ブラームス 交響曲第1番Op.68

ヨハネス・ブラームス (Johannes Brahms, 1833~1897) 作曲の交響曲第1番 ハ短調 作品68は、ブラームスが構想から20年かけて作曲した力作です。ブラームスの交響曲の中で一番人気があります。このページでは解説のあと、おすすめの名盤のレビューをしていきたいと思います。

解説

ブラームス交響曲第1番 ハ短調 作品68の説明をします。

ベートーヴェンの後継者として

ブラームスは早くから作曲家として認められていました。しかし、ブラームスはいつまで経っても交響曲を作曲しませんでした。周囲の人たちは、「いつになったら交響曲を書くのか?」と問いました。

ブラームスは、

ベートーヴェンのような偉大な先輩の足音を聞きながら仕事をするのが、どんなに大変なことか、君たちにはわかるまい

と答えています。ブラームスは交響曲を書くのなら、ベートーヴェンに匹敵する曲を書きたいと考えていたのです。

構想から完成まで20年

スウィトナー=ベルリン・シュターツカペレ (1988年来日公演):感動の演奏

ブラームス交響曲第1番の完成は1876年、すなわちブラームスが43歳の時でした。それは、ブラームスの最初の交響曲を構想してから約20年、実際に作曲を開始してから約6年を経過して、ようやく完成しました。

初演は、1876年11月4日にカールスルーエにて、オットー・デッソフの指揮で行われ、好評に終わりました。指揮者でピアニストのハンス・フォン・ビューローは、ベートーベンの9曲に次ぐ傑作という意味で、この曲を「ベートーヴェンの交響曲第10番」と絶賛しました。

交響曲第1番の構成

ブラームスの交響曲第1番はハ短調であり、ベートーヴェンの交響曲第5番『運命』と同じ調性です。苦難を乗り越え、勝利を収めるというストーリーであり、ベートーヴェンを強く意識した交響曲であることが分かります。

第1楽章:ウン・ポコ・マエストーソ~アレグロ

冒頭に壮大な序奏があります。この序奏は最後にまた再現され、第1楽章を終えます。ハイドン交響曲第103番『太鼓連打』を思い出しますが、スケールの大きさという意味では過去の交響曲には無かったタイプの序奏です。

大体、序奏はその後にくる主部の引き立て役の場合が多く、重要ですが静かに演奏される場合が多いですね。ハイドン『時計』ベートーヴェン交響曲第4番などが典型的で、短調の不安感を強調しています。ハイドン交響曲第104番『ロンドン』ベートーヴェン交響曲第7番の序奏は、例外ですね。序奏も短調でしたが、主部も短調です。重厚で重みを感じる音楽です。

第2楽章:アンダンテ・ソステヌート

ブラームスらしく、ロマン派らしい緩徐楽章です。

第3楽章:ウン・ポコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ

間奏曲的な短い楽章です。スケルツォは使っていないですね。

第4楽章:フィナーレ アダージョ~アレグロ・ノントロッポ、マ・コンブリオ

重苦しい雰囲気で始まりますが、少しずつ晴れ、やがてアルプスにこだまするホルンの旋律が現れます。これはブラームスがクララの誕生日に贈ったとされる曲です。やがて中心的な主題が現れ、これが繰り返された後、劇的なコーダで締めくくられます。

ベートーヴェンを超えたか?

ブラームスは、この交響曲第1番でベートーヴェンを超えられたのでしょうか?少なくとも同等の交響曲であり、ロマン派の時代にも即した交響曲の傑作であることは間違いないと思います。

ブラームスは、このあと肩の力が抜けたかのように、交響曲第2番を書きあげます。結局、ブラームスの4曲の交響曲の中で、交響曲第1番は、力強いというか、肩の力が入りまくっていて、強迫観念すら感じられます。結局はベートヴェンとブラームスは違うキャラクターの持ち主だったということです。ブラームスが頑張って背伸びしたおかげで、クオリティの高い交響曲が生まれたのは確かですが、やはり「頑張って作曲した」という雰囲気が曲に出てしまっている所はあると思います。

おすすめの名盤レビュー

ブラームス作曲の交響曲第1番おすすめの名盤をレビューしていきます。

カラヤン=ベルリン・フィル (1963年)

過度にロマンティックにならず、男気のある名盤
  • 名盤
  • 定番
  • クール
  • 重厚

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1963年,ベルリン,イエス・キリスト教会(ステレオ/アナログ/セッション)

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カラヤンと言えば、ロマンティックな演奏を思い浮かべてしまいます。例えばチャイコフスキードヴォルザークはレガートが気になり、とてもロマンティックな演奏になっていると思います。しかし一部のロマン派の楽曲を除けば、カラヤンは他の演奏家に比べて、意外に硬派な演奏をしていると思います。その好例がブラームスの交響曲第1番です。スッキリ、スマートに演奏しています。ここでは、1960年代の録音を取り上げたいと思います。若いカラヤンの男気を感じる名盤です。

序奏から重厚で力強い音楽が繰り広げられます。トスカニーニ風で燃え上がる音楽だと思います。レガートもごく自然につけられていて、良い効果になっています。主部に入るとベルリン・フィルのパワー全開でダイナミックな音楽が展開されていきます。テンポは少し速めでしょうか。音の厚みはありますが、重さはありません。

第2楽章は、カラヤンらしい低音の効いた重厚な響きで、高弦はレガートをかけて弾いています。もっと新しい録音だとさらに艶のあるレガートになり、逆に好みが分かれますが、この位だと丁度良いです。カラヤンのブラームスはあまりロマンティックにしていない所も好感が持てます。第2楽章は感情を入れようと思えば入れられる曲ですが、あまり感情を入れ過ぎるとやっぱり重くなってしまうのです。第3楽章も自然なテンポですが、かなり速めと思います。

第4楽章は、この時代のベルリンフィルなので、スケールが大きくダイナミックです。テンポは基本的に速めですが、ここぞというときはスケールが大きくなっています。ホルンソロもまさにアルプスにこだまするホルンですね。最後に向かっての畳み込みも凄いです。ベルリン・フィルもそれにこたえてダイナミックなフィナーレを形成しています。

バーンスタイン=ウィーン・フィル (1981年)

  • 名盤
  • 定番
  • 自然
  • 芳醇
  • スケール感

超おすすめ:

指揮レナード・バーンスタイン
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1981年10月,ウィーン (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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バーンスタイン=ウィーンフィルの演奏は、晩年のバーンスタインの円熟して枯れた演奏が聴けます。バーンスタインは、完全に枯れた演奏をすることはありませんでしたが、この演奏はかなり枯れています。しかし、ほとんどの部分はインテンポでダイナミックな個所も沢山あります。

第1楽章の序奏は少し速めのテンポで演奏されます。途中、木管の響きは神々しさを感じさせます。主部に入ると意外に速いテンポで演奏しています。しかし、力みというのは一切なく、自然体の演奏です。後半になるとダイナミックに盛り上がってきます。第2楽章特に名演です。スケールが大きく、渋い響きをウィーン・フィルから引き出しています。とても味わい深く、かつ感動的な瞬間も多いです。第3楽章は、かなり遅く情熱的に盛り上がります。第4楽章に入ると基本的に一般的なテンポ設定ですが、一部とても遅いテンポの部分もあります。しかし、アッチェランドしてかなり速くなったりします。どんなテンポであっても基本的に落ち着いていて、ウィーンフィルの響きの良さもあって、味わい深く聴ける演奏です。

ガーディナー=オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク

ピリオド奏法によるヴィブラートなしの名演
  • 名盤
  • 定番
  • しなやか
  • スリリング
  • ピリオド奏法

おすすめ度:

指揮ジョン・エリオット・ガーディナー
演奏オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク

007年,ロンドン,パリ (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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序奏では、燃え上がるようなダイナミックな演奏です。ですが、同時にしなやかさもあり、ある程度ピリオド奏法も取り入れています。主部も速めのテンポですが、しなやかさがあり、弦のメッサデヴォーチェも聴かれます。同時に透き通った響きが素晴らしいです。アゴーギクは繊細につけていて、味わいのある所と盛り上がっていく所を上手く描き分けています。

第2楽章は小編成のオーケストラが功を奏して、情感のあるすっきりした響きを生み出しています。情感に溢れている所もこの演奏の良い所です。第3楽章は速めのテンポで進みます。第2楽章から引き続き情感のある演奏です。オーストリアの自然を描いたような演奏で、きりがかかったような情感が感じられるのです。第4楽章は自然に始まります。特別大きなスケールで演奏しようとか、そういう考えは感じられません。アルプスのホルンが出るまでは、速めのテンポでシャープな演奏です。その後は速めのテンポとしなやかさで、重くならず、ダイナミックな音楽となっていきます。

ブラームスの第1番というと、大上段に構えた力強い演奏も多いですが、こういうすっきりした情感のある演奏も良いものです。もちろんダイナミックさもありますが、力みは感じません。

ベーム=ウィーン・フィル (1975年)

ブラームス交響曲第1番と真正面から対峙
  • 名盤
  • 定番
  • 重厚
  • スケール感

おすすめ度:

指揮カール・ベーム
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1975年5月,ウィーン (ステレオ/デジタル/セッション)

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スケールの大きな演奏ですが、ちょっと重い演奏でもあります。カール・ベームは、もともと重い曲であるブラームスの交響曲第1番に真正面から対峙した感じです。

冒頭はティンパニを大きく鳴らして、何か少し神々しいような雰囲気を作っていきます。ウィーン・フィルはこういう音が出せるんですよね。カール・ベームは力んでいるわけではないでしょうけど、気合というか力と感情が強く入っています。主部に入ると、ウィーン・フィルを厚みを持って鳴らして、ダイナミックで情熱的に盛り上げていきます。カール・ベームも円熟してテンポが遅くなりましたが、バーンスタインのように枯れた感じにはなっていないですね。ベームのモーツァルトもそうですが、一見軽そうに見えて、そうでもないです。聴き返してみると、ウィーン・フィルの響きもあって、神々しさを感じる部分もあります。本物の名演は、聴くほうにもそれなりのパワーを要求するものです。

第2楽章もゆっくりしたテンポで進み、かなり感情を入れています。なので、やっぱり重いですね。一音一音を噛みしめるように進みます。それを乗り越えたところに感動的なものがあるのは知っていますけれど。うーん、年に数回くらいでいいかな、という感じです。第3楽章も独特の美しさがあります。大事に歌っている感じです。カラヤンのようなスタイリッシュさが少しはあってもいいように思うのですが、あくまで丁寧です。第4楽章は最初から凄いスケールで遅めのテンポで進みます。凄い演奏ですが、もはやブラームスを超えた演奏のように思います。並みのブルックナーでは勝てませんね。20年の歳月を費やした交響曲を丁寧に取り組むと、やはり物凄い大変なのだと思います。

アルプスにこだまするホルンは素晴らしいですが、まだ前半なのにいつまでかかるんだろう、と感じる位スケールが大きいです。所要時間はそんなに長くないのですが、とても長く感じます。大名演なので褒めたいのですが、いくら円熟した巨匠ベームの演奏とは言え、もう少し軽い所があってもいいんじゃないか、と思います。ちなみに、もっと前のベルリン・フィルと録音したディスクなどは、もっと違う印象のようです。少し聴いてみたのですが、やっぱりベームだな、という感想でした。

ミュンシュ=パリ管弦楽団 (1968年)

燃え上がる凄い熱気、リマスタリング盤がおすすめ
  • 歴史的名盤
  • 情熱的
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮シャルル・ミュンシュ
演奏パリ管弦楽団

1968年1月8,12日,フランス,パリ,サレ・ワグラム (ステレオ/アナログ/セッション)

有名なミュンシュ=パリ管弦楽団の熱演です。ミュンシュはドイツとフランスの中間付近で生まれたので、ドイツものも良い演奏をします。一方、パリ管弦楽団は、パリ音楽院管弦楽団から改組されたオケですが、ドイツもので名演を残しそうな雰囲気はありませんが、とても熱しやすいオケです。

噂通り冒頭から凄い熱気です。でもちゃんと録音し切れていない感じで、ダイナミックレンジが足りていたら、トスカニーニより凄い燃え方だったかも知れません。テンポは遅めですが、重さは全くありません。さすが当時のフランスのオケです。主部に入ると少しアンサンブルが乱れ気味になったりもしますが、しばらくすると、ちゃんと合ってきます。管楽器のヴィブラートが特徴的です。パリ管弦楽団の弦楽の響きは、かなり心地良く響きます。感情も燃え上がるだけではなく、力強く集中した表現などもありますが、パリ管弦楽団はラテン系なので、ドイツのオケのように重厚にはなりません。

第2楽章は、意外と重厚に始まります。といっても重さはあまりなくアルプスの自然が目に浮かぶようです。本来はこれがブラ1の第2楽章なんだろう、と思っています。第2楽章は本当に素晴らしい名演です。第3楽章は速めのテンポで進んでいきます。第4楽章に入るとかなり遅いテンポになります。所要時間もかなり長いですね。確かに遅いですが、重さがないので聴いていて爽やかさがあります。アルプスにこだまするのは独特のヴィブラートを掛けたホルンです。その部分を過ぎると普通のテンポに戻り、熱い演奏になります。最後は思い切り盛り上がり、長めの所要時間を感じさせない演奏になっています。

これも名盤なのですが、やはり音質が悪いですね。うーん、歴史的名盤で別枠にすべきなのでしょうか。でも慣れてしまえば、普段聴くにも良い演奏だと思います。出来るだけリマスタリングされた音源で、高規格のCD(SACDやUQCD等)で聴くことをお薦めします。

テンシュテット=シュトゥットガルト放送交響楽団

テンシュテットらしいメリハリのある名演
  • 名盤
  • しなやか
  • 奥深さ
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮クラウス・テンシュテット
演奏シュトゥットガルト放送交響楽団

1976年9月24日,ゲッピンゲン州立劇場 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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テンシュテットとシュトゥットガルト放送交響楽団の演奏です。テンシュテットらしい情熱的で厚みのある響きの名演です。

第1楽章の序奏は遅めのテンポで、ドイツのオケらしく重厚な響きで始まります。弦の熱気をはらんだ響きはやはりテンシュテットです。主部に入るとリズミカルながら熱気も増し、弦もホルンの音色も情熱的です。この演奏はドイツのオケだからか粘りはあまりなく、スピード感があり爽やかな情熱を感じます。ブラ1はブラームス最初の交響曲なので若い熱気が似合いますね。中盤あたりで盛り上がると沸騰せんばかりですし、弱音の所も秘めた熱気が感じられます。第2楽章遅めのテンポでじっくり演奏しています。スケールも大きいですね。やはり秘めた情熱があって、割とさわやかです。木管のソロも味わい深いです。弦のメロディはレガートで盛り上がり、時折秘めた熱気があらわになります。

第3楽章爽やかで自然美を感じます。ホルンもふくよかな響きです。会場の響きの良さも一役買っています。中間部も速めのテンポで盛り上がります。第4楽章は熱気のある弦で始まります。アルプスのホルンとフルートは壮大に響きます。後半はテンポを速めてスリリングに白熱して行きます。上手い具合に力も抜けていて情熱的な響きが心地良く感じられます。ラストに向かって盛り上がっていきますが、ドイツのオケなので低音が効いていて重厚な響きです。充実感の高い名盤です。

ヤノフスキ=ピッツバーグ交響楽団

古い衣を捨て去ったブラ1、いぶし銀の名演
  • 名盤
  • しなやか
  • いぶし銀
  • 白熱
  • 高音質

超おすすめ:

指揮マレク・ヤノフスキ
演奏ピッツバーグ交響楽団

2007年11月,ピッツバーク,ハインツ・ホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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ヤノフスキとピッツバーグ交響楽団の革新的な演奏です。ブラームスはあまりピリオド演奏が上手く行かないことで有名です。考えてみると19世紀後半なので、楽器や奏法は今と違いますが、ロマンティックな要素が大きく、なんらかの装飾が必要なんでしょうね。ブルックナーはピリオド奏法が効果的なので、大きな違いです。このコンビは、ピリオド奏法ではありませんが、これまでの古い衣を脱ぎ捨てるように、大時代的なアゴーギクを外し、その上でブラームスの意図を汲んで、名盤といえるレヴェルまで高めています。

第1楽章序奏いぶし銀のようなくすんだ音色をピッツバーグ交響楽団から引き出しています。しなやかで柔らかい響きは、革新的だと思います。テンポも速く、それほどルバートを使わず、それでいて感情表現も自然です。主部速めのテンポで、しなやかさを持って演奏され、新しい発見の連続です。そして、今までの演奏と同様に段々と白熱していき、速めのテンポもあって、とてもスリリングです。アゴーギクは控えめですがついていて、重さは全くありません。革新的なのに味わいがある所が凄いですね。

ブロムシュテット=ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管

  • 名盤
  • 定番
  • 自然体
  • 円熟
  • 奥深さ

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・ブロムシュテット
演奏ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

2019年9月 ゲヴァントハイス (ライプツィヒ)

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ブロムシュテットとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の新しい録音です。ゲヴァントハウス管はいぶし銀の響きが健在ですが、録音が良いので昔のイメージとは違います。ブロムシュテットはしなやかで繊細な表現と円熟した奥の深さで、若い頃の演奏とは違いますが、さわやかさを保ったうえで、円熟したサウンドになっています。

第1楽章の序奏で録音の良さに驚かされます。ブロムシュテットはしなやかで深みも増した表現です。ゲヴァントハウスは重厚な音色ですが、重くはなく味わい深い音色が印象的です。主部に入ると丸みのある響きの弦がしなやかに演奏しています。テンポは標準的でしょうか。実に自然で奥深く神々しさすら感じられます。展開部以降も響きに濁りがなく、透明感があります。第2楽章は自然をしみじみと表現していますが、天国的な雰囲気すら感じられます。木管もゲヴァントハウスらしい味のある音色です。第3楽章は速めのテンポですが、しなやかで爽やかさがあり、ブロムシュテットらしい演奏ですね。

第4楽章は壮大過ぎず、透明感があり深みを感じさせます。細部の音楽の作りこみが、とても丁寧ですね。ホルンのソロはいぶし銀の響きです。コントラ・ファゴットが重厚な響きを加えています。過度なルバートやアゴーギクはありませんが、演奏時間が18分台と長めで、それだけじっくり演奏されています。この楽章でも重さはあまり感じません。ラストは品格を保ったままスケール大きく締めくくります。

スウィトナー=ベルリン・シュターツカペレ

力の抜き方を知っているスウィトナー、自然体のブラ1
  • 名盤
  • 定番
  • 自然
  • スケール感
  • 円熟
  • オーストリア風

超おすすめ:

指揮オトマール・スウィトナー
演奏ベルリン・シュターツカペレ

1988年6月13日,サントリーホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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昔ながらのドイツの音を持つベルリン・シュターツカペレと、力の抜き方を知っているオーストリアの指揮者スウィトナーの演奏です。スウィトナーはブラームス交響曲第1番を得意としていて、NHK交響楽団とも名演を残していますが、ブラームスの力の入ったところに真正面から対峙しないで、うまくいなしています。

冒頭からこれぞベルリン・シュターツカペレといいたくなるような芳醇な響きです。スウィトナーはルバートの仕方が上手く、もたれないように自然に演奏しています。主部に入るとテンポが速くなりますが、遅くする所でも自然体です。もちろんスフォルツァンドなど、ちゃんと演奏していますけど、きつく成らないし、重くもなりません。スウィトナーがドイツというよりオーストリア系の指揮者であることがあると思います。スッペなどウィンナ・オペレッタなどはとても上手いですしね。

第2楽章も自然体で、上手い管楽器のソロがアルプスの自然や情熱を上手く表現しています。ドイツのオケなのに重さは全くないのです。田園交響曲のようですね。第3楽章はあくまでさりげなく、上手く力を抜いてふわっと宙に浮いている感じすらします。それで時折現れる情熱的なパッセージもちゃんと情熱的に演奏しています。第4楽章は特に遅くはなく普通のテンポで始まります。アルプスのホルンも素晴らしいです。その後、かなり速めのテンポになり、ダイナミックに盛り上がって終わります。

聴いていて心地よいし、音質も悪くないので普段聴くのにとても良い演奏だと思います。

小澤征爾=サイトウ・キネン・オーケストラ

小澤征爾とサイトウキネンの原点と言える完成度の高い名盤
  • 名盤
  • いぶし銀
  • 芳醇
  • 白熱
  • 高音質

超おすすめ:

指揮小澤征爾
演奏サイトウ・キネン・オーケストラ

1990年8月,ベルリン (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラの名声が一気に広がった1990年のヨーロッパ・ツアーの録音です。「小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラが1990年にヨーロッパ各地の音楽祭に招かれて渡欧した際に、ベルリンのシャウシュピールハウスで録音した一枚です。」当時のサイトウキネンのメンバーによる完成度の高い名演で、日本のオケとしても革命的に上手いですし、音楽作りも本場のドイツとは全く異なるもので、ヨーロッパでも随分話題になったようです。録音状態も良好で、歴史あるヨーロッパのオケには出来ない、一糸乱れぬアンサンブルと白熱した演奏が聴けます

第1楽章白熱した序奏から始まり、この瞬間から他のどのオケとも違うタイプの名演であることが分かります。同門なので、良い所も一緒ですが、アクセントのつけ方などの癖は全員一緒で悪い所も強化されがちですが、このブラームスは例外でどの角度から見ても名演です。小澤征爾もオケのメンバーも一切の妥協を許さず、迷いもなくブラ1と正面から対峙しています。必ずしも良い面ばかりとは言えませんが、これだけの圧倒的名演だと演奏様式がどうとか、細かいことに思えてきます。

第2楽章はスタイリッシュでソロの上手さも際立ちます。アゴーギクや感情表現も自然な範囲です。第3楽章木管やホルンの上手さが際立ちます速めのテンポでスッキリした爽やかさのある演奏です。ホルンは外国人だったかも知れませんが、ほとんど日本人のみのオケでこれだけの演奏が出来るというのは驚きで、事実、1990年代は日本のプロオケは大幅にレヴェルアップして、今日の日本のオーケストラ界があります。

第4楽章熱気があり、まっすく王道をいくような演奏です。弦のうねりが凄いです。アルプスのホルンとフルートも雄大です。弦のコラールは一糸乱れぬアンサンブルです。ドイツやオーストリアのオケだと、当地の民謡やコラールが引用されていれば、その様式で演奏しますが、サイトウキネンの場合、細部に至るまで正確に合わせています。厳しいアンサンブルですが、小澤征爾の指揮は外に向かう白熱したもので、爽やかさがあり、スッキリ聴けます。ライヴということもあり、終盤に向かって白熱し盛り上がります。オケは盛り上がってもアンサンブルの精度を欠くことはありません。ライヴ録音とは思えない凄い演奏です。

カップリングのハンガリー舞曲も非常にスリリングで、こちらも名演です。

奇蹟のニューヨーク・ライヴ ブラームス交響曲1番

小澤征爾の円熟と白熱する渋い名演
  • 名盤
  • いぶし銀
  • 芳醇
  • 白熱
  • 高音質

おすすめ度:

指揮小澤征爾
演奏サイトウ・キネン・オーケストラ

2010年12月,ニューヨーク (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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「病気療養から復活した小澤征爾が、音楽の殿堂、ニューヨークのカーネギー・ホールで、得意のブラームスの交響曲第1番を指揮した奇蹟のライヴ録音」ということで、サイトウキネンオーケストラとしては珍しく、残響の長めなカーネギーホールでの演奏となっています。小澤征爾も円熟の境地に入り、サイトウ・キネンの響きもいぶし銀といえる、まろやかで渋い響きになっています。これはカーネギーホールの響きの良さのおかげもあると思います。大分違う演奏にも聴こえますが、小澤征爾のこの曲に対する解釈は変わっていません。

第1楽章小澤征爾が全身全霊で曲に挑んでいることが演奏に出ています。サイトウキネンオーケストラがとても味わい深いサウンドを紡ぎだしています。サイトウキネンがこんな響きを出せるとは思っていませんでした。やはり特別な演奏会といえます。弱音では透明感があります。主部は力強い演奏です。アンサンブルもとてもこなれていて、レヴェルが高いです。得意のブラームスで一つ高い次元にレヴェル・アップしたようです。盛り上がると熱気がオケの響きのすみずみまで浸透し、弱音では力が抜けて味わいがあります。第2楽章は今聴くと古いスタイルのような気もしますが、小澤征爾は解釈を変えることはありません。この演奏では脱力していて自然体で、アゴーギクも自然です。弱音ではとても美しい響きです。

第3楽章は丁寧で綿密なアンサンブルが聴かれます。とても円熟した演奏です。中間部は速めのテンポで推進力があります。第4楽章はスケールの大きな演奏です。アゴーギクが自然なので大時代的な表現はありません。冒頭はむしろ速めな位で、テンポのメリハリがあります。アルプスのホルンは、とても雄大です。弦のコラールもじっくり歌っています。アレグロになると結構速いテンポで熱気のある演奏になり、スリリングです。終盤の盛り上がりはいぶし銀の音色のまま白熱していて、ライヴならではの凄い気迫を感じます。拍手も入っていますが、カーネギーホールは凄い盛り上がりで、熱狂が伝わってきます。

トスカニーニ=NBC交響楽団

インテンポで激しく燃え上がるブラ1
  • 名盤
  • 熱演
  • スリリング
  • 白熱

おすすめ度:

指揮アルトゥーロ・トスカニーニ
演奏NBC交響楽団

1951年11月6日,ニューヨーク,カーネギー・ホール (モノラル/アナログ)

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トスカニーニはイタリアの指揮者で、結構爆演系の指揮者ですが、ブラームスの1番でも、物凄い演奏を聴かせてくれます。また大時代的なアゴーギク(テンポのゆれ)をあえて排していて新鮮味がありますベームやカラヤンを聴いた後に、お薦めな名盤です。

第1楽章は序奏から完全にインテンポで凄まじい迫力です。ちょっと一息ついたり、ルバートしたり、といったことは無く、そのまま突き進みます。こんなに燃え上がる演奏は、他にはないんじゃないかと思います。主部もかなり速めでダイナミックに進んでいきます。ドイツ的な重厚さとはほぼ無縁で、ラテン的とはいいませんが、リズミカルにどんどん前に進んでいきます。曲想はちゃんと短調でシリアスなものになっています。ただ重さがないので、気分よく聴けます。

第2楽章は意外に厚みのある響きから始まります。ここでも自然体で、力みがありません。基本的には明るく、とても味わいがある演奏です。そして、ここぞという時は思い切り盛り上がります。第3楽章は速めのテンポでサラッと演奏しています。第4楽章も基本的に速めのテンポ設定です。この演奏はブラ1の本質を捕らえつつもテンポが速く、どんどん前に進んでいくので聴きやすいです。それでも17分近くありますけれど。盛り上がる所では爆発的に盛り上がります。とても気分の良い名盤です。

この演奏はおそらくその後のブラームス演奏、特にカラヤンに大きな影響を与えたと思います。

チェリビダッケ=ミュンヘン・フィル

  • 名盤
  • 個性的名演

おすすめ度:

指揮:セルジュ・セリビダッケ、ミュンヘン・フィルハーモニー

山田和雄=東京都交響楽団

巨大なブラ1を上り詰めた名演
  • 名盤
  • 熱演
  • 白熱

おすすめ度:

指揮山田和雄
演奏東京都交響楽団

1989年3月28日東京文化会館 (ステレオ/アナログ/ライヴ)

山田和雄の演奏は、カール・ベーム並みにブラームスを究めた演奏です。筆者は実演を聴いたことがありますが、ものすごく感動しました。でもCDでその感動を味わうことは難しいようです。テンポ取りは一緒ですし、私が聴いた地方オケよりも東京都交響楽団のほうが上手いはずですからね。この演奏はテンポが遅く、重い演奏の中でもかなり重い部類に入ります。でも、じっくり聴くと本当に名演なので一度は聴いてみてほしいです。

第1楽章の冒頭はやはり当時の東京都交響楽団だと厚みが薄い感じですね。でも、かなりの遅いテンポと独特のレガートで、神々しさが感じられます。ティンパニの一音一音が重厚に響きます。主部も少し遅めのテンポで重厚です。オケのほうは、たまに余計に遅くなってしまうことがありますね。後半はもっと厚みのある音が欲しいですが、当時の都響は新しいオケですから、仕方ないですね。

第2楽章は、また遅いです。本当に一音一音噛みしめるように演奏し、都響も味わいある演奏をしています。オケのせいか、ベームよりは重さがないように感じられます。アルプスという感じではないですが、ヤマカズ節というか、なかなか名演です。第3楽章は普通のテンポですね。第4楽章はまた遅いテンポで始まります。かなり感情を入れています。かなり感情が入った指揮なのですが、ちょっとオケが再現しきれず平板になっているかも知れません。アルプスのホルンの所はかなり遅いテンポで、上手く雰囲気を出していますが、オケのせいか録音のせいか、平板な感じがどうしてもしますね。その後は、アグレッシブに展開し、フィナーレではスケール大きく盛り上がって終わります。

本当にパワーのある演奏で、都響の皆さんにはお疲れ様と言いたいです。とはいえ、当時もっとパワフルなオケがあれば良かったのですけどね。マーラーの5番はNHK交響楽団ですが、あれも面白い演奏ではあるのですが、金管が音を外しまくって、ちょっとメタメタになっています。

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