
アントニン・ドヴォルザーク (Antonin Dvorak,1841-1904)作曲のスラヴ舞曲 (Slavonic Dances)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
全体的に有名な作品ばかりで、第1集は全曲有名と言えると思います。第2集も第9番、第10番、第15番が有名です。
解説
ドヴォルザークのスラヴ舞曲について解説します。
スラヴ舞曲集の構成
スラヴ舞曲集は8曲からなる2つの舞曲集で構成されています。第1集 作品46と第2集 作品72があります。
作曲の経緯
ブラームスの『ハンガリー舞曲集』で成功した出版社ジムロックはドヴォルザークに舞曲集の作曲を依頼します。
そして1878年5月に第1集 作品46が作曲されます。これはまずピアノ連弾としてジムロック社から出版され、人気を博しました。1878年8月にはオーケストレーションも完了し、管弦楽曲として出版されました。こちらも人気を博し、世界中のオーケストラのレパートリーになりました。
第1集の成功をうけ、ジムロック社は次の舞曲集の作曲をドヴォルザークに依頼します。第2集は1887年1月6日にプラハにてドヴォルザーク自身の指揮により初演されました。第1集は軽快な舞曲が多いですが、第2集のほうが、様々な舞曲が取り入れられていて、音楽として聴きごたえがあります。
第1番ハ長調(フリアント)
第2番ホ短調(ドゥムカ)
第3番変イ長調(ポルカ)
第4番ヘ長調(ソウセツカー)
第5番イ長調(スコチナー)
第6番ニ長調(ソウセツカー)
第7番ハ短調(スコチナー)
第8番ト短調(フリアント)
第9番ロ長調(オズメック)
第10番ホ短調(ドゥムカ)
第11番ヘ長調(スコチナー)
第12番変ニ長調(ドゥムカ)
第13番変ロ短調(シュパツィールカ)
第14番変ロ長調(ポロネーズ)
第15番ハ長調(コロ)
第16番変イ長調(ソウセツカー)
おすすめの名盤レビュー
それでは、ドヴォルザーク作曲スラヴ舞曲の名盤をレビューしていきましょう。
クーベリック=バイエルン放送交響楽団
クーベリック=バイエルン放送交響楽団の溌剌とした名盤です。クーベリックのリズム感の良さは素晴らしいです。聴いていて、心が躍るというのはこのことだと思います。
第1集は第1曲から速めのテンポで生き生きしていて、他の演奏とは違います。力強い所は、シャープですし、第2曲などしなやかに歌う所はテンポは速めでも情熱的に歌っています。第2集もメリハリがあって、歌う所は艶やかな音色で、ダイナミックな所はあくまでダイナミックです。第12番、第13番は少しシリアスでやなり感情が入っています。第15番では溌剌としたリズムが素晴らしいです。
オケもバイエルン放送交響楽団ですから、ダイナミックな個所は重厚な音を出してきます。クーベリックは上手くオケをコントロールしながら、各曲性格を描き分けています。
ノイマン=チェコ・フィル (1971年,1972年)
ノイマンの1972年正規録音盤です。民族的で適度に軽妙な演奏で、まさにノイマンという感じです。
第1集は民族的でしなやかな響きと舞曲風のリズム取りで、チェコの舞曲の特徴が良く表れています。テンポは意外に速めで軽妙です。だからといって、クーベリック盤のように迫力があるわけではなく、民族的な舞曲の範囲を超えていません。あくまで明るく軽妙です。
第2集は、第12番~第14番など深みがあり、じっくり聴いて聴きごたえのある演奏です。民族的で濃厚さがある演奏です。ただ、どんな所でも憂鬱さはなく、全体的に明るさがあります。それで味わい深いのですから、ノイマンは不思議な指揮者だと思います。
ノイマン=チェコ・フィル盤は、実際踊っていたであろうチェコ人の演奏で、チェコの本物の舞曲集を体験できる貴重なCDです。
ビエロフラーヴェク=チェコ・フィル
ビエロフラーヴェク=チェコ・フィルの演奏はしなやかさがあり、スタンダードに相応しいです。また、録音が超高音質で透明感があり、近年レヴェルアップしたチェコ・フィルの響きを心行くまで堪能できます。
ゆっくり目のテンポですが、舞曲としての迫力やスリリングさを聴くよりは、チェコ各地の雰囲気を聴いているような感じで、これを聴いているとチェコ旅行を思い出します。自然にしみじみとチェコの香りがにじみ出ています。オペラでも聴いているような感じです。
チェコ・フィルのアンサンブル力はノイマン盤に比べて大きく向上していて、細かい絡み合いも正確で、高音質で録音されています。第2集になるとさらに味わいが増します。第12番~は思い切った遅いテンポで、じっくり聴かせてくれます。凄い深みで円熟しきった演奏が素晴らしいです。
舞曲集として聴きたい方は、クーベリック盤がいいと思いました。このCDはそれ以上に楽しめる名盤です。
ノイマン=チェコ・フィル (1985年)
ノイマンはスラヴ舞曲集全曲を実に3回録音しています。ドヴォルザークの後期交響曲と同様思い入れのあった曲目だと思います。最初が1971年スプラフォンによるアナログ録音で、この演奏も古いですが、味があってまだ聴かれています。次がこの1985年盤でノイマン=チェコ・フィルの最盛期の録音です。最後は1993年盤で晩年の録音です。
一番、メジャーなのはこの1985年盤です。ノイマンのスラヴ舞曲で迷ったら、まずはこのCDでいいと思います。
セル=クリーブランド管弦楽団
ジョージ・セル=クリーヴランド管弦楽団のCDです。録音が少し古めですが、各楽器はしっかりと聴き取れます。曲によっては非常に素晴らしい演奏があるので、あまり録音は気にならないと思います。
基本的には端正で丁寧なまとめ方です。速すぎず遅すぎず、適切なテンポ取りです。曲によっては結構溌剌としたテンポで楽しめますが、端正さが目立つ曲もあります。例えば、第1番は少し遅めのテンポですが、第3曲や第8番はかなり速くスリリングです。舞曲ですが、自由なアゴーギクがついていて、セル独自の表現もついています。もちろん、チェコ音楽に造詣が深いジョージ・セルですから、自然な表現です。
オケの実力が高く、ダイナミックな個所もしっかり演奏されています。第1集第2番や第2集第10番、第12番以降は憂鬱さが少し深めですかね。セルの演奏はノイマンほど濃厚ではありませんが、味わい深いと思います。第15番は凄い速さで楽しめます。
セルは色々な表現を付けていて、単に舞曲集という以上に楽しめる名盤です。
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楽譜・スコア
ドヴォルザーク作曲のスラヴ舞曲の楽譜・スコアを挙げていきます。
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ピアノ楽譜
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