成ともいえる交響曲第39番(1788年)、第40番(1788年)、第41番(1788年)を作曲しました。それから3年経った1791年にピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595が作曲されています。

ピアノ協奏曲第27番は、モーツァルト最後のピアノ協奏曲であり、晩年の傑作です。晩年、といってもモーツァルトはまだ30代です。

ピアノ協奏曲第27番は、クラリネット奏者のヨーゼフ・ベーア(Joseph Beer,1744年-1812年)の演奏会のために1791年1月5日に作曲されました。(ちなみに同じ1791年に作曲されたクラリネット協奏曲アントン・シュタードラーのために書かれた曲で、別の人です。)しかし、当初予定されていた演奏会では初演されませんでした。

1791年3月4日に宮廷料理長イグナーツ・ヤーン邸で行われたベーアの演奏会でモーツァルト自身のピアノ独奏により初演されました。

ただ、作曲年代についてはもっと前だった可能性が高く、1777年~1788年に第3楽章の途中まで既に書き上げており、その楽譜が残っています。これは上記の三大交響曲と同じ時期です。

1788年から数年の間、モーツァルトの人気は低迷していまい、お金になる仕事が入らない状況になってしまいます。演奏会を行っても観客があまり入らず、大きな仕事も

諦観、清澄

このピアノ協奏曲第27番はモーツァルトが亡くなる年に書かれた作品であり、特に第2楽章は美しく特別なピアノ協奏曲と言われています。アルフレート・アインシュタインは

諦めの朗らかさ

アルフレート・アインシュタイン

と書いています。モーツァルトの死は1791年の9月には体調を崩して服薬するようになり、11月に病床に伏し、12月には亡くなってしまう、という急なものでした。しかし、その前から既に病気や体調不良等があり、死を意識していた、と言われています。

曲の構成

ピアノ協奏曲第27番は通常の協奏曲で用いられる3楽章形式をとっています。演奏時間は約30分です。もともと長い曲ではありませんが、内容が豊富であっという間に聴き終えてしまう印象です。

第1楽章:アレグロ

協奏風ソナタ形式です。オケが第1主題を演奏し、ピアノが入ってきます。展開部は晩年のモーツァルトらしい転調で精妙な感情表現です。最後にカデンツァがあります。

第2楽章:ラルゲット

三部形式です。有名なピアノの情感溢れるメロディで始まり、中間部は自由に歌う雰囲気です。冒頭はピアノのみですし、全体的にピアノの存在感が強い楽章です。

第3楽章:アレグロ

ロンド形式です。非常に繊細な和声進行、転調があり、情感豊かな音楽です。また華麗に盛り上がり、技巧を聴かせる場面もあります。中盤にカデンツァ的な個所があり、終盤にカデンツァがあります。

編成

独奏ピアノ
フルート×1、オーボエ×2、ファゴット×2
ホルン×2
弦五部

おすすめの名盤レビュー

それでは、モーツァルト作曲ピアノ協奏曲第27番名盤をレビューしていきましょう。第27番はとても繊細な曲ですが、色々な演奏を聴いていくと、もう少し華麗な所もあるのでは?と思ってしまいます。情感や繊細さをとても大事にした演奏が多いですね。

ピアノ:バックハウス, ベーム=ウィーン・フィル

バックハウスの清廉で深みのある音楽を堪能できる名盤!
  • 名盤
  • 定番
  • 端正
  • 品格
  • 円熟
  • 神々しさ

超おすすめ:

ピアノヴィルヘルム・バックハウス
指揮カール・ベーム
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1967年4月,ウィーン (ステレオ/アナログ/セッション)

バックハウスのピアノ独奏とベーム=ウィーン・フィルの伴奏です。1967年録音ですが、少し時代を感じる録音で、レコードで聴くのに合いそうです。

第1楽章はベームとウィーン・フィルの演奏から始まりますが、意外と骨組みがしっかりした演奏です。今のモーツァルトとは大分違うのでここでも時代を感じます。バックハウスのピアノは清廉で端正なものです。ゆったりとしたピアノを聴いていると、ベームの遅めのテンポ取りも当時に相応しいものだったのだと思います。展開部に入り転調するとピアノの表現はなお精妙で品格を保ちつつ味わいのあるものになっていきます。カデンツァはピアノの透明な音色と流麗な演奏です。第2楽章はピアノから始まりますが、凛としたタッチで透明感のある響きで、もう天国的といってもいいと思います。ウィーン・フィルは特に木管の響きが味わい深いですね。第3楽章はリズミカルで流麗ですが、透明感のある天国的な音色で、要所でテンポを落として味わい深く聴かせてくれます。後半の転調も精妙な音色の変化があり味わい深く、バックハウスも達観したかのような演奏です。

モーツァルトとしては時代を感じる所もありますが、バックハウスのピアノは様式の違いを超えた、普遍的な超名演と思います。

ピアノ:カーゾン, ブリテン=イギリス室内管弦楽団

カーゾンの柔らかく味わい深い音色、伴奏も名演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 軽妙
  • 芳醇

おすすめ度:

ピアノクリフォード・カーゾン
指揮ベンジャミン・ブリテン
演奏イギリス室内管弦楽団

1970年9月24,25日,サフォーク,スネイプ・モールティングス・コンサートホール (ステレオ/デジタル/セッション)

クリフォード・カーゾンのピアノ独奏にブリテンとイギリス室内管弦楽団の伴奏です。録音は1970年アナログ録音ですが、しっかりした音質です。

第1楽章は、まずブリテンとイギリス室内管の演奏が小気味良く、味わい深いです。今の軽妙なモーツァルト演奏に比べるとテンポは遅めですが、27番の場合、遅めでも味わい深くなります。カーゾンのピアノは透明感があり、生き生きした演奏です。ピアノとフルートなど木管の絡みが良く、ピアノと伴奏のバランスが取れています。展開部に入り転調すると作曲家のブリテンらしくオケも表情を変えてきます。カーゾンは生き生きしつつも、諦観したようなしみじみとした要素もある演奏で、精妙な表現で味わい深いです。第2楽章カーゾンの柔らかく穏やかなピアノをじっくり、しみじみと味わうことが出来ます。後半は木管とピアノが上手く絡み合って深みのある音楽を作っています。第3楽章は生き生きとした演奏です。カーゾンは透明感のあるピアノで、精妙なタッチが素晴らしいです。精妙なタッチを保ちながら、調性の動きに合わせて様々な表情を付けています。カデンツァは技巧が素晴らしいですが、とても繊細でしみじみと聴かせてくれます。

ピアノのカーゾンは素晴らしいですし、ブリテンとイギリス室内管の良く練られた伴奏もとても良く、味わい深く密度の濃い名盤と言えます。

ピアノ:ピリス, アバド=モーツァルト管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 軽妙
  • 高音質

おすすめ度:

ピアノマリア・ジョアン・ピリス
指揮クラウディオ・アバド
演奏モーツァルト管弦楽団

2011年9月,イタリア (ステレオ/デジタル/セッション)

マリア・ジョアン・ピリスのピアノ独奏に、アバドとモーツァルト管弦楽団の録音です。新しい録音だけあって音質も良いです。

第1楽章のオケは近年のピリオド奏法の影響を受けた軽妙な演奏です。アバドも円熟していて、自然体で味わいのある演奏を繰り広げています。ピリスしっかりしたタッチと繊細な表現で、モーツァルトらしい演奏です。オケは小編成なので、繊細なピアノとバランスが取れており、ピアノと伴奏の絡みは丁度良く、伴奏のみの個所でもオケだけ大きな音になる、と言ったことはありません。録音の良さもあって、スコアに書かれた音が分離良く聴こえてきます。カデンツァではピリスのピアノは粒がたっていて品格があり、適度な味わい深さがあります。自然な演奏ですが、真摯に演奏した結果として、味わい深く聴くことが出来ます。

第2楽章はピリスは少し速めのテンポ取りで品格があり、リズミカルな個所はしっかりリズミカルで自然な表現です。この楽章をロマン派風な演奏にならず、他のピアノ協奏曲と同様のアプローチで弾いています。表現の繊細さはあり、この曲が持っている味わい深さが自然に引き出されています第3楽章はリズミカルで生き生きとしています。ピアノは溌溂としていてロンドらしい演奏ですね。オケも非常にバランスよく、メリハリがあります。それでもこの曲が持つ繊細な転調で自然に感情表現しています。曲に合わせて、鮮やかに弾いたり、繊細に弾いたり、と多彩な表現です。カデンツァも自然な鮮やかさを持っています。

ピリスとしてもアバドとしても、非常にクオリティの高い演奏を実現していると思います。曲が本来持っている自然な味わい深さを上手く引き出した名盤です。

ピアノ:グルダ, アバド=ウィーン・フィル

グルダの表情豊かなピアノとウィーン・フィルの繊細な伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 情感
  • 哀愁
  • 表情豊か

おすすめ度:

ピアノフリードリヒ・グルダ
指揮クラウディオ・アバド
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1975年5月,ウィーン (ステレオ/アナログ/セッション)

フリードリヒ・グルダのピアノ独奏、アバド=ウィーン・フィルの伴奏での録音です。音質はアナログ録音ですが、しっかりしていて良いです。

第1楽章は少し遅めで、ウィーン・フィルの落ち着いた演奏で始まります。グルダのピアノは色彩感のある音色で表情豊かです。短調になると愁いを帯びた音色となり、ウィーン・フィルの木管ソロとの絡みも味わい深いです。ウィーン・フィルは少しくすんだ響きで情感があります。展開部ではグルダの表現はさらに振幅が大きなものになり、木管のソロもさらに繊細になっていきます。カデンツァも表現のボキャブラリーが豊富で、情感のみでなく、鮮やかさもあり、聴きごたえがあります。

第2楽章ピアノは粒が立っていて輝くような音色です。ウィーン・フィルは絹のような肌触りの音色で、それがピアノと良く合っています。中間部ではウィーン・フィルのホルンや木管の素朴な音色が聴けます。繊細な情感があり味わい深いのに、重さが感じられないのも良いです。第3楽章リズミカルで、ピアノは色彩的な音色で繊細さを持って演奏していきます。転調や和声に敏感に反応して、表情を変えていきます。カデンツァでは情感を保ったまま、鮮やかに盛り上がります。

グルダの演奏は非常に表情豊かで情感に溢れるもので、第27番の良さを上手く引き出しています。アバドはウィーン・フィルを繊細に操って、グルダのピアノに相応しい伴奏を付けています。

ピアノ:アンデルシェフスキ, ヨーロッパ室内管弦楽団

弾き振りの良さを生かした小気味良い名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 軽妙
  • 高音質

超おすすめ:

ピアノピョートル・アンデルシェフスキ
演奏ヨーロッパ室内管弦楽団

2017年7月,バーデン・バーデン祝祭劇場 (ステレオ/デジタル/セッション)

ピョートル・アンデルシェフスキがヨーロッパ室内管弦楽団を振り弾きした録音です。新しい録音で、音質は良いです。

第1楽章オケがインテンポでとても生き生きとしっかり弾いていて、ソナタ形式の楽章らしいです。ピアノもリズミカルに生き生きと入ってきます。それでも曲が持っている感情表現を少しメリハリつけて弾くだけで、繊細な表現になっています。技巧的な個所もしっかり弾いていて、繊細になりすぎることがありません

第2楽章は少し余裕のあるテンポで、とても透明感があり、清涼な響きです。一方、オケは伸び伸びと弾いていきます。オケの無い所ではアンデルシェフスキはとても弱い音で弾いています。確かにそういう意図があってオケを休ませているのかも知れません。第3楽章小気味良いリズムが心地よい演奏です。ピアノは繊細ですが、結構しっかり弾いている所も多いです。オケもリズミカルです。ピアノの繊細な表現に上手くオケがはまっていて、振り弾きの良さが出ています。カデンツァはしっかりした音色で華麗さも伴って軽妙に演奏されています。

アンデルシェフスキの振り弾きしているので、オケの伴奏はピアノに合ったものになっています。第27番は繊細なので、こういうピアノとオケの息の合った演奏は効果的ですね。

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演奏の映像(DVD,Blu-Ray,他)

ピアノ:プレスラー, パーヴォ・ヤルヴィ=パリ管弦楽団

  • 名盤
  • 定番

ピアノメナヘム・プレスラー
指揮パーヴォ・ヤルヴィ
演奏パリ管弦楽団

2014年1月29日,パリ,サル・プレイエル (ステレオ/デジタル/セッション)

ピアノ:ブッフビンダー, シュターツカペレ・ドレスデン

  • 名盤
  • 定番

ピアノルドルフ・ブッフビンダー
演奏シュターツカペレ・ドレスデン

2015年6月,ガラス工場,ドレスデン (ステレオ/デジタル)

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楽譜・スコア

モーツァルト作曲のピアノ協奏曲第27番の楽譜・スコアを挙げていきます。

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