モーツァルト ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K. 467

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart,1756-1791)作曲のピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K. 467 (Piano Concerto 第21番 C-dur K. 467)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。また、スコアや楽譜も挙げてあります。モーツァルトのピアノ協奏曲は名曲ばかりで、親しみやすく有名なメロディも多いです。

解説

モーツァルトピアノ協奏曲第21番について解説します。

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モーツァルトはピアノ協奏曲第20番を完成させたあと、1カ月で第21番を完成させました。モーツァルト自身がピアノ独奏を務める演奏会のために作曲され、1786年3月10日にウィーンのブルグ劇場で初演されています。

ウィーン時代のモーツァルト

モーツァルトは1781年ザルツブルク大司教ヒエロニュムス・コロレドと対立して、ザルツブルクを追い出されてしまいます。そして、ウィーンに定住し、そこで演奏会をしながら生活していくことになります。

そのために速いスピードで多くの名作を作曲していくことになります。

そしてこのピアノ協奏曲第21番が作曲される頃には、ウィーンで売れっ子になり、作曲家としても演奏家としても成功し、同時に多忙を極めることになりました。その中でピアノ協奏曲第21番が書かれますが、作品のクオリティは下がることなく、むしろ上がっていくのでした。

モーツァルトの成功には父のレオポルドも驚き、ウィーンを訪れた際には、ハイドンから

誠実な人間として神に誓って言いますが、あなたの息子さんは、私が名実ともに知っている最も偉大な作曲家です

と言われた、ということです。

曲の構成

3楽章形式です。演奏時間は30分弱で、一般的な構成になっています。

第1楽章:アレグロ・マエストーソ

協奏ソナタ形式です。展開部では短調に転じ、繊細な表情を見せます。最後にカデンツァがあります。

第2楽章:アンダンテ

三部形式です。第21番はこの楽章が特に有名で、様々な映画などに使われています。

第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ

展開部のないソナタ形式です。ラストに短めのカデンツァがあります。

編成

独奏ピアノ
フルート×1、オーボエ×2、ファゴット×2
ホルン×2、トランペット×2
ティンパニ
弦五部

おすすめの名盤レビュー

それでは、モーツァルト作曲ピアノ協奏曲第21番名盤をレビューしていきましょう。

ピアノ:ピリス,アバド=ヨーロッパ室内管弦楽団

ピリスの軽妙で色彩的なピアノと絶妙な伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 静謐
  • 色彩感
  • 高音質

超おすすめ:

ピアノマリア・ジョアン・ピリス
指揮クラウディオ・アバド
演奏ヨーロッパ室内管弦楽団

1993年,フェラーラ市立劇場 (ステレオ/デジタル/セッション)

ピアノ独奏はマリア・ジョアン・ピリス、アバドとヨーロッパ室内管弦楽団が伴奏を務めた録音です。比較的小編成のオケに、モーツァルトを得意とするピリスのピアノです。1993年録音で、割と新しい録音で音質も良いです。

第1楽章アバド=ヨーロッパ室内管らしい速めのテンポで小気味良い演奏で始まります。音質も良く、木管などとても奇麗に録音されています。ピリスはとてもモーツァルトらしい軽妙なタッチで入ってきます。自由さがあって鮮やかなピアノです。展開部の後半も鮮やかで色彩的な演奏を繰り広げています。カデンツァでは軽やかに流れるようなタッチで音階を弾いていきます。鮮やかさも伴った絶妙なタッチで、スリリングに聴かせてくれます。

第2楽章有名なメロディを色彩感溢れる音色で弾いていきます。オケとも上手く絡み、スケール大きく弾いてみたり、モーツァルトらしさを失わないで表情豊かな演奏を繰り広げています。

第3楽章はとても速いテンポで、ピアノもリズミカルでスリリングです。細かいパッセージも生き生きと弾いていきます。盛り上がっていき、カデンツァに入ります。静謐さを根底にもって、生き生きとした名演です。

ピリスとしても名演と思いますが、多くの協奏曲のバックを務めてきたアバドにとっても屈指の名伴奏だと思います。丁々発止のスリリングなやり取りも多く、聴いていてとても楽しめる名盤です。

ピアノ:ゼルキン, アバド=ロンドン交響楽団

情感豊かな
  • 名盤
  • 定番
  • 表情豊か

おすすめ度:

ピアノルドルフ・ゼルキン
指揮クラウディオ・アバド
演奏ロンドン交響楽団

1982年,ロンドン (ステレオ/デジタル/セッション)

ピアノ独奏はルドルフ・ゼルキンアバドとロンドン響がバックを務めた録音です。1982年のデジタル録音で音質は良いです。

第1楽章の冒頭のオケは少し遅めのテンポで、しっかりした足取りです。木管のソロも素朴な『田園』のような演奏です。ピアノは遅めのテンポでしっかりと表現しています。流麗な音型は透明感のあるタッチです。オケが入ってくると結構スケール感もある音楽になります。繊細な表現は少しロマン派風の表現かな、とも思いますが、とても情感が豊かです。再現部は穏やかで聴いていて心地よい自然美があります。カデンツァは華やかさと情感のバランスが取れています。

第2楽章は遅めのテンポでオケが味わい深く演奏し、そこにピアノが入ってきて情感豊かに演奏していきます。伴奏が非常にピアノと合っていて、一緒に音楽を作っている感じです。それにしてもこの演奏、どこかで聴いたような感じがします。CMやBMGなどで良く使われているかも知れませんね。基本ロココ調ですが、調性の微妙な変化に対して繊細な感情表現を付けています。

第3楽章溌溂としていてスリリングです。ピアノもリズミカルで遊びも感じられます。速いテンポでもリズミカルに、繊細なタッチで流麗に、弾いていきます。カデンツァは表情豊かで、ラストの正確なタッチには驚きます。

最近の演奏に比べるとロマン派風な所が残る演奏ですが、こういう演奏はもう聴くことが出来ないのかも知れません。モーツァルトの本質の一端を体現した永遠の名盤かも知れませんね。

ピアノ:グルダ, アバド=ウィーン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • 情感
  • 自然美

おすすめ度:

ピアノフリードリヒ・グルダ
指揮クラウディオ・アバド
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1974年9月,ウィーン,ムジークフェラインザール (ステレオ/アナログ/セッション)

フリードリヒ・グルダのピアノ独奏にアバドとウィーン・フィルの伴奏です。録音は1970年代のアナログ録音で安定しています。

第1楽章は冒頭のなかなかダイナミックさがあります。ピアノはリズミカルで、オケと上手く絡んでいます。ウィーン・フィルの木管の響きは素朴さがあり、穏やかな雰囲気です。展開部以降、転調して短調になると、グルダは繊細に悲哀を表現していきます。繊細なピアノにウィーン・フィルの音色がとても良く合っています。カデンツァはダイナミックに始まり、他の演奏と大分違うので少し驚きですね。

第2楽章はウィーン・フィルのロマンティックな演奏で始まります。ピアノは一音一音をいつくしむように、淡い情感を入れつつ演奏していきます。ピアノとウィーン・フィルの響きが良く絡まって、穏やかに味わうことが出来ます。グルダは繊細な感情の動きを表現していき、さらに味わいも深まっていきます。

第3楽章は速めのテンポでリズミカルです。ピアノは丁寧なタッチで、速いパッセージを弾いていきます。感情の微妙な揺れ動きを表現していきます。カデンツァでは溌溂とした演奏で、その後、技巧を聴かせてくれます。

グルダとウィーン・フィルの相性がかなり良く、相乗効果で特別な名演になっている、と感じます。

内田光子=クリーヴランド管弦楽団

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

ピアノ&指揮:内田光子
演奏クリーヴランド管弦楽団

2012年4月,クリーヴランド,セヴェランスホール (ステレオ/デジタル/セッション)

内田光子がアメリカの名門クリーヴランド管弦楽団を弾き振りした録音です。内田光子のモーツァルトはジェフリー・テイトとの名盤もありますが、どんな風に進化したのかな、と思います。

第1楽章はクリーヴランド管のしっかりした演奏で始まります。ピアノは品格のある演奏ですが、繊細な感情表現を上手く織り交ぜており、聴きごたえがあります。オケのしっかりした演奏もあり、感情表現に流れすぎず、スタイリッシュさが崩れることはありません。カデンツァは技巧もハイレヴェルですが、感情表現が精妙になったりドラマティックに盛り上がったり、ととても表情豊かな演奏です。

第2楽章は遅めのテンポでクリーヴランド管らしい静謐な演奏で始まります。ピアノはスタイリッシュさを保ちつつ、情感を入れ込んでいきます。表面的にはスタイリッシュですが、ピアノは結構ドラマティックとも言える表現があります。第3楽章標準的なテンポでシャープさのある演奏で始まります。木管のクオリティも高いですね。ピアノは少しテンポアップして入り生き生きとした演奏を展開します。後半、段々とスリリングに盛り上がっていきます。カデンツァは小気味良く、最後までスタイリッシュに曲を締めます。

内田光子とクリーヴランド管弦楽団は、大分違う音楽を持っていると思うのですが、ここでは上手く相互作用していて静謐さと繊細さ、奥ゆかしい感情表現などが生まれていて、聴きごたえがある名盤です。

ピアノ:ゲサ・アンダ, カメラータ・ザルツブルク

清潔で品格あるゲサ・アンダの音色と小編成のオーケストラ
  • 名盤
  • 定番
  • 繊細
  • 品格

おすすめ度:

ピアノゲサ・アンダ
演奏カメラータ・ザルツブルク

1961年5月,ザルツブルク (ステレオ/デジタル/セッション)

ゲサ・アンダがカメラータ・ザルツブルクを振り弾きした演奏です。1961年と少し古いアナログ録音で、弦がまたに薄い所もありますが、ピアノはしっかり録音されています。関係ないですが、CDの表紙にある女性は、ピアニストとは関係ありません。

第1楽章はカメラータ・ザルツブルクの小編成で軽妙な演奏から始まります。モーツァルトらしい軽快な響きで、センスの良さは1961年の録音とは思えません。ピアノはとても流麗で軽妙です。弱音での繊細で正確なタッチが素晴らしく、静謐なモーツァルトです。しかし、展開部など、ここぞというときはダイナミックな演奏にもなります。

第2楽章はピアノの有名なメロディが、清潔で透明感のある音色で演奏されています。品格の高さが感じられる名演です。第3楽章は速めの軽快なテンポで演奏されます。カメラータ・ザルツブルクは小編成でピアノとのバランスがとても良いです。ピアノは自由に弾いていますが、品格の高さを伴っています。細かいパッセージも繊細さのあるタッチで弾きこなしています。カデンツァは技巧的ですが、最後まで品格を失うことはなく、スリリングに楽しめます。

レコード盤もリリースされていますが、確かにレコードに合いそうな名盤です。

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演奏の映像(DVD,Blu-Ray,他)

モーツァルトのピアノ協奏曲第21番の映像は、あまり多くありませんが、一つありました。第20番、第21番、第27番と選曲も良いBlu-Rayですね。

ブッフビンダー=シュターツカペレ・ドレスデン

  • 名盤
  • 定番
  • 高画質

指揮&ピアノ:ルドルフ・ブッフビンダー
演奏シュターツカペレ・ドレスデン

2015年6月ドレスデン,ガラス工場 (ステレオ/デジタル)

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楽譜・スコア

モーツァルト作曲のピアノ協奏曲第21番の楽譜・スコアを挙げていきます。

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