ベドルジハ・スメタナ (Bedrich Smetana) の連作交響詩『我が祖国』(Ma Vlast) は、「モルダウ」が特に有名です。ここでは解説のあと、お薦めの名盤をレビューします。最後にスコア・楽譜を紹介します。
全体が一連の流れになっていて、「高い城」も味わいがありますし、「シャールカ」も迫力があります。「ボヘミアの森と草原から」はチェコの自然に感動します。「ターボル」「プラニーク」は2つでセットになっていて、大きなフィナーレに導いています。やはり全曲聴けると感動の度合いが違いますね。クーベリック=ボストン交響楽団の名盤で聴けば飽きずに聴ける気がしますのでお薦めです。
解説
スメタナ作曲の『わが祖国』について解説します。
『モルダウ』が有名
スメタナのわが祖国といえば、第2曲『モルダウ』が有名ですね。大陸の大河が流れるようなメロディが有名です。モルダウ川の源流から本流になっていく様子やチェコを滔々と流れる様子が描かれているということも、教えやすいのかも知れません。
6曲の交響詩からなる「連作交響詩」
1874~1879年に作曲した6つの交響詩をまとめて連作交響詩としたものです。国民楽派の音楽と言われていますが、すべてチェコに関する音楽になっています。第1曲~第6曲まで、ある程度ストーリー性をもって構成されています。
1.ヴィシェフラド(高い城)
2.ヴルタヴァ(モルダウ)
3.シャールカ
4.ボヘミアの森と草原から
5.ターボル
6.ブラニーク
第1曲『ヴィシェフラド(高い城)』
プラハの丘の上にある2つの塔を持つ城です。市街地から見えるプラハ城ではなく、プラハの南端の丘にある城のことです。
第2曲『ヴァルダヴァ(モルダウ)』
ヴァルダヴァ川(モルダウ川)のことです。チェコの北にあるボヘミア付近を源流として、南に向かって流れています。途中、オーストリアではドナウ川となり、黒海へ流れます。また、分岐してエルベ川となり、ドイツのドレスデンを通りハンブルグで北海に流れ出ます。ヨーロッパでも有数の大河です。途中にあるチェスキー・クロムロフは有名な観光地ですね。
第3曲『シャールカ』
チェコの女戦士シャールカの物語です。実話ではなく、伝説です。女性を見下すようになった男たちに娘たちが武器をとって立ち上がるというものです。力強く激しい音楽となっています。クラリネットのソロが印象的です。
第3曲までが前半で、通常ここで休憩がはいります。
第4曲『ボヘミアの森と草原から』
ボヘミアの豊かで穏やかな自然とそれに対する愛情に満ちた音楽になっていて感動的です。
第5曲『ターボル』
「ターボル」はフス戦争の拠点となった要塞です。フス戦争とは、プロテスタントの先駆で神聖ローマ皇帝に反旗をひるがえした戦争です。結果としては、和解して終わります。プロテスタントの宗教改革はその後、発生します。
第6曲『ブラニーク』
「ブラニーク」はチェコ中央部にあるブラニーク山のことです。伝説によればヴァーツラフ1世の騎士団がこの山に眠っているということです。そしてチェコが4方から攻め込まれたとき、永い眠りから目覚めるということです。すなわちチェコの守護神ですかね。チェコのような大陸国家は周囲を大国に囲まれていて、防衛が大変な立地です。
チェコの音楽家による名演奏
このようにチェコのシンボルや伝説を扱った交響詩であるため、昔からチェコの演奏家による熱のこもった名演奏が沢山あります。またチェコと同じような立地の国も多いので、そのような国の演奏家も名演を残しています。
ユーゴスラヴィア出身の指揮者マタチッチもNHK交響楽団で名演を残していますね。マタチッチはチェコフィルをよく指揮するなど、チェコとも深いつながりのある指揮者でした。
ハープ2台の大編成
スメタナはワグネリアンでした。そのためか、『わが祖国』もかなり複雑な作りになっています。「モルダウ」も実際に演奏してみるとかなり大変です。編成も大きめで、特に第1曲「ヴィシェフラド(高い城)」では、ハープを2台使用する指定になっています。
おすすめの名盤レビュー
『我が祖国』のおすすめの名盤をレビューしていきます。
ノイマン=チェコ・フィル (1975年)
ノイマンは2種類(3種類)あります。一番良いのは2度目の録音で1975年に録音されたスプラフォンの正規盤です。1975年盤は『我が祖国』らしい民族的な響きが良く録音されていて濃厚で深い味わいがあります。
特に『モルダウ』『ボヘミアの森と草原から』のような芳醇な曲が名演で、濃厚でふくよかな名演奏を聴かせてくれます。『ボヘミアの森と草原から』は良くあんな濃厚な響きが出るなぁと感心する位で、とても民族的で芳醇です。
長い間、スタンダードとされてきたディスクで、民族色豊かでボヘミアの自然を感じさせる名盤です。
クーベリック=ボストン交響楽団 (1971年)
クーベリックはチェコから西側に亡命した指揮者です。1989年にソビエトが崩壊した際に、初めてチェコに戻ることができ、チェコフィルを指揮しました。西側でもクーベリックはチェコ音楽のスペシャリストとして、スメタナの「わが祖国」も何度も録音しています。録音年代や音質、演奏内容で一番評価が高いのがこのボストン交響楽団との録音です。
第1曲『高い城』はスケールの大きな演奏です。冒頭のハープも上手いですし、弦は味わい深くうねります。そしてシャープでスケールの大きなクライマックスを築き、情熱的でありながらさわやかです。第2曲『モルダウ』は少し速めのテンポでフルートの絡みから既に情熱が感じられます。弦の主題も濃厚で良いです。メリハリのあるスリリングな演奏ですが、軽快な民族舞曲のリズム感はクーベリックならではです。第3曲『シャールカ』はシャープで情熱的でクーベリックの『わが祖国』の中でも特に聴き物です。舞曲もリズミカルで、クラのソロも女性的ななめらかさがあります。ボストン響の金管とパーカッションの上手さも光ります。テンポ取りも絶妙でスリリングで、女戦士シャールカの音楽絵巻ですね。
第4曲『ボヘミアの森と草原から』はシャープに始まります。ノイマンの濃厚さとは違いますが、クーベリックは情熱的で軽妙でボストン響もなかなか濃厚な響きを醸し出していて味わい深いです。第5曲『ターボル』は静かな部分で既に熱気を秘めています。そしてシャープにスケール大きく盛り上がります。第6曲『プラニーク』はシャープでダイナミックに始まります。ボストン響は濃厚なのに重くならず、白熱した情熱的な演奏を繰り広げています。木管ソロが絡む部分は自然美に満ちています。メリハリのあるテンポでスリリングに盛り上がり、弱音の部分では弦が情感に溢れていて味わい深いです。ラストは壮大なスケールの大きさで曲を締めます。
情熱や熱気が凄いです。テンポ取りといい、リズムといいチェコ風です。アメリカのボストン交響楽団から、こんな分厚い響きを引き出せるクーベリックはやはり凄いですね。
ビエロフラーヴェク=チェコ・フィル (2014年)
ビエロフラーヴェクは、2014年盤と1990年版があり、どちらも名演です。スタンダードなテンポ取りで『我が祖国』の王道を行くような演奏です。2014年盤は物凄く音質が良く、完全にチェコフィルを手中に収め、ビエロフラーヴェク自身の円熟しています。チェコ・フィルの弦の音色は透明感があり芳醇です。
第1曲『高い城』は、目の覚めるようなブリリアントなハープから始まります。透明感があり木管のソロも上手く味わい深いです。弦の響きも素晴らしく、爽やかさと味わい深さが両立しています。
第2曲『モルダウ』はしなやかなフルートの絡みで始まります。有名な主題は弦の音色が味わい深いです。的確なテンポ取りでクオリティが高く、それでいてチェコ・フィルらしい味わいがある名演です。第3曲『シャールカ』は情感に溢れた演奏で繊細な表情がついています。特に終盤のクラのソロはとても絶妙です。
第4曲『ボヘミアの森と草原から』はふわっとした響きで始まり、品格があります。透明感があってクオリティの高いアンサンブルですが、同時に味わいも深いです。
第5曲『ターボル』は前半はじっくりと盛り上げていきます。後半はスリリングでダイナミックで、チェコ・フィルのレヴェルアップを感じるクオリティの高さです。表現は多彩で繊細で深みがあり、ターボルでここまで楽しめる演奏は少ないと思います。第6曲『プラニーク』は木管とホルンの絡みは非常に繊細でクオリティが高く楽しめます。細かい表情がついていて、ダイナミックになっても透明感のあるアンサンブルです。響きが薄い個所は良く練られています。ラストはスケール大きく曲を締めます。
ビエロフラーヴェクの近道をしない本質を追求した表現、レヴェルアップしたチェコ・フィルのアンサンブルなど、クーベリックやノイマンとは違う方向で、正道を極めた味わい深さのある名盤です。
アンチェル=チェコ・フィル
アンチェルはノイマンの前のチェコ・フィルの音楽監督です。歴代チェコフィルの音楽監督は名盤を残しています。理知的な要素を前面に押し出して、スケールの大きな演奏をしています。解釈や演奏スタイルはノイマンよりアンチェルのほうが分かり易いです。少し古めですが、それほど音質には不満はありません。SACDなど良いディスクのほうが、きちんと聴けると思います。
第1曲『高い城』は重厚さがあり、とても聴きごたえがあります。アンチェル時代のチェコ・フィルの響きが堪能できます。テンポ取りは的確で、力強い表現です。第2曲『モルダウ』はしっかりした骨格のある演奏です。弦の主題は優美さがありますが、力強く盛り上がります。弱音の個所では弦に透明感があります。激流のシーンはとても激しくスケールが大きいです。第3曲『シャールカ』はシャープでリズミカルです。後半はスリリングに盛り上がり、情熱的に曲を締めます。
第4曲『ボヘミアの森と草原から』は速めのテンポで感情を入れ過ぎず、しかし厚みのある響きで濃厚です。チェコらしい民族的な音楽を堪能できます。第5曲『ターボル』はインテンポで力強く、ダイナミックに盛り上がります。弦のスケールの大きさが印象的です。第6曲『プラニーク』は木管ソロやホルンにヴィブラートがかかっていて、当時の東側のオケであることを感じますね。その後、速めのテンポで力強く盛り上がり、ダイナミックに曲を締めます。
全体的に理知的なインテンポですが、感情表現もあって力強く、とても充実した名盤です。
ノイマン=ライプツィヒ・ゲヴァントハウス (1967年)
ヴァーツラフ・ノイマンは1964~1968年にゲヴァントハウス管の音楽監督でした。ゲヴァントハウス管もまさに「いぶし銀」の響きを誇った時期です。ゲヴァントハウス管のレヴェルの高い演奏で、チェコ・フィルとは一味違ったいぶし銀の名演です。1967年録音ですが、音質は安定していて弦の音色など艶やかさがあります。
第1曲『高い城』は、ノイマンらしい濃厚でスケールの大きな演奏です。ゲヴァントハウス管の重厚でいぶし銀の響きは『我が祖国』にも良く合います。ダイナミックで壮大な盛り上がりを聴かせてくれます。第2曲『モルダウ』は重心の低い演奏で悠々としています。なかなか渋い響きで味わい深いモルダウですね。激流の個所は重厚で激しい演奏で、盛り上がって曲を締めくくります。第3曲『シャールカ』はシャープながらスケールの大きな演奏です。舞曲は濃厚でクラのソロは優美です。
第4曲『ボヘミアの森と草原から』は冒頭から濃厚な響きでさすがノイマンです。艶やかな木管のソロはボヘミアの自然美を良く表現しています。実はライプツィヒはチェコの近くなので、ボヘミアも身近なのだと思います。第5曲『ターボル』は重厚でスケールが大きく、金管がダイナミックで弦の厚みのある響きが素晴らしいです。第6曲『プラニーク』は弦の重厚さとレヴェルの高さが素晴らしいです。木管のソロは味わい深い音色で、ホルンの上手さが特に印象的です。盛り上がってきますが、わびさびを感じるような、とても味わい深い演奏です。
ゲヴァントハウス管時代からノイマンは自分のスタイルを確立していることが分かります。オケがドイツのゲヴァントハウス管でいぶし銀の響きであり、技術的にもレヴェルが高く黄金時代です。とても味わいがあり聴きごたえがある名盤です。
クーベリック=チェコ・フィル(1990年)
クーベリックは亡命前の若い時にもチェコフィルを振っていました。そして、指揮者を引退した後、ソヴィエトが崩壊し、チェコ・フィルを再度指揮することになりました。指揮者に復帰し、プラハで「プラハの春」音楽祭のオープニング・コンサートを指揮しています。
映像を見ても往年の指揮ぶりのままです。しかし、何十年ぶりにチェコフィルの指揮台に立ち、しかも『我が祖国』全曲を演奏したことはそれ自体が感動的です。
演奏は、年齢的な円熟もあると思いますし、細かいところでは不完全な所もあると思います。現役時代のボストン交響楽団との演奏のようにチェコ・フィルを完全燃焼させる所までは行っていません。もっとも帰国が叶った後ですから、チェコ・フィルの響きを活かして、穏やかで美しい演奏を繰り広げています。
ドキュメンタリーとして、とても感動的ですし、映像も出たのでクーベリックが「わが祖国」を指揮する姿を見ることが出来ました。
クーベリックは1991年にはチェコフィルを率いて来日し、『我が祖国』を指揮しています。こちらも感動的な演奏として有名です。
ターリヒ=チェコ・フィル (1954年)
モノラルですが、ターリヒ=チェコフィルの演奏もあって、ダイナミックで祖国愛に満ちた名盤です。ヴァーツラフ・ターリヒはチェコ・フィルの3代目の首席指揮者で、今のチェコ・フィルの基礎を作った指揮者です。1954年モノラルですが残響は多めで聴き易く、演奏は熱気があって素晴らしいです。ターリヒは熱演が多いですが、これもその一つです。
『高い城』からふくよかに鳴らしていて、壮大な演奏です。曲に対する共感の深さが感じられます。『モルダウ』は暖かみがあるチェコ・フィルの響きが素晴らしく、激流での激しい表現はターリヒならではの迫力です。『シャールカ』はスリリングで情熱と迫力があります。『ボヘミアの牧場と森から』はターリヒに合っている曲で、ノイマン顔負けの濃厚な響きを聴くことが出来ます。『ターボル』『プラニーク』はダイナミックに盛り上がります。響きもスケールがあり迫力満点です。
これを聴くとターリヒ時代のチェコ・フィルはかなりレヴェルが高かったと思います。わが祖国に限らずヤナーチェクの『タラス・ブーリバ』も名盤です。レコードで聴くには特にいい演奏と思います。
クチャル=ヤナーチェク・フィル
クチャルはウクライナ人ですが、チェコの音楽に造詣が深い指揮者です。ヤナーチェク・フィルは比較的小編成と思われ、アンサンブルの精度が高いです。また録音も良く分離も良いし、残響も適切です。
『モルダウ』は、フルートの精度の高いアンサンブルから始まり、テンポ取りも変化が大きく、歴史が長く大編成のチェコ・フィルでは味わえない演奏で、これまで聴いたことがないような小気味良い名演です。『シャールカ』も速めのテンポで情熱的です。テンポ取りも上手く舞曲を生かして飽きさせません。『ボヘミアの森と草原から』もかなり濃厚な演奏です。
全曲聴いてみて非常に充実感があります。ヤナーチェク・フィルは上手いですし、チェコ・フィル以外のチェコのオケの演奏も良いなと思います。聴きごたえのある名盤です。
ノイマン=チェコ・フィル (1982年来日ライヴ)
こちらは来日時に録音されたCDです。ノイマンはチェコの指揮者の中でも、素朴で大らかな演奏をする指揮者です。クーベリックのように感情を前面に出すことはなく、独特のテンポ感でわが祖国を演奏しています。特別にスケールが大きいというわけでもなく、中庸で大らかだと思います。
このCDは、1975年正規録音と同様、芳醇な曲の演奏が素晴らしいです。テンポは少し遅くなった感じです。録音が良くなり見通しが良くなったので、良くも悪くも大分イメージが変わりました。この後、ノイマンは日本の録音技術に惚れ込んだのか、DENONに多くの名演を録音しています。もっとも1975年の正規録音は独特の味のある録音だし、悪い録音ではないので、どちらも良いディスクと言えます。
レヴァイン=ウィーン・フィル
レヴァイン=ウィーン・フィルはチェコ・フィル以外の『我が祖国』の演奏で、もっとも信頼のおける演奏です。レヴァインはスケールの大きな音楽が得意ですし、ワグネリアンであったスメタナの音楽は得意です。レヴァインは特別細かい味付けはせず、オペラのように自然に演奏しています。ウィーン・フィルのふくよかな音色は隣国のチェコの音楽にも合いますね。ウィーン・フィルだとチェコ・フィルとはまた違った柔らかい響きになります。録音の音質は良く、しっかり各楽器の音を捉えています。
『モルダウ』はいい具合に力が抜けていてテンポ取りも良く、フルートのソロもクオリティが高く、自然でスケールの大きく、響きの心地よい演奏です。『シャールカ』はダイナミックに始まります。レヴァインはこの辺りのテンポ取りは上手いですね。『ボヘミアの牧場と森から』は濃厚に始まりますが、ノイマンなどに比べるとあっさりしている感じです。静かな部分が長いですが、ウィーンフィルが美しい響きを聴かせています。後半はスケールが大きくリズミカルな音楽になっています。『ターボル』『プラニーク』は、ダイナミックに盛り上がります。
スケールの大きな演奏ですが、レヴァイン=ウィーン・フィルも共感が強くなる所もあります。「ウィーン・フィルが演奏するとこうなるのか」と新しい発見もある演奏です。
ビエロフラーヴェク=チェコ・フィル (1990年)
1990年録音のビエロフラーヴェク盤は、まさにスタンダードの演奏です。チェコ・フィルの演奏で、これだけスタンダードな表現の演奏はないと思います。しなやかで自然な演奏で、2014年の透明感のある演奏とは大分違う演奏となっています。ノイマンが定番と言われがちですが、ビエロフラーヴェクの1990年盤が一番理解し易く、定番といえると思います。
小林研一郎=チェコ・フィル (1997年)
コバケン(小林研一郎)のキャリアはハンガリー国立劇場から始まり、スメタナやドヴォルザークなどの演奏を得意としています。チェコやハンガリーでも本当に人気が高く、自分たちの国の音楽を情熱的に演奏してくれる指揮者として愛されています。日本での1997年のスタジオ録音がCD化されています。これは凄いことでチェコフィルが外国人の指揮で「わが祖国」をスタジオ録音することはマッケラス以来2人目だそうです。
演奏はダイナミックで熱気がありますが、決してそれだけではなく、テンポ取りは基本的に的確でシャープさもあります。ルバートはロマンティックですね。『我が祖国』のいずれの曲でも充実した解釈で結構楽しめます。
マタチッチ=NHK交響楽団
マタチッチはNHK交響楽団およびウィーン放送交響楽団と「わが祖国」を演奏しています。技術的にはウィーン放送交響楽団のほうが余裕がありますが、NHK交響楽団のほうが力強く熱のこもった演奏になっています。そんなわけで、ここではNHK交響楽団との演奏を紹介します。ちょっと金管楽器の音程がいまひとつだったりするのは、ご愛敬ということで。
CD,MP3をさらに探す
演奏の映像(DVD, Blue-Ray)
『わが祖国』は、主にチェコ・フィルの音楽祭の映像がリリースされています。一番、有名なのはやはりクーベリックがチェコ・フィルを指揮したものですね。
クーベリック=チェコ・フィル (1990年)
ラファエル・クーベリックがチェコに帰国し、チェコ・フィルを振った感動的なコンサートの模様を収録したものです。これまで何度も『わが祖国』を録音してきたクーベリックですが、このチェコ・フィルとのコンサートは記念碑的な名演となりました。
もちろん演奏も良いのですが、詳しいことは上のCDのレビューに書いてあります。コンサート映像では「プラハの春」音楽祭のオープニングの雰囲気が素晴らしく、チェコの大統領がバルコニー席に入場してきたり、国歌が演奏されたりと雰囲気を盛り上げます。そして『わが祖国』の「高い城」の演奏が始まります。これらも含めてコンサート全体の熱気がとても感動的なんです。その感動はやはり映像を見ないと分かりません。
ビエロフラーヴェク=チェコ・フィル (プラハの春音楽祭2014ライヴ)
2014年プラハの春音楽祭のオープニングコンサートのDVDで円熟したビエロフラーヴェクとチェコ・フィルの演奏を観ることが出来ます。
小林研一郎=チェコ・フィル (2002年映像)
コバケンのスメタナ『わが祖国』の頂点は2002年プラハの春音楽祭初日のライヴDVDですね。オーストラリア人でチェコ音楽のスペシャリストであるマッケラスに続き、2人目の外国人でした。もっともチェコ人からすると当たり前という位の人気の人選だったようです。
BluRay,DVDをさらに探す
楽譜・スコア
スメタナ作曲のわが祖国の楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュア・スコア
オイレンブルクスコア スメタナ 連作交響詩《わが祖国》
第1曲〈ヴィシェフラド〉
解説:ジョン・クラブハム
第2曲〈ヴルタヴァ(モルダウ)〉[新原典版]
解説:ミラン・ポスピシル
第3曲 シャールカ
解説:ジョン・クラブハム
スコア スメタナ 交響詩《わが祖国》より「モルダウ」 (Zen‐on score)
解説:渡 鏡子
4.5/5.02個の評価
OGTー237 スメタナ 連作交響詩「わが祖国」 1.ヴィシェフラド(高い城) 2.ヴルタヴァ(モルダウ) (Ongaku no tomo miniature scores)
解説:西原 稔
5.0/5.01個のレビュー
大判スコア
スメタナ: 交響詩「わが祖国」(全曲): スタディスコア/ベーレンライター社/スコア
5.0/5.02個のレビュー