
ヨハネス・ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897)作曲の『悲劇的序曲』 Op.81 (Tragic Overture Op.81)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。
解説
ブラームスの『悲劇的序曲』について解説します。
おすすめの名盤レビュー
それでは、ブラームス作曲『悲劇的序曲』の名盤をレビューしていきましょう。
ケンペ=ベルリン・フィル
ケンペはベルリン・フィルの高い演奏能力を得て、シャープでダイナミックかつロマンティックな名演奏を繰り広げています。激しくテンポの変化の大きな演奏ですが、ベルリン・フィルのアンサンブルが乱れることはありません。1959年の録音ですが、あまりにも圧倒的な演奏なので、音質は気にならず、必要十分です。
冒頭の2つの音は非常にシャープで切れ味が鋭く、凄みがリアルに伝わってきます。リマスタリングも良い効果を発揮しているようで、リアルさがあります。ロマンティックな主題も強い感情が入っていて、白熱して行きます。白熱したシャープな演奏は多いですが、ここまで白熱した『悲劇的序曲』は他には知りません。弦の鋭い音は、冒頭のみならず全て硬質な切れ味鋭さで、こんな音を出せるのはベルリン・フィル以外には無いと思います。奥深さはまだ若いケンペと円熟したバーンスタインほどではありません。後半、盛り上がってくると圧倒的に白熱して、そのまま終わります。
白熱した情熱的な『悲劇的序曲』を聴きたいなら、外せない演奏です。ただCDはブラームスの交響曲全集しかないです。これも凄いパッションの演奏で、全集で聴くのもいいかも知れません。アマゾンミュージックであれば、1曲からでも聴けます。
ワルター=コロンビア交響楽団
晩年のワルターですが、この『悲劇的序曲』は年齢を感じさせないシャープな名演です。他の曲では穏やかさが目立つワルターとコロンビア交響楽団ですが、この『悲劇的序曲』は全然違う演奏です。
冒頭は切れ味鋭い弦で始まり、ワルターとは思えない凄い迫力です。白熱という意味ではケンペ盤には及ばないですが、基本的に円熟したワルターの指揮なので、静かな所も味わい深く聴かせてくれます。後半の静かな所は穏やかさのある演奏です。そこから情熱的に盛り上がり、ダイナミックに終わります。
他のこのコンビの演奏に比べても、この『悲劇的序曲』は思い切り感情を出し切っているので、充実感を感じます。
アンチェル=チェコ・フィル
アンチェルはチェコ・フィルの指揮者の中では理知的な面が目立つ指揮者ですが、ショスタコーヴィチなどではかなりシリアスな表現もしていますし、理知的な音楽づくりの中に感情を入れてくる指揮者でもあります。そんなアンチェルに『悲劇的序曲』はうってつけです。ただ感情をぶつけるような演奏では無く、静かな部分でも感情を入れて、この奥深さは他の演奏にはなかなか無いものです。
冒頭はダイナミックで強い感情が入っていますが、その重い2つの音には度肝を抜かれます。続く部分も熱気のある演奏です。それで居ながら理知的な部分はあり、白熱する方向では無く、曲の奥深くに入っていきます。本来の『悲劇的序曲』は、ここまでシリアスなものではなく、ロマンティックな曲なのかも知れません。しかし、アンチェルは奥深くにある悲劇的でシリアスな部分に遠慮なく入っていきます。チェコ・フィルの芳醇な響きがさらに味わいを加えています。中盤の行進曲風の所など、とても味わい深いです。後半のテンポが遅くなる所の表現は本当に深いです。そこから重みを伴ったダイナミックな音楽になっていきます。ブラームスの和声進行が神々しく聴こえます。
カップリングのピアノ協奏曲は名演で、ここまで悲劇的な感情が入ったブラームスは滅多に聴けません。もう一種類、ドッペルコンチェルトが入ったCDもありますが、こちらも隠れ名盤のようですね。
バーンスタイン=ウィーン・フィル
バーンスタインとウィーンフィルのライヴです。1980年代なのでバーンスタインの円熟を感じますが、テンポはかなり遅い部分が多いです。ブラームスの序曲集のDVDもあります。
冒頭はムジークフェラインの音響やライヴ録音のせいもあってか、あまり鋭くは聴こえません。全体的に遅いテンポですがロマンティックに盛り上がっていきます。感情的は入れていますが白熱してくることはなく、スケールが大きな演奏です。ドラマティックな表現も随所に見られます。白熱したシャープな名盤が多い中にあって、異色な演奏かも知れません。ただ、頭を切り替えて、じっくり聴くようにすると、味わい深さがかなりあることが分かると思います。直截的な鋭い感情表現は少なく、深刻さやシリアスさはあまり感じられないですが、奥深さのようなものを感じます。バーンスタインが円熟して辿り着いた境地と言えるかも知れません。
アバド=ベルリン・フィル
アバドとベルリンフィルの演奏です。アバドが丁度ベルリンフィルの音楽監督になった頃の演奏で、ベルリン・フィルは、まだカラヤン時代のドイツ的なサウンドとアンサンブルの精度の高さを残しています。その後、レヴェルダウンしたとは思いませんけど、ブラームスに関して言えばカラヤン時代のベルリン・フィルの方が良かったと思います。
冒頭は小気味良く始まります。テンポは少し速めで、リズムがしっかりしたアバドらしい演奏です。アバドのスコアの読みの深さが感じられ、ベルリン・フィルのアンサンブルも完璧です。細かい所まで緻密で丁寧に演奏しています。その上で必要十分な感情を入れていますが、密度が高いので十分満足できる演奏です。歌う所はカンタービレで艶やかです。表現のヴォキャブラリーも豊かで、色々な所で様々な表現を聴くことができます。後半の静かな所も少しグロテスクさを感じる位です。そしてロマンティックな主題が出てくるので上手い対比を感じますね。そして感情を入れて盛り上がっていきます。
全体的に密度が濃く、どの部分を取っても充実しています。聴き終わった後、とても満足感が高い演奏です。
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バーンスタイン=ウィーン・フィル
楽譜・スコア
ブラームス作曲の『悲劇的序曲』の楽譜・スコアを挙げていきます。
電子スコア
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