交響曲ハ調 (ストラヴィンスキー)

イーゴリ・ストラヴィンスキー (Igor Stravinsky,1882-1971)作曲の交響曲ハ調 (Symphonie en ut)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

解説

ストラヴィンスキー交響曲ハ調について解説します。

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難解な交響曲

この「交響曲ハ調」「3楽章の交響曲」と比べると少し人気は落ちるかも知れませんね。

このなんとなく新古典主義なのか現代音楽なのか、取り留めのない交響曲ハ調ですが、意外に多くのディスクにおまけのようについてくる場合がありますね。

羊の皮をかぶった狼

第1楽章は、ソナタ形式です。妙に明るく軽快な主題で始まります。ストラヴィンスキーらしい力強さが表面に現れるのは、ほんの一部で表面は少なくとも古典的です。

第2楽章は優美なソロのアンサンブルで始まりますが、曲が進むにつれ、雰囲気が変わってきます。しかし、トランペットやオーボエの優美なメロディでまたもとに戻ります。このなんだか分からない、妙な優美さですが、やはりこの曲はただ優美な曲でないことは途中に挟まれた現代音楽的でダイナミックな部分が挟まれているので明らかです。

第3楽章も素朴に始まったかと思えば、うわべの素朴さで、どこか強い緊張感・不安感に貫かれています。コミカルになったりもしますが、やはり空気はピンと張りつめています。

第4楽章はショスタコーヴィチを思い出す主題で始まります。この跳躍の多い楽章は、ある意味、第3楽章までで感じた妙なストレスからは解放されて、曲調と内容が一致しています。そして、コラールで曲を閉じます。

ストラヴィンスキーを襲った悲劇

実は、この交響曲を作曲するとき、ストラヴィンスキーは自身の人生の中で、一番の悲劇に見舞われていたのです。当時彼の住んでいたパリで娘、妻、母を相次いで失ったのでした。まだ他に子供はいましたが、アメリカを訪れた際に第2次世界大戦が勃発したため、そのままヨーロッパに帰れなくなり、子供とも離れ離れに暮らすことを強いられました。その直後に作曲されたのです。

とはいえ、この交響曲ハ調は理解が難しい交響曲です。表面的には古典的な交響曲ですが、中身は全く違うのです。中身は、古典的な表面に蓋をされて滅多に現れません。例外は第4楽章ですが、なぜこのような曲を書くことになったのか、管理人はまだ理解できていません。

果たして名曲なのでしょうか?あるいは迷曲なのですかね?

おすすめの名盤レビュー

交響曲ハ調のディスクで唯一面白いのはカラヤン=ベルリンフィルが録音していることですね。どうもカラヤンはストラヴィンスキーがあまり得意ではないようなのです。技術的には何もいうことはありませんが、曲の解釈は却って面白い演奏になっています。

ストラヴィンスキー=CBC交響楽団

  • 歴史的名盤
  • 自作自演

おすすめ度:

指揮イーゴリ・ストラヴィンスキー
演奏CBC交響楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

交響曲ハ調の自作自演はかなりレベルが高い演奏です。他の演奏を聴いていた人は目から鱗がおちる個所も多いかも知れません。例えば、カラヤンなどは古典主義風に演奏しようとしているのですが、どうも中途半端な感じがしてしまいます。

自作自演は最初からそれほど古典主義的な演奏では無いですね。交響曲ハ調の主題はあくまで明るく軽快なので、そこはそういう風に演奏していますが、すぐに邪魔が入ります。早い段階に自作自演があったので、この曲を録音する演奏家たちはここをスタートにすることが出来ます。自作自演の中でもレベルが高いので大変かも知れませんけれど。

デュトワ=スイスロマンド管弦楽団

  • 名盤
  • 定番

超おすすめ:

指揮シャルル・デュトワ
演奏スイスロマンド管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

デュトワ=スイスロマンド管弦楽団は、自作自演を出発点としているように思います。そして交響曲ハ調は最初から、とてもシャープな演奏になっており、面白い要素を浮き彫りにしてくれます。古典主義的なところはあまりないですね。そしてテンポも自作自演とほぼ同じです。

自作自演の方向性のまま、演奏のクオリティを上げたような感じでしょうか。デュトワの独自性も出ていて、じっくり楽譜を読みこんでいることもよく分かります。

ネーメ・ヤルヴィ=スイスロマンド管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 熱気
  • 迫力

おすすめ度:

指揮ネーメ・ヤルヴィ
演奏スイスロマンド管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

ネーメ・ヤルヴィとスコティッシュ・ナショナル管弦楽団の録音です。この演奏は、なかなか個性的で面白いです。新古典主義的なところはあまり感じられないのですが、熱気と推進力がかなりあってそこが面白みです。他の演奏とは大分違うものが聴けると思います。

カラヤン=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • 端正

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

カラヤンとベルリン・フィルの録音です。カラヤンがなぜ「交響曲ハ調」を録音したのか、ちょっと謎な感じがします。ストラヴィンスキーはバレエ「春の祭典」の時点で少しユニークな演奏なのですが、交響曲ハ調は非常にきれいに始まるので、「プルチネルラ」のような、普通の新古典主義の音楽が始まるのかと思ってしまいます。そして、半分くらい行っても古典的で何がいいたいのかよく分からない状態が続きます。ベルリンフィルの機能を活かしてシャープに演奏すれば、名演になるような気もするのですが、遅めのテンポで普通の交響曲のように演奏しています。

こんな演奏も出来るんだな、と感心する反面、本当にこれでいいのか?という疑問が出てきて、しっくりこないまま進んでいきます。

少なくとも初めて「交響曲ハ調」を聴く方は、カラヤン盤は避けたほうが賢明です。既に知っていて色々な演奏を聴いてみたい、という方にはお薦めです。ちなみに「詩篇交響曲」は悪くは無いのですが、合唱の歌い方が独特で、何かあまりしっくりこない演奏になっています。

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楽譜・スコア

ストラヴィンスキー作曲の交響曲ハ調の楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?
Symphony in C Study Score (Edition Eulenburg)

Symphony in C Study Score (Edition Eulenburg)
レビュー数:3個の評価

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