ドヴォルザーク 交響曲第7番

アントニン・ドヴォルザーク (Antonin Dvorak,1841-1904)作曲の交響曲第7番 ニ短調 Op.70 (Symphony No.7 d-Moll Op.70)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

よくドヴォルザーク三大交響曲といいますが、これは第7番第8番『イギリス』第9番『新世界より』の3曲のことです。しかし、有名で頻繁に演奏される第8番、第9番に比べると第7番は短調ですし明らかに地味な感じがします。しかし、交響曲第7番はよく聴いてみると味わい深い交響曲であることが分かると思います。隠れた名曲ですね

解説

ドヴォルザーク交響曲第7番 ニ短調 Op.70について解説します。

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ドヴォルザークの初期の交響曲

ドヴォルジャークブラームスよりも10年も前から交響曲の作曲に取り組んでいます。最初の交響曲は1865年に書かれました。当初はワーグナーの影響を大きく受けた規模の大きな作品でした。

一方、オーストリアに才能ある芸術家を支援する奨学金制度が誕生し、ブラームスはその審査員を務めました。そして、ドヴォルザークは作曲した交響曲などを応募曲として提出していました。そのため、ブラームスはドヴォルザークの高い才能をその時点で知っていました。いくつかの作品は報奨金を得ています。

ブラームスの強い影響

ブラームス交響曲第1番を書きますが、ドヴォルザークの交響曲もブラームスの影響を大きく受けるように変わっていきます。特にドヴォルザーク交響曲第6番は、ブラームス交響曲第2番の影響を強く受けています。

ドヴォルザークブラームス交響曲第3番の初演を聴いており、ドヴォルザークの第7番はブラ3の影響を受けて書かれることになります。確かに調性など形の上では似ています。とはいえ、ここまで情熱的で不安感を伴った交響曲は、ドヴォルザークの交響曲の中にもなく、第7番は他とは少し異なる方向性を持った交響曲となっています。

スメタナと国民楽派

ブラ3はブラームスの個人的な感情の強い交響曲ですが、ドヴォルザークの第7番はスメタナなどの国民楽派の影響が強いです。当時ハプスブルク帝国だったチェコのボヘミア地方の民族主義が根底にあります。

ドヴォルザーク自身の作曲による劇的序曲『フス教徒』からの主題が使用されています。スメタナも『我が祖国』で使用した主題です。フス教徒は、ヤン・フスが中心となったチェコの宗教改革運動でプロテスタントです。チェコ語による典礼を奨励しました。しかし、異端と見做されヤン・フスは処刑されます。チェコの民族主義運動の象徴的存在の一つです。

プラハにあるヤン・フス像

後に続くヤナーチェクは『グラゴル・ミサ』を作曲していますが、これはまさに教会スラヴ語によるミサの音楽ですね。スメタナ~ヤナーチェクへと続く、国民楽派の系譜に入る曲と言えます。

作曲と初演

ロンドンのフィルハーモニー教会から1884年6月13日に作曲の依頼がありました。フィルハーモニー教会はドヴォルザークを名誉会員とし、作曲した交響曲を持ってロンドンを訪れるように、と招待しました。

初演は1885年4月22日にロンドンのセント・ジェイムズ・ホールで、ドヴォルザーク自身の指揮により行われました。結果は大成功で、この交響曲は当時の世界的な演奏家たちにより、各地に紹介され高い評価を受けることになりました。

曲の構成

通常の4楽章構成の交響曲です。ドヴォルザークの三大交響曲の最初の作品なのですが、交響曲第8番、第9番『新世界より』に比べると、そこまで洗練されてはいません。一方、スメタナの国民主義的な影響が強く伺えます。また劇的な要素も強く、第4楽章あたりは普通のロマン派交響曲と考えると、少し理解しにくい音楽かも知れません。

第1楽章:アレグロ・マエストーソ

ニ短調のソナタ形式です。ヴィオラとチェロにより、シリアスな第1主題が提示されます。反ハプスブルクの愛国主義者たちがチェコの首都プラハ駅に到着したシーンからインスピレーションを得たものです。また、スメタナのわが祖国や、自作の『フス教徒』序曲で使用された主題が現れます。第2主題は変ロ長調に転じて穏やかな主題となります。

第2楽章:ポコ・アダージョ

緩徐楽章です。自由な三部形式で作曲されています。コラール風な主題が現れます。木管のソロや中間部でのホルンが印象的で、チェコの自然を表現したような音楽ですが、とても繊細で情感に溢れています。

第3楽章:スケルツォ

3部形式のスケルツォです。チェコの民族舞踊フリアントのリズムが使われています。

第4楽章:フィナーレ(アレグロ)

ソナタ形式のフィナーレ楽章です。冒頭は幻想序曲『フス教徒』から採られています。第1主題はクラリネットとホルンによるニ短調の主題です。第2主題はイ長調で好対照をなしています。ソナタ形式なので対照的なのは当然かも知れませんが、非常に劇的と言える位の差があり、展開部では、短調と長調を織り交ぜて対位法的に展開されていきます。上昇音型などで、とても印象的な盛り上がりを見せます。再現部になっても引き続き盛り上がり、コーダではドラマティックなラストを迎えます。

この展開部以降の構成はシャコンヌを思い出してしまいます。まだブラームスの交響曲第4番のシャコンヌは書かれていませんし、ドヴォルザークは新古典主義の作曲家とも言えませんけれど。幻想序曲『フス教徒』のモチーフを全曲に渡って用いていることでも分かりますが、教会音楽的な要素を入れ込んだのかも知れませんね。オスティナート風に盛り上がり、最後はスケールの大きな音楽になり、ダイナミックに曲を閉じます。

ヤナーチェクの交響詩『タラス・ブーリバ』のように最後にヤン・フスが火刑に処される、という筋書きがあったとしてもおかしくない楽章です。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ドヴォルザーク作曲交響曲第7番 ニ短調 Op.70名盤をレビューしていきましょう。

ノイマン盤セル盤が二大定盤だと思います。対照的な2つの演奏ですが、それぞれ良さがあります。ノイマン盤が一番良く、聴けば聴くほど味が出てきます。

ノイマン=チェコ・フィル(1972年)

独特のくすんだサウンドで民族性と深みを出した名盤
  • 名盤
  • 奥深さ
  • 民族的
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ヴァーツラフ・ノイマン
演奏チェコ・フィルハーモニー

1972年6月8,28日&8月31日,プラハ,ルドルフィヌム(ステレオ/アナログ/セッション)

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ノイマンのドボ7は民族的でくすんだオケの音色が印象的です。重量感のある弦セクションはアンチェル時代から引き継がれたものかも知れません。ホルンやオーボエなどの管楽器も当時のチェコフィルらしい音色です。ドボ7の不安感やロマン派的な表現が素晴らしいです。第2楽章は、さらに深みが出て、濃厚といえる位の味わい深さが加わります。不安の表現はかなりシリアスな所まで行き、ノイマンもここまで表現するのか、と驚きました。それでもテンポはスコア通りに近く、ドヴォルザークの意図を汲む努力が見られます。第4楽章も非常に綿密にスコアを読みこんでいて、インテンポで濃厚な演奏です。それと同時にこの楽章が持つ形式美も失っていません。

このノイマン=チェコフィルの全集からのドボ7は、いくつかあるノイマンのドボ7の中でも特に名演だと思います。

クーベリック=ウィーン・フィル (1956年)

クーベリックの激しい感情表現、柔らかく包み込むウィーンフィル
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱的
  • ロマンティック
  • 白熱
  • 神々しさ

超おすすめ:

指揮ラファエル・クーベリック
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1956年10月1-4日,ウィーン,ゾフィエンザール (ステレオ/アナログ/セッション)

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若い頃のクーベリックとウィーン・フィルのドボ7は、とてもシリアスな感情表現でチェコの国民楽派的な演奏です。でも、ハプスブルク帝国の首都があったウィーンのオケなので、この曲に関して言えば、生粋のチェコ人のクーベリックと立場は正反対のような気がします。しかし、地理的に近いこともあってか、ウィーン・フィルは民族的な響きを醸し出し、共感に満ちた力強い演奏を繰り広げています。

第1楽章は遅いテンポでじっくり感情的に歌い込みます。さすがクーベリックでロマンティックな表現は他の指揮者の追随を許さないものがあります。ウィーン・フィルもそれに最大限に共感して、濃厚で激しいとも言える位、情熱的な演奏を繰り広げています。ふくよかな響きはウィーン・フィルでないと出せない響きです。感情的に盛り上がる個所はとてもダイナミックで凄みを感じます。

第2楽章チェコの自然を憧憬をもって演奏しています。自然賛美ですが、短調部分の感情表現がやはり素晴らしいです。ウィーン・フィルのふくよかな音色はシャープな表現を上手く包み込んだ上で、白熱した演奏となっています。また昔のウィーン・フィルらしい神々しい響きを聴くことが出来ます。第3楽章は速めのテンポで、味わい深いスケルツォです。中間部は神々しさを感じるような響きです。

第4楽章はとても劇的な表現から始まります。激しさのあるシャープな表現ですが、ウィーン・フィルは共感して白熱した演奏を繰り広げています。他のクーベリックの録音と比べるとウィーン・フィルが表現を昇華させているように思います。展開部を過ぎるとインテンポで盛り上がり、ダイナミックなラストを迎えます。

1956年と言えば、クーベリックがチェコから亡命して、まだ年月が経っていない頃で、その分リアリティが強いですね。この後、クーベリックはベルリン・フィルと全集を録音しますが、それでもウィーン・フィルとの名盤は絶妙で価値が高いと思います。

スウィトナー=シュターツカペレ・ベルリン

自然な表現と淡い感情表現
  • 名盤
  • 定番
  • 自然
  • 素朴
  • 情熱的
  • 高音質

超おすすめ:

指揮オトマール・スウィトナー
演奏シュターツカペレ・ベルリン

1981年2月,ベルリン,キリスト教会 (ステレオ/デジタル/セッション)

スウィトナーとベルリン・シュターツカペレの録音です。スウィトナーらしい自然な表現の中にも、しっかりした情熱を帯びた演奏で、聴きごたえもしっかりあります。第7番の録音は1981年と新しめで音質も良いです。

第1楽章は情熱的ですが、自然美に溢れています。短調と長調を行ったり来たりする繊細さを前面に押し出した音楽作りで、弦の響きは艶やかかつ爽やかで、神々しさすら感じられます。金管はふくよかな響きで、ホルンも味わいのある音色です。チェコ・フィルの音色とはまた違いますが、ドイツもチェコの隣国で国境付近は自然が豊かな地域です。ドイツのオケらしいスケールが大きく包み込まれるような自然の表現です。

第2楽章は素朴な表現で、平和な雰囲気が良いです。ベルリン・シュターツカペレの木管ソロの響きは色彩感があり、ホルンの音色も素晴らしいです。憂鬱で情熱的な音楽が、穏やかな雰囲気の中に現れるので、とても効果的です。弦は清らかさがあり、精妙な表現です。第3楽章はフリアントのリズムが素朴に演奏され、木管とホルンの絡みが素晴らしいです。ドイツのオケらしく、ダイナミックに盛り上がります。

第4楽章は精妙に始まります。ベルリン・シュターツカペレの木管の音色が自然でとても良く、上手く絡んでいます。その後、少し遅めのテンポ取りでふくよかな弦の音色を引き出し、スウィトナーの円熟を感じさせます。短調の個所もそこまでシリアスになり過ぎず、長調の個所では非常に美しい演奏となっています。徐々に情熱的に盛り上がります。

スウィトナーとベルリン・シュターツカペレのドヴォルザーク録音の中でもとても音質が良く、音色が美しく自然さのある名盤です。適度に情熱的な表現がありますが、スケールが大きく自然賛美的な側面を際立たせた名演です。

モントゥー=ロンドン交響楽団 (1959年)

自然さと透明感、情熱的な表現も秀逸
  • 名盤
  • 定番
  • 自然
  • 情熱
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ピエール・モントゥー
演奏ロンドン交響楽団

1959年10月,キングズウェイホール (ステレオ/アナログ/セッション)

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モントゥーとロンドン交響楽団の名盤です。モントゥーは『田園』『春の祭典』など、幅広い曲で才能を発揮した指揮者ですが、ドヴォルザークの7番も名演です。ロンドン交響楽団はダイナミックでコクのある弦の響きが良いです。録音も当時としてはしっかりしていてノイズも少なめで、響きも良く聴きやすいです。

第1楽章は透明感を感じる美しさのある演奏です。モントゥーの円熟を感じます。味わいも深く、チェコの演奏家とはまた違った深みが感じられます。ダイナミックな個所もロンドン交響楽団の厚みのある弦セクションと金管が咆哮しています。自然さのある演奏ですが、さすがスコアの読みも深く、多彩な表現で飽きのこない名演です。後半、情熱的に盛り上がる個所も激しく盛り上がります。第2楽章弦にコクがあり、味わいが深いです。

第3楽章はシリアスさがあり、シャープな激しい表現で名演ですね。ホルンなど管楽器も上手さも特筆すべきですね。第4楽章シャープでリズミカルに情熱的に盛り上がります第2主題は穏やかで木管の響きが素朴さがあっても良いですね。シリアスさはありますが、テンポ取りが自然でリズミカルなので、他の演奏に比べると軽妙です。それでも聴きごたえがあり、曲そのものの良さが前面に出ていると感じます。

セル=クリーヴランド管弦楽団

変幻自在のテンポ取りのセルの音楽、コクのある演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 精緻
  • 民族的
  • 情熱的

超おすすめ:

指揮ジョージ・セル
演奏クリーヴランド管弦楽団

1960年3月18日,19日,クリーヴランド,セヴェランス・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

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ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団による、昔から定番とされている演奏です。筆者もこのCDを持っていて、学生の頃、繰り返し聴いていたので、刷り込みがありますね。ただ、スコアとの違いが大きく、ジョージ・セルが一度解釈した後に、テンポなどを再設定していると思います。それは、他の演奏を聴かなくても分かるレヴェルです。ただ、その解釈が非常に自然なので、それで良いのだとも思います。

第1楽章は、細かい弦の動きやソロの上手さに舌を巻きます。艶やかで非常にロマンティックなメロディラインが印象的です。それにしてもノイマンと同じ曲を演奏しているとは思えない位、まとめ方に違いがあります。テンポ設定もそうですし、細かい弦の装飾的な動きも上手く演出しています。全体の見通しが良く、ソナタ形式であることが分かり易い演奏です。

第2楽章も同様で、深みはノイマン盤のほうが上ですが、テンポの変化が非常に自然で、曲としての完成度はセルのほうが高そうです。それにしてもフルトヴェングラー並みに自在にテンポが変化しています。第4楽章は速めのテンポで情熱的です。後半は、ノイマン盤は形式美がありますが、セルの演奏は普通に情熱的な演奏として自然にまとめています

セルとノイマンのどちらが正しいのか、難しい問題ですね。ただブラームスは第4番では第4楽章をシャコンヌにするなど、ロマン派というよりは新古典主義につながる方向に行っています。ドボ7の第4楽章にもそういう要素がある気がします。

ケルテス=ロンドン交響楽団

自然体でスタンダードなドボ7
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱的
  • 自然

おすすめ度:

指揮イシュトヴァーン・ケルテス
演奏ロンドン交響楽団

1964年3月,ロンドン

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情熱的でダイナミックな演奏です。ロンドン交響楽団のダイナミックなサウンドを最大限に活かしていて、弦楽器のサウンドが素晴らしいです。録音状態も非常によく、自然な音質です。また弦楽セクションのヴィブラートの掛け方がしなやかで、艶のある美しい音色です。盛り上がってくるとロンドン交響楽団のパワフルな金管が咆哮します。第2楽章の分厚い弦アンサンブルもいいですね。情熱的に盛り上がる所もスケールが大きいです。第4楽章も情熱的でオケ全体が良く鳴っています。

ロンドン交響楽団はダイナミックな演奏を繰り広げていますが、特に弦セクションは民族的な色彩を持っており、所によってはウィーンフィルのように聴こえます。民族的でスタンダードな名盤です。

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楽譜・スコア

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