マーラー 交響曲第8番『千人の交響曲』

グスタフ・マーラー (Gustav Mahler,1860-1911)作曲の交響曲第8番『千人の交響曲』変ホ長調 (Symphony no.8 “Symphonie der tausend” Es-dur)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。

解説

マーラー交響曲第8番『千人の交響曲』について解説します。

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作曲と初演

曲の構成

交響曲第8番『千人の交響曲』は第1部と第2部から成り立っています。第1部はまとまった音楽でポリフォニーを使用しています。ベートーヴェン第九の第4楽章のように一気に聴けます。第2部は切れ目のないオラトリオのような音楽です。こちらはストーリーを追いながら聴くのが良いと思います。独唱や合唱は役回りを持っています。

独唱、合唱

合唱は、男声合唱、女声合唱、少年合唱から成り立っています。このうち、少年合唱は天使役です。

独唱は、以下のような配役になっています。
第1ソプラノ:罪深き女(マグダラのマリア)
第2ソプラノ:贖罪の女のひとり(グレートヒェン)
第3ソプラノ:栄光の聖母
第1メゾ・ソプラノ:サマリアの女
第2メゾ・ソプラノ:エジプトのマリア
テノール:マリア崇拝の博士
バリトン:法悦の教父
バス:瞑想の教父

第1部は歌詞を賛歌「来たれ、創造主たる聖霊よ」から採っています。CDによってトラックの振り方は異なると思います。

第1部の主な構成

「創造の主、聖霊よ」
「いと高きにある慈悲で満たさせたまえ」
「我らの肉体の弱さに」
「その光をもって我らの五感を高め」
「守り神と呼ばれる聖霊」
「父なる主に栄光あれ」

第2部はゲーテの戯曲『ファウスト』第2部「山峡」の第5幕から終幕を歌詞にしています。第2部序盤は10分程度オーケストラのみで演奏されます。

第2部の主な構成

ポーコ・アダージョ
ピウ・モッソ(アレグロ・モデラート)


森は揺らいでなびき (合唱とこだま)
永遠の法悦の炎 (法悦の教父)
私の足もとで断崖絶壁が (瞑想の教父)


霊界の気高い一員が (天使)
地上の残り滓を運ぶのは (天使になりきったものたち)
岩の頂のまわりを霧のように (なりたての天使たち)


世を支配する最高の女王よ (マリアをたたえる博士)
触れることのできぬあなたにも (合唱)


その愛にかけてお願い申し上げます (罪深き女(マグダラのマリア))
たぐいない御方、光り輝く御方 (贖罪の女のひとり(グレートヒェン))
この人は手足も逞しくなり (昇天した子供たち)


来たれ、もっと高い天へ昇れ! (栄光の聖母&合唱)
すべて懺悔の気のある情け深い人々よ (マリアをたたえる博士&合唱)
はかなきものはすべて (神秘の合唱)

『ファウスト』の主人公ファウスト悪魔の力を借り、若返ります。そして、村娘のグレートヒェンを誘惑しますが、生まれた子供と共にグレートヒェンを捨ててしまいます。グレートヒェンは子供殺しの罪でファウストの名を叫びながら死刑に処せられますが、悔悟によって地獄からは救われます。

マグダラのマリアは聖書に出てきます。罪深い女性、つまり娼婦だったのですが、イエスの足に香油を塗り懺悔して許されます。その後、イエスが磔にされ、復活するまでを見届けたとされますが、復活したイエスに触れようとして「我に触るな」と言われ、イエスは布教する生活に入り、マグダラのマリアは隠遁して生涯を終えたということです。

おすすめの名盤レビュー

それでは、マーラー作曲交響曲第8番『千人の交響曲』名盤をレビューしていきましょう。

バーンスタイン=ウィーン・フィル

バーンスタインの凄いテンションの名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 壮絶
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

ソプラノマーガレット・プライス
ソプラノジュディス・ブレゲン
ソプラノゲルティ・ツォイマー
アルトトゥルデリーゼ・シュミット
アルトアグネス・バルツァ
テノールケネス・リーゲル
バリトンヘルマン・プライ
バスジョゼ・ヴァン・ダム
少年合唱ウィーン少年合唱団
合唱ウィーン国立歌劇場合唱団
合唱ウィーン楽友協会合唱団
指揮レナード・バーンスタイン
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1975年8月,ザルツブルク(ステレオ/アナログ/ライヴ)

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バーンスタインとウィーン・フィルのライヴ録音です。バーンスタインの気合いの入りようが凄い名演奏で、この時期のバーンスタインとしては速めのテンポで熱気のある演奏です。始めて聴く方は、DVDの日本語字幕付きをお薦めします。下にリンクがあります。輸入盤は日本語字幕が無いので、よくご確認ください。

第1部凄みと熱気の渦のような冒頭、その後の歌手陣のアンサンブルも豪華さがあります。オケの部分はスリリングでトランペットを全開に鳴らして迫力が半端じゃないです。しかもバーンスタインは円熟していて味わい深い所はゆったりしたテンポでじっくり聴かせてくれます。緩急のつけ方が半端でなくピチカートも弦が切れるんじゃないかと思う位です。

第2部は静かに始まりますが、バーンスタインは最初から白熱していて、フォルテの所があると圧倒的な何かの叫びのような音響になります。テノールが出てくると一旦遅くなりますが、とてもテンションが高いです。中盤になるとテンポが落ち着いてきてソプラノの歌声が神々しいです。合唱が出てくる所は落ち着いたテンポのまま、盛り上がります。最後の落ち着いたコラールを経て、段々と壮大に盛り上がり、合唱・オケのトゥッティは、遅いテンポで圧倒的なスケールです。圧倒されるし、とても感動できる演奏です。

『千人の交響曲』初めて聴く人にもお薦めの演奏です。この曲は最初は第2部が飽きやすいのですが、このテンションの高い演奏なら、飽きずに聴けると思います。

バーンスタイン=ウィーン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • 壮絶
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

ソプラノマーガレット・プライス
ソプラノジュディス・ブレゲン
ソプラノゲルティ・ツォイマー
アルトトゥルデリーゼ・シュミット
アルトアグネス・バルツァ
テノールケネス・リーゲル
バリトンヘルマン・プライ
バスジョゼ・ヴァン・ダム
少年合唱ウィーン少年合唱団
合唱ウィーン国立歌劇場合唱団
合唱ウィーン楽友協会合唱団
指揮レナード・バーンスタイン
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1975年8月,ザルツブルク

テンシュテット=ロンドン・フィル (1986年)

適度な緊張感と熱気の入ったダイナミックでスリリングな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 白熱
  • ダイナミック

超おすすめ:

ソプラノ1エリザベス・コネル
ソプラノ2イーディス・ウィーンズ
ソプラノ3フェリシティ・ロット
コントラルト1トゥルーデリーゼ・シュミット
コントラルト2ナディーヌ・ドゥニーズ
テノールリチャード・ヴァーサル
バリトンヨルマ・ヒュニネン
バスハンス・ゾーティン
合唱ティフィン・スクール少年合唱団
合唱ロンドン・フィルハーモニー合唱団
指揮クラウス・テンシュテット
演奏ロンドン・フィルハーモニック

1986年,ロンドン,ウォルサムストウ・タウン・ホール,ウェストミンスター大聖堂 (ステレオ/デジタル/セッション)

icon アマゾンUnlimitedとは?

テンシュテットとロンドン・フィルの録音です。非常に素晴らしい演奏で、ダイナミックで感情的に盛り上がりますが、それが適度な所に収まっていて、バーンスタイン盤ほど、テンポが速くなったりせず、味わい深さを堪能できるスケールの大きな演奏です。アゴーギク(テンポの変化)はかなり大きく、スリリングな所はとてもスリリングです。

第1部冒頭はとてもスリリングに始まります。歌唱が出てくるとテンポをぐっと落とし、味わい深い演奏になります。またテンシュテットの特徴として、少しグロテスクさのある所も全く遠慮なく、ストレートに演奏してくる所があります。でも多少グロテスクさがあったほうが表現に深みが出ます。スケールの大きな所では、テンポを遅くしてスケール感を出しています。やはり千人の交響曲は気合いが入りますが、むしろ余裕があったほうが合唱も実力が出せるというものです。盛り上がって第1部は終わります。

第2部は静かに始まりますが、最初の管弦楽のみの部分に色々な感情表現が出てきます。テンシュテットの場合、ほぼすべての音に感情を入れ込んでいて、テンポが遅くても緊張感は保たれています。マーラーの少し自虐的な悔いるような感情表現は素晴らしいです。ここでも少々の余裕があり、強奏になっても響きは綺麗です。天使の合唱の部分は素晴らしいです。コンサートホールの音場の広さを感じます。シャープな響きも多いですが、物語をじっくり味わって聴くことが出来ます。細かくは書きませんけど、味わい深い表現が多く、特に栄光の聖母が出てくる場面は感動的です。その後の天使の合唱も素晴らしく、じっくり落ち着いて味わって聴くことが出来るのが良いです。神秘の合唱も透明感がありますが、とてもテンポが遅めでいい所を味わい深く聴かせてくれますね。最後は遅いテンポのまま、思い切り盛り上がり、ダイナミックに終わります。

私が知る限りでは『千人の交響曲』の一番の名盤です。第2部は遅いのですが、この味わいが分かれば、全く飽きる所はありません。でも、この曲は良さが分かりにくいので、始めて聴く人にはバーンスタイン盤がいいかもしれないですね。バーンスタイン盤でこの曲に開眼しておけば、どんな名演奏でも味わって聴けると思います。

ラトル=バーミンガム市交響楽団 (2004年ライヴ)

若いラトルの知的で颯爽とした名盤
  • 名盤
  • 知的
  • スリリング
  • ダイナミック
  • ライヴ

おすすめ度:

ソプラノ1クリスティーヌ・ブリューワー
ソプラノ2ソイレ・イソコスキ
ソプラノ3ユリアーネ・バンゼ
メゾソプラノ1ビルギット・レンメルト
メゾソプラノ2ジェーン・ヘンシェル
テノールジョン・ヴィラーズ
バリトンデイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン
バスジョン・リライヤ
合唱バーミンガム市交響合唱団
合唱ロンドン交響合唱団
合唱バーミンガム市交響ユース合唱団
合唱トロント児童合唱団
指揮サイモン・ラトル
演奏バーミンガム市交響楽団

2004年6月,バーミンガム,シンフォニー・ホール(ステレオ/デジタル/ライヴ)

icon アマゾンUnlimitedとは?

このライヴの時、ラトルは既にベルリン・フィルの音楽監督に就任していました。まだ若さがありますが、若さのパワーで押し切るような演奏ではないです。シャープな響きではっきりとした音楽づくりをしていますが、元々知的な所もあって、颯爽とした第1部は気分よく聴けますし、第2部はじっくりストーリーを聴かせてくれます

第1部速めのテンポです。録音の解像度が良く残響も適切なので、各パートが綺麗に録音されていて、ライヴとは思えない高音質です。同時に音の密度もしっかりあって、ダイナミックでリズミカルで楽しめます。バーミンガム市響はトランペットなどとても上手いですし、合唱も複数の合唱団がしっかり合わせていて、上手いです。最後はさわやかさも感じる位で、ダイナミックかつ颯爽と曲を終えます

第2部は、落ち着いた音楽で始まります。マーラーらしいか、と言われると、難しい質問だと思いますが、冗長になりがちな第2部をしっかり整理して演奏しているのは良いことです。オーケストラが強奏するところはとてもシャープです。テノールが入りファウストが始まりますが、上手く整理されていて、たまにスパイスのようにオケのシャープな強奏が入り、小気味良くまとまっていて飽きさせません。天使が入る所はオケもシャープです。ラストの「すべて懺悔の気のある情け深い人々よ」の後はかなりダイナミックになっていきますが、透明感があります。神秘の合唱の辺りはオケも透明で色彩的です。クレッシェンドして頂点に達すると、とても感動的です。

シャイー=ルツェルン祝祭管弦楽団

  • 名盤
  • 定番

ソプラノ1リカルダ・メルベート
ソプラノ2ユリアーネ・バンセ
ソプラノ3アンナ・ルチア・リヒター
メゾソプラノサラ・ミンガルド
アルト藤村実穂子
テノールアンドレアス・シャーガー
バリトンペーター・マッティ
バスサミュエル・ユン
少年合唱テルツ少年合唱団
合唱ラトヴィア放送合唱団、バイエルン放送合唱団、オルフェオン・ドノスティアラ
指揮リッカルド・シャイー
演奏ルツェルン祝祭管弦楽団

2016年8月12,13日,ルツェルン,KKLコンサートホール(ライヴ)

字幕独英仏韓中日

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楽譜・スコア

マーラー作曲の交響曲第8番『千人の交響曲』の楽譜・スコアを挙げていきます。

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