ストラヴィンスキー 春の祭典

『春の祭典』(The Rite of Spring、Le Sacre du Printemps)イーゴル・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)が作曲したバレエ音楽の名曲です。このページでは『春の祭典』を解説した後、おすすめの名盤をレビューしていきます。最後にスコアも紹介します。

『春の祭典』は中高生から人気があり、幅広い世代で親しまれています。音楽の授業で習ったクラシックと全然違う音楽がここにあります。初めて聴く人には鮮烈な衝撃ですね。歴史的に沢山の名盤がありますので、演奏史を中心に解説した後、お薦めの名盤をレビューしていきたいと思います。

解説

ストラヴィンスキー作曲のバレエ音楽『春の祭典』を解説します。

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現代音楽の夜明け

イーゴル・ストラヴィンスキー(
Igor Stravinsky, 1882~1971)
作曲のバレエ音楽『春の祭典』(The Rite of Spring、Le Sacre du Printemps)が初演されたのは1913年のことです。バレエリュス(ロシアバレエ団)により、ニジンスキーの振付、ピエール・モントゥーの指揮で行われました。

この『春の祭典』は、これまでのクラシック音楽と大きく異なっていました。リズムは複雑で1小節ごとに変化します。和声は不協和音ばかり。当時では考えられないような音楽です。

そして振付はあのニジンスキーです。一流のダンサーでもあるニジンスキーは、人間の体についてよく理解していました。これまでのバレエと全く違う振付で、一見するとまるでお遊戯です。でも最後の『生贄(いけにえ)の踊り』など、ダンサーに負荷をかける振付で、死に至るまで踊る様子を再現するなど、いろいろなテクニックを使っていたのです。これはコンテンポラリーダンスの幕開けとなりました。

しかし、当時の聴衆にはほとんど受け入れられませんでした。初演が始まるとブーイングやヤジで騒ぎになり、最後まで上演できたことに驚くくらいセンセーショナルな出来事となったのです。

ニジンスキー復刻版

構成と聴きどころ

バレエ『春の祭典』は2部構成になっています。第1部は古代ロシアの日常や占い、長老の予言で生贄(いけにえ)を捧げることになります。第2部は生贄(いけにえ)を選び、祖先の霊や自然の精霊を呼び出して、生贄を捧げます。

生贄(いけにえ)は若い処女でなければなりません。誰が生贄になるかを若い乙女たちが集まって決めるのです。

音楽的な聴きどころですが、第1部は初めて聴く人でも飽きる部分は無いと思います。組曲というよりは、バレエのシーンの名称がついています。なので、1分以下の場面もいくつかあります。

第1部:大地礼賛

まず「序奏」の段階から本来低音楽器であるファゴットが普段は使わない異様な高音域で演奏します。昔のフランスではバスーンが使われていたので、さらに演奏しにくいものでした。最初から楽譜はきわめて複雑で、主に木管楽器を中心としたアンサンブルです。拍子は1小節ごろに変化します。「春のきざし」は日本やイタリアあたりの春のイメージと違い「地表を覆っていた氷がバリバリと割れ、そこから植物の芽が出てくる」という、強い生命力があります。それを音楽で表現していますが、弦楽セクションがだたリズムを刻むだけという、異色の音楽になっています。「春のロンド」は、シンプルなロンドです。最初は弱音で演奏され、突然雷が落ちたようにパーカッション(ティンパニ、シンバル等)が入って、そのあとトゥッティで強奏されるという、印象的な音楽です。このパーカッションはティンパニ、シンバル等多くの楽器で、どれを強調するかによって大分イメージが変わってきます。この辺りを聴き比べるのもいいですね。

「敵の都の人々の戯れ」~「賢者の行列」は3拍子をメインに変拍子が入った激しい音楽です。男たちが敵の部族と争う様子が描かれ、そこに長老を中心とした神官の行列が現れます。3拍子に4連符といった複雑なリズムでシンバルが演奏するなど、よく見ると非常に複雑なリズムが含まれています。

急に静かになり、長老は「大地へのくちづけ」をすると、不吉な不協和音が鳴り響き、それを聞いた民衆は恐怖のあまり激しいパニックになり、パーカッションのグリッサンドを起点に速いテンポの「大地の踊り」となります。この辺りの不吉な感じや「大地の踊り」の強烈なリズムは聴きどころですね。

第2部:生贄(いけにえ)

大地の不吉な兆候を聴いた長老・神官たちは、災いを避けるために「生贄(いけにえ)」を捧げることにします。夜に処女たちが集まり、その集会で「生贄」が決められます。

「序奏」神秘的で不気味な夜の原始の雰囲気を強烈な不協和音で表現します。「乙女たちの神秘な集い」では、処女たちが集まり、神秘的で官能的な音楽となります。神秘的なものを強調したもの、不気味さを強調したもの、静けさを表現したもの、色彩的で官能的な表現のものなど、色々です。ホルンで始まるモチーフも聴きどころです。

中心に居た乙女が生贄に選ばれると、強烈な金管のクレッシェンドと、ドラムの11回の強打を合図に生贄を捧げる儀式が始まります。この半端な11回の強打は楽譜上では11拍子になっています。「いけにえの讃美」の音楽は難しい変拍子になっています。1960年代までの演奏では、この変拍子の演奏に苦労していました。1970年代に入ると、かなりスムーズに演奏できるようになります。ブーレーズ旧盤あたりがポイントでしょうか。「祖先の呼び出し」はダイナミックなティンパニが聴きものです。祖先や動物の精霊たちが呼び出されます。「祖先の儀式」は急なホルンの咆哮が聴きものです。祖先の霊や動物の精霊が、生贄の処女を円形に囲んで踊ります。神官たちがそれを見守ります。

「生贄の踊り」は、もっともリズムが難しい音楽です。ただ1947年版までいくと大分リズムが整理されてきます。ここまで身動きしなかった生贄の少女が憑かれたように踊り始めます。雷のようなトロンボーン、鋭いリズムを刻む弦楽器など、強烈な音楽が展開されます。バレエの舞台では生贄の少女は、祖先の霊や動物の精霊に取り巻かれ、神官が見守る中、もう踊るしかない状況に追い込まれます。そして、踊り疲れて少女が弱ってくると、祖先の霊や動物の精霊たちはさらに生贄に迫り、最後にこと切れて倒れると、少女を担ぎ上げて終わります。

この緊迫感を出した演奏は、なかなかないですね。特に最近の上手いだけの演奏はスムーズに変拍子を演奏して颯爽と終わってしまいます。若い聴衆が多いコンサートで、どこまでシリアスな演奏をすべきか?というのもあるでしょうけれど。

バレエ『春の祭典』

第1部 大地礼讃
1. 序奏
2. 春のきざし
3. 誘拐の遊戯
4. 春のロンド
5. 敵の都の人々の戯れ
6. 賢者の行列
7. 大地へのくちづけ
8. 大地の踊り

第2部 いけにえ
9. 序奏
10. 乙女たちの神秘な集い
11. いけにえの讃美
12. 祖先の呼び出し
13. 祖先の儀式
14. いけにえの踊り

『春の祭典』演奏史

演奏不可能

ニジンスキーの振付のほうも革新的でしたが、音楽は特にリズムの複雑さのせいで、当時のオーケストラではほぼ演奏不可能でした。「生贄の踊り」など、オーケストラはリズムに躓(つまず)いたり、転がったりして、楽譜通りの演奏など不可能に思えました。

もっともストラヴィンスキーも生贄の足がもつれるようにオーケストラが演奏することを計算していました。しかし、初演のレヴェルでは何をやっているのか分からないくらいリズムが崩れてしまいました。これは初演が失敗した原因の一つと言われています。

『春の祭典』へのチャレンジ

オーケストラの『春の祭典』へのチャレンジが始まりました。過去の録音を聴いていくとオーケストラのレヴェルにもよりますが、徐々に演奏が良くなってきたことが分かります。

上手くなった分岐点としては、1920年代のストコフスキー=フィラデルフィア管弦楽団の演奏が挙げられます。この演奏は今聴くとまだちょっと躓いたりしていますが、なかなかの演奏です。また、テンポ取りや表現もこれまでと大分変化し、以降の特にアメリカでの演奏はストコフスキー盤の演奏スタイルを引き継いで発展していきます。

戦後になるとオーケストラのレヴェルが急に高まりました。1950年代~1960年代になると、マルケヴィッチ盤ブレーズ旧盤などがレヴェルアップしてきたオーケストラを使って、迫力のある演奏を繰り広げます。今から見ても、リズムの躓きなどは多少あるものの、今聴いても十分楽しめる録音です。

マルケヴィッチ=フィルハーモニア管

特にブレーズ旧盤は、1990年代まで大きな影響を与えていて、今でも聴く価値があります。ブレーズ旧盤の充実した演奏内容には今でも感心させられます。

スムーズに演奏できる時代へ

1970年代、ショルティアバド小澤メータコリン・ディヴィスの時代になってくると、随分スムーズな演奏になってきます。今でも十分聴ける名盤が登場してきます。

この時期、またとても迫力がある演奏が多いです。例えば小澤=バイエルン放響の映像は凄まじい迫力です。

しかし、リズムがスムーズになった分、なぜ変拍子にしたのか?というところが曖昧(あいまい)になってきた時代でもありますね。特にデュトワ盤は整然としたもので、生贄の苦しみや足のもつれなどを表現するには、あまりにも綺麗な演奏になっています。

楽譜通りに演奏できるのは当たり前の時代になってきました。2流くらいのオケなら当たり前に演奏するようになったのです。レヴェルの高い学生オケも演奏するようになりました。ただ、何のために複雑な音楽を作ったのか?という疑問は忘れ去られてしまったように思います。

ラトル=バーミンガム市交響楽団盤「生贄の踊り」でわざとテンポを下げ、変拍子の意味合いが生きるように考えて演奏しています。これは大きな問題提起ですね。昔のマルケヴィッチ盤ブレーズ旧盤のような異様な迫力というのは、最近の演奏からは滅多に聴けなくなりました。

この先『春の祭典』に何を求めるのか?

一方、コンテンポラリー・ダンスの世界ではバレエ『春の祭典』は別の方向に発展を遂げていることが分かりました。ピナ・バウシュベジャールなどが振付を行っています。

ここでは、生贄が処女であること、生贄を選ばなければならない駆け引き、生贄に選ばれてしまった少女の悲哀、などなど、生贄に対することが主なテーマになっています。そして性別の違い、男性は生贄にならないし、暴力的であることなども表現されています。一方、ベジャールは男女をペアで生贄にしています。

これを知った筆者はバレエ版『春の祭典』をよく見るようになりました。なるほど、性に関するテーマがクローズアップされているんです。そうなると技術的なものはクリアされているので、新しい『春の祭典』の演奏像というのも出てくるのではないでしょうか?

おすすめの名盤レビュー

ストラヴィンスキー作曲の『春の祭典』名盤をレビューしていきます。まずはオーケストラの名盤ということでCDを中心にお薦めしてみたいと思います。

M.T.トーマス=サンフランシスコ交響楽団

オケの上手さとバレエ音楽らしいアプローチが見事!完璧な名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 精緻
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮マイケル・ティルソン・トーマス
演奏サンフランシスコ交響楽団

1996年9月25-29日サンフランシスコ,デイヴィス・シンフォニー・ホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

マイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ響の演奏は、「春の祭典」の演奏史なかでも、ポイントとなる名盤です。ダイナミックですが、根底は知的なものが感じられます。1970年代から続いてきた演奏の総決算で『春の祭典』の決定盤と言ってしまって差し支えないと思います。

迫力や異様な雰囲気も満点です。「春のきざし」の弦は重厚です。「誘拐」は速いテンポでスリルがあります。「春のロンド」も低弦が重厚で異様な雰囲気があります。強奏になるとパーカッションは強烈ですし、スケールが大きく迫力があります。「大地の踊り」は物凄いテンポの速さで熱狂的に盛り上がります。

第2部「序奏」「乙女たちの神秘の集い」はサンフランシスコ響のレヴェルの高い演奏で、神秘的な雰囲気を出しています。クレッシェンドして行くとパーカッションと金管で複雑なリズムを刻みますが、変拍子の演奏は完璧です。「祖先の儀式」のホルンの強奏は惚れ惚れする位、上手いです。「生贄の踊り」は少し速めのテンポでリズムの乱れは全くなく、パーカッションは思い切りリズムを打ち込んでいて迫力があります。

色々な演奏を聴いてみる前に、まずこのディスクを聴いてみることをお薦めしたいです。始めて聴く人の最初の一枚としても一番いいと思います。

それにしても非常に説得力のあるアプローチです。テンポの正しさ、劇場らしい場面転換、余計な力みもなく、知的でしっかりした演奏です。その上にダイナミックさがあります。この演奏でバレエを上演したらきっと凄い舞台になると思います。ブーレーズの2回目の録音は、こういう演奏を目指していたのではないでしょうか。ブーレーズの2回目の録音もこのくらいバランスが取れていると良かったのではないかと思います。

映像付きのブルーレイも同様にクオリティの高い名盤です。

M.T.トーマス=サンフランシスコ交響楽団

『春の祭典』を代表する名演を映像付きで!
  • 名盤
  • 定番
  • 精緻
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮マイケル・ティルソン・トーマス
演奏サンフランシスコ交響楽団

クルレンツィス=ムジカエテルナ (2013年)

容赦ない原始主義のリズムとダイナミズムを高音質で
  • 名盤
  • 迫力
  • 爆演
  • 高音質

超おすすめ:

指揮テオドール・クルレンツィス
演奏ムジカ・エテルナ

2013年10月,StolbergerStrasse,コロン (ステレオ/デジタル/セッション)

ギリシャの新進気鋭の指揮者クルレンツィスとムジカエテルナの演奏です。リズムが強烈で凄いバーバリズム(原始主義)です。リズムの処理が上手いクルレンツィスなので、新しい発見がある演奏です。

冒頭は上手く木管を絡め合わせて、オケのレヴェルの高さを感じます。「春のきざし」は、凄く速いテンポで刺激的です。リズムやアクセントの一応処理は楽譜通りですが、上手くデフォルメされています。高音質で、いろいろな響きが聴こえるのは面白いです。「誘拐」になると、さらにテンポが速くなり、とてもスリリングです。昔の演奏では埋もれてしまっていた響きが高音質のためきちんと聴こえます。これは意外と面白いですよ。「春のロンド」は遅いテンポで筆者が若い時に感じたイメージに近くなつかしいです。パーカッションの打撃も凄いです。迫力という面では、シャープさも目立ち、1970年代の演奏よりも凄いかも知れません。「敵の部族の遊戯」は速めのテンポで迫力があることと、アーティキュレーション(テヌートやスタッカートなど)の処理が独特で新鮮です。「大地の踊り」もシャープなパーカッションと凄い速さで演奏しきっていて大迫力です。

第2部の前半は、神秘的で良い演奏です。クレッシェンドしてくると、速いテンポで躊躇なくダイナミックな演奏を繰り広げます。リズムに不安な所はありません。ティンパニをダイナミックに鳴らしています。「生贄の踊り」は速いテンポで鋭くリズムを打ち込んでいきます。迫力があり面白い演奏です。リズムの乱れは全くありません。クルレンツィスのリズムへの強いセンスの良さが前面に出た快演です。

近年の演奏では、ダントツで迫力のある演奏ですね。それに細部まで聴きどころが詰まっていて、これが高音質で聴けるのはとても面白いです迫力という面では、マルケヴィッチ盤に比肩する名盤です。

ロト=レ・シエクル (2013年)

しっかりと当時の演奏を再現したキレのある名盤
  • 名盤
  • 定番
  • クオリティ
  • スリリング
  • 高音質
  • ピリオド奏法

超おすすめ:

指揮フランソワ=クサヴィエ・ロト
演奏レ・シエクル

2013年5,9月メス・アルセナル,グルノーブルMC2,フランクフルト旧オペラ座 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ロト=レ・シエクルの演奏です。2013年の新しい録音です。レ・シエクルは色々な時代の曲をその時代のピリオド奏法で演奏してしています。「春の祭典」もピリオド奏法の時代なんですね。初演時の1913年版の譜面で、当時の楽器に近いものを探して使用しています。ニジンスキーの振付などを考えると、新古典主義のような演奏スタイルが合うと思うんですよね。

オリジナルバージョンはリズムが難しいです。ファゴットもインテンポで少し速めです。ファゴットというか、当時のバスーンはとても繊細な音色ですが、高音質でなかなかリアルに捉えています。「春のきざし」はかなり早いテンポでとてもリズミカルで軽快です。弦の軽快な刻みは聴いていて爽快です。当時のオケは低音が弱めですが、リズム感が良く出ていると思います。トランペットや木管などは、伸びのある音色を聴かせてくれます。「誘拐の遊戯」もキレのあるリズムで楽しめます。「敵の都の人々の戯れ」以降も安定した高い技術の演奏で、当時の密度の高い響きを上手く再現しています。「大地の踊り」熱狂的と言える位の速いテンポと正確なアンサンブルでとてもクオリティが高く、聴きごたえがあります。

第2部は繊細に始まりますが、弱音を雰囲気でごまかすことなく、しっかり演奏しきっていて、クオリティの高さを感じます。「いけにえの讃美」盛り上がると凄い速さになり、この辺りの迫力は特筆モノです。変拍子もとても正確で迫力に圧倒されます。つづく「祖先の呼び出し」もティンパニが切れの良い明確なロールで盛り上げます。「いけにえの踊り」は切れ味鋭い弦とダイナミックで小気味良い金管が印象的です。オーケストレーションが最近のものとは少し異なるようで興味深いです。正確な変拍子とキレと熱気のあるリズムが凄く、ロトの気迫も感じます。

新古典主義的な演奏スタイルです。場面の切り替えをキッチリやり、テンポはあまり変えずにインテンポ。これで十分『春の祭典』の威力は出てくるものだと思います。ピリオド楽器だからか、ダイナミックさは現代のオケには敵いませんが、当時の楽器の味が良く出ています。初演当時、技術があったなら、こんな演奏になっていたのだろう、と思わせる名盤です。

コリン・デイヴィス=ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

コンセルトヘボウ管が醸し出す原始的で妖艶な雰囲気
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 色彩感
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮コリン・デイヴィス
演奏ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

1976年11月アムステルダム (ステレオ/アナログ/セッション)

コリン・デイヴィスとロイヤル・コンセルトヘボウ管の録音はウルトラマンのようなジャケットが印象的です。昔はニジンスキー版の映像が無かったため、これを見て、一体どんな舞台なんだろう?と想像していました。C・デイヴィスの演奏は、とても迫力のあるものです。ここではアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の響きがひんやりしていて素晴らしく、C・ディヴィスの指揮と上手くあっていて、独特の味を出しています。

第1部序奏はコンセルトヘボウの弦楽器には独特の透明感があります。とてもファゴット・ソロは妖艶で神秘的です。木管ソロは素晴らしく上手いです。「春のきざし」弦がかなりダイナミックで、重心が低くクールな雰囲気が良いです。金管楽器も伸びのあるサウンドを響かせています。「春のロンド」はパーカッションの打撃が凄い迫力です。その後も、C.デイヴィスらしい筋肉質のダイナミックな演奏でスケールも大きいです。

透明感が高く不協和音がとても神秘的に響き、特に第2部前半は雰囲気が良く出ています。フォルテになってからもC.デイヴィスらしい安定したリズムとダイナミックさ、そしてオケの透明感、色彩感が素晴らしいです。

重心の低いC.ディヴィスの指揮とコンセルトヘボウ管の透明感と色彩感に満ちた響きで、とても妖艶で異様な雰囲気で迫力のある名盤です。初めて聴く人にもお薦めのディスクです。

アバド=ロンドン交響楽団 (1975年)

ダイナミックさと原始的な雰囲気が凄い
  • 名盤
  • 定番
  • 精緻
  • 重厚
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮クラウディオ・アバド
演奏ロンドン交響楽団

1975年2月ロンドン,フェアフィールド・ホールズ (ステレオ/アナログ/セッション)

アバドのロンドン響時代を代表する名盤の一つです。バーバリズムを前面に出した迫力ある演奏ですが、ただ野蛮なだけではありません。オーケストラの演奏レベルの高さと、変拍子の面白さを両立させた演奏です。複雑なリズムをスポーティにすり抜けることなく、変拍子に意味を持たせています。エネルギーの変化というのでしょうか?ほかの演奏とは違って、何のための変拍子なのかが分かります。

「春のきざし」からロンドン響の弦はダイナミックなリズムを刻み、管楽器も伸びのある演奏です。アバドはリズム感の鋭い指揮者ですが、良い面が前面に出ていて、こんなにリズム感がある演奏も滅多にありません。このロンドン響の重厚なサウンドは、古代ロシアのオリエンタリズムを感じさせます「春のロンド」は重低音が効いていて、バスクラリネットのレガートは独特の味があります。フォルテになると金管の凄い咆哮が聴けます。

第2部「序奏」「乙女たちの神秘の集い」異様といえる位の神秘的な雰囲気で、不協和音もここまで雰囲気を出せるのは凄いです。クレッシェンドして変拍子の個所はダイナミックです。「祖先の儀式」はバスフルートの異様な響きを上手く活かしています。ホルンら金管も思い切り咆哮しています。「生贄の踊り」では、変拍子を上手く演奏していますが、少しテンポを落として、変拍子というよりエネルギー変化みたいな音楽になっています。この辺りのリズム処理はさすがアバドです。エネルギーはどんどん高揚していき、最後に至ります。

ロンドン交響楽団の全盛期でもあり、ダイナミックで響きに厚みがあり、スケールの大きな演奏で、パーカッションや金管楽器の迫力と正確さが上手くバランスしている名盤です。そこにアバドが独特の個性を付け加えています。

このディスクは他の演奏では聴けない要素を沢山もっていて、演奏史に残る名演ですね。

ラトル=ベルリン・フィル (2012年)

ラトルがベルリン・フィルを上手くドライヴした名盤
  • 名盤
  • 高音質
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮サイモン・ラトル
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2012年11月8-10日,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ラトルとベルリンフィルの録音です。ラトルは以前にバーミンガム市交響楽団とも録音していて、これもなかなか面白い演奏でした。特に最後の生贄の踊りのリズム処理が個性的で変拍子を活かした演奏でした。ベルリンフィルではどうでしょうか。

ソロの管楽器がとても上手いです。録音もとても良く解像度に優れていてとても臨場感があります。「春のきざし」ベルリンフィルの弦の厚みもあって、迫力があります。ひんやりしたベルリンフィルの響きもいいですね。「春の祭典」はどのオケでも演奏できるようになりましたが、ベルリンフィルのアンサンブルのクオリティはずば抜けたものがあります。

「春のロンド」はパーカッションはそこまで強烈では無いですが、オケの重厚さは凄いです。その後も、ベルリンフィルの演奏はダイナミックですが、ラトルの指揮は常に知的さを失いません。ダイナミックで熱狂的でありながら正確さ、明晰さが共存しています。

第2部に入るとベルリンフィルの機能性を活かした繊細な不協和音の演奏が素晴らしいです。妖艶さも感じられます。クレッシェンドして11連符は、テンポを落としています。その後、テンポを戻して変拍子は正確で、パーカッションも鳴らしてダイナミックな演奏です。「祖先の儀式」のホルンの号砲は凄いです。「生贄の踊り」ベルリンフィルの音の厚みを活かしてダイナミックな迫力のある演奏です。オケの各パートがほとんど自主的に迫力ある演奏をしています。

ベルリンフィルはパワフルで技術的に優れていて、「春の祭典」を演奏するには理想的なオケだと思います。この演奏は最近のベルリンフィルの演奏ということで貴重です。

カップリングの「管楽器のためのシンフォニー」もデュトワ=モントリオール響に匹敵する出来栄えです。

ゲルギエフ=マリインスキー劇場管 (1999年)

爆速のテンポ設定とピットから出たマリインスキー劇場管のド迫力
  • 名盤
  • 定番
  • リズミカル
  • 迫力
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ワレリー・ゲルギエフ
演奏マリインスキー劇場管弦楽団

1999年,バーデン=バーデン (ステレオ/デジタル/セッション)

ヴァレリー・ゲルギエフにとって『春の祭典』はお国モノですね。スヴェトラーノフやロジェストヴェンスキーのどちらかというと怪演が多かったのですが、ゲルギエフ=マリインスキー劇場管の演奏は迫力はありますが、怪演ではありません。

序奏からテンポは速めです。筆者は序奏のテンポが速いほうが好きなので、この位のテンポだといいですね。妖しさが良く出ています。「春の兆し」結構速いテンポで鋭くリズムを打ち込んでいます。このテンポで実際バレエ団に踊らせているのだから凄いですね。ダイナミックな名演だと思います。「誘拐」になるとさらにテンポアップし、スリリングでド迫力です。「春のロンド」は少し速め位のテンポですね。マリインスキー劇場の響きはロシア的で民族的です。とても土の香りが強いのです。そういう所もこの演奏も良い所です。パーカッションが入ると物凄い迫力です。バレエの伴奏で聴くよりもCDで聴いたほうが迫力がよく分かります。後半も速いテンポで迫力のある演奏が続きます。特に「大地の踊り」は凄まじいです。

第2部前半は、マリインスキー劇場管が持つ独特な土の匂いとある種の官能性が感じられます。神秘的であり、ロシア的なものがあります。クレッシェンドしてくると、また強烈なリズムの嵐です。マリインスキー劇場管の重厚さと、荒々しい金管楽器は非常に迫力があります。先祖の儀式の所など、土俗的な迫力はまさに異教徒の宗教儀式です。『生贄の踊り』は少し遅めと感じます。強く打ち込まれるリズムと、金管の容赦ない荒々しさが凄いです。

ゲルギエフはバレエ版を見て満足していたのですが、やはりオケピットでは本当の迫力は出ないようですね。きちんと録音されたものがこんなに迫力があるとは思いませんでした。カップリングのスクリャービンも名演で、スクリャービンの交響曲がこんなに面白い曲だと気づかされました。

カラヤン=ベルリン・フィル (1963年)

ベルリンフィルのパワーと重厚さを活かした名演
  • 名盤
  • ダイナミック

おすすめ度:

ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1963年10月,1964年2月,ベルリン (ステレオ/アナログ/セッション)

カラヤン、ベルリンフィルの『春の祭典』です。この演奏は当時ストラヴィンスキー本人から批判されるという、いわくつきのCDとなりました。もともとカラヤンはバレエ音楽できっちりリズムを刻むスタイルではなく、レガート中心に横の音楽を大事にする指揮者です。

カラヤンはチャイコフスキーのバレエ音楽も録音していて、高い評価を得ています。横の流れが中心のロマンティックな演奏で「シンフォニックな演奏」と言えます。

この演奏は似たような『春の祭典』の録音が増えた中で、一際、異彩を放っています。ベルリン・フィルの弦セクションは重厚で強力であり「春の兆し」では他の演奏では聴けない重厚さです。これは後のベルリンフィルの演奏でも聴けないレヴェルの迫力です。ものすごいテンポの「誘拐」など、結構おもしろく聴けるCDです。

ブーレーズ=クリーヴランド管弦楽団 (1969年)

スコアをしっかり再現したうえで、集中力・迫力のある名盤
  • 歴史的名盤
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ピエール・ブーレーズ
演奏クリーヴランド管弦楽団

1969年,クリーヴランド (ステレオ/アナログ/セッション)

ブレーズ=クリーヴランド管弦楽団『春の祭典』2回録音しています。しかし、2回目の録音は迫力に欠け、非常に大人しい演奏になっています。ブレーズは現代音楽の作曲家ですから、スコアの読み込みが深く、充実感があります。だから迫力がなくても聴くべき個所はありますけれど、トータルとしては物足りないですね。

ブレーズの1回目の録音は、まだ春の祭典の演奏が簡単ではなかった時代のもので、同じようにスコアの読み込みは深く、集中力があって迫力のある名盤です。1960年代ではトップを争う名演です。その後、1970年代になると良い演奏が沢山でてきますが、ターニングポイントになったレコードともいえます。

序奏から安定感があり、1969年の演奏とは思えません。一つ一つのパートに綿密に表情がつけられており、リズムの噛み合わせも細かく考え抜かれています。「春のきざし」は重厚な弦のリズムです。フランス国立管とのライヴ盤ほどでは無いですが迫力は十分です。「誘拐」もスケールが大きくスリリングです。「春のロンド」「賢者の行列」も音の密度が高く迫力満点です。

第2部は、前半は不協和音を響かせて異様な雰囲気を上手く出しています。クレッシェンドしてくると、迫力と共に変拍子もスムーズに演奏しています。「祖先の呼び出し」「祖先の儀式」までパーカッションもしっかり鳴らしていますし、ダイナミックで密度の高い響きが聴けます。「いけにえの踊り」では、少しテンポを落として、正確なリズムと鋭いアクセントです。最後はドラムが思い切り叩き込んでいて、聴き終わった後は充実感があります。

今、聴いてもこのブレーズ旧盤は、新しい発見がある位、スコアをしっかり読み込んで突き詰めています。また、この時代のブレーズは他のストラヴィンスキーの特に新古典主義の作品を多く録音しており、今聴くととてもレヴェルが高く新鮮です。

アンチェル=チェコ・フィル (1963年)

チェコ・フィルの重厚で驚くべき大迫力!
  • 名盤
  • 重厚
  • 奥深さ
  • 重厚
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮カレル・アンチェル
演奏チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1963年1月,プラハ,ルドルフィヌム (ステレオ/アナログ/セッション)

アンチェルとチェコ・フィルによる名盤です。1963年というまだブレーズ盤も出ていない時期の録音です。この時期は旧東側やロシアの演奏家による『春の祭典』の名盤が多いですね。一番早いのはマルケヴィッチ盤で、シャープで暴力的とも言える迫力はこのページでも紹介しています。もう一つはスヴェトラーノフ盤で、これも時代を考えると驚くべき名演です。そして、このアンチェル盤はさらに凄い迫力があります。チェコ・フィルとは思えない演奏です。

「序奏」から異様な雰囲気を醸し出しています。チェコ・フィルのいぶし銀の音色を上手く活かして、重厚で異様な雰囲気の不協和音を醸し出しています。今、改めて聴くとモントゥー盤もそうですが、ファゴットが良い味を出しています。「春のきざし」は、チェコ・フィルの重厚な弦が、鋭くリズミカルに刻んで凄い生命力です。「誘拐」は凄い激しさですが、適切なテンポ取りで理知的でもあります。「春のロンド」は深みのある響きにコクがありますが、フォルテになるとスケールが凄いです。後半は激しく盛り上がります。時々凄い不協和音が鳴り響き、正しいのかどうか分かりませんけど、異様な雰囲気を盛り上げています。「大地の踊り」速いテンポで地の底から湧き上がるようなド迫力で凄いの一言に尽きます。

第2部の前半は異様な雰囲気を醸し出しています。響きは妖艶といえばそうなのですが、繊細さは少なく不協和音を強調しています。クレッシェンドして「いけにえの讃美」の複雑なリズムは、この時期の演奏としては変拍子を割と正確に演奏できています。同時に凄いダイナミックさです。「祖先の呼び出し」は深みがありスケールが大きいです。「いけにえの踊り」は変拍子でのつまづきはなく、切れ味鋭い弦と荒々しい金管のダイナミックさが前面に出て、ラストはさらにアッチェランドしていきます。

アンチェルとチェコ・フィルの本気を感じる名演です。古い録音で音質が良い、とまでは言えませんが、重厚でスケールの大きな迫力を良く捉えていますし、意外に分離も良いです。良いオーディオで聴くと本当の迫力が分かる名盤です。

小澤征爾=シカゴ交響楽団 (1969年)

クールなシカゴ響を熱狂させた若い小澤征爾
  • 名盤
  • 白熱
  • フレッシュ
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮小澤征爾
演奏シカゴ交響楽団

1969年11月24日,シカゴ,オーケストラ・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

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小澤征爾がシカゴ響を燃え立たせた名盤です。後年のボストン響との演奏は丁寧な演奏だったため、そちらも名盤ですがこのディスクとはむしろ対称的です。このディスクでは、シカゴ響は小澤のペースに巻き込まれていて、熱狂的な演奏です。テンポが走りそうになってもギリギリで押さえていますが、それよりもこの熱気は尋常ではありません。『シンフォニエッタ』でもそうでしたが、小澤征爾とシカゴ響は特別な組み合わせで、普段はダイナミックでも落ち着いていてクールさのあるシカゴ響を、小澤征爾は簡単に熱狂の渦に巻き込んでいきます。映像があったら見てみたいものです。

ブーレーズ=フランス国立管弦楽団

ライヴならではの熱い演奏!観客も賛否両論
  • 名盤
  • 熱演
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮ピエール・ブーレーズ
演奏フランス国立管弦楽団

1963年6月18日,パリ,シャンゼリゼ劇場(ステレオ/ライヴ)

ブーレーズがフランス国立管弦楽団を振った1963年のライヴです。CBSのスタジオ録音が1969年なので、それよりも前の録音です。精緻さはオケもクリーヴランド管弦楽団という実力派ですし、スタジオ録音のほうが優れていますが、このコンサートはフランスのオケで、しかも初演の行われたシャンゼリゼ劇場で行われたものです。ブーレーズの演奏自体もまだ新鮮な時代だったと思います。

物凄く気迫の溢れた演奏で凄い白熱ぶりです。レコーディングではスコアを突き詰めたような情報量の多い演奏をしていますが、このライヴではグロテスクさや迫力が強調されていて、ブーレーズは普段はこういう演奏をしていたんだな、ということが分かります。

録音の質というハンデはありますが、1963年のライヴにしては悪くはありません。細かい所までよく録音されています。フランス国立管弦楽団は古き良きフランスの香りが残っており、多彩な表現で楽しめます。第2部の前半など、神秘的な個所はフランス国立管の特性で神秘的で官能的な音楽になっています。

迫力もかなりのものです。「春のきざし」の弦の連打の迫力からして凄いですね。低音が良く効いています。「春のロンド」はかなりパーカッションを強く鳴らして、オケのトゥッティの量感も凄いです。「賢者の行列 」も全開です。「大地へのくちづけ」は上手く不協和音を鳴らして異様な雰囲気を出しています。所々で鳥肌が立つくらいです。

第2部のクレッシェンドした後は、リズムはもう一歩ですが、オケ全体で迫力があり白熱しています。ティンパニも強烈です。テンポは速めですね。「祖先の儀式」の強烈なホルン、「いけにえの踊り」はリズムはギリギリですが速めのテンポで押し通します。凄いリアリティで、いけにえの踊りが目に浮かぶ位です。

このライヴが1963年というのは信じがたい気がします。ライヴではこんな白熱した演奏をしていたなんて、ブーレーズに対する見方も変わるかも知れませんね。演奏後のブラボーコールはヨーロッパでは信じられない位、大きいです。

ドゥダメル=シモン・ボリバル・オーケストラ

若い演奏家によるダイナミックでスリリングな『春の祭典』
  • 名盤
  • 白熱
  • 迫力
  • スリリング

おすすめ度:

指揮グスターボ・ドゥダメル
演奏シモン・ボリバル・オーケストラ

2010年2月1-7日,カラカス(デジタル)

ドゥダメル=シモン・ボリバル・ユース・オーケストラは一応若手のアマチュア・オケですが、このDGの録音を聴くと進化が著しく、昔、来日した時よりも音程など短期間のうちに各段に良くなっています。

「序奏」から全体に速めのテンポですが、繊細で高度なアンサンブルを聴くことが出来ます。「春のきざし」は爆発的といったら言い過ぎですが、迫力のある弦のリズムです。重さもあって『春の祭典』らしいですね。「春のロンド」低弦をしっかり響かせて異様な雰囲気が出ています。強奏になるとオケ全体がスケール大きく盛り上がります。「賢者の行列」は速いテンポでシャープな迫力です。「大地の踊り」は速いテンポでとてもスリリングです。

第2部序奏は神秘的に始まります。クオリティは高いですが、ベネズエラは暖かいので、ロシアの古代の雰囲気を出そうとしても”冷たさ”が出ないですね。ソロも上手く、音程も良いので、不協和音を上手く響かせ神秘的な雰囲気は出ています。クレッシェンドして11拍子はドラムが思い切り打ち込んでいて大迫力です。変拍子は当たり前のように演奏しています。「祖先の呼び出し」野蛮でホルンの咆哮は強烈です。「いけにえの踊り」は速いテンポで音の密度があります。フルオケで音場の広さが味わえて、結構な迫力です。パーカッションも強烈なリズムを打ち込んでいてダイナミックです。

全体的に想像よりもずっとクオリティが高い演奏でした。録音も良く、各ソロ楽器をよく聴かせてくれます。また弦アンサンブルの広がりやオケのトゥッティなど、音場の広がりも良く捕えています。全体的にすっきりしたサウンドで、分離も良いので聴いていて気分が良いです。

カップリングの組曲『マヤ族の夜』はスケールが大きく、大編成が活かせる曲です。こういう南米の知られざる親しみやすい名曲を聴くことができるもの、ドゥダメル盤の良さですね。

サロネン=ロサンゼルス・フィル (2006年)

細部まで突き詰めたサロネンらしい名盤
  • 名盤
  • 精巧
  • クール
  • 高音質

おすすめ度:

指揮エサ=ペッカ・サロネン
演奏ロサンゼルス・フィルハーモニック

2006年1月,ロサンジェルス (ステレオ/デジタル/セッション)

サロネンとロサンジェルス・フィルの演奏は、細かい所のクオリティがとても高いです。最初のファゴットの段階で、既にそうですし、細かいアンサンブルの絡み合いがとても上手くいっています。

アンサンブルはしなやかで完璧ですが、特別に迫力を狙っている感じではありません。「春のきざし」でも異教徒的な怪しい雰囲気も特になく、音楽づくりに集中しています。これみよがしのわざとらしい迫力というのは一切ないのです。必要なものだけ、高いレベルで演奏しています。これは相当クオリティの高いアンサンブルです。

ロサンゼルス・フィルは特に管楽器のレヴェルがとても高く、金管でも木管楽器のようにしなやかに演奏してきます。「春のロンド」の強奏部分でも、音が濁ることはありません。

第2部に入っても大枠変わらない演奏スタイルですが、フォルテの個所にくるとかなり速いテンポでスマートに演奏しています。「いけにえの踊り」は、かなり迫力があり、テンポの変化などいくらかの演出が入っているように思います。あくまでシャープでスリリングな演奏です。

最後にサロネンへのインタビューが入っています。この演奏は、全体としては迫力よりも細部へのこだわりを感じます。何度も聴くと新しい発見があるというか、噛めば噛むほど面白みが分かる名盤です。

デュトワ=モントリオール交響楽団 (1984年)

透明度の高いサウンドと色彩感、新たな『春の祭典』
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感
  • 高音質

おすすめ度:

指揮シャルル・デュトワ
演奏モントリオール交響楽団

1984年5月,モントリオール,セント・ウスタッシュ (ステレオ/デジタル/セッション)

デュトワとモントリオール交響楽団の録音はレヴェルが高く素晴らしいです。また録音が非常によく透明度が高い『春の祭典』が聴けます。従来の『春の祭典』とはだいぶ違う演奏スタイルです。

この組み合わせの常ですが、野性的な迫力には欠けますかね。「生贄の踊り」などは、変拍子の演奏がスムーズすぎて聴かせどころを思いっきりスルーしています。演奏のクオリティは非常に高いので、Amazonのレビューが全部5なのも分からなくはありませんけど。

この演奏やブレーズ新盤の演奏が、『春の祭典』演奏史の一つの分岐点かなと思います。

新古典主義時代の「管楽器のためのシンフォニー」は、完璧な名演奏です。ブレーズのようにならずに、こんなにセンスのいい演奏が出来るとは驚きです。

シャイー=クリーヴランド管弦楽団 (1985年)

小気味良いリズムで完成度の高い名盤
  • 名盤
  • 迫力
  • スリリング

おすすめ度:

指揮リッカルド・シャイー
演奏クリーヴランド管弦楽団

1985年11月,クリーヴランド,マソニック・オーディトリアム(デジタル)

シャイー盤は少しクールな所もあるクリーヴランド管弦楽団を煮えたぎるように鳴らして、迫力がある名盤となりました。シャイーはオケの鳴らし方が上手いことと、鋭敏なリズム感があり『春の祭典』が得意な指揮者の一人です。「ここはパーカッションが出てほしい」「ここはトランペットを聴きたい」「ここはホルンだ」といった重要なポイントを良く抑えている演奏です。

第1部「序奏」からクオリティの高いアンサンブルです。「春のきざし」は強いリズムを刻んで途中入るトランペットなども綺麗に入っています。「春のロンド」はドラム中心にパーカッションが上手く入っています。「敵対する部族の遊戯」も上手いテンポ取りでスリリングです。「大地の踊り」はパーカッションも綺麗に入っているし、その後の急き立てるようなリズムも凄まじいものがあります

第2部の前半も最近の演奏のように軽すぎず、グロテスク過ぎずで、バランスよくまとめています。「いけにえの讃美」「祖先の呼び出し」はドラムを思い切り鳴らしていてダイナミックです。ティンパニもいいですね。「祖先の儀式」のホルンも決まってます。「いけにえの踊り」は速めのテンポですが、シャープでリズミカルです。

テンポ設定も特別な所は無く、バレエのバックにも使えそうな演奏です。1980年代でも特に完成度の高いディスクです。

ウルバンスキ=北ドイツ放送エルプフィル (2016年)

ウルバンスキの指揮のもと、ドイツのオケの本領を発揮
  • 名盤
  • 迫力
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ウルバンスキ
演奏北ドイツ放送エルプフィルハーモニー

2016年12月,ドイツ,ハンブルク,エルプフィルハーモニー

北ドイツ放送交響楽団から北ドイツ放送エルプ・フィルに改名したハンブルクのハイレヴェルなオーケストラです。ウルバンスキは良く知らない指揮者ですが、かなり若いですね。地力が高いドイツのオケが『春の祭典』にしっかり取り組めば、かなり凄い演奏になるだろう、というのは予想できます。

序奏はファゴットの長いロングトーンで始まります。ここを伸ばす演奏ってあまり聴いたことがないですね。その後は正確なアンサンブルで変拍子を簡単そうに演奏していきます。北ドイツ放送響のクールな響きは春の祭典にあっています。2016年録音で音質はとても良いです。「春のきざし」に入ると重厚さのあるサウンドも出てきて、とても良いです。そもそもの響きが『春の祭典』に合っています。ウルバンスキのほうは、個性的という訳でもなく、かといってしなやかでもなく、正確な指揮と響きに対するセンスが高い指揮者だと思います。「春のロンド」の打楽器と盛り上がりは凄いですね。第1部終曲の盛り上がりも凄いです。

第2部も不協和音になかなか迫力があり、神秘的な雰囲気を作っています。弦楽器のダイナミックさはドイツのオケの特徴かもしれません。

全体としては、重厚かつシャープさがあり、響きにクールさがあり、アンサンブルも正確です。ドイツのオケだとちょっと荒い所があったりしますが、この演奏には荒さはありません。ここぞという所では、思い切りダイナミックに演奏していて、楽しく聴けます。初めて『春の祭典』を聴く人にもお薦めの名盤です。

ロシアの野性的名演

少し昔のロシアのオケはとても野性的でした。またロシア人にとってストラヴィンスキーはお国モノです。フランスを中心に活躍したので、そういうイメージは少ないですが、ストラヴィンスキーはロシアの大地を描いています。ロシア人指揮者やオケは土の香りのするダイナミックな名盤を残しています。

スヴェトラーノフ=ロシア国立管弦楽団 (1966年)

スヴェトラーノフに流れる野性の本能全開
  • 個性的
  • 爆演

おすすめ度:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏ロシア国立管弦楽団

1966年 (ステレオ/アナログ/セッション)

アマゾンUnlimitedとは?

スヴェトラーノフの『春の祭典』は、個性的で爆演です。技術面も凄いです。というのは、収録したのが1966年とブレーズの1回目よりも早いのです。録音は良いとは言えませんが、その時代のソヴィエトなら、良い録音といえますね。同じ迫力にしても、出てくる音が全然違うのが面白い所です。土の香りが強いというか、それこそ原始的なサウンドを遠慮なく出してきます。ストラヴィンスキーが語っていたロシアの春のイメージを思い出します。

「誘拐」あたりの激しいテンポ、「春のロンド」でのパーカッションの音は独特で雷のようです。第1部はその後、ずっと激しく盛り上がりっぱなしで、最後の曲の荒れ狂いぶりは尋常ではありません。

第2部前半は、神秘的、静けさ、というより、夜、野生動物のいる森に迷い込んでしまったような感じです。やがてクレッシェンドして11拍子の所は、かなり間を空けています。ここで間を空けるのは結構効果的ですね。

この時代に変拍子がひっかったりせずに、当たり前のように演奏できているのが凄いです。「生贄の踊り」も正確に変拍子を演奏しています。金管とパーカッションは全開です。

西側の演奏とは大分違いますが、かなり完成度が高いと思います。西側のレコードなども、主だったものはまだリリースされていないですし。スヴェトラーノフ自身がスコアを読みこんで作り上げた音楽なんでしょうね。

ロジェストヴェンスキー=ロンドン交響楽団

意外と普通にダイナミックな名演奏!録音が良ければ…
  • 名盤
  • スケール感

おすすめ度:

指揮ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー
演奏ロンドン交響楽団

1987年

ロジェストヴェンスキーはロンドン交響楽団とまとまったストラヴィンスキー三大バレエの録音をリリースしています。1987年にしては音質が今一つですけど、選曲は「火の鳥」は1910年版だし、「ペトルーシュカ」も1911年版と、一般的なオリジナル版をいます。それに名曲「3楽章の交響曲」も入っているので、お買い得です。

第1部は初めから落ち着いたテンポでの普通の演奏です。ダイナミックなロンドン交響楽団なので、その気になれば爆演も出来そうですが、ソヴィエト文化省交響楽団のようには好き勝手には行かないですね。とはいえ、押さえるポイントは押さえていて、パーカッションが号砲する「春のロンド」のような所はかなり凄いです。ただ、録音のダイナミクスが少し平板な気もします。その後は、ロンドン交響楽団も盛り上がってきて結構ダイナミックな演奏になっています。

第2部も前半は普通に神秘的に始まります。クレッシェンドしてきて11拍子のティンパニはテンポを落としています。その後はテンポが遅めですね。ロジェストヴェンスキーは実演だと結構スケール感があるので、テンポが遅めでちょうど良いのですが、CDで録音にスケール感が採れていないと遅く感じてしまいます。「いけにえの踊り」は、少しリズムが複雑な古めのバージョンを使っている気がします。なかなかダイナミックで良い演奏です。

変に個性的な所もないし、テンポも遅めですが、録音が良ければかなり評判の良いディスクだったかも知れませんね。

歴史的名盤

解説に書きますが、春の祭典は初演当時のオケにとって非常に難しい状況でした。しかし、ストコフスキー盤あたりから優れた名盤が現れ、マルケヴィッチ盤ブレーズ旧盤あたりでやっとまともに演奏できるようになります。初演指揮者であるモントゥー盤も歴史的名盤でしょうね。歴史的名盤と言ってもダイナミックさでは、現在の演奏を上回るものもあり、モントゥー盤など多くの示唆を与えてくれる名盤もあります。

マルケヴィッチ=フィルハーモニア管弦楽団 (1959年)

切れ味の鋭さと迫力では今でも一番凄い超名盤

マルケヴィッチはフランスで活躍しましたがロシア人です。1960年代に来日し、日本フィルを指揮して「春の祭典」を演奏しました。その時の迫力ある演奏は伝説的名演として語り草になっていました。

そのマルケヴィッチ『春の祭典』は手兵ラムルー管弦楽団ではなく、イギリスのフィルハーモニア管弦楽団と録音されています。非常にシャープな切れ味を持つ激しい演奏で、たまにリズムが少し崩れそうになっても全く気にならないくらい凄い迫力です。上の解説にYouTube動画が貼ってあります。金管も上手く、パーカッションは迫力があり、弦セクションもシャープです。さらにリマスターされて、シャープさが増しています。

シャープさと迫力では今でもこの演奏にかなうものはない超名盤です。迫力のある『春の祭典』を聴いてみたい方には、必聴の名盤です。

ストコフスキー=フィラデルフィア管弦楽団 (1930年)

モダンな春の祭典のスタイルを確立
  • 歴史的名盤

指揮レオポルド・ストコフスキー
演奏フィラデルフィア管弦楽団

1929-1930年モノラル録音

ストコフスキーは1920年代という早い時期に録音しているのですが、それまでの『春の祭典』とは全く違う演奏になっています。

そして、そのあとの演奏はストコフスキーの演奏スタイルを踏襲して進化させたものが多いのです。この演奏が与えた影響は非常に大きいといえますね。初演者のモントゥーの演奏は一種別の異様さを感じさせるスタイルなのですが、今聴くと凄く違和感を感じます。でもストコフスキーは今聴いても演奏スタイルに違和感を覚えることはないのです。

ただ、ストコフスキーは『春の祭典』を純粋に音楽として捉えていて、『春の祭典』の演奏がオーケストラ独自になっていったのも、この辺りからではないかと感じます。

映画「ファンタジア」というディズニーのアニメーションがありますが、『魔法使いの弟子』や『春の祭典』にアニメーションをつけたものです。筋書きは全く異なり、生贄とかそういう難しいものではなく、宇宙・火山・恐竜などが出てきます。

モントゥー=パリ音楽院管弦楽団 (1956年)

リズムは悪いが、神妙で官能的な雰囲気のある異色の演奏
  • 歴史的名盤

おすすめ度:

指揮モントゥー(ピエール)
演奏パリ音楽院管弦楽団

1956年11月2,5,6,11日,パリ,サルワグラム

初演指揮者のモントゥーですが、いくつか録音を残しています。その中でもっとも出来が良いのがボストン交響楽団とのものです。技術的に素晴らしいということです。

最後の録音はパリ音楽院管弦楽団でしたが、この演奏は独特の味があって捨てがたいです。しかし、技術的には特にリズムはかなり崩れてしまっています。ただ色々聴いてみたい方はパリ音楽院管弦楽団との演奏も聴いておいたほうがいいと思います。他の演奏にはないものがありますから。

それとモントゥーは録音によって結構演奏スタイルが変わる時がありますね。根本的に変わるわけではないのですが、即興的に急に遅くしたりしているようにも思えます。ということは、初演時と全く同じテンポで演奏しているわけではない、ということですね。ピットに入っているわけでは無いので、管弦楽曲として演奏しているのでしょう。

いずれにせよ、ストコフスキーが作り上げた春の祭典とは別の姿がこの演奏にはあります。冒頭のファゴットからインテンポで、きちっと場面転換していくところも「春の祭典」がバレエ音楽であることを思い出させてくれます。

「春の祭典」はインテンポでやると、原始的というか、不思議な魅力が出てくるのですよね。

モントゥー=ボストン交響楽団 (1957年)

ハイレヴェルな技術力、モントゥーの貴重な遺産
  • 歴史的名盤
  • モノラル

おすすめ度:

指揮ピエール・モントゥー
演奏ボストン交響楽団

1957年4月12日 (モノラル)

モントゥーはボストン交響楽団とも録音を残しています。こちらの方が技術的にずっと上です。リズムの乱れも少なく、迫力があります。同じ指揮者とは思えない位です。初演指揮者モントゥーの実力を聴きたいなら、ボストン響との演奏が良いと思います。

春の祭典BOX

『春の祭典』を沢山聞き比べてみたい人向けに、『春の祭典ボックス』がリリースされ、人気を博しています。ユニバーサル(旧ポリグラム)系列の「春の祭典」の全録音が収録されています。

「春の祭典」初演100年記念ボックス

ユニバーサル(旧ポリグラム)系列の「春の祭典」の全録音を収録!

収録された演奏は以下です。最新は2010年のドゥダメル盤ですね。このページで紹介している演奏でも、モントゥー盤、カラヤン盤、アバド盤、C.デイヴィス盤、ゲルギエフ盤などが収録されています。

これだけあれば、と思いますが、実は他にも名演は沢山あります。奥が深いですね。お買い得であることは間違いありません。

収録された演奏

(1) エドゥアルト・ファン・ベイヌム(指揮) アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団〔録音〕1946年
(2) エルネスト・アンセルメ(指揮) スイス・ロマンド管弦楽団〔録音〕1950年
(3) フェレンツ・フリッチャイ(指揮) ベルリンRIAS交響楽団〔録音〕1954年
(4) アンタル・ドラティ(指揮) ミネアポリス交響楽団〔録音〕1954年
(5) ルドルフ・アルベルト(指揮) セント・ソリ管弦楽団〔録音〕1956年
(6) ピエール・モントゥー(指揮) パリ音楽院管弦楽団 〔録音〕1956年
(7) エルネスト・アンセルメ(指揮) スイス・ロマンド管弦楽団〔録音〕1957年
(8) アンタル・ドラティ(指揮) ミネアポリス交響楽団〔録音〕1959年
(9) ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕1963年
(10) コリン・デイヴィス(指揮) ロンドン交響楽団〔録音〕1963年
(11) ズービン・メータ(指揮) ロサンジェルス・フィルハーモニック〔録音〕1969年
(12) マイケル・ティルソン・トーマス(指揮) ボストン交響楽団〔録音〕1972年
(13) ベルナルト・ハイティンク(指揮) ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕1973年
(14) エーリヒ・ラインスドルフ(指揮) ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕1974年
(15) ロリン・マゼール(指揮) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕1974年
(16) ゲオルク・ショルティ(指揮) シカゴ交響楽団〔録音〕1974年
(17) クラウディオ・アバド(指揮) ロンドン交響楽団〔録音〕1975年
(18) コリン・デイヴィス(指揮) アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団〔録音〕1976年
(19) ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕1977年
(20) サイモン・ラトル(指揮) ナショナル・ユース・オーケストラ〔録音〕1978年
(21) 小澤征爾(指揮) ボストン交響楽団〔録音〕1979年
(22) アンタル・ドラティ(指揮) デトロイト交響楽団 〔録音〕1981年
(23) レナード・バーンスタイン(指揮) イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕1982年
(24) シャルル・デュトワ(指揮) モントリオール交響楽団〔録音〕1984年
(25) リッカルド・シャイー(指揮) クリーヴランド管弦楽団 〔録音〕1985年
(26) ピエール・ブーレーズ(指揮) クリーヴランド管弦楽団 〔録音〕1991年
(27) ゲオルク・ショルティ(指揮) アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団〔録音〕1991年
(28) ジェイムズ・レヴァイン(指揮) メトロポリタン歌劇場管弦楽団〔録音〕1992年
(29) ウラディーミル・アシュケナージ(指揮) ベルリン・ドイツ交響楽団〔録音〕1994年
(30) セミヨン・ビシュコフ(指揮) パリ管弦楽団〔録音〕1995年
(31) ベルナルト・ハイティンク(指揮) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕1995年
(32) ヴァレリー・ゲルギエフ(指揮) キーロフ歌劇場管弦楽団 〔録音〕1999年
(33) エサ=ペッカ・サロネン(指揮) ロサンジェルス・フィルハーモニック〔録音〕2006年
(34) チョン・ミョンフン(指揮) フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団〔録音〕2007年
(35) グスターヴォ・ドゥダメル(指揮) ベネズエラ・シモン・ボリバル・ユース〔録音〕2010年
(36) ブラーチャ・イーデン&アレクサンダー・タミール(ピアノ・デュオ)〔録音〕1968年
(37) ペキネル姉妹(ピアノ・デュオ)〔録音〕1983年
(38) ウラディーミル・アシュケナージ&アンドレイ・ガヴリーロフ(ピアノ・デュオ)〔録音〕1990年
(39) 『ヴァイオリン協奏曲ニ長調』~サミュエル・ドゥシュキン(Vn), イーゴリ・ストラヴィンスキー(指揮) コンセール・ラムルー管弦楽団〔録音〕1935年

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「春の祭典」バレエ版

演奏のほうは大分紹介しました。まだ無数にありますが、この辺りにしておきたいと思います。春の祭典のバレエ版の代表的な舞台を紹介します。

ゲルギエフ=マイリンスキー劇場 (ホドソン復刻ニジンスキー版)

爆速のテンポで踊るマリインスキー劇場バレエのレヴェルの高さ
  • 名盤
  • 定番
  • リズミカル
  • 迫力
  • 高画質

超おすすめ:

上演マイリンスキー劇場バレエ
指揮ゲルギエフ
演奏マイリンスキー劇場管弦楽団

2008年6月,サンクトペテルスブルク,マリインスキー劇場 (NTSC方式/Region All)

マイリンスキー劇場の音楽監督であるゲルギエフがニジンスキーの復刻版を取り上げ、質の高い映像を収録したことで、一気にこの振付がスタンダードとなりました。

ゲルギエフらしい速いテンポで演奏されており、ダンサーはさぞ大変だと思いますが、さすがロシアのマイリンスキー劇場の上演はレベルが高いです。もちろん画質も良いです。

ジョフリーバレエ(ホドソン復刻ニジンスキー版)

ニジンスキーの振付は正確には残っていません。しかし、踊ったダンサーや舞台を見た専門家がいたので、ニジンスキー亡きあと、復刻することができました。随分長い間、上演されていましたが、YouTubeが開始され、そこにアップされるまで実演で観るしかありませんでした。

このジョフリーバレエの上演はYouTubeにしかないようです。ゲルギエフ=マリインスキー劇場のディスクが出るまでは、唯一の映像でした。初めて見たときは感動しましたね。

内容的にも非常に素晴らしい上演なのですが、出来ればディスクでもっと良い映像で観たい所です。

ベジャール・バレエ・ローザンヌ (ベジャール振付)

  • 名盤
  • 定番

ベジャール・ローザンヌ

2012年制作 (NTSC/リニアPCMステレオ/16:9LB)

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ベジャール版は男女のペアが生贄になります。そのため男女の差というテーマとは違ったものになっています。

ピナ・バウシュ、ウッパダール舞踊団

ピナ・バウシュもコンテンポラリーダンスの「春の祭典」の優れた振付を行いました。舞台上に土を盛り、ダンサーの体に負荷をかけて踊るというもの。生贄を選ぶところに焦点を当てていて、赤いスカーフを受け取ったものが生贄になります。赤いスカーフをめぐって、処女たちの駆け引きが繰り広げられます。

この映像ですが、残念ながら全編は発売されていないようです。YouTubeに一部だけ上がっていましたのでリンクを貼っておきます。

ライプツィヒ・バレエ

  • 名盤

おすすめ度:

ライプツィヒ・バレエ

Le Sacre Du Printemps [DVD]
レビュー数:25個

昔からあったDVDで、独自の振付のコンテンポラリーダンスです。

演奏のDVD、BlueRay

演奏のDVDもいくつかリリースされています。注目すべきは小澤=バイエルン放響盤で、この迫力ある映像は小澤氏のライヴの凄さが直接伝わって来ます。またマルケヴィッチ=日本フィル盤はマルケヴィッチの指揮ぶりを見られる貴重な映像です。

他にも演奏のDVDがありますのでいくつか挙げてみたいと思います。

小澤征爾=バイエルン放送交響楽団

小澤の白熱するタクト、爆演というに相応しい
  • 名盤
  • ライヴ
  • 爆演

超おすすめ:

指揮小澤征爾
演奏バイエルン放送交響楽団

1983年6月17日ミュンヘン,ヘルクレスザール (ステレオ/ライヴ)

小澤征爾とバイエルン放送交響楽団のライヴのDVDです。演奏の完璧さと「春の祭典」らしい凶暴さと迫力を併せ持った、理想的な演奏の一つだと思います。小澤征爾の場合、スタジオ収録だと大人しくなってしまう時がありますが、ライヴだとまるで別人のような激しい指揮ぶりです。オルフの『カルミナ・ブラーナ』などと並んで、小澤征爾全盛期の貴重な映像と言えますね。

バイエルン放送交響楽団は、ドイツの実力派のオーケストラです。コリン・ディヴィスクーベリックとの共演が多いですね。正直、指揮者がいなくてもそれなりの演奏をしてしまうくらい底力のあるオケです。でもここでは、小澤征爾の正確で明確なタクトにしっかりついていっています。『春の祭典』は多くの指揮者の映像がリリースされていますが、気迫に溢れているのに、これほど模範的で完璧な指揮ぶりは他にはないように思います。金管は時に荒い時がありますが、これも「春の祭典」にふさわしい迫力につながっています。とはいえ、小澤征爾は滅多に共演しないバイエルン放送響からダイナミックさを引き出しつつも、押さえる所はきちっと押さえてクオリティの高いアンサンブルを最後まで維持しています。

この辺りの時期が、『春の祭典』の演奏の分岐点で、その後は迫力を前面に押し出した演奏は少なくなりますね。

ラトル=ロンドン交響楽団

『春の祭典』演奏の最新映像!ダイナミックさと精緻さを兼ね備えた名演
  • 名盤
  • 定番
  • クオリティ
  • ダイナミック
  • 高画質

超おすすめ:

指揮サイモン・ラトル
演奏ロンドン交響楽団

2015年1月15日,バービカン・ホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

春の祭典を得意とし、何度も録音、録画でリリースしているサイモン・ラトルの最新映像です。ラトルの指揮ぶりは激しさとは一線を画したもので、バトンテクニックには本当に感心させられるものがあります。これは20代の頃、バーミンガム市オーケストラと来日した時から変わらない凄い才能です。演奏はロンドン交響楽団で、CDはアバドとの名演もありますが、重厚でダイナミックな演奏です。

まず画質の良さが印象的です。指揮者ばかりでなく、オーケストラの様々な個所に設置されているカメラで、さまざまな楽器が大きく映し出されています。バスフルートをしっかり見たのは初めてかも知れません。オーケストラホールはスタンダードですが、音響はかなり良いです。ラトルの指揮ぶりも若いころのバトンテクニックに、重厚さが加わって巨匠らしい指揮ぶりですね。「春の兆し」では迫力ある弦と、8本のホルンがアップになったりと、オーケストレーションの面白さが映像から伝わってきます。弦楽器の弓の動きなど、映像で無ければ観られない物です。変拍子でのラトルの指揮は手慣れたもので、もちろん暗譜で指揮しています。

何より出てくる音のクオリティの高さとダイナミックさのバランスが素晴らしいです。コントラバスがあれだけ気合を入れてピチカートを演奏しているは初めて見ました。ホルンがワーグナーチューバに持ち替えている所も映されています。ライヴであれだけギロ(打楽器)の6/8の4連符がばっちり決まっていますが、ライヴでこれだけクオリティの高い演奏はまだ少ない気がします。そんな感じで見るべき所をキチッと見せてくれる音楽に詳しい人のカメラワークです。後半はバストランペットの活躍ぶりが良く分かります。ホルンのベルアップも見られますが、演奏が荒くなることは全くなく、スタジオ録音を聴いているかのようです。でも最後は拍手が入っているのでライヴなんだな、と思い出します。

スコアを見ながら観るとまた面白いですね。音質もBlu-Rayでとても良いです。『春の祭典』を音楽として堪能したい方向けの貴重な映像と思います。

ガッティ=ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 (2017年)

最近の演奏では凄い迫力!高音質なのも素晴らしい
  • 名盤
  • 高音質
  • ダイナミック
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮ダニエレ・ガッティ
演奏ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

2017年1月11-12,19日,アムステルダム,コンセルトヘボウ(ライヴ)

ガッティとロイヤル・コンセルトヘボウの演奏2017年録音で、非常に音質が良いです。ライヴ録音とは思えません。

イタリア人のガッティの指揮は、とても迫力のあるものです。演奏は過去、何度も『春の祭典』の名盤を録音してきたアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団ですから、技術的には何もいうことはありません。でもイタリア人のガッティの下で強烈なリズムを刻み、迫力を取り戻した感じです。

ガッティのバーバリズムには、何か懐かしさすら感じます。パーカッションがここまで強打することは、最近は無くなったと思います。途中、気のせいかガッティの唸り声が聞こえる気がします。第1部最後の「大地の踊り」は物凄いテンポで演奏しています。

第2部も同様にリズミカルで迫力のある演奏が続きます。メリハリのついた演奏で、思い切りオケを鳴らしています。「いけにえの踊り」もドラムを強烈に鳴らしていて迫力があります。もちろん、ガッティも分かっていてアンサンブルのクオリティが下がるようなことはしません。こんな変拍子の多い曲でもアムステルダム・コンセルトヘボウなら、普通に振れば当たり前に演奏できるレヴェルですから。

久々に迫力のある演奏を聴いた気がします。

マルケヴィッチ=日本フィル

  • 名盤
  • 貴重

指揮イーゴリ・マルケヴィッチ
演奏日本フィルハーモニー

マルケヴィッチが日本フィルに客演した際の映像で、日本フィル伝説の映像です。マルケヴィッチとフィルハーモニア管弦楽団の演奏を聴いてファンになった方で、どんな指揮ぶりをしているのか見たい方にはお薦めです。演奏は時代を感じさせ、1960年代の日本のオケのレヴェルを感じさせますね。

M.T.トーマス=サンフランシスコ交響楽団

『春の祭典』を代表する名演を映像付きで!
  • 名盤
  • 定番
  • 精緻
  • ダイナミック
  • 高音質

おすすめ度:

指揮マイケル・ティルソン・トーマス
演奏サンフランシスコ交響楽団

バーンスタイン=ロンドン交響楽団

若きバーンスタインの熱狂的な名演
  • 名盤
  • ダイナミック

指揮レナード・バーンスタイン
演奏ロンドン交響楽団

1966年11月27日,ロンドン,クロイドン・フェアフィールド・ホールズ

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バーンスタインの『春の祭典』はいくつか映像が出ていますが、そのバトンテクニックの素晴らしさには魅了されます。いずれもダイナミックでスリリングな演奏ですが、ストラヴィンスキー自身も「驚くほどの熱狂的」という言葉を残しています。

ドキュメンタリー

ストラヴィンスキーの「春の祭典」にまつわる物語

  • 名盤
  • 貴重
  • リハーサル

出演ヴァレリー・ゲルギエフ
出演ピエール・ブーレーズ
上演ジョフリー・バレエ団

画面:4:3/REGIONAll

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ドキュメンタリーですが、実際にジョフリーバレエ団の上演が収録されており、ジョフリーバレエ団の上演をしっかり見たい人にも貴重です。

現代の指揮者の中でも、最も強いカリスマ性を有するワレリー・ゲルギエフ。彼が20世紀の最も重要なバレエ音楽の一つであるストラヴィンスキーの『春の祭典』を演奏するにあたってのリハーサル映像を中心に、様々なエピソードを盛り込んだ興味深いドキュメンタリーです。ディアギレフが率いるバレエ・リュスのために書かれたこの作品は強烈なリズムの炸裂と、激しい不協和音、そして全編から発せられるエロティシズムで知られていますが、そのあまりの大胆さに、当時の聴衆のほとんどは激しい拒絶を示したことでも有名です。

このドキュメンタリー映像では、初演と同じニジンスキーの振付けと装置、衣装を用いたジョフリー・バレエ団の舞台も見ることができます。『春の祭典』について自ら論文「ストラヴィンスキーは生きている」を書いたブーレーズの話や、ゲルギエフとも仲のよいピアニスト、トラーゼの話も一聴に値するものでしょう。また随所に挿入される作曲家自身の映像や、ストラヴィンスキーが語る1913年5月29日の初演時の大混乱の場面など、なかなか面白い素材も見ることができます。そして、もちろんゲルギエフの熱い語りと演奏がこの映像の主たるものです。『春の祭典』を愛する人全てに見ていただきたい1枚です。

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楽譜・スコア

ストラヴィンスキー『春の祭典』の楽譜・スコアを紹介します。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

昔から発売されている最も正式な『春の祭典』のスコアと言えます。1947年版の最もポピュラーなバージョンです。迷ったらコレですね。

Doverの大型スコアは、1965年にロシアで出版されたバージョンを使用しています。

It is reprinted here from the full-score Russian edition published in 1965.

『春の祭典』で意外に複雑な版問題なども含めて色々解説されている書籍です。

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