
アントニン・ドヴォルザーク (Antonin Dvorak,1841-1904)作曲の弦楽セレナーデ ホ長調 Op.22 (String serenade E-Dur Op.22)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。
第1楽章、第2楽章、第5楽章が有名です。
解説
ドヴォルザークの弦楽セレナーデ ホ長調 Op.22について解説します。
交響曲第5番を作曲する前年である1875年5月に作曲されました。チャイコフスキーの弦楽セレナードの影響を大きく受けていますが、ドヴォルザークの作品は民族的な音楽です。
当時のドヴォルザークは結婚2年目で、オーストリア政府奨学金の審査に合格して、生活が安定するなど、幸福な時期でした。曲の内容も民族的で明るいもので、味わいのある佳作になっています。セレナードの割りには第5楽章まであり長い感じがしますが、聴いてみるとキャッチーなメロディや味わい深い民族的な響きなど、素材やインスピレーションに満ちていて、5楽章構成でもきっと入れられなかった素材が沢山あるんだろう、と感じさせます。
初演は1876年にプラハ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏により行われました。
第1楽章:モデラート
第2楽章:テンポ・デ・ワルツ
第3楽章:スケルツォ: ヴィヴァーチェ
第4楽章:ラルゲット
第5楽章:フィナーレ: アレグロ・ヴィヴァーチェ
おすすめの名盤レビュー
それでは、ドヴォルザーク作曲弦楽セレナーデ ホ長調 Op.22の名盤をレビューしていきましょう。
クーベリック=イギリス室内管弦楽団
クーベリック=イギリス室内管弦楽団の演奏です。イギリス室内管弦楽団は少し意外な組み合わせですね。1969年録音で少し古めですが音質は十分良いです。聴いてみるとイギリス室内管弦楽団は非常に上手く、味わい深い響きを持っていますので、この曲には相応しい組み合わせです。
第1楽章は格調高く始まります。段々と感情が入ってきて、チェコの自然を彷彿とさせる味わいのある演奏になっていきます。第2楽章も格調があり、艶やかな弦の響きが素晴らしいです。明るさのある演奏ですが、その中にも郷愁を感じさせます。第3楽章はチェコの舞曲のように軽やかな演奏です。第5楽章もキレの良い演奏で、とても楽しめます。
まさに定番と言える技術と哀愁を併せ持った名盤です。テンポ取りといい、多くの人がこの曲に持っているイメージ通りの演奏で、おそらく色々なBGMなどに使われている音源な気がします。
カラヤン=ベルリン・フィル (1980年)
カラヤン=ベルリンフィルの録音です。1980年デジタル録音です。カラヤン晩年の演奏です。
第1楽章は静かに始まり、霧の中にいるような自然美も感じさせてくれます。カラヤン晩年の演奏の特徴ですが、響きが磨き抜かれて透明感があります。第2楽章は洗練されたワルツですね。クーベリックのようにチェコに対する特別な感情はないですが、生き生きとした演奏で十分楽しめます。中間部は非常に美しさがあります。緩徐楽章の第4楽章は非常に素晴らしい味わいのある名演です。第5楽章は有名な主題をシャープに演奏し、リズミカルになっていきます。第1楽章の主題が戻ってくる所の雰囲気作りが素晴らしいです。
舞曲風なモチーフが多いこの曲の場合、カラヤンの演奏はもう少しリズミカルな方がいいようにも思います。ただ、第1楽章、第4楽章のようなテンポの遅い曲は、とても弦の響きが美しく素晴らしい雰囲気です。
コリン・デイヴィスとバイエルン放送交響楽団による演奏です。バイエルン放送交響楽団は普段はクーベリックが指揮者を務めていますが、今回の指揮者はコリン・デイヴィスです。確かにコリン・デイヴィスもバイエルン放送交響楽団と関係が深いのですが、チェコの音楽なのでクーベリックで録音するだろう、と思ったのですが、クーベリックはイギリス室内管弦楽団と既に名盤がありますからね。
第1楽章は平穏に心温まる音楽になっています。ドイツのオケらしい重厚なながら、柔らかい響きが印象的です。第2楽章は少し薄雲ったような響きが自然美を感じさせて良いです。厚みのあるバイエルン放送響の響きも味わいがあります。第4楽章は柔らかい響きで、幸福感を感じさせてくれます。第5楽章は冒頭の主題はシャープではっきり提示されます。リズミカルな所も含めて、ホールの残響のせいもあり、柔らかな音色です。
カップリングのチャイコフスキーの弦楽セレナードも良い演奏です。とてもお買い得な一枚だと思います。
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楽譜・スコア
ドヴォルザーク作曲の弦楽セレナーデ ホ長調 Op.22の楽譜・スコアを挙げていきます。
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