ブラームス 交響曲第4番 Op.98

ヨハネス・ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897)作曲の交響曲 第4番 ホ短調 Op.98 (Symphony no.4 e-moll Op.98)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

解説

ブラームス交響曲 第4番 ホ短調 Op.98について解説します。

ブラームスのたどり着いた境地

ブラームス交響曲第4番は、ブラームスが1884年~1885年に作曲した最後の交響曲です。ベートーヴェンを目指したブラームスでしたが、行きついたゴールは大分違う所になりました。
しかし、円熟した傑作であり、ブラームス自身も「自作で一番好きな曲」「最高傑作」と述べています

バロック時代技法など、工夫に富んだ交響曲

ブラームスは交響曲第4番で、これまでブラームスが蒐集(しゅうしゅう)してきた古い楽譜の様式を交響曲に応用することになりました。新古典主義とよく言いますが、ブラームスはバッハ以前のバロック時代の音楽も研究していました。古典主義以前の技法を交響曲に応用したといえます。

まず、第1楽章はいきなりアウフタクトの第1主題から始まります。このアウフタクトで交響曲を開始するというのは、あまり使われない技法です。というのはアンサンブルが難しいからです。カルロス・クライバーの指揮を見ていると、よくあれで入れるなぁと感心しますね。普通はアウフタクトの主題を使いたければ、ハイドンのように前奏を入れたり、モーツァルトのように伴奏を先に始めれば良いのです。Wikipediaによれば、モーツァルト交響曲第40番以来かも知れません。これはブラームス本人も認識していて、ちょっとした前奏を入れるかどうかで迷ったようですが、結局いれませんでした。ブラームスがこだわったということですね。確かに、それによって第1楽章の出だしは、この交響曲の大きな特徴となり、繊細さにつながっています。

https://youtu.be/t_L8BajLmtE
カルロス・クライバー=バイエルン国立管弦楽団

ソナタ形式ですが、提示部の繰り返しがありません。提示部の2回目に入ったと見せかけて、実は展開部だった、というフェイクなのです。ハイドンの交響曲なら探せばあってもおかしくないですが、よく分かりません。ハイドンらしい感じがするテクニックですね。そして最後はアーメン終止(サブ・ドミナント→トニックの進行、別名プラガル終止)という教会音楽のような終止で終わります。

第2楽章はホルンが「ミ」の音から始まる音階である「フリギア旋法」を使用しています。「フリギア旋法」は教会旋法の一つですが、よく民謡などで耳にする「ドリア旋法」などに比べると、特殊といっていい音階です。なにせドとレの間が半音なのです。他の弦楽器等はe-mollで演奏しますが、ホルンだけはフリギア旋法を使っていて、独特の効果を出しています。

第3楽章はスケルツォ楽章となっています。しかし、非常に力強くスケールの大きな楽章です。これは第4楽章がシャコンヌなので、それとの対比のためです。ただちょっと派手すぎるんじゃないか?と。第4楽章のシャコンヌはそこまでインパクトがある音楽ではないので、第3楽章がここまで派手だと交響曲全体のバランスが崩れるのでは?というのが管理人の感想です。(なんて偉そうな…)

また、第4楽章がシャコンヌ(≒パッサカリア)になっています。シャコンヌはバロック時代に使用された形式です。
バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番のパッサカリアは有名ですね。あんな感じで同じメロディを少しずつ変奏しながら繰り返します。

ブラームスは既にシャコンヌを「ハイドンの主題による変奏曲」の終曲で使用したことがありました。しかしシャコンヌはバロック時代には独奏ソナタの終楽章によく使用されましたが、交響曲の終楽章に使われるほどダイナミックな形式ではありません。それをあえて、ロマン派の交響曲に使ったわけです。それが交響曲第4番の感情表現は豊かながら、どこか静謐(せいひつ)さのある音楽になっていると思います。また、シャコンヌの主題はピカルディ終止で終わっています。ピカルディ終止とは短調の楽曲で最後だけ長三和音で終わる終止です。バロック時代の前半より前では短三和音では終止感が少ないということで、終止を長三和音にすることが当たり前に行われていました。

このようにバロックの様式を多く取り入れていますし、他にも難解な技法を多く使っています。それでも初演は1885年にブラームス自身の指揮によるマイニンゲン宮廷管弦楽団によって行われ、大成功でした。

新古典主義の本格的な始まり

この曲が初演されたころ、世の中は新古典主義の萌芽が出始めていました。例えばブラームス交響曲第4番と同じ時期に作曲されたグリーグの弦楽合奏の組曲「ホルベアの時代より」は、劇作家ホルベアの生きたバロック時代の音楽を模倣しており、ロマン派的な曲想ですが、ガヴォットなどバロック時代の舞曲が取り入れられたり、ソロ、伴奏の形態などを見るとまるでバロック時代の合奏協奏曲です。

源流を辿ればメンデルスゾーンによるバッハの「マタイ受難曲」復活上演や交響曲第3番「スコットランド」などになりますが、楽譜の蒐集や研究などでブラームスが果たした役割は非常に大きかったといえます。

その後、新古典主義は一つの大きな流れになっていきます。
例えばレスピーギの「リュートのための組曲」、ファリャやプーランクによるチェンバロ協奏曲が分かりやすい例です。
ストラヴィンスキーはバレエ「プルチネルラ」から始まり、「交響曲ハ調」、「3楽章の交響曲」など、現代的な音楽にも新古典主義を取り入れています。バルトークの「弦チェレ」、バルトークやショスタコーヴィチによる無伴奏バイオリン・ソナタなどもそうで、12音技法をあまり用いなかった近代~現代作曲家に大きな影響を与えています。

おすすめの名盤レビュー

ブラームス交響曲第4番の名盤をレビューしていきます。

カルロス・クライバー=ウィーン・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮:クライバー(カルロス)、ウィーン・フィルハーモニー
録音:1980年3月,ウィーン,デジタル

ブラームス:交響曲第4番
4.7/5.0レビュー数:113個
残り3点

ブラームス:交響曲第4番
4.5/5.0レビュー数:22個

ブラームス:交響曲第4番
4.4/5.0レビュー数:12個

いきなり先頭にカルロス・クライバーを持ってくると、早いですかね。これを聴くとそれで満足して終わってしまいそうです。でも、ご安心ください。ブラームスの交響曲第4番は名盤が沢山ありますから。

とはいえ、カルロス・クライバーとウィーン・フィルはブラームス交響曲第4番には理想的な組み合わせです。オーストリア的な軽妙さもありますし、最初のアウフタクトでふわっとウィーンフィルが入った時点で「凄い」と思ってしまいます。

全体的にテンポを動かすことは多く、いろいろな表現をしています。第4楽章のシャコンヌも結構テンポを変えています。基本的にナチュラルなのであまり気にはならないですね。

カルロス・クライバー=バイエルン放送交響楽団

  • 名盤
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮:クライバー(カルロス)、バイエルン放送交響楽団
録音:1996年10月21日,ミュンヘン,ヘルクレスザール

カルロス・クライバーはバイエルン放送交響楽団とのDVDもあります。上のYouTubeと同じです。

このDVDはちょっとクライバーの最盛期を過ぎたころかも知れません。それでも優雅な指揮ぶりは健在です。モーツァルトの交響曲33番の映像も貴重ですね。

ザンデルリンク=ドレスデン・シュターツカペレ

  • 名盤
  • いぶし銀

おすすめ度:

指揮:ザンデルリンク、ドレスデン・シュターツカペレ
録音:1972年アナログ録音

ブラームス:交響曲第4番
4.3/5.0レビュー数:21個
残り1点

オーソドックスで正統派の演奏です。ドレスデン・シュターツカペレも東欧時代の渋くて、本当にいぶし銀といえるサウンドです。
変にテンポを変えたりしていないし、奇をてらったことはいません。逆にアクセントを弱めて渋い演奏にしようとか、そういう作為も感じません。

第3楽章もしっかり強奏していますが、必要以上にうるさくなく、重厚な響きです。第4楽章はこれ以上ない位、自然なテンポで演奏しています。後半になるにしたがって盛り上がってきますが、それで演奏が感情的になることはなく、スケールが増していくような感じです。


録音は1972年ドレスデン・ルカ協会ですが、音質は上々です。BLU-SPECK CDの効果もあるかも知れません。
曲の性向が素直に出ているので、アマチュア・オーケストラに入っている人なら、スコアを見ながら参考音源にするのにとても良いと思います。

ヴァント=北ドイツ放送交響楽団

  • 名盤
  • 重厚
  • 高音質

おすすめ度:

指揮:ヴァント(ギュンター)、北ドイツ放送交響楽団

ブラームス:交響曲第4番
4.5/5.0レビュー数:3個

ブラームス:交響曲全集
3.8/5.0レビュー数:13個

Complete Symphonies
4.4/5.0レビュー数:9個

ヴァントは音楽的に妥協を許さない渋いというか厳しい指揮者です。そんな指揮者が難解と言われるブラ4をやったら、、やっぱり厳しくて、緩みの少ない演奏になりますね。一般的には、もう少し懐(ふところ)の深いザンデルリンクのような演奏のほうが好まれるのでしょう。好みが分かれるのかも知れませんが、管理人はかなりの名盤だと思います。

北ドイツ交響楽団の重厚なサウンドの上で、感情的にもメリハリが強い演奏が繰り広げられます。ところどころ悲痛な感情が表現されていたり、穏やかなところもあったりします。

第1楽章の追い込みは素晴らしいです。第2楽章はもちろん穏やかです。テンポも少し速めで響きに無駄がないな、という感じはありますけど。第3楽章は余計に盛り上がり過ぎず渋い感じです。テンポも遅めですね。第4楽章は前半はさほどではありませんが、段々感情が強まっていて、終盤はちょっとストイックなくらい追い込んでいきます。

ヴァントはもう既に堂に入っている感じで、感情表現も完成されていて何の迷いもなく確信をもって指揮しています。それに北ドイツ放送交響楽団は完璧な演奏で応えていますね。本当に凄い演奏です。新しめの演奏なので録音も非常に良いです。

アルブレヒト=読売日本交響楽団

  • 名盤
  • 職人的

おすすめ度:

指揮:アルブレヒト、読売日本交響楽団
録音:2001年3月7,8日

アルブレヒトが着任してから、数年で読売日本交響楽団は大きな進化を見せ、驚きました。アルブレヒトもヨーロッパの歴史あるオーケストラとの演奏とは違うものを読響に求めました。読響は当時ロシア系の指揮者が良く客演していましたから、NHK交響楽団と違って、ドイツ系の曲の演奏に読響独自のスタイルというのはあまりありませんでした。そこへアルブレヒトがやってきて、あたかも白紙のカンバスに絵を描くように読響を指揮したのです。

このCDはライヴ録音ですが、管楽器が音を外すこともないし、もちろん技術的に問題となる個所はありません。ヨーロッパの楽団では当たり前に表現してしまうことを、読響は日本のオケなのでやらないのです。そのためブラームス交響曲第4番の素の姿が出ているように思います。逆にいえばドイツをはじめヨーロッパのオケはブラームスの演奏スタイルを独自に確立してしまっているんですね。

第1楽章から第3楽章までは何もいうことはなくて、余計な色は出さないで、しかも聴かせるところは厚みのある音を出してしっかり聴かせてくれます。第3楽章がうるさくないところは管理人好みですね。第4楽章は特に前半は透明感があって管楽器のソロも素晴らしいですが、もうちょっと大きな盛り上がりがあっても良かったんじゃないか?という気はします。「何も足さない、何も引かない」という某ウィスキーメーカーの宣伝を思い出しますね。

本CDは「ハイドン変奏曲」も含めて、アルブレヒト=読売日本交響楽団のベスト・ディスクなのでは?と思います。(全部聴いたわけではないですが。)

パーヴォ・ヤルヴィ=ドイツ・カンマーフィル

  • 名盤
  • 高音質

おすすめ度:

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ、ドイツ・カンマーフィルハーモニー
録音:2017年12月18-21日,ヴィースバーデン,クアハウス,ステレオ(DSD)

ブラームス:交響曲第3番&第4番
4.4/5.0レビュー数:9個

シューリヒト=バイエルン放送交響楽団

  • 歴史的名盤

おすすめ度:

指揮:カール・シューリヒト、バイエルン放送交響楽団

録音:1961年,ミュンヘン

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楽譜・スコア

ブラームス交響曲第4番の楽譜を紹介します。

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