ショスタコーヴィチ  交響曲第13番『バビヤール』

ドミートリイ・ショスタコーヴィチ (Dmitri Shostakovich,1906-1975)作曲の交響曲第13番 変ロ短調 Op.113『バビヤール』 (Symphony No.13 b-Moll)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

解説

ショスタコーヴィチ交響曲第13番『バビヤール』について解説します。

ロジェストヴェンスキー=ソヴィエト文化省交響楽団第2楽章「ユーモア」。それにしてもハイレヴェルとは言えない文化省オケでここまでやるのは凄いです。最後の音程最悪ですけど、笑。

男性のみの合唱

交響曲第13番『バビヤール』 は、1962年に作曲されました。交響曲第14番『死者の歌』でも詩が使われているエフゲニー・エフトゥシェンコの詩によるバスの独唱と、バスのみからなる合唱から成り立っています。バスの独唱と、バスのみからなる合唱って凄いですね。本番で黒いスーツを使って歌ったら、マフィアか何かの集団のようです。女声のみという合唱は良くありますが、男性のそれもバスのみ、というのは聞いたことがありません。

バビヤールとは?

愛称の『バビヤール』は、どうしてもビヤガーデンを思い起こさせる語感です。

実はキエフ地方の渓谷で、ここで1941年にナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺が行われたのでした…

交響曲第13番以降は、こういう「死」をモチーフにした交響曲が増えてきます。そして、当時のソヴィエトのスターリン体制も同じような人種迫害を行っていました。この交響曲はソヴィエト体制の批判も範囲に含んでおり、しかも歌詞で直接表現していますから、当然問題になりました。

初演のゴタゴタ

スターリンよりは軟化したフルシチョフ体制上演禁止にはならなかったものの、初演の後に第1楽章に使われた詩を修正することを要求され、エフトゥシェンコは修正に応じています。しかし、海外ではオーマンディはオリジナルの歌詞を採用し、ソヴィエト国内ではロジェストヴェンスキーの録音の際に、オリジナルの歌詞が使われています。テミルカーノフもオリジナルの歌詞を使用して演奏したことがあるようです。まあテミルカーノフは政治的メッセージを積極的に発信しないタイプで、ソヴィエトを賛美したオリジナルの『森の歌』を来日公演で演奏する位で、単にニッチな演奏をしたかったんじゃないか?と思いますけど。

初演は、交響曲第12番まで担当していたムラヴィンスキーに依頼しましたが、断られてしまいます。ムラヴィンスキーはあまり政治的な部分に首をつっこみたくなかったのです。交響曲第13番第14番は、ムラヴィンスキーは演奏も録音もしませんでした。最後の交響曲第15番は名盤が残っています。

初演は1962年12月18日にモスクワ音楽院大ホールにて、コンドラシンの指揮とモスクワ・フィルが担当しました。この初演は上演禁止にはなっていないものの、初演を中止させようと出演者などに様々な工作が行われ、バス独唱は4人目のヴィタリー・グロマツキーが担当するなど、直前まで混乱しました。そして、警官隊の包囲する物々しい雰囲気の中、初演が行われています。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ショスタコーヴィチ作曲交響曲第13番『バビヤール』名盤をレビューしていきましょう。

ロジェストヴェンスキー=ソヴィエト文化省交響楽団

皮肉の表現はロジェストヴェンスキーに敵う者なし
  • 名盤
  • ユーモア
  • 重厚
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
演奏ソヴィエト文化省交響楽団

ロジェストヴェンスキーの全集の中でも第13番『バビヤール』もっとも迫力のある演奏です。ロジェストヴェンスキーの全集は持っていますが、ソヴィエト文化省交響楽団の演奏は音程がとても悪く、ショスタコーヴィチに関しては全集を入手する必要は無いと思います。(プロコフィエフは全集を入手する価値あり)しかし、第13番『バビヤール』は皮肉が聴いていたりして、ロジェストヴェンスキー向きな曲ですね。

第1楽章はとても上手い雰囲気づくりで、さすがです。ドス黒いバスの合唱は、ロジェストヴェンスキーのような実力派の指揮者にしか出来ないものだと思います。合唱は重くパーカッションも思い切り叩き、金管も全開で、なおかつリズミカルです。弦楽器は神妙な響きを出してきます。後半1/3位になると、荒れ狂うオケは最高潮に達します。弦楽器など、こんなに上手かったっけ?と思える位、凄い演奏をしています。

第2楽章「ユーモア」の面白さは、さすがです。皮肉を描ききった演奏で、オケの音程の悪さも皮肉に聴こえる位です。他の演奏と聴き比べると、ただダイナミックなだけではなく、精緻な演出がついていることが分かります。

第3楽章も凄い迫力です。めまいがするようなクレッシェンド、パーカッションと鞭の強打、男声合唱も気合いが入っています。最大の聴きどころの第4楽章の不穏な空気感、終盤のオケの強烈なクレッシェンド、どこを取っても上手い表現で、オケの実力以外はコンドラシンよりも上手い気がします。意外と繊細さもありますし。第5楽章はまた皮肉の効いた表現で、スコアの読み込みの深さには感心します。

ロジェストヴェンスキーも自身で得意曲だと思っているのではないか、と思われ、この演奏に対する思い入れを強く感じます。なかなか入手困難ですが、面白い演奏なので、入手できそうなら状態の良い中古でも聴いてみてほしいです。

コンドラシン=モスクワ・フィル

初演のコンビであるコンドラシン=モスクワフィルです。ショスタコーヴィチ自身と細かくやり取りしているでしょうから、この曲に関しての理解度は深いです。また、コンドラシンのストレートな表現は皮肉を表現するにはストレート過ぎますが、シリアスな部分にはとても相応しいです。

冒頭は意外に軽く始まりますが、第1楽章の後半に入ってくるとどんどん盛り上がり圧倒的な迫力です。バスの歌唱も力強く、バスの合唱もダイナミックです。第2楽章はストレートでダイナミックです。皮肉とかユーモアを表現しようとしている感じではありませんが、パーカッションなど思い切り鳴らしているので意外と面白いですね。後半はこれ以上ない位ダイナミックで鳥肌が立ちます。第3楽章の終盤のクレッシェンドは爆発的で凄い絶望感に満ちています。第4楽章は不穏に始まり、後半になると緊迫感が凄く大迫力です。第5楽章は思ったほど迫力は無く、リズミカルな主題を中心に軽妙な演奏です。

ちょっと録音が悪いですが、リアリティのある名盤はみんな1960年代で録音が悪いので仕方ないですね。

コンドラシン=バイエルン放送交響楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 迫力

超おすすめ:

指揮キリル・コンドラシン
演奏バイエルン放送交響楽団

1980年12月,ヘルクレスザール

こちらは、コンドラシンがバイエルン放送交響楽団と録音したものです。基本的にモスクワフィルと大きな違いはありませんが、音質はやはりこちらがいいですね。比較的入手しやすいでしょうか、うーん…

テミルカーノフ=レニングラード・フィル

テミルカーノフ独特の表現とレニングラード・フィルの洗練された演奏
  • 名盤
  • 精緻
  • ユーモア
  • 迫力

おすすめ度:

指揮ユーリ・テミルカーノフ
演奏レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

テミルカーノフもこの手の皮肉の効いた曲は得意です。私の場合、第2楽章「ユーモア」から聴いてしまうのですが、テミルカーノフは祝典序曲などでも聴かせてくれる独特の軽快なリズム感のある指揮者で、コミカルでユニークな絶妙なリズム感で聴かせてくれます。レニングラード・フィルも完璧な演奏で応えています。途中で入る木管や鐘の音など、全部を有意義に活かして、ユーモアを表現しきっています。この楽章をここまでしっかりまとめてくるのはテミルカーノフらしいです。この曲が楽しく聴けていいのかどうか分かりませんけど。

シリアスな内容の曲なので、あまりユーモアばかりでも不謹慎な感じですけど、テミルカーノフ=サンクト・ペテルブルグ・フィルですから、いざという時は迫力のあるサウンドを出してきます。テミルカーノフの場合、ストレートな表現はあまりしないので理解されないかも知れませんが、結構本質的な部分は突いていると思います。最近の録音なので音質が良いのも長所ですね。

第1楽章の冒頭は、意外に軽快で異色と言ってもいい位の演奏です。コンドラシンロジェヴェンに比べると分かりにくい表現ですが、そこがテミルカーノフらしい所です。第3楽章の終盤の盛り上がりは迫真です。とてもクオリティが高いアンサンブルでテミルカーノフの本気を感じます。シリアスな第4楽章は深みも感じます。

録音が良いことと、他と違って安易に恐怖感を全面に出していないので、テミルカーノフ盤の良さを知りたいなら、じっくり聴いてみる必要がありますね。

CD,MP3をさらに探す

CD検索 CD検索 MP3検索

楽譜・スコア

ショスタコーヴィチ作曲の交響曲第13番『バビヤール』の楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュア・スコア

電子スコア

タブレット端末等で閲覧する場合は、画面サイズや解像度の問題で読みにくい場合があります。購入前に「無料サンプル」でご確認ください。

楽譜をさらに探す

楽譜検索 楽譜検索