ブラームス ヴァイオリン協奏曲 名盤レビュー

ヨハネス・ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897)作曲のヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77 (violin concerto d-dur Op.77)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。

ドイツ舞曲風の第3楽章が特に有名でしょうか。大曲ですが、全体的にドイツらしい音楽で人気の高いヴァイオリン協奏曲です。

お薦めコンサート

🎵山田和樹(指揮)バーミンガム市交響楽団

2023/6/30(金) サントリーホール

ブラームス(ヴァイオリン協奏曲ニ長調)/ラフマニノフ(交響曲第2番ホ短調)[独奏・独唱]樫本大進(vl)

■2023/6/25(日) 14:00 開演 ( 13:15 開場 ) 会場:横浜みなとみらいホール 大ホール (神奈川県)

ブラームス(ヴァイオリン協奏曲二長調)/他[独奏・独唱]樫本大進(vl)

解説

ブラームスヴァイオリン協奏曲について解説します。

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ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、ロマン派の壮大なヴァイオリン協奏曲の中でも特にスケールの大きさを感じさせる名曲です。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を手本としつつ、ブラームスらしく深く考え抜かれた重厚なヴァイオリン協奏曲となっています。

ロマン派の王道といえる風格があり、全体を貫くスケールの大きさと構築的な楽曲構成で、ドイツロマン派を代表するヴァイオリン協奏曲と言えます。

第3楽章の有名なメロディ

3大ヴァイオリン協奏曲の一つ

ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェンメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲と共に、3大ヴァイオリン協奏曲と言われています。

作曲の経緯

1878年に作曲され、この時ブラームスは45歳でした。交響曲第2番の後ですが、スケールの大きい交響曲第1番を思わせる凝った音楽です。ヴァイオリン協奏曲も、自らがベートーヴェンの後継者であることを意識して、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をさらに発展させた力作となっています。

当初は協奏曲の慣例に従わず、4楽章構成で作曲していました。しかし、ヴァイオリニストのヨアヒムに説得され、ブラームスは中間の2楽章を書き直し、一つの緩徐楽章を作曲しました。

初演1879年1月1日にライプツィヒ・ゲヴァントハウスにて、ヨーゼフ・ヨアヒムの独奏、ブラームス自身の指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団により行われました。初演は大成功で絶賛され、各地で繰り返し演奏されるようになります。

楽曲構成

演奏時間は約40分で、一般的なヴァイオリン協奏曲の中では長めです。3楽章構成ですので、第1楽章は約22分と長大です。交響曲と同じ位の長さですね。編成は大きめですが、そこまで大きくは無く、トロンボーンが入っていません。2管編成をベースとしていますが、ホルンは4本です。

編成

独奏ヴァイオリン
フルート×2、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2
ホルン×4、トランペット×2
ティンパニ
弦楽五部

おすすめの名盤レビュー

それでは、ブラームス作曲ヴァイオリン協奏曲名盤をレビューしていきましょう。

Vn:クレーメル、バーンスタイン=ウィーン・フィル

情熱的でクオリティの高いヴァイオリン、伴奏は円熟した奥深さ
  • 名盤
  • 定番
  • シャープ
  • 情熱的
  • ダイナミック
  • スケール感
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリン独奏ギドン・クレーメル
指揮レナード・バーンスタイン
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1982年9月,ウィーン (ステレオ/デジタル/ライヴ)

クレーメルのヴァイオリン独奏、バックはバーンスタインとウィーン・フィルの演奏です。ライヴですが、クレーメルの技巧は非常に安定しています。録音もしっかりしていて、ヴァイオリンとオケのバランスもとても良いです。バックのバーンスタインは円熟してスケールが大きいですが、自然体で奥深さも感じられます。ウィーンフィルの音色もブラームスに良く合っています。

Vn:パールマン、ジュリーニ=シカゴ交響楽団

スケールの大きな伴奏、
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • スケール感

超おすすめ:

ヴァイオリン独奏イツァーク・パールマン
指揮カルロ・マリア・ジュリーニ
演奏シカゴ交響楽団

1976年,シカゴ,メディナ・テンプル (ステレオ/デジタル/セッション)

パールマンの力強く安定したヴァイオリン独奏とジュリーニの指揮、最盛期のシカゴ交響楽団の伴奏による定番の名盤です。録音はしっかりした音質です。

第1楽章の冒頭は非常にドイツ的で重厚な伴奏から始まります。シカゴ響の弦が良く鳴っていて、スケールが大きな演奏で、またジュリーニの彫りの深い表現にも魅了されます。パールマンは非常に力強く安定したヴァイオリンを聴かせてくれます。伴奏のスケールの大きさに負けることなく、パールマンのヴァイオリンもスケールが大きいです。おだやかな主題は艶やかな美音で、味わい深いです。情熱的な主題の力強さも印象的です。

第2楽章は艶やかで伸びやかな音色でロマンティックに演奏しています。第3楽章はダイナミックにリズムを刻み、パールマンも伸びやかにスケールの大きな演奏を繰り広げています。

ドイツ的な重厚さもあり、ヴァイオリン独奏の力強さとスケールの大きさのある名盤です。

Vn:バティアシュヴィリ、ティーレマン=シュターツカペレ・ドレスデン

  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • スケール感
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリン独奏リサ・バティアシュヴィリ
指揮クリスティアン・ティーレマン
演奏シュターツカペレ・ドレスデン

2012年6月,ドレスデン (ステレオ/デジタル/セッション)

リサ・バティアシュヴィリのヴァイオリン独奏にティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンの伴奏です。新しい録音で音質はとても良いです。

第1楽章ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンドイツ系の重厚な演奏です。テンポは速めで鋭さがあります。リサ・バティアシュヴィリのヴァイオリン独奏は割とストレートで鋭さがあり、そこがバティアシュヴィリの良さですね。一方、第2主題は遅めのテンポでゆったり弾いています。バティアシュヴィリ鋭さのある情熱的なヴァイオリンですが、ドイツ的で重厚な伴奏と上手くマッチしていて味わい深いです。

第2楽章は自然美に満ちた演奏で、ヴァイオリンもしなやかで力強く歌いこんでいます。第3楽章は速めのテンポで伴奏はドイツ的な響きが良いです。ヴァイオリンも力強く情熱的で様々な表情を見せてくれます。

リサ・バティアシュヴィリ情熱的な表現とドイツ流の重厚さのある伴奏でバランスが良く、楽しんで聴ける名盤です。

Vn:ヤンセン、パッパーノ=ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院管

力強い美音のヴァイオリンと熱いパッパーノの伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • スリリング
  • 高音質

おすすめ度:

ヴァイオリン独奏ジャニーヌ・ヤンセン
指揮アントニオ・パッパーノ
演奏ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団

2015年2月,ローマ,サンタ・チェチーリア (ステレオ/デジタル/セッション)

ジャニーヌ・ヤンセンのヴァイオリン独奏にパッパーノとローマ・サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団の伴奏です。ヤンセンの情熱的で美しい音色のヴァイオリンとパッパーノの情熱的な伴奏が上手く合っている演奏です。録音は新しく音質はとても良いです。

第1楽章パッパーノサンタ・チェチーリア音楽院管熱気あふれる情熱的な演奏で始まります。ドイツ的な重厚感はありませんが、熱気あふれる弦の音色がこのコンビらしいです。ヤンセンのヴァイオリン独奏も情熱的でシャープさがあり、同時に音色が常に美しく艶やかさがあります。ドイツ系の演奏家とはまた違った歌心に満ちた名演です。第2楽章は穏やかで自然美に満ちた雰囲気で、味わい深く聴けます。ヤンセンはシャープさがあり、繊細な表現ですね。伴奏はイタリア的な明るさを感じます。

第3楽章テンポが速めでリズミカルです。ヤンセンは力強く弾いていき、伴奏は軽快でリズミカルです。

ドイツ的なスケールを求めると物足りないかも知れませんが、それとは違った軽妙さや明るさがあり、イタリア的で歌心に満ちた情熱的な名盤です。

Vn:ムター、カラヤン=ベルリン・フィル

油絵のような力強さ、伴奏はドイツ的でダイナミック
  • 名盤
  • 定番
  • 力強さ
  • ダイナミック
  • スケール感
  • 高音質

おすすめ度:

ヴァイオリン独奏アンネ=ゾフィー・ムター
指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1981年 (ステレオ/デジタル/セッション)

ムターのヴァイオリン独奏とカラヤン、ベルリン・フィルがバックを務めた名盤です。ブラームスのヴァイオリン協奏曲の王道の演奏です。油絵のようなムターのヴァイオリン独奏と重厚でスケールの大きなベルリン・フィルの伴奏で、低弦から合わせていくアンサンブルのやり方もドイツロマン派的です。音質は非常によく、スケールの大きな音楽がしっかり録音されています。

第1楽章は、ベルリン・フィルの風格があるスケールの大きな演奏から始まります。カラヤンらしく、昔ながらのドイツ流のアンサンブルで、低弦からしっかり積み重ねた響きで、シャープでダイナミックに盛り上がります。ムターのヴァイオリンもオケのスケールに全く負けず、油絵のような濃厚なレガートで力強く弾いていきます。精神的な力強さを感じますが、ムターのヴァイオリンには艶やかなレガートがあり、女性的な表現も多く見られます。バックの演奏はティンパニを思い切り鳴らしたりダイナミックですが、ドイツ風で懐が深く、その中でムターは力強くも自由に表現しています。

第2楽章は落ち着きがありますが、ブリリアントなムターらしい表現で、力強く艶やかな音色が印象的です。感情表現が非常に力強いです、第3楽章ではドイツ風の民族的なリズムが感じられます。ムターのヴァイオリンも力強さとリズミカルさを持ち合わせていて、有名なメロディを堪能することが出来ます。

ムターの良い所が前面に出た名演と思います。カラヤン、ベルリンフィルの伴奏の完成度も高く、とても聴きごたえのある名盤です。

Vn:シェリング、モントゥー=ロンドン交響楽団

シェリングの表情豊かな演奏とモントゥーの懐の深い伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 表情豊か
  • 自然美
  • ダイナミック
  • スケール感
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリン独奏
指揮ピエール・モントゥー
演奏ロンドン交響楽団

1958年,ロンドン,キングズウェイ・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

シェリングブラームスのヴァイオリン協奏曲を得意としており、何度も録音しています。このモントゥー、ロンドン交響楽団との録音は名高い名盤で昔から愛聴されてきたものです。シェリングの表情豊かなヴァイオリン、モントゥーの力みが無く自然な音楽づくりが良く、自然に耳に馴染んできます。音質はステレオ初期のものですが、最近のリマスタリング技術の向上もあって、今でも十分現役と言える音質です。

第1楽章モントゥーの懐の深いスケールのある音楽で始まります。あくまで自然さのあるダイナミックさで、モントゥーはベートーヴェンでも名演を数多く残していますが、それに近い雰囲気です。モントゥーの懐の深い手綱さばきで、シェリングのヴァイオリン独奏の表現が活きています。シェリングはバッハの無伴奏ヴァイオリンの名盤で知られていますが、ブラームスはバッハを良く研究し、このヴァイオリン協奏曲にも活かされています。シェリングはしなやかで優美な響きで、表情豊かに演奏していきます。モントゥーとロンドン響はスケールが大きくダイナミックさもありますがヴァイオリンを邪魔することなく、シェリングの良さを活かしています。カデンツァの軽妙な超絶技巧は素晴らしいです。

第2楽章はさらに自然美が加わり、森の中で森林浴を楽しんでいるかのような瑞々しさです。ルバートなどの表現も適度で、とてもすっきりしています。第3楽章は中庸なテンポで、とてもリズミカルで表情豊かです。有名なメロディを心行くまで楽しませてくれます。モントゥーの伴奏はシャープさがあって、好サポートです。

ブラームスのヴァイオリン協奏曲の本質を突き、自然美と楽しさに溢れた名盤です。

Vn:ヌヴー、イッセルシュテット=北ドイツ放送交響楽団

天才ヴァイオリニスト・ヌヴー最晩年の録音
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • スケール感
  • 高音質

おすすめ度:

ヴァイオリン独奏ジネット・ヌヴー
指揮シュミット=イッセルシュテット
演奏北ドイツ放送交響楽団

1948年5月3日 (モノラル/アナログ/ライヴ)

ジネット・ヌヴーの歴史的名盤です。伴奏はイッセルシュテットと北ドイツ放送交響楽団と正統派のドイツの組み合わせです。ドイツの敗戦直後のモノラル録音で、音質は良いとは言えませんが、天才ジネット・ヌヴーは夭逝してしまったため、非常に貴重な録音となりました。これぞ歴史的名盤という超名演で、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴くなら是非入れておきたいディスクです。

第1楽章はオケの伴奏は少し録音が不安定ですが、意外に速めのテンポで重厚に演奏されています。ヌヴーのヴァイオリンはしっかり録音されています艶やかで情熱的でまさにブラームスという雰囲気の演奏です。伴奏もドイツ的な格調高い演奏を繰り広げています。冒頭を除き録音は安定していて、慣れるとじっくり浸れる名演です。凄い集中力で、曲が進むにつれ情熱的に盛り上がり、白熱して行きます。

第2楽章はとてもストレートで集中度が高く、情熱的で訴えかけるものが多い名演です。シャープでとても美しい音色ですが、リマスタリングの成果でしょうか。この楽章でここまで密度の濃い演奏は初めて聴きました。とても瑞々しく感動的です。第3楽章はリズミカルでシャープな演奏で、段々盛り上がり力強く曲を締めます。

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楽譜・スコア

ブラームス作曲のヴァイオリン協奏曲の楽譜・スコアを挙げていきます。

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