3楽章の交響曲 (ストラヴィンスキー)

イーゴリ・ストラヴィンスキー (Igor Stravinsky,1882-1971)作曲の3楽章の交響曲 (Symphony three movements)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

解説

ストラヴィンスキー3楽章の交響曲について解説します。

ストラヴィンスキー、アメリカへ

イーゴリ・ストラヴィンスキーは1945年にアメリカの市民権を得ました。「3楽章の交響曲」は、1942年~1945年に作曲されています。ちょうど第2次世界大戦中です。アメリカは第2次世界大戦の被害が無かったため、多くの音楽家がアメリカに渡って、活動しています。

第2次世界大戦中に作曲

ヨーロッパは第2次世界大戦でも大きな被害を受けました。ナチスドイツによりフランスは占領され、ユダヤ人が迫害されたことは有名です。この第2次世界大戦では、戦争初期、戦争中、戦争後などに多くの作品が作曲されました。

オネゲルの交響曲第3番、第5番、ショスタコーヴィチ交響曲第7番、第8番、プロコフィエフの交響曲第5番、第6番などが有名でしょうか?また、メシアンが捕虜収容所で「世の終わりのための四重奏曲」を書いています。オネゲルの交響曲第5番は戦後に作曲されたのですが、非常に悲観的でヒステリックな音楽になっています。

第2次世界大戦は、戦場となったヨーロッパの作曲家に大きなインパクトを与えました。もちろん日本も空襲や原爆で大変なことになったのですが。

それらと同じものが「3楽章の交響曲」にもあります。まるで映画でも見ているように次々に起こる悲惨で信じられないできごと、ファシズムで戦争に突入したヨーロッパは、民衆も何か見えない力に動かされるように戦争を支持します。

どうも、この演奏は自作自演のようなのですが、ブレーズ、ラトルなどに比べても非常に速いテンポで何かに急かされるようです。

新古典主義最後の作品

ストラヴィンスキーは、バレエ「春の祭典」以降、新古典主義の作風に変化しました。最初はバレエ「プルチネルラ」のような、いかにも古典主義の親しみやすい音楽を作曲しています。

しかし、交響曲ハ調や詩篇交響曲などの名作は、親しみやすさは後退し、一見古典主義的ですが、中身は暴力的だったりして、言ってみれば「羊の皮をかぶった狼」のような作品に変化していきました。

それは、ストラヴィンスキーが良いと思うかどうかとは別に、時代が急激に変わっていったことが背景にあります。急激な工業化、高度な兵器を用いた戦争の過激化、作曲家としてはそれらを表現せずにはいられないでしょう。

「3楽章の交響曲」も一応、新古典主義の作品なのですが、クラスターのような和音から始まる激しい音楽になっています。必要に駆られて、次の12音主義を取り入れる時代に入っていくのでした。

おすすめの名盤レビュー

決してメジャーな曲ではないと思うのですが、沢山の演奏家がディスクを出しています。それだけ完成度の高い名曲なのだと思います。それに戦争交響曲でありながら、必ずしも悲劇をそのまま表現しているわけではないところが、この曲の良い所です。聴いていて、めまいがする人もいるかも知れませんが、結構楽しめるところも多いです。

また自作自演もありますね。ストラヴィンスキーは指揮者として色々なオケに招かれていますが、実はあまりバトンテクニックは上手くありません。そのため、演奏の出来・不出来はオーケストラ次第です。ただ、テンポ取りなどはリハーサルで口頭で指示しているので参考になるでしょうね。

デュトワ=スイスロマンド管弦楽団

Symphonies Osr / Osm / Dutoit
  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

Symphonies Osr / Osm / Dutoit
レビュー数:1個の評価

Symphony in C / Symphony in 3 Movements
レビュー数:2個の評価
中古品:¥1,496 より

デュトワは何故かモントリオール交響楽団ではなく、スイスロマンド管弦楽団と交響曲を録音しています。ただ、1982年録音のようです。テンポはストラヴィンスキーの自作自演と同じですね。

この段階でこれだけのハイレヴェルの演奏があったのですね。でも機能的なモントリオール交響楽団と録音したほうが良かったような気もします。力強い演奏ですが、同時に非常に色彩的です。

ただ、ヤルヴィ盤などから感じられるような新古典主義的というかギリシャ的な香りは弱いように思います。非常に真摯に楽譜に向き合っています。結果としてはストラヴィンスキーの自作自演に近いような気がして、あれも悪い演奏ではないので、デュトワならではの何かが欲しい気もします。自作自演とほぼ同じテンポであるため、他の演奏に比べてテンポが速めで、シャープな演奏になっています。

ラトル=ベルリン・フィルハーモニー

ストラヴィンスキー:交響曲集
  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

ストラヴィンスキー:交響曲集
レビュー数:4個の評価

サイモン・ラトルはベルリンフィルという強力な武器を使って、この新古典主義の交響曲を非常に分かりやすく明快に聴かせてくれます。もちろん、ただ分かりやすいだけに終わることはなく、聴きどころはしっかり盛り上げています。新古典主義といいつつ、複雑な和声やリズムを持つ、これらの交響曲をカオスにならずに明晰に聴かせてくれるのです。ベルリンフィルの機能性がこの演奏を支えていることはいうまでもなく、他のオケだったら、こんなにスケールの大きな演奏にはならないでしょうね。

始めてストラヴィンスキーの新古典主義の交響曲を聴くにも良いですし、ストラヴィンスキーの交響曲集の定番として十分なクオリティがわると思います。

ラトル=ベルリンフィルの組み合わせはDVDもあって、こちらも非常に楽しめます。ラトルの明晰な指揮ぶりが見ものです。

ネーメ・ヤルヴィ=スイス・ロマンド管弦楽団

Essential Stravinsky
  • 個性的名演

おすすめ度:

Essential Stravinsky
レビュー数:2個の評価

Stravinsky:Symphonies/Ballets

中古品:¥3,060 より

Stravinsky;Le Chant De Ross

中古品:¥1,150 より

ネーメ・ヤルヴィは、感情表現を大事にしていると思います。少し、響きの豊富な会場で、演奏していることもあって、響きは若干にごり気味ですが、そこがまた良いのです。

ストラヴィンスキーのギリシャ神話を思わせる新古典主義の音楽が十二分に再現されています。「3楽章の交響曲」も良いですし、何より「詩篇交響曲」も素晴らしいです。テンポは速めで、それも響きが混ざる原因ではあるのですが、おそらくある程度それは計算されたものなんじゃないか?と思います。それによってギリシャ神話を思わせるような響きが再現されているからです。

ネーメ・ヤルヴィはバトンテクニックが優れた指揮者ではないので、感情的に熱してくるとテンポが速くなる傾向にありますね。でも、聴いているほうも自然に巻き込まれて、早めのテンポでリズミカルに演奏してほしいと思ってしまいます。結果として、大雑把になっている個所もあるのですが、要所をしっかり突いていて、楽しめる演奏であることは確かです。

「私はブレーズが好みなんです」という人には、ちょっと荒っぽさを感じる演奏かも知れませんけれど。

ブレーズ=ベルリン・フィルハーモニー

ストラヴィンスキー:詩篇交響曲、管楽器のための交響曲、3楽章の交響曲

おすすめ度:

指揮:ブラウンズ(ジーグルト)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ブレーズは現代作曲家として高い評価を得ていることもあって、世評は高いですね。でも、ベルリンフィルという高機能な武器を使っても、テンポは遅めで、大人しい演奏なのは変わらないようです。

その機能性を活かして、精緻な演奏をしていることは確かです。他のただ他の演奏も十分レヴェルが高いので、感情表現があまりに少ないのが残念なのです。新古典主義のストラヴィンスキーをこのディスクで始めて聴くのなら、時代背景もあって感情的要素は大事だと思うだけに、そこが抜けていると面白みや時代背景から来る痛みみたいなものが感じられないので、つまらない交響曲だと思ってしまうかも知れませんね。

パーヴォ・ヤルヴィ=NHK交響楽団

パーヴォ・ヤルヴィはNHK交響楽団を使って、RCAにどんどん録音しています。パーヴォ・ヤルヴィは本気かも知れませんね。これまでは、他のオーケストラでCD化したものを再録音する場合が多かったのですが、パーヴォ・ヤルヴィはそうではなく、本格的に録音を始めたようです。それにしても、ベートーヴェンから20世紀の音楽まで何を演奏してもレヴェルが高い指揮者ですね。

3楽章の交響曲はテンポが速めで管理人の好みですね。NHK交響楽団も非常に素晴らしい演奏をしています。マイナーな曲だと練り上げ不足でリリースした例もありましたので、N響は大分CD録音に慣れてきたのだと思います。

金管楽器の音程も良いですし、音色もきれいです。そうすると、既にある他の美点も生きてきます。N響にはヨーロッパのオケとはまた違った独自のサウンドもあります。また、パーヴォ・ヤルヴィで変わったところですが、しなやかな演奏になったことです。非常に透明度の高い演奏で、不協和音もきちんと響かせているあたりは本当に素晴らしいです。

うーん、なんだか感無量ですね。

ストラヴィンスキー=コロンビア交響楽団

Stravinsky: Conducts Stravinsk
  • 歴史的名盤

おすすめ度:

Stravinsky: Conducts Stravinsk
>レビュー数:11個の評価

ストラヴィンスキーの自作自演は上のYouTubeにも第一楽章を貼りましたが、CDでは当然全楽章聴けます。このコロンビア交響楽団との演奏は素晴らしいので、全部聴く価値はあります。

やはりストラヴィンスキーが作曲した当時の雰囲気を反映しているのか、テンポは速めで目まぐるしく場面転換していきます。

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