チェロ協奏曲(ドヴォルザーク)

アントニン・ドヴォルザーク (Antonin Dvorak,1841-1904)作曲のチェロ協奏曲 ロ短調 Op.104 (Cello Concerto h-moll Op.104)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。

ドヴォルザークのチェロ協奏曲は『ドヴォコン』の愛称で親しまれています。とても有名で人気があり、規模も編成も大きな曲で、チェロ協奏曲を代表する名曲です。

お薦めコンサート情報

🎵クリストフ・エッシェンバッハ(Cond)ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団

[ソリスト] 佐藤晴真(チェロ)

・ウェーバー:歌劇『魔弾の射手』序曲

・ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
・ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73

2023/5/9(火)19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル (東京都)

🎵チェロ:笹沼樹,ライスキン=スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

■7/6(木) 19:00開演 会場:サントリーホール 大ホール (東京都)

■7/5(水) 19:00開演 会場:横浜みなとみらいホール 大ホール (神奈川県)

■7/8(土) 15:00開演 会場:あきた芸術劇場ミルハス 大ホール (秋田県)
スメタナ:『わが祖国』より「モルダウ」
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

[指揮]ダニエル・ライスキン [ソリスト]笹沼樹(チェロ)

解説

ドヴォルザークチェロ協奏曲について解説します。

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チェロ協奏曲は、ドヴォルザークがアメリカに渡っていた時期に書かれました。同時期に交響曲第9番『新世界より』(1983年)弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』(1893年)など、ドヴォルザークの代表作が作曲されています。新天地アメリカの音楽の影響を受け、チェコへの望郷の念をたたえた名曲が作曲されました。そしてこのチェロ協奏曲はドヴォルザークの最盛期と言えるアメリカ時代の最後に書かれました。非常に流麗で親しみやすい旋律に溢れたドヴォルザークらしい協奏曲です。

1894年~1895年にかけて作曲されました。そして、1895年4月にアメリカから帰国しています。

チェロ奏者ハヌシュ・ヴィハーンからの依頼で作曲されました。ドヴォルザークはチェロ協奏曲を若い頃にも作曲していますが、これは未完に終わっています。そのため、チェロについて

美しい楽器だ。(略)協奏曲でのソロとなると難しい

と語っています。

しかし、ヴィハーンはソロ・パートの難易度が高すぎる、と修正を求めました。それにドヴォルザークは激怒し、初演はレオ・スターンによって行われました。

初演

初演は1896年3月19日にロンドン・フィルハーモニックにより行われ、独奏はレオ・スターンでした。ハヌシュ・ヴィハーンはチェコ初演を行いました。

曲の構成

一般的な協奏曲と同様の3楽章構成ですが、第3楽章の規模が大きい曲です。演奏時間も40分と、少し長めの交響曲と同じような演奏時間です。また、明確なカデンツァがないことも特徴で、その代わりに独奏チェロ・パートはカデンツァのような展開をしていきます。独奏チェロばかりでなく、木管、ヴァイオリンなど様々な楽器にソロがあり、独奏チェロとのアンサンブルを繰り広げていくことも特徴です。

チェロ協奏曲の構成

第1楽章:アレグロ
ソナタ形式です。冒頭のクラリネットが弱音で有名な第一主題を吹きます。そして独奏チェロが決然と第一主題を演奏して、登場します。

第2楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ
三部形式の緩徐楽章です。木管のソロと独奏チェロの掛け合いなど多くのパートにソロがあります。中間部はドヴォルザークの歌曲「一人にして」による主題です。

第3楽章:アレグロ・モデラート
自由なロンド形式です。ボヘミア舞曲風の主題を中心に、独奏チェロとヴァイオリン・ソロとで盛り上がっていきます。

編成は大きめで、特にトロンボーンやチューバなど金管楽器が多いです。

編成

フルート×2 (2ndピッコロ持替)、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2
ホルン×3、トランペット×2、トロンボーン×3、チューバ
ティンパニ、トライアングル
弦5部

おすすめの名盤レビュー

それでは、ドヴォルザーク作曲チェロ協奏曲名盤をレビューしていきましょう。

ロストロポーヴィチ,カラヤン=ベルリン・フィル

巨匠同士の競演、ドボコンを代表する名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱

超おすすめ:

チェロムスティスラフ・ロストロポーヴィチ
指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1968年9月,ベルリン (ステレオ/アナログ/セッション)

ロストロポーヴィチのチェロ独奏、カラヤンとベルリン・フィルというゴージャスな組み合わせです。1960年代の録音で、重厚で華麗なベルリン・フィルの響きと、各楽器のレヴェルの高いソロを聴くことが出来ます。ロストロポーヴィチも骨太の響きで堂々たる演奏です。胸がすくような演奏で、ドヴォコンの代表的名盤として君臨しています。

第1楽章はさすがベルリン・フィルで、非常にスケールが大きく、クオリティが高いアンサンブルです。チェロが出るまでのオケの盛り上げ方も上手いです。ロストロポーヴィチは艶やかで太い音色でスケールの大きな演奏を繰り広げます。第1主題はもちろんですが、第2主題の朗々とした表現も素晴らしいです。ホルンの響きもふくよかで、木管のソロもクオリティが高いです。ロストロポーヴィチのチェロもベルリン・フィルのダイナミックな弦やトゥッティに埋もれることはなく、音楽を引っ張っていきます。繊細な部分ではガラッと表現を変え、艶やかな中に繊細な表現です。色々な楽器と絡んで音楽が展開されていきますが、常に主役はロストロポーヴィチです。

第2楽章ロストロポーヴィチの厚みのあるチェロの響きと柔らかな表現が印象的です。緩徐楽章でもスケールの大きさがあります。オケのトゥッティなど、容赦ないダイナミックさです。それでもチェロが埋もれることはありません。流麗なソロに、オケも流麗に演奏していて、ソロとオケの噛み合わせがとても良いです。後半の木管ソロとの絡みも練り込まれています。

第3楽章少し遅めのテンポで、じっくり演奏しています。独奏チェロは朗々と歌い、オケの響きはスラヴ的で重厚です。チェロの色合いの変化は味わい深いです。テンポもかなり揺らして、ソロとオケの一体感が素晴らしいです。様々なソロと立体的に絡み、ヴァイオリン・ソロとの絡みも有機的です。終盤は悠々としたチェロ独奏の後、ダイナミックなトゥッティで曲を締めくくります。

全体的に、チェロ独奏もオケもアンサンブルが練り込まれていて完成度が高いです。ドヴォコンの一つの理想形だと思います。

ソルターニ,バレンボイム=シュターツカペレ・ベルリン

ソロとオケが対等で良く練り込まれた自然体の演奏
  • 名盤
  • 定番
  • スケール感
  • 高音質

超おすすめ:

チェロキアン・ソルターニ
指揮ダニエル・バレンボイム
演奏シュターツカペレ・ベルリン

2018年10月8,9日 (ステレオ/アナログ/セッション)

チェロ独奏のキアン・ソルターニは若手のチェリストです。伴奏はデュ・プレ盤も指揮したバレンボイムと手兵のシュターツカペレ・ベルリンです。スケールの大きさと奥行きの深いアンサンブルはバレンボイムの円熟を感じさせます。2018年の録音でとても高音質です。各パートが手に取るように聴こえてきます。

第1楽章はほの暗いクラリネットで始まります。シュターツカペレ・ベルリンは彫りの深い、いぶし銀のような重厚な響きです。バレンボイムのテンポ取りは遅すぎず速すぎずで、テンポを自在に揺らしています。このコンビのワーグナーは名演ですが、そんなオペラの要素を感じさせる奥の深いアンサンブルです。独奏チェロは音色が非常に良く、良く響き渡っています。チェロ独奏も繊細な表現が良く録音されていて、非常に楽しめます。木管などソロのレヴェルも高く自然体です。大曲ですが、力を抜いて自然に聴くことが出来ます。

第2楽章チェロ独奏と木管ソロが有機的に絡んでいて、自然体の表現が素晴らしいです。悲壮感の色合いが増したかと思えば、木管のソロは深い森の中にいるような音色で包み込みます。中間部はテンポを少し速め、味わい深いです。弦の響きは厚みがあり、バレンボイムとシュターツカペレ・ベルリンが作り出す世界の中で、チェロ独奏が歌っている感じですね。ホルンの響きも印象的です。

第3楽章は中庸なテンポで、チェロ独奏やオケのトゥッティは情熱的に始まります。シュターツカペレ・ベルリンのふくよかな響きが良く活かされています。ダイナミックでも自然体です。チェロ独奏も全体的にノーブルですが、ロンドが進むにつれ、色々な表現が現れます。ラスト付近の朗々とチェロが歌う場面も、自然体で精妙な表現ですね。オケのトゥッティでダイナミックに盛り上がり曲を締めくくります。

チェロ独奏と伴奏が対等で、ドヴォルザークが書いた立体的なアンサンブルが生きていています。力みが一切ないので、聴き疲れすることもなく、自然に曲の良さを味わうことが出来る名盤です。

デュ・プレ, バレンボイム=シカゴ交響楽団

デュ・プレの情熱的で力強い名演
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱
  • スケール感

おすすめ度:

チェロジャクリーヌ・デュ・プレ
指揮ダニエル・バレンボイム
演奏シカゴ交響楽団

1970,シカゴ,Medinah Temple (ステレオ/アナログ/セッション)

情熱的なジャクリーヌ・デュ・プレのチェロ独奏と、若いバレンボイムとシカゴ交響楽団のダイナミックな伴奏の組み合わせです。ドヴォコンはチェロ独奏のみでは無く、伴奏のオケも活躍するので、ヴィルトゥオーゾ性のあるシカゴ交響楽団は相応しいと思います。

第1楽章は冒頭のオケ伴奏から情熱的でダイナミックです。ホルンソロも非常に上手く、木管のレヴェルも高く、さすがシカゴ交響楽団ですね。デュ・プレのチェロは非常に情熱的で力強く、バレンボイムはシカゴ響をかなり鳴らしていますが、全く引けを取ることはありません。ソルターニ盤と好対照ですね。第2主題のチェロは情熱を秘めながらも穏やかで、デュ・プレの表現の幅の広さを感じさせます。技巧的な個所も少し速めのテンポで聴かせてくれます。チェロ独奏の部分はデュ・プレが主役でオケを引っ張っています。

第2楽章は遅めのテンポで始まります。チェロ独奏は、穏やかに始まりますが、人間の内面にえぐり込んでいくような力強さがあります。中間部のチェロの表現も情熱的です。シカゴ響も力強さのある伴奏で、感情的に盛り上がります。チェロの低音域の響きが素晴らしいです。後半はシカゴ響の木管との有機的なアンサンブルが聴けます。第3楽章は中庸のテンポで始まります。非常に力強い演奏です。チェロも感情的に力強く弾き込んでいます。オケのトッティもとてもダイナミックです。チェロは太い音色で力強く、聴いていて引き込まれます。チェロと絡むヴァイオリン・ソロもかなりシャープに弾いています。ラストはシカゴ響全開のトゥッティで締めくくります。

この演奏はデュ・プレの特徴がとても良く出ていて、情熱的な演奏が聴きたい方には、とてもお薦めの名盤です。

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楽譜・スコア

ドヴォルザーク作曲のチェロ協奏曲の楽譜・スコアを挙げていきます。

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