ショスタコーヴィチ 交響曲第7番『レニングラード』

ドミートリイ・ショスタコーヴィチ (Dmitri Shostakovich,1906-1975)作曲の交響曲第7番『レニングラード』 ハ長調 Op.60 (Symphony No.7 “Leningrad” C-Dur Op.60)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

この交響曲が人気になったのは、ひとえにシュワルツネッガーが出演した昔の影響ドリンクのコマーシャルで第1楽章の中間部が引用されたのがきっかけです。「ちちんぷいぷい!」と言って分かる人は相当歳でしょうかね、笑。

ゲルギエフ=キーロフ歌劇場&NHK交響楽団
有名なボレロ風のメロディ

解説

ショスタコーヴィチ交響曲第7番『レニングラード』 ハ長調 Op.60について解説します。

プロパガンダの交響曲

実はこの交響曲はソヴィエトによる第2次世界大戦の戦争プロパガンダの交響曲なのです。ショスタコーヴィチも当初はドイツやイタリアそして日本のファシズムやユダヤ人虐殺の行為を辞めさせるために、ソヴィエト当局と同じ意見でこの曲を書きました。例のダイナミックな「ちちんぷいぷい!」の部分は、この曲の中でも勇壮な音楽で、軍隊の出陣を鼓舞するものだったのです。そして、ラストの盛り上がりもダイナミックで、ソヴィエトのラジオで軍隊が出陣していくことを伝える放送のBGMとして使われていました。

レニングラード包囲戦の渦中にて

第2次世界大戦の中でも熾烈を極めたレニングラード包囲戦を描いています。まさに包囲されたレニングラードで作曲されたのです。ただし、作曲の開始は包囲される前の1941年8月です。完成は1941年12月17日です。

ショスタコーヴィチは1942年3月29日のプラウダ紙

私は自分の第7交響曲を我々のファシズムに対する戦いと我々の宿命的勝利、そして我が故郷レニングラードに捧げる

と寄稿しています。

今、レニングラードは存在しません。もともとペテルブルグと呼ばれていた都市でしたが、ソヴィエト建国の父であるレーニンを讃えて、レニングラードと名前を変えたからです。そしてソヴィエトが崩壊した時にサンクト・ペテルブルグという名前に戻りました。レニングラードフィルサンクト・ペテルブルグ・フィルも同じオケですが、ソヴィエト時代と民主化後で呼び方を変えています。

初演で世界的評価を勝ち取る

初演は1942年3月5日にサモスードの指揮によりボリショイ劇場で行われました。その後、7月7日にムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルノヴォシビルスクで初演を行っています。

そして、すぐに連合国各国で初演が行われています。イギリス、アメリカでは1942年7月19日にトスカニーニ指揮NBC交響楽団により行われ、全世界にラジオ中継されました。

曲の構成

ショスタコーヴィチ交響曲第7番『レニングラード』は、演奏時間が1時間15分前後かかります。ショスタコーヴィチの交響曲の中でも、全部を通しで聴くのが大変な曲かも知れません。一部を除き、第8番以降の曲の方が聴きやすいです。解説を読みながら聴くのがいいですね。

ショスタコーヴィチ 交響曲第7番『レニングラード』

■第1楽章:特殊なソナタ形式
第1主題は「人間の主題」で冒頭に弦セクションに現れます。第2主題は「平和な生活の主題」で、フルートやヴァイオリンソロに現れます。
提示部が終わると、「ボレロ風」な展開部になります。これは「戦争の主題」で要するに「チチンプイプイ!」の所です。ラヴェルのボレロに影響を受けた可能性はありますが、交響曲第5番『革命』でも似た部分があるので、それを拡大したものだと思います。この戦争の主題はヒトラーのお気に入りであったレハール『メリー・ウィドウ』が引用されているという説もあります。最初は小さく、楽観的に始まりますが、徐々にダイナミックになり、最後は暴力的とも言える凄い盛り上がりです。

■第2楽章:スケルツォ
モデラートと遅いテンポのスケルツォで、知らないと緩徐楽章に聴こえてしまい、面白くないです。意識的にスケルツォのつもりで聴かないといけないですね。

■第3楽章:アダージョ
ショスタコーヴィチとしては珍しい長調のアダージョです。しかし、明るい音楽という訳では無く、20分近い長い時間の中で色々な表情が出てきますが、「戦争の悲哀」を表現しているように聴こえます。よく「レクイエム」と言われます。冒頭、弦がシャープに入った後、しばらく静かな音楽が続きますが、真ん中あたりでテンポアップしてリズミカルになります。その後は静かな音楽をベースに大きく盛り上がる所も出てきますが、後半はまさに「レクイエム」です。

■第4楽章:フィナーレ
3部から構成されています。第1部は序奏に続きアレグロとなり、リズミカルな音楽となります。第2部はゆっくりした3拍子です。第3部第1楽章の「人間の主題」が戻ってきてダイナミックなフィナーレとなります。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ショスタコーヴィチ作曲交響曲第7番『レニングラード』名盤をレビューしていきましょう。

ネーメ・ヤルヴィ=スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

スリリングなスピード感と迫力、特にボレロ風な所は大迫力!
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 白熱
  • 迫力

超おすすめ:

指揮ネーメ・ヤルヴィ
演奏スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

1988年2月

Symphony 7 ” Leningrad “
在庫情報:残り1点 レビュー数:15個

ネーメ・ヤルヴィとスコティッシュ・ナショナル管の演奏です。長大な第7番ですが、この演奏はスピード感とスリリングな迫力を出しています。

第1楽章ボレロ風な所は、速めのテンポで気分爽快です。中に込められている皮肉もこの位のテンポの方が際立ちます。最初から十分に速いテンポですが、後半になると白熱してきて、どんどん加速していきます。スコットランドのオケがまるでロシアのオケのように咆哮します。まるでネーメ・ヤルヴィに何かが乗り移ったかのように爆演になり、凄いことになっていきます。スコティッシュ・ナショナル管も実力を超えた爆演を繰り広げ、こんなに凄い熱気の演奏は他の演奏では聴けません。

その後も軽快な音楽作りで、この曲の長大さ、冗長さを感じさせません。一般に名演とされているトスカニーニバーンスタイン、初演者のムラヴィンスキーもこんな迫力は出せていません。

緩徐楽章では、じっくり歌う所もありますが、この曲は正直言ってあまり名曲とは言えず、曲自体が冗長な部分のほうが長い気がします。第3楽章などはツボを突いた演奏で、なかなか味のある演奏を繰り広げています。そして最後の第4楽章は壮大なフィナーレのダイナミックさが素晴らしいです。

このCDはマイナーだし多分廃盤だろう、と思っていたのですが、大人気なようで、アマゾンにもタワーレコードにも在庫がありますね。やはり良い演奏は評価されるということですね。

アンチェル=チェコ・フィル

速めのテンポ設定、時代のリアリティの重みを感じる名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 重厚
  • 迫力

超おすすめ:

指揮カレル・アンチェル
演奏チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1957年9月2-20日,プラハ,芸術家の家ドヴォルザーク・ホール

アンチェル=チェコフィルのシリアスで重厚な名演の中でも、この演奏は超名演です!第7番は非常に重厚な演奏が合うようで、この演奏を聴いていて、演奏時間の長さで退屈することは恐らくないと思います。

第1楽章は冒頭から速めのテンポでネーメ・ヤルヴィ盤に似ています。ボレロ風の所も凄い迫力と切れ味です。どこを取ってもつまらない所はありません。強烈なリアリティがあるからだと思います。深みを感じる部分が多く、特に第3楽章は凄い響きです。録音が古いというハンデを軽々と乗り越えて、当時のリアルな戦争のイメージをダイレクトに伝えてきます。第4楽章は悲劇的に始まります。途中、かなりダイナミックに盛り上がります。この楽章も息つく暇もない位、凄い演奏です。

アンチェル『レニングラード』ロシア勢よりもリアリティを感じる凄い演奏です。

バーンスタイン=シカゴ交響楽団

1991年グラミー賞を受賞、定番の名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スケール感
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮レナード・バーンスタイン
演奏シカゴ交響楽団

1988年6月,シンフォニーホール,シカゴ(ライヴ)

バーンスタインとシカゴ響の演奏は、現在もっともメジャーで内容のあるしっかりした演奏であると同時にダイナミックです。「定番」と呼べるクオリティを持った名盤です。

スヴェトラーノフ=スウェーデン放送交響楽団

円熟したスヴェトラーノフの深みとスケール
  • 名盤
  • 円熟
  • 芳醇
  • スケール感
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏スウェーデン放送交響楽団

1993年9月,ストックホルム,ベルワルド・ホール(ステレオ/デジタル/ライヴ)

スヴェトラーノフは4種類の録音を残しています。その中でも最も感動的なのがこのスウェーデン放送交響楽団との1993年ライヴです。その演奏は伝説でしたが、とうとうCDとしてリリースされました。90年代のスヴェトラーノフはNHK交響楽団にもよく登場しましたが、円熟味が出て沢山の名演があります。ただ、ある時期からテンポが遅くなりすぎて、ピークはちょうどこのCDの90年代前半だったようです。

第1楽章は普通のテンポで演奏されています。pになってからのフルートソロは味わい深いです。スウェーデン放送交響楽団の透明感のある響きは、スヴェトラーノフの演奏にこれまで無かった大事なものを付け足しました。「ボレロ風」の所はテンポが遅いです。遅いテンポのままスケール大きく盛り上がります。金管も相当頑張っています。

第3楽章悲哀に満ちていて深みがあります。円熟したスヴェトラーノフの演奏だからか、時間を忘れて浸ることが出来ます。スウェーデン放送交響楽団はそこまでのパワーはありませんが、弦の響きのスケールは大きく、演奏のクオリティも高いです。そして非常に透明感があります。後半になると教会にいるかのようです。天国的で長調である意味も分かります。第4楽章も遅めのテンポで時間をたっぷりかけて演奏されます。といってもそこまで極端に遅い訳では無いですけど。リズミカルな所はそれなりのテンポです。そしてダイナミックです。ラストは遅いテンポのまま盛り上がり、非常にスケールの大きな演奏です。

遅いテンポの演奏ですが、円熟したスヴェトラーノフの深みとスウェーデン放送交響楽団の透明感ある天国的な音色のおかげで、全く飽きずに全曲聴き通せます。

ゲルギエフ=マリインスキー劇場管

小気味良さと白熱したスケールのバランスで充実感がある
  • 名盤
  • 定番
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ワレリー・ゲルギエフ
演奏マリインスキー劇場管弦楽団

2012年6月6-14日,サンクト・ペテルブルク,マリインスキー・コンサート・ホール(ステレオ/デジタル)

icon アマゾンミュージックUnlimitedとは?

ゲルギエフはショスタコーヴィチの7番を得意としており、色々な所でコンサートの演目に取り上げています。上に貼ったYouTubeはキーロフ歌劇場管(現マリインスキー劇場管弦楽団)NHK交響楽団との合同演奏でスケールの大きな演奏です。テンポは速めで、リズミカルな演奏です。ラストの盛り上がりも凄いです。キーロフ劇場管ロッテルダムフィルの合同演奏もあります。このCDは2012年と比較的新しい録音で音質も非常に良いです。何より、前回2001年の録音よりもゲルギエフの解釈が格段に完成度が増しています

ゲルギエフは第2次世界大戦に関してムラヴィンスキーコンドラシンのようなリアリティを求めるのは無理があります。しかし少し客観的に解釈したからこそ見えてくるものがあるようです。ボレロ風の所はかなりスピーディに演奏していますが、そこには全く迷いが感じられず、どんどんアッチェランドして白熱していきます。凄く思い切りの良い演奏です。その後も、弦を中心にかなり味わいのあるサウンドと少し粘りのある音楽づくりで、これまで第7番で冗長に聴こえた部分にも味わいや深みがあります。第3楽章も味わい深い響きを楽しめます。

第4楽章の白熱ぶりも何か吹っ切れたような感じで、ゲルギエフは見た目の割にはクールな所があったのですが、この演奏は白熱しきっています。フィナーレも上手く盛り上げ、胸のすく演奏で、最後はダイナミックに終わります。充実感がありますし、ショスタコーヴィチの7番はこんなに楽しめる音楽だったのか、と新しい発見があります。

全体的に、ネーメ・ヤルヴィ盤を思い出す所がありますが、さらにスケールの大きさを持った演奏で、弦楽器の味わいやオケのレヴェルの高さなどを考えると、ネーメ・ヤルヴィ盤を超えていると思います。ただ、全体的に見るとテンポ設定が大分違うので、単純比較は出来ませんけれど。

コンドラシン=モスクワ・フィル

ストレートに本質を突いた名演
  • 名盤
  • 定番
  • リアリティ
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮キリル・コンドラシン
演奏モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

コンドラシンとモスクワフィルもリアリティのある充実した名演奏です。第7番に関しては、アンチェル盤の圧倒的なリアリティには敵いませんが。

テンポは基本遅めですが、ボレロ風な所は速めでダイナミックで満足できるものだと思います。音質は良いと思います。きちんとしたセッション録音でノイズは少なく、各楽器の音がしっかりとれています。第4楽章もダイナミックで切迫感がダイレクトに伝わってきます。オケも上手いです。

演奏は素晴らしいですが、入手が困難ですね。本来コンドラシン盤は全集が安定した名演なので、入手できれば全集がいいと思います。

ムラヴィンスキー=レニングラード・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • リアリティ
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮エフゲニー・ムラヴィンスキー
演奏レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1953年

アマゾンミュージックUnlimitedとは?

ショスタコーヴィチと関係が深かったムラヴィンスキーの名盤を外すわけには行きません。第7番は他の番号に比べると少し落ちるかも知れません。それでもリアリティという意味では、本物なので聴くべき演奏ですね。

全体的にテンポは遅めでボレロ風な所もそこまでは速くありません。録音の悪いモノラル録音です。他の番号よりも音質が悪い気がします。しかし、レニングラード・フィル味わい深い弦セクションの響きはきちんと捉えています。スケールの大きな演奏ですが、テンポが遅めで少し飽きやすいかも知れません。

ムラヴィンスキーは全集はないので、選集で一気に入手できれば非常に良いのですが。この選集は録音時期が混在していますが全曲名演です。さらなる名演、5番、8番などはありますが、それらは入手しやすいと思います。

トスカニーニ=NBC交響楽団 (アメリカ初演ライヴ)

  • 歴史的名盤
  • スリリング
  • 白熱
  • 迫力
  • モノラル

おすすめ度:

指揮アルトゥーロ・トスカニーニ
演奏NBC交響楽団

1942年7月19日(アメリカ初演ライヴ)

[タワレコ]Shostakovich: Symphony No.7
在庫情報:在庫わずか

トスカニーニはアメリカ初演を行った指揮者です。しかし、その演奏については偽書かもしれないショスタコーヴィチの証言で作曲者から酷評されています。アメリカなのでショスタコーヴィチ本人に聴くわけにいかないですしね。トスカニーニは1940年代第2次世界大戦中の録音はどれを聴いても物凄いリアリティです。

第1楽章はテンポは遅めです。しかし凄みのある演奏です。「ボレロ風」な所は、スネヤやパーカッションの打ち込みを徐々に重く、強くして行って、凄い気迫を感じます。確かにここは軍隊の行進なので、少し方向が違うかも知れません。でもこれだけ力強い演奏は他にはありません。凄い時代のリアリティです。

第3楽章も名演で聴き物です。最初から力強く、弦は刃物のようにシャープです。この楽章は「怒り」というより、「悲哀」が中心のはずなので、少し違うのかも知れませんが、確かにこういう要素も持っていると思います。途中、感情的な盛り上がりも悲哀に満ちています。テンポが速くなり、ここでも思い切り感情をぶつけてきます。第4楽章も凄い迫力です。ストレートな迫力はトスカニーニらしいですが、爆演といってもいいですね。ラストは圧巻です。

トスカニーニの解釈が正しいかどうかは分かりませんけど、強烈なリアリティのある名盤であることは間違いないと思います。

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楽譜・スコア

ショスタコーヴィチ作曲の交響曲第7番『レニングラード』 ハ長調 Op.60の楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュア・スコア

解説寺原 伸夫

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