チャイコフスキー 交響曲第5番 Op.64

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー (Peter Ilyich Tchaikovsky,1840-1893)作曲の交響曲第5番 ホ短調 Op.64 (Symphony No.5 e-moll Op.64)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

解説

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー交響曲第5番 ホ短調 Op.64について説明します。

交響曲第5番は1888年に作曲されました。交響曲第4番から10年ぶりの交響曲でした。それまでの間、交響曲を書く材料を集めていたようです。パトロンであるフォン・メック夫人への手紙を読むと、1888年6月には作曲を開始したようでした。

初演は完成して間もない1888年11月17日にペテルブルグで行われ、好評でした。

https://youtu.be/4o3QoQ4JGgc
シノポリ=フィルハーモニア管のシャープな名演

ベートーヴェンの「運命」を目指して

チャイコフスキーはベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を非常に意識していた作曲家でした。

交響曲第4番の段階から「運命の動機」を使っているのです。この交響曲第5番も第1楽章の序奏で現れる「運命の動機」が各楽章に現れます。

次の交響曲第6番「悲愴」もベートーヴェンの「運命」を意識しています。しかし「運命はこのようにして扉を叩く」は良いとして、最後に運命を克服して勝利に至るというポイントがロマン派の作曲家の代表格であるチャイコフスキーにはなかなか出来ません。

交響曲第4番は、スピーディな第4楽章で一見勝利に見えるでしょうか。交響曲第5番の第4楽章は途中からせっつかれる様にスピーディなアレグロに入ります。最後は壮大なフィナーレですがやはりどこか冗長です。果たして勝利という目標に手が届いたのでしょうか?そして最後の交響曲第6番「悲愴」では、悲劇的に始まり、消えゆくように終わるのです。

この運命観は、鋭敏な感性を持つロマン派の大作曲家の多くが共感すると思います。マーラーはチャイコフスキーの影響を受けた作曲家でもあります。しかし結局、交響曲第5番では穏やかに終えています。ロマン派の作曲家たちはベートーヴェンの打ち立てた「運命」という頂点にたどり着くことができなかったわけです。

大衆を意識した交響曲

交響曲第5番は親しみやすい交響曲です。特にロマンティックで感情的な要素が多すぎることはチャイコフスキー自身も分かっていたようです。交響曲第4番の初演が芳しくなく、チャイコフスキー自身が自信を失っていたのです。初演時も聴衆からは好評を得ましたが、評論家からはあまり良い評価を得られませんでした。

交響曲なのにスケルツォではなく、ワルツを導入したところが、バレエ音楽のようであり(実際、バレエ音楽の影響を受けていますが)、交響曲第5番に相応しくないと思われたのかも知れません。チャイコフスキーはバレエ音楽の大家なので、「ワルツ」を交響曲に取り入れても、そのこと自体で価値が下がるとは思いませんが。

有名なメロディ:第2楽章

親しみやすいメロディが多い曲ですが、第2楽章は非常に有名ですね。ロマンティックでバレエの音楽のようなメロディで、いろいろなところで使われています。

有名なメロディ(第2楽章)

アマチュアに人気

チャイコフスキー交響曲第5番は比較的アマチュアでも演奏しやすく演奏効果も高いので、よくアマオケのプログラムに取り上げられ、「チャイ5」という略称で親しまれています。

おすすめの名盤レビュー

チャイコフスキーの交響曲第5番のおすすめの名盤をレビューしていきます。

シノーポリ=フィルハーモニア管

ストレートで激しい感情表現の名盤
  • 名盤
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ジュゼッペ・シノーポリ
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1992年1月,ロンドン

筆者が思うにチャイコフスキーの交響曲はロマンティックに演奏されすぎです。テンポがひどく遅かったり、弦楽のメロディではレガートを過度に強調した演奏が多いですね。

でも、ただ速いだけでは交響曲第5番の長所も活かせなくなってしまうようです。それに感情表現があまり不足していても、物足りない演奏になってしまいます。それらが上手くバランスしたのが、このシノーポリ盤だと思います。

わざとらしいレガートもないですし、必要以上にテンポが遅くなったりすることはありません。それでいて盛り上がる個所では、かなり感情を入れています。理知的な思考と激しい感情表現の両方を持ってるシノーポリならではの名盤です。

ムラヴィンスキー=レニングラード・フィル (1960年)

インテンポで無駄が無い、第4楽章は神の音楽!
  • 名盤
  • 定番
  • 白熱
  • スリリング
  • 壮麗

超おすすめ:

指揮エフゲニー・ムラヴィンスキー
演奏レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1960年11月7-10日,ウィーン,ムジークフェライン

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」(SHM-CD)
在庫情報:残り8点レビュー数:35個

ムラヴィンスキーレニングラードフィルを徹底的に鍛え上げ、素晴らしい名盤を残しました。今から考えればソヴィエト時代の凄い遺産です。

チャイコフスキーはロマン派の作曲家に分類されますが、ムラヴィンスキーの演奏はそれほどロマンティックではありません。線が細く、鋭いアクセントが目立ちますし、テンポもすごく速いです。どんなにテンポが速くてもアンサンブルが崩れることはありません。

映像も残っていますが、この組み合わせは何十年も一緒に演奏しているわけで、ムラヴィンスキーが指揮でオーバーアクションを取る必要は全くありません。むしろ指揮ぶりは地味に見えるのですが、出てくる音はシャープです。この演奏スタイルがオーケストラに染みついているのですね。

スヴェトラーノフ=ロシア国立交響楽団 (1993年)

スヴェトラーノフ円熟の境地、ロシアの大地を感じさせる名演
  • 名盤
  • 定番
  • 円熟
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏ロシア国立交響楽団

1993年6月8-16日,モスクワ放送局大ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

1990年代のスヴェトラーノフと手兵のロシア国立交響楽団による演奏です。このころになると、爆演が特徴だったスヴェトラーノフは徐々に落ち着いてきて、円熟した演奏を聴かせるようになります。特にチャイコフスキーは素晴らしい演奏になりました。

チャイコフスキーの5番はロマンティックすぎる曲だと思いますが、老成したスヴェトラーノフが振るとそんなことは一切感じさせない深みのある音楽に変貌(へんぼう)します。じっくり楽しみたい名盤です。

全集以外は廃盤ですが、非常に評価の高い全集でチャイコフスキーの本質を捉えつつロシア的です。チャイコフスキーの交響曲全集で買うほうがお薦めです。第2番『小ロシア』などもいい演奏です。

スヴェトラーノフ=ソヴィエト国立交響楽団

壮年期のスヴェトラーノフの本領発揮、ダイナミックな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • ダイナミック
  • ロシア風

超おすすめ:

指揮エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏ソヴィエト国立交響楽団

(ステレオ/アナログ/セッション)

アマゾンUnlimitedとは?

スヴェトラーノフとソヴィエト国立交響楽団の演奏です。リマスタリングされていて、音質は安定しています。ソヴィエト時代のスヴェトラーノフの録音なので、とてもダイナミックで、いわゆる爆演系です。ただ、もともとスヴェトラーノフはチャイ5に関しては、あまり速いテンポは取っておらず、味わい深い演奏になっています。探してみましたが、新しくロシア国立交響楽団との演奏もあるし、NHK交響楽団との録音も枯れた名演なので、壮年期の録音はアマゾンミュージックにしかありませんでした。

第1楽章は序奏を経て主部に入るとスケールの大きな音楽を繰り広げていますが、とても民族的で土の香りがする響きです。金管はロシアンブラスで迫力があります。第2楽章冒頭からロシア的な郷愁に満ちています。ホルンは余裕があり、とても上手いです。過剰なロマンティシズムが無いので、自然にすっきり聴けます。もちろん、ダイナミックな所は特に金管は容赦ない爆演です。第4楽章スケールが大きくダイナミックです。壮年期のスヴェトラーノフとしてはテンポは特別速くはありませんが、金管はあくまでダイナミックです。思い切り盛り上がって締めくくります。

壮年期の演奏で、ソヴィエト時代の録音ですが、演奏内容は充実していて、この時期ならではの迫力があります。それと共に深みがあり、既に晩年の円熟を予感させるものになっています。

ショルティ=シカゴ交響楽団 (1987年)

ダイナミックでクオリティの高いアンサンブル、高音質も魅力
  • 名盤
  • 精緻
  • ダイナミック
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ゲオルク・ショルティ
演奏シカゴ交響楽団

1987年,シカゴ

チャイコフスキー:交響曲第5番
在庫情報:レビュー数:5個

チャイコフスキー:交響曲第5番
在庫情報:レビュー数:1個

ショルティはロマンティックな方向に流されることなく、速めのテンポで厳しい指揮ぶりを見せています。シカゴ交響楽団もショルティの指揮で演奏するときは、常に緊張感をもって演奏しています。

金管楽器が非常に好調で、ソロもとても上手いですし、トゥッティの号砲は凄いですね。シノーポリ盤もいいですが、それでもロマンティックすぎる、と思ったらショルティ盤がお薦めです。

ちなみにショルティ=シカゴ響には旧盤があって、こちらの方が評価が高いようです。

カラヤン=ベルリン・フィル

カラヤン=ベルリン・フィル (1975年)

カラヤン=ベルリンフィル最盛期の録音、凄い迫力!
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1975年10月,ベルリン,フィルハーモニー(ステレオ/アナログ/セッション)

Tchaikovsky: Symphonies no 4, 5, & 6 / Karajan, Berlin PO
在庫情報:通常1~3週間以内に発送します。レビュー数:79個

チャイコフスキーの三大交響曲を聴くにあたって1975年録音カラヤン=ベルリンフィル最盛期で凄い迫力です。フォルテになるとベルリンフィルが凄い大音響で圧倒されます。カラヤンの演奏スタイルを高いレベルで実現しているのは凄いです。レガートのかけ方もカラヤンらしいです。

第5番に関しては、テンポは普通より少し遅いと思います。第2楽章など、特にロマンティックでベルリンフィルのホルンのソロのレヴェルの高さ、盛り上がりでのベルリンフィルの重厚な迫力は聴く価値があります。

ベルリン・フィルからオーラを感じる
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 白熱
  • 爆演

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー

1973年,ベルリン,フィルハーモニー

映像で見ると、いわゆるカラヤンビデオで指揮も振付があるし、カメラワークもわざとらしいですが、凄い迫力は伝わってきます。この派手なレガートやフィナーレでの爆発的なトッティはやはりベルリンフィルの凄い実力を感じますね。

スヴェトラーノフ=NHK交響楽団

  • 名盤
  • 円熟
  • ライヴ

おすすめ度:

指揮:スヴェトラーノフ(エフゲーニ)、NHK交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第5番
4.8/5.0レビュー数:10個

スヴェトラーノフとNHK交響楽団との出会いは非常に幸運なものでした。しかも、ちょうどスヴェトラーノフが老成して円熟してきたころに共演したのです。それまではロシア国立交響楽団との爆演が多かったスヴェトラーノフですが、円熟して深みを増し、NHK交響楽団の控えめでマッシブ(筋肉質)なサウンドにちょうど合う演奏スタイルになっていきました。

チャイコフスキーは多くの共演の中でも特に素晴らしいものです。NHK交響楽団の過去のライヴの中でも最高クラスの演奏であり、海外でも通用しそうなディスクです。

キタエンコ、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

  • 名盤
  • 民族的名演

おすすめ度:

指揮:ドミートリー・キタエンコ、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

Tchaikovsky: Complete Symphonies(MP3|アマゾンUnlimited)
4.7/5.0レビュー数:7個

バーンスタイン=ニューヨーク・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮:レナード・バーンスタイン,ニューヨーク・フィルハーモニック

録音:1960年,ニューヨーク,マンハッタン・センター

モントゥー=ボストン交響楽団

  • 名盤

おすすめ度:

指揮:ピエール・モントゥー、ボストン交響楽団

録音:1958年

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楽譜

チャイコフスキー交響曲第5番のスコア・楽譜を挙げていきます。

ミニチュア・スコア

大判スコア

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