チャイコフスキー 交響曲第5番 Op.64

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー (Peter Ilyich Tchaikovsky,1840-1893)作曲の交響曲第5番 ホ短調 Op.64 (Symphony No.5 e-moll Op.64)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

お薦めコンサート

🎵レオシュ・スワロフスキー=スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

■7/2(日) 14:00開演 会場:サントリーホール 大ホール (東京都)

■7/4(火) 19:00開演 会場:J:COMホール八王子 (東京都)

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
チャイコフスキー:交響曲第5番

🎵ケレム・ハサン、読売日本交響楽団

■2023/6/17(土) 14:00 開演 ( 13:00 開場 ) 東京芸術劇場 コンサートホール (東京都)
チャイコフスキー(歌劇「スペードの女王」序曲)/ショパン(ピアノ協奏曲第2番)/チャイコフスキー(交響曲第5番)[指揮]ケレム・ハサン [独奏・独唱]エリック・ルー(p)

2023/6/18(日) 14:00 開演 ( 13:00 開場 ) 東京芸術劇場 コンサートホール (東京都)

チャイコフスキー(歌劇「スペードの女王」序曲)/ショパン(ピアノ協奏曲第2番)/チャイコフスキー(交響曲第5番)[指揮]ケレム・ハサン [独奏・独唱]エリック・ルー(p)

解説

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー交響曲第5番 ホ短調 Op.64について説明します。

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交響曲第5番は1888年に作曲されました。交響曲第4番から10年ぶりの交響曲でした。それまでの間、交響曲を書く材料を集めていたようです。パトロンであるフォン・メック夫人への手紙を読むと、1888年6月には作曲を開始したようでした。

初演は完成して間もない1888年11月17日にペテルブルグで行われ、好評でした。

ベートーヴェンの「運命」を目指して

チャイコフスキーはベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を非常に意識していた作曲家でした。

交響曲第4番の段階から「運命の動機」を使っているのです。この交響曲第5番も第1楽章の序奏で現れる「運命の動機」が各楽章に現れます。

次の交響曲第6番「悲愴」もベートーヴェンの「運命」を意識しています。しかし「運命はこのようにして扉を叩く」は良いとして、最後に運命を克服して勝利に至るというポイントがロマン派の作曲家の代表格であるチャイコフスキーにはなかなか出来ません。

交響曲第4番は、スピーディな第4楽章で一見勝利に見えるでしょうか。交響曲第5番の第4楽章は途中からせっつかれる様にスピーディなアレグロに入ります。最後は壮大なフィナーレですがやはりどこか冗長です。果たして勝利という目標に手が届いたのでしょうか?そして最後の交響曲第6番「悲愴」では、悲劇的に始まり、消えゆくように終わります。

この運命観は、鋭敏な感性を持つロマン派の大作曲家の多くが共感すると思います。マーラーはチャイコフスキーの影響を受けた作曲家でもあります。しかし結局、交響曲第5番では穏やかに終えています。ロマン派の作曲家たちはベートーヴェンの打ち立てた「運命」という頂点にたどり着くことができなかったわけです。

大衆を意識した交響曲

交響曲第5番は親しみやすい交響曲です。特にロマンティックで感情的な要素が多すぎることはチャイコフスキー自身も分かっていたようです。交響曲第4番の初演が芳しくなく、チャイコフスキー自身が自信を失っていたのです。初演時も聴衆からは好評を得ましたが、評論家からはあまり良い評価を得られませんでした。

交響曲なのにスケルツォではなく、ワルツを導入したところが、バレエ音楽のようであり(実際、バレエ音楽の影響を受けていますが)、交響曲第5番に相応しくないと思われたのかも知れません。チャイコフスキーはバレエ音楽の大家なので、「ワルツ」を交響曲に取り入れても、そのこと自体で価値が下がるとは思いませんが。

有名なメロディ:第2楽章

親しみやすいメロディが多い曲ですが、第2楽章は非常に有名ですね。ロマンティックでバレエの音楽のようなメロディで、いろいろなところで使われています。

有名なメロディ(第2楽章)

アマチュアに人気

チャイコフスキー交響曲第5番は比較的アマチュアでも演奏しやすく演奏効果も高いので、よくアマオケのプログラムに取り上げられ、「チャイ5」という略称で親しまれています。

おすすめの名盤レビュー

チャイコフスキーの交響曲第5番のおすすめの名盤をレビューしていきます。

ムラヴィンスキー=レニングラード・フィル (1960年)

無意味なルバートは一切なし、第4楽章は神の領域!
  • 名盤
  • 定番
  • 迫力
  • 白熱
  • スリリング
  • 壮麗

超おすすめ:

指揮エフゲニー・ムラヴィンスキー
演奏レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1960年11月7-10日,ウィーン,ムジークフェライン (ステレオ/アナログ)

ムラヴィンスキーレニングラードフィルを徹底的に鍛え上げ、素晴らしい名盤を残しました。今から考えればソヴィエト時代の凄い遺産です。チャイコフスキーはロマン派の作曲家に分類されますが、ムラヴィンスキーの演奏はそれほどロマンティックではありません。線が細く、鋭いアクセントが目立ちますし、テンポもすごく速いです。どんなにテンポが速くてもアンサンブルが崩れることはありません。

もちろん感情表現は素晴らしいです。クレッシェンドしていくと、あっという間に白熱して行き、凄いメリハリですね。クールにも聴こえますが、確かに非常な厳しさはありますけど、クールな中もとても熱い情熱を秘めていて、盛り上がると爆発的とも言える白熱ぶりです。

今のレニングラード・フィルは一流オケではありますが、ムラヴィンスキー時代の凄い技術とパッションはもうありません。このコンビの最盛期にウィーンでの録音があることは幸運ですね。

映像も残っていますが、この組み合わせは何十年も一緒に演奏しているわけで、ムラヴィンスキーが指揮でオーバーアクションを取る必要は全くありません。むしろ指揮ぶりは地味に見えるのですが、出てくる音はシャープです。この演奏スタイルがオーケストラに染みついているのですね。

カラヤン=ベルリン・フィル (1971年)

カラヤン=ベルリンフィル最盛期の録音、凄い集中力と迫力!
  • 名盤
  • 定番
  • 華麗
  • ロマンティック
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1971年10月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/アナログ/セッション)

カラヤンとベルリン・フィルの最盛期の録音です。チャイコフスキーの三大交響曲を聴くにあたって1971年録音カラヤン=ベルリンフィル最盛期で凄い迫力です。フォルテになるとベルリンフィルが凄い大音響で圧倒されます。カラヤンの演奏スタイルを高いレベルで実現しているのは凄いです。

第1楽章の序奏は滑らかな音色のクラリネットで始まり、主部ベルリン・フィルのパワーを活かしたダイナミックな演奏です。ベルリン・フィルの白熱した響きに圧倒されます。弱音の所はテンポを落として歌いこみます。クレッシェンドの迫力はさすが全盛期で、文句のつけようがない圧倒的な盛り上がりです。

第2楽章は、特にロマンティックでベルリンフィルのホルンのソロのレヴェルの高さ、盛り上がりでのベルリンフィルの重厚な迫力は聴く価値があります。情緒のある感情表現など、カラヤンのチャイコフスキー観が良く分かります。第3楽章は繊細で優雅なワルツです。クオリティが高い中にロマンティックな感情表現もしています。フォルテの個所などベルリン・フィルの弦の厚みで、とても華麗さのある演奏です。

第4楽章の序奏は雄大なベルリン・フィルの弦セクションが聴き物です。主部に入ると圧倒的なダイナミックさと迫力に圧倒されます。クレッシェンドもとてもスリリングです。フィルハーモニーのスピード感のある響きで、テンポは中庸ですが、スリリングに聴こえます。終盤はベルリン・フィルの能力全開の圧倒的な大迫力です。

全体としてクオリティが高いアンサンブルはカラヤン=ベルリン・フィルならでは、です。流麗なレガートと圧倒的な迫力で、カラヤンの最盛期の凄さを聴きたいなら外せない名盤です。

ゲルギエフ=ウィーン・フィル

ウィーン・フィルから圧倒的な熱気を引き出した名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 熱気
  • ダイナミック
  • ロシア的

超おすすめ:

指揮ヴァレリー・ゲルギエフ
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1998年 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ロシアの指揮者ゲルギエフがウィーン・フィルを指揮した録音です。ゲルギエフとウィーン・フィルは余程相性が良いようで、オーストリアのオケであるにもかかわらず手兵のマリインスキー劇場管よりも印象的な演奏が多いです。録音はゲルギエフとウィーン・フィルが繰り広げる熱気のある響きを良く捉えています。

第1楽章は前半の比較的静かな所から既にしなやかで、弦は熱気を帯びています。ウィーン・フィルの紡ぎだす心地よい響きを堪能できます。ゲルギエフも盛り上がる個所では遠慮なくテンポアップし、ウィーン・フィルのボルテージを上げていきます。ラストは突き刺すような頭拍が印象的です。第2楽章ウィーン・フィルのコクのある響きが良く、ホルンも素朴さのある音色で過剰な華麗さが無いのが良いです。自然に楽しめます。盛り上がると白熱した引き締まった響きで本当に圧倒的です。ゲルギエフとウィーン・フィルの共演の中でも特別な録音と思います。

第3楽章はワルツですが、ウィーン・フィルのリズム感の良さを感じさせます。ゲルギエフは速めのテンポで進めますが、ウィーン・フィルのパッチワークのような正確なアンサンブルに圧倒されます。第4楽章は速めのテンポで進みますが、しっかり地に足のついた演奏で、熱気のあるウィーン・フィルを上手くコントロールしています。後半は、凄い盛り上がりで、ゲルギエフも一気にテンポアップしますが、ウィーン・フィルもしっかりついていっています。テンポを落とす個所もゲルギエフはテンポを落としすぎず、ロシア的なリズムを引き出しています。ラストはスリリングで圧倒的です。

新しい録音でロシア的な演奏といえばこの演奏が最右翼だと思います。ロシア的でゲルギエフの良さの出た熱気のある名盤です。

バーンスタイン=ニューヨーク・フィル (1960年)

情熱的でダイナミックな名演
  • 名盤
  • 定番
  • 白熱
  • ロマンティック
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮レナード・バーンスタイン
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック

1960年,ニューヨーク,マンハッタン・センター (ステレオ/アナログ/セッション)

バーンスタインとニューヨーク・フィルの1回目の録音です。ロマンティックな演奏ですが粘りが少なく、盛り上がると白熱して凄い迫力です。全集の中でも第5番、第6番は素晴らしいです。録音は1960年でエッジの効いた音質です。

第1楽章序奏からバーンスタインらしい濃厚な表現で引き込まれます。ニューヨーク・フィルもコクのある響きを醸し出しています。主部は速めのテンポでリズミカルです。ニューヨーク・フィルとは思えない程のリズム感の小気味良さがあり、クレッシェンドしてくると白熱して凄い盛り上がりです。ロマンティックな部分はルバートを思い切りかけていますが、すっきりしていて爽快感が勝っています。何より盛り上がった時の白熱ぶりは他の演奏では聴けない燃え上がりです。

第2楽章はさらに濃厚で、コクのある弦とルバート掛まくりのホルン・ソロは凄く良いです。バーンスタインらしい粘りのあるテンポ取りと暖かみのある響きで味わい深いです。有名な主題は熱気をはらんで盛り上がり、白熱して行きます。ここまで躊躇なく盛り上がるのはこの時期のバーンスタインの良さですね。

第3楽章は速めのテンポで軽妙なワルツですが、弦の音色に熱気があります。弦はうねって盛り上がります。第4楽章暖かみと味わいのある弦の響きで始まります。主部に入ると凄い速さと熱気で沸騰せんばかりに白熱していきます。金管は全開でとてもダイナミックです。バーンスタインはメリハリのある自由なテンポ取りで非常に楽しく聴かせてくれます。ラストはスケールが大きく、アッチェランドがスリリングです。

この時期のバーンスタインとしても好調で、この盛り上がりは凄いですね。厳しさはありませんが、表現力と盛り上がりはムラヴィンスキーに匹敵する物があります。初めて聴く人にもお薦めのディスクです。

モントゥー=ボストン交響楽団

モントゥーによる自然体で本質を突いた名演!
  • 名盤
  • 定番
  • 自然
  • 円熟
  • 芳醇

おすすめ度:

指揮ピエール・モントゥー
演奏ボストン交響楽団

1958年 (ステレオ/アナログ/セッション)

モントゥーとボストン交響楽団の録音です。1958年録音ですが、音質は安定しており不満はありません。モントゥーらしい素朴ながらも本質を突いたチャイ5の名演です。

第1楽章は冒頭のクラリネットのソロが上手く、モントゥーは滋味に溢れる演奏を繰り広げています。主部に入ると中庸のテンポで、しっかりした演奏です。モントゥーはストレートな感情表現はあまりせず、もっと深い所にある曲の良さをしっかり引き出して、充実した演奏を聴かせてくれます。ボストン響は爽やかな音色で、盛り上がる所ではダイナミックです。

第2楽章はこの演奏の白眉です。最初から最後まで誇張した表現はなく自然体の演奏で、それで十分内容豊富でじっくり楽しめる演奏です。情熱的に盛り上がる個所も、ボストン響の上手さを活かして白熱したダイナミックな演奏を繰り広げます。それで居ながら自然体で、感情表現は弱すぎず強すぎずで、少し観客受けを狙ったようなチャイ5の緩徐楽章を純粋な深みのある名曲として聴かせてくれます。第3楽章も自然体のワルツで、さすがバレエリュッスの指揮者だっただけあります。感情表現というよりは、ワルツとしてもしっかりした演奏です。

第4楽章の冒頭は少し速めのテンポで粘ることなく、弦楽セクションが味わい深い響きで聴かせてくれます。そのまま盛り上がりボストン響はパワフルです。主部少し速めのテンポで、とても切れ味が鋭く白熱しています。ラストはテンポを粘らせることなく、ダイナミックでスリリングに曲を締めます。

モントゥーの長所が良く出た名演で、チャイ5としても、モントゥー自身の演奏の中でも屈指の名盤だと思います。

ショルティ=シカゴ交響楽団 (1987年)

ダイナミックでクオリティの高いアンサンブル、高音質も魅力
  • 名盤
  • 精緻
  • ダイナミック
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ゲオルク・ショルティ
演奏シカゴ交響楽団

1987年,シカゴ (ステレオ/デジタル/セッション)

ショルティとシカゴ交響楽団の録音です。ロマンティックな方向に流されることなく、速めのテンポでマッシブな指揮ぶりを見せています。シカゴ交響楽団もショルティの指揮で演奏するときは、常に緊張感をもって演奏しています。

金管楽器が非常に好調で、ソロもとても上手いですし、トゥッティの号砲は凄いですね。シノーポリ盤もいいですが、それでもロマンティックすぎる、と思ったらショルティ盤がお薦めです。

ちなみにショルティ=シカゴ響には旧盤があって、こちらの方が評価が高いようです。

スヴェトラーノフ=NHK交響楽団

N響から奥深い響きを引き出すスヴェトラーノフ
  • 名盤
  • 円熟
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏NHK交響楽団

スヴェトラーノフとNHK交響楽団との出会いは非常に幸運なものでした。しかも、ちょうどスヴェトラーノフが老成して円熟してきたころに共演したのです。それまではロシア国立交響楽団との爆演が多かったスヴェトラーノフですが、円熟して深みを増し、NHK交響楽団の控えめでマッシブ(筋肉質)なサウンドにちょうど合う演奏スタイルになっていきました。

チャイコフスキーは多くの共演の中でも特に素晴らしいものです。NHK交響楽団の過去のライヴの中でも最高クラスの演奏であり、海外でも通用しそうなディスクです。

スヴェトラーノフ=ロシア国立交響楽団

スヴェトラーノフ円熟の境地、ロシアの大地を感じさせる名演
  • 名盤
  • 定番
  • 円熟
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏ロシア国立交響楽団

1993年6月8-16日,モスクワ放送局大ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

1990年代のスヴェトラーノフと手兵のロシア国立交響楽団による演奏です。このころになると、爆演が特徴だったスヴェトラーノフは徐々に落ち着いてきて、円熟した演奏を聴かせるようになります。特にチャイコフスキーは素晴らしい演奏になりました。チャイコフスキーの5番はロマンティックすぎる曲だと思いますが、老成したスヴェトラーノフが振るとそんなことは一切感じさせない深みのある音楽に変貌(へんぼう)します。じっくり楽しみたい名盤です。

第1楽章はコクのある序奏で始まり、主部に入るとロシア的でスケールの大きな演奏になります。金管も思い切りならいしていてダイナミックです。同時に円熟した深みのある表現で、曲に浸れる名演です。第2楽章は彫りの深い表現で、特に木管は神々しさを感じるほどです。第4楽章はとてもロシア的であると共に、スケールが大きく重厚です。テンポが速くなるとかなりの速さですが、地に足がついているダイナミックさがあります。ラストはダイナミックかつスケール大きく締めくくります。

聴いた後の充実感も凄いです。チャイコフスキーの交響曲全集で買うほうがお薦めです。第2番『小ロシア』などもいい演奏です。

シノーポリ=フィルハーモニア管

ストレートで激しい感情表現の名盤
  • 名盤
  • スリリング
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ジュゼッペ・シノーポリ
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1992年1月,ロンドン (ステレオ/デジタル/セッション)

アマゾンUnlimitedとは?

シノポリとフィルハーモニア管弦楽団の録音です。理知的なシノポリの音楽と、白熱した感情表現が上手くバランスしています。録音も良く、シノポリの知的な部分とフィルハーモニア管のアンサンブル能力が上手く録音されています。

第1楽章クラのソロに熱気を帯びた弦セクションが心地よいサウンドです。主部は速めのテンポで切れ味の良さが素晴らしいです。圧倒的な迫力はカラヤンやゲルギエフに並ぶレヴェルが、白熱しているだけではなく、クオリティの高さがあります。第2楽章はしなやかさがあり、ホルンがとても上手いのが印象的です。テンポ設定に誇張が少なく、ルバートもやりすぎていないので、肩の力を抜いて自然に楽しむことが出来ます。

第3楽章はワルツの流れるようなリズムと、速めのテンポで細かいアンサンブルのクオリティの高さを楽しめます。

わざとらしいレガートもないですし、必要以上にテンポが遅くなったりすることはありません。それでいて盛り上がる個所では、かなり感情を入れています。理知的な思考と激しい感情表現の両方を持ってるシノーポリならではの名盤です。管理人のお気に入りのディスクですが、入手困難なのでアマゾンミュージックがお薦めです。

スヴェトラーノフ=ソヴィエト国立交響楽団

壮年期のスヴェトラーノフの本領発揮、ダイナミックな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • ダイナミック
  • ロシア風

超おすすめ:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏ソヴィエト国立交響楽団

(ステレオ/アナログ/セッション)

アマゾンUnlimitedとは?

スヴェトラーノフとソヴィエト国立交響楽団の演奏です。リマスタリングされていて、音質は安定しています。ソヴィエト時代のスヴェトラーノフの録音なので、とてもダイナミックで、いわゆる爆演系です。ただ、もともとスヴェトラーノフはチャイ5に関しては、あまり速いテンポは取っておらず、味わい深い演奏になっています。探してみましたが、新しくロシア国立交響楽団との演奏もあるし、NHK交響楽団との録音も枯れた名演なので、壮年期の録音はアマゾンミュージックにしかありませんでした。

第1楽章は序奏を経て主部に入るとスケールの大きな音楽を繰り広げていますが、とても民族的で土の香りがする響きです。金管はロシアンブラスで迫力があります。第2楽章冒頭からロシア的な郷愁に満ちています。ホルンは余裕があり、とても上手いです。過剰なロマンティシズムが無いので、自然にすっきり聴けます。もちろん、ダイナミックな所は特に金管は容赦ない爆演です。第4楽章スケールが大きくダイナミックです。壮年期のスヴェトラーノフとしてはテンポは特別速くはありませんが、金管はあくまでダイナミックです。思い切り盛り上がって締めくくります。

壮年期の演奏で、ソヴィエト時代の録音ですが、演奏内容は充実していて、この時期ならではの迫力があります。それと共に深みがあり、既に晩年の円熟を予感させるものになっています。

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カラヤン=ウィーン・フィル

円熟したカラヤンとウィーン・フィルの名演
  • 名盤
  • 定番
  • 円熟

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1984年3月,ウィーン,ムジークフェラインザール (ステレオ/デジタル)

カラヤン=ベルリン・フィル

ベルリン・フィルからオーラを感じる
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 白熱
  • 爆演

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1973年,ベルリン,フィルハーモニー

映像で見ると、いわゆるカラヤンビデオで指揮も振付があるし、カメラワークもわざとらしいですが、凄まじい迫力は伝わってきます。この派手なレガートやフィナーレでの爆発的なトッティはやはりベルリンフィルの凄い実力を感じますね。

スヴェトラーノフ=ロシア国立交響楽団(来日公演)

  • 名盤
  • 定番
  • ロシア的
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏ロシア国立交響楽団

1997年4月21日,サントリーホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

スヴェトラーノフと手兵ロシア国立交響楽団の来日公演の映像です。スヴェトラーノフは円熟の境地でスケールの大きな演奏を繰り広げています。ロシア国立交響楽団もロシア的なスケールの大きな響きで魅了されます。ロシア的な演奏が好きな方にはお薦めのディスクです。

楽譜

チャイコフスキー交響曲第5番のスコア・楽譜を挙げていきます。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

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