ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart, 1756~1791) の有名なディヴェルティメント ニ長調 K.136 (Divertimento) について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
解説
モーツァルトのデヴェルティメント K.136, K.137, K.138について解説します。
モーツァルトの有名なデヴェルティメントには、K.136, K.137, K.138の3曲あります。特に副題や愛称があるわけではないので、ケッヘル番号で呼ぶ場合が多いです。特にK.136が有名なメロディですね。K.138は第3楽章が一番有名でしょうか。
デヴェルティメント KV.136の特徴は、モーツァルトの頭の回転の速さにあると思います。第1楽章から次から次へと新しいモチーフが出てきて、それが知的に組み合わさっています。譜面としては簡単なのですが、アンサンブルするととても面白い曲です。
第3楽章は対位法が詰まっていて、プレストの中にフーガが入っています。聴いても、演奏しても、楽しい曲です。
演奏時間は18 分程度で、編成は弦楽合奏(Vn:2,Va,Vc)です。
おすすめの名盤レビュー
それでは、モーツァルト作曲デヴェルティメント ニ長調 K.136の名盤をレビューしていきましょう。
ヴェーグ=ザルツブルク・モーツァルテウム・カメラータ
シャンドール・ヴェーグとザルツブルク・モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカの録音です。デヴェルティメントとセレナードの全集です。非常に定評のある決定盤です。有名な曲が沢山入っていて、演奏もしっかりしています。古い演奏という訳ではなく、かなり高音質です。
さてRV.136ですが、非常に溌剌としたリズミカルな演奏で、聴いていて楽しいものです。展開部などはpからクレッシェンドしたり、と溌剌さや勢いだけではなく、表現のヴォキャブラリーが豊富です。緩徐楽章も高音質で木の響きなので、あまり透明感は感じないのですが、各パートが綺麗に分離して聴こえます。第3楽章もスタンダードな表現ですが、とてもスリリングです。
楽しく、このデヴェルティメントの本質を突いた名盤です。
バッハ演奏で有名なコープマンが指揮するアムステルダム・バロック管弦楽団の録音です。非常にテンポが速めでスリリングな演奏です。自然にかかるメッサ・デヴォーチェも良いですね。
K.136の第1楽章は速いテンポで始まり、各パートの絡み合いが面白い演奏です。このテンポで演奏すると本当にスリリングなアンサンブルで、モーツァルトのやりたかったことが出来ていると思います。速いテンポも意外に早く慣れてきます。第2楽章は遅めのテンポで透明感があり、ゆったり味わえます。第3楽章もかなりスピーディでスリリングです。
K.137の第1楽章は遅めのテンポで始まりますが、Andanteらしくリズムが感じられます。有名な第2楽章はスピーディでスリリングに演奏していて爽快です。K.138は流れるようなリズムで始まります。弦の意外に複雑なアンサンブルですが、メッサ・デヴォーチェなども使いながら楽しませてくれます。第2楽章は遅めのテンポで、響きを堪能できます。第3楽章は少し早め位のテンポで生き生きとした演奏です。
古楽器好きに最適な一枚と思います。もちろん、速めのテンポが好きな方にはお薦めしますし、参考演奏としても相応しいと思います。
ブロムシュテット=ドレスデン・シュターツカペレ
ブロムシュテットとドレスデン・シュターツカペレの演奏は、ピリオド奏法がメジャーになる前の時代のものです。ブロムシュテットのセンスで演奏している、ということですね。清潔感があり綺麗にまとめています。リズミカルで今聴いても何の違和感もありません。ピリオド奏法に慣れた耳には、ちょっと懐かしいような響きですね。
K.136の第1楽章は少し速めのテンポで始まります。自然体で折り目正しい名演で、なつかしいような、このデヴェルティメントの一昔前の弾き方です。ブロムシュテットは少し速めのテンポ取りで、軽妙に演奏していきます。昔ながらの演奏スタイルですが、とても爽やかでバロック演奏を聴いているかのようです。第2楽章はアンダンテのテンポで、ふくよかに弦を鳴らし、とても味わい深いです。RV.137の第1楽章は音に厚みがあって、少しヴィブラートもかかっているので、芳醇な味わいがあります。RV.138の第1楽章は軽やかさがあり、スリリングな個所を強調することはありません。聴いていて心地よい演奏です。
モダン・オケの少し前のスタイルですが、ブロムシュテットのセンスの良さが感じられます。昔、N響で聴いたヘンデル『水上の音楽』は古楽器奏法を取り入れていましたし。録音として、貴重なディスクです。
『四季』で有名なイ・ムジチ合奏団の録音です。こちらも1983年録音でバロック奏法の影響は受けていません。ギリギリの時期ですけれど。艶やかなヴィブラートがかかったイ・ムジチらしい演奏です。録音も十分しっかりしたものです。
K.136は第1楽章から速めのテンポで、イ・ムジチのイタリア的な明るい音色を楽しめます。指揮者なしと思いますが、アンサンブルが有機的でその辺りも聴き所です。第2楽章はアンダンテですが意外に少し速めなテンポ取りです。ヴィブラートのかけ方が細かく、音符がテウート気味に聴こえますが、普通にモダン楽器で演奏するとこんな感じになりますね。各メンバーのレヴェルが高く、自主性もあるので、表情豊かです。第3楽章はとても速いテンポですが、超絶技巧を聴かせる感じですね。
K.138の第1楽章は速めのテンポで、とてもスリリングなアンサンブルを聴かせてくれます。ヴィブラートを取れば古楽器演奏になりそうです。モーツァルトの譜面はモダン楽器で演奏してもサマになってしまうのが凄いですね。短調に転調すると情熱的になります。第2楽章は昔のアンダンテ、という感じで、ヴィブラートを強調して流麗に演奏しています。色々な表情が出てきて、とても面白いです。
イ・ムジチは、古楽器奏法の影響をほとんど受けていない気がしますが、各メンバーのレヴェルが高く、自分たちの音楽を持っています。モーツァルトもレヴェルの高い演奏になっています。
- 名盤
- 定番
- ライヴ
- ピリオド奏法
おすすめ度:
指揮ロジャー・ノリントン
演奏カメラータ・アカデミア・ザルツブルグ
1998年7月27日
DIVERTIMENTO KV 136/SI
通常4~5日以内に発送します。¥1,484円
ロジャー・ノリントンとカメラータ・アカデミア・ザルツブルグの録音です。ノリントンはシュトゥットガルト放送交響楽団の指揮者になる前に、カメラータ・アカデミア・ザルツブルグといくつか録音を残しています。このオケはモダン楽器です。モーツァルト、ハイドンのパリセットなど、YouTubeに上がっていてとても良い演奏です。
シュトゥットガルト放送交響楽団との演奏も素晴らしいですが、カメラータ・アカデミア・ザルツブルグとの演奏は、溌剌(はつらつ)として楽しい演奏が多いです。
この演奏も、スピードがあり、ノリントンの個性的な所もあまり目立たず、普通に楽しく聴けるクオリティの高いピリオド奏法の演奏です。単純に楽しく聴けますし、対位法の複雑な個所も見通し良く聴くことが出来て、好感が持てます。
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楽譜
モーツァルトのデヴェルティメント ニ長調 kV.136の楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュア・スコア
No.14 モーツァルト 3つのディヴェルティメント (Kleine Partitur)
レビュー数:1個
残り3点
中型スコア
モーツァルト: 3つのディヴェルティメント KV 136-138/ベーレンライター社/新モーツァルト全集版/中型スコア
レビュー数:4個
残り10点