ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart,1756-1791)作曲のピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466 (Piano concerto No.20 d-Moll K.466)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。
解説
モーツァルトのピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466について解説します。
モーツァルトは交響曲も多く作曲しましたが、協奏曲の分野でも多くの名曲を生み出しました。中でも自分自身がピアノを務めるピアノ協奏曲は、モーツァルトが積極的に新しい音楽を作曲した分野です。全部で第27番までありますが、20番台はどの作品も重要なものばかりです。
ピアノ協奏曲第20番の作曲は1786年2月に完成しました。親しみやすく有名なメロディが多いです。特に第1楽章と第2楽章の主題は有名です。
本作は、しかも短調(ニ短調)で書かれています。ピアノ協奏曲でもモーツァルトは短調の作品を2つしか作曲していません。第20番と第24番です。この強い感情表現は、古典派の時代を超えて、もうロマン派の時代を先取りしているようです。
第20番と第24番で両方とも名曲ですが、第20番のストレートさは、交響曲第25番を思わせるものがありますが、内容はピアノ協奏曲第20番の方が圧倒的に充実していて完成度が高く、モーツァルト自身の人間的成長によるものが大きいと感じられます。
なお、ニ短調という調性は『レクイエム』と同じです。すなわちこの曲が「死」を意識していることを暗示している、といえます。
おすすめの名盤レビュー
それでは、モーツァルト作曲ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466の名盤をレビューしていきましょう。
カーソン,ブリテン=イギリス室内管弦楽団
カーゾンは生前にいくつか録音しているようなのですが、完璧主義者で納得がいかなかったため、発売を認めなかったようです。それであまり有名なピアニストでは無いのかも知れません。
冒頭のオケの部分からシリアスで引き込まれます。カーゾンのピアノは非常に繊細で精緻です。モーツァルトの心理の微妙な所に焦点を当てているようです。カーゾンのピアノは、有名な曲だから分かり易く演奏しよう、といった所は全くありません。曲と真正面から真摯に向き合っています。
第2楽章の一見媚びるような主題もカーゾンが弾くと深みがあって、逆に助けを求められているようなシリアスさが出ていて、目から鱗です。こんなピアノ協奏曲第20番は他にはないと思います。
ピリス,アバド=モーツァルト管弦楽団
ピリスはモダンのピアノで、ピリオド奏法のように柔らかく小気味良いタッチで演奏しています。伴奏のアバドはこの曲のスペシャリストです。グルダと共演した1970年代には既に演奏スタイルは完成しています。そして最近のピリオド奏法も少し取り入れて、繊細ですっきりした演奏となっています。
第1楽章は、オケも好調で、ピアノのピリスとの相性がとても良いです。カデンツァはしっかりした響きです。第2楽章は、速めのテンポであまり粘ったりせずに弾いています。モーツァルトなので、この位のテンポの方が気分良く聴けます。ある意味、今まで定番だったグルダの遅いテンポの演奏の正反対という感じですね。第3楽章は速めでスッキリと気分良く聴けます。
全体的にただスッキリしているだけではなく、繊細な表現が入っていて、ピアノも伴奏も円熟が感じられる名演です。
グルダ,アバド=ウィーン・フィル
グルダがアバド=ウィーンフィルをバックに弾いた演奏はピアノ協奏曲第20番の定番といえる演奏です。レパートリーの広いグルダですが、それだけ多彩な表現力があります。
まずアバド=ウィーンフィルの出だしからして、定番に相応しい演奏で、どこかで聴いたことがある感じです。この録音を使ったCMなども多いかも知れませんね。グルダが入ると、最近の演奏に比べると少し軽快さに欠けるような感じがしますが、すぐ慣れてきます。落ち着いたテンポで色々な表現をしています。特にカデンツァが聴き物です。
第2楽章は、ゆっくり目のテンポで始まり、じっくりと感情表現を繰り広げていきます。このテンポもスタンダードというか、この演奏をBGMに使っているものが多いかも知れません。なので、CMなどで聴いて、そのCDが欲しい場合は最右翼です。もちろん、演奏そのものも良く練られていて素晴らしいです。第3楽章はかなり速めのテンポです。
アルゲリッチ,アバド=モーツァルト管弦楽団
アバド最晩年のライヴ録音です。アルゲリッチも大分円熟した感じです。若いころから共演してきて、プロコフィエフの3番などまだ名盤として通用する位ですが、今回は2013年で円熟した大物2人の共演になっています。オケはモーツァルト管弦楽団で、軽快でしなやかな響きです。
ピアノ協奏曲第20番はストレートさが目立つ作品ですが、伴奏のアバド=モーツァルト管は、速めのテンポで流麗ですが、アクセントのメリハリがあり短調の協奏曲をシリアスに、情熱的に演奏しています。この疾走感のあるテンポ設定は素晴らしいです。
アルゲリッチは流麗で色彩的な演奏で、年齢を感じさせません。ライヴですがミスタッチもありません。若いピアニストに比べると表現が多彩で深みがあります。特に第2楽章の表現は多彩です。
始めて聴く人から、玄人のリスナーまで万人にお薦めできるCDです。このディスクは、2014年度第52回「レコード・アカデミー賞」で大賞銀賞(協奏曲部門)を受賞しています。
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楽譜・スコア
モーツァルト作曲のピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466の楽譜・スコアを挙げていきます。
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