動物の謝肉祭 (サン=サーンス)

カミーユ・サン=サーンス (Camille Saint-Saens,1835-1921)作曲の組曲『動物の謝肉祭』 (Le carnaval des animaux)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

風刺を利かせた音楽で全体的に面白いです。「亀」は『天国と地獄』をスローテンポで演奏させる有名な曲です。「象」は珍しいコントラバスのソロがあります。「白鳥」は単独で出版され、バレエ『瀕死の白鳥』としても有名です。

「白鳥」

解説

サン=サーンス動物の謝肉祭について解説します。

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1886年にチェリストであるシャルル・ルブークの私的な催しのために作曲されました。当初は室内楽で、サン=サーンス自身のピアノを含むメンバーで非公開で初演されました。

公開初演サン=サーンスの死後、1922年ガブリエル・ピエルネ指揮コンセール・コロンヌ管弦楽団によって行われました。この時はオーケストラによる演奏です。

組曲『動物の謝肉祭』

14曲から成り立っています。動物の謝肉祭、ですけれど、風刺に満ちており「ピアニスト」「化石」も入れられています。また、他の作曲家のパロディも取り入れられています。この謝肉祭は人間が食料となる動物たちに感謝するものなのか、動物が自分のエサに感謝するものなのか、「亀」「象」を食べる人はいないと思うので、単に動物を並べて組曲にしただけで謝肉祭は深い意味がないような雰囲気ですね。

第1曲「序奏とライオン王の行進」
第2曲「雌鶏と雄鶏」

弦楽器やピアノにより雌鶏と雄鶏の様子が描写されます。

第3曲「野生ろば」
第4曲「亀」

オッフェンバックの『天国の地獄』のカンカンの音楽を、とても遅いテンポで演奏します。これも有名な曲ですね。

第5曲「象」

コントラバスのソロが演奏します。これも有名な曲ですね。コントラバスとしては珍しいソロのある曲です。メンデルスゾーンの『夏の夜の夢』からスケルツォも引用されているとのことです。

第6曲「カンガルー」
第7曲「水族館」

グラスハーモニカ(アルモニカ)という楽器を使用し、神秘的な雰囲気を出しています。ピアノも神秘的なモチーフを奏でます。グラスハーモニカベンジャミン・フランクリン1761年に発明し、モーツァルトも協奏曲を書いています。水を入れたワイングラスを指で擦ると音が出ますが、その原理を応用した楽器で、とても人気がありました。

第8曲「耳の長い登場人物」

耳の長い動物はロバですが、ここでは自身の曲に批判的だった音楽評論家をロバとして描いています。誰かは知りませんけれど、笑。

第9曲「森の奥のカッコウ」

サン=サーンス自身のピアノ協奏曲第2番の和声進行が引用されています。暗い森の中にクラリネットがカッコウの鳴き声を奏でます。

第10曲「大きな鳥籠」

小鳥のようなフルート・ソロが鳥かごを飛び回ります。調べたわけではありませんが、チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』第3楽章から引用があるようです。

第11曲「ピアニスト」

音階練習をとても下手に弾く、という曲です。下手に弾く方法が記譜されているわけではなく、そこはピアニストのセンスですね。

第12曲「化石」

ずっと昔、生きていたであろう化石です。まず、サン=サーンス自身の『死の舞踏』の引用、ロッシーニの『セビリャの理髪師』から「ロジーナのアリア」、何故か「きらきら星」などが引用されています。

第13曲「白鳥」

チェロの独奏による有名な音楽です。
ミハイル・フォーキンにより振付が行われ、『瀕死の白鳥』というバレエ作品にもなっていて、こちらも有名ですね。

第14曲「終曲」
これまでのモチーフが多く登場する大団円です。

「水族館」

昔は引用などどの作曲家も自由に行っていたのですが、著作権などに敏感になり始めた頃であり、評論家批判とも取れる曲もあるため、サン=サーンスは生前の出版や演奏を禁じました。また作曲技術は優れていますが「フランスのエスプリ」を超えて、少し子供じみた皮肉とも取れるもので、仲間内のジョークであって、元々公開するつもりは無かったのかも知れません。

ただ「白鳥」だけは出版を許しました。今ではサン=サーンスを代表する曲の一つとして親しまれています。

おすすめの名盤レビュー

それでは、サン=サーンス作曲の『動物の謝肉祭』名盤をレビューしていきましょう。

アルゲリッチ,パッパーノ,聖チェチーリア国立音楽院管のソリスト

溌剌とした楽しい演奏、高音質で色彩的
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感
  • 透明感
  • 高音質

超おすすめ:

ピアノマルタ・アルゲリッチ
ピアノアントニオ・パッパーノ
ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団のソリスト達

2016年11月,ローマ,サラ・ペトラッシ (ステレオ/デジタル/セッション)

室内楽版

アルゲリッチを中心としたメンバーによる新しい録音です。アルゲリッチはコンサートでこの曲を良く取り上げていて、お気に入りなようです。ヴィルトゥオーゾな演奏であると共に、かなり緻密な表現で、とても色彩的で透明感があります。それを新しい録音が克明に捉えていて、上の凄いメンバーとの録音とも十分対抗できる出来栄えです。パッパーノもピアノで参加していますが、やはり中心はアルゲリッチでしょうね。

第1曲から溌剌としていてリズミカルです。第4曲「亀」第5曲「象」も良い演奏です。第7曲「水族館」色彩感がとても印象的です。各楽器の透明度が高く細かい動きまで良く聴こえます第9曲「森の奥のカッコウ」は深みもあって味わいがあります。第11曲「ピアニスト」は微妙に下手さ加減が今一つですが、アルゲリッチはすかさず切り替えていてさすがです。第12曲「化石」適度な残響の録音でとても見通しが良いです。第13曲「白鳥」とても繊細なソロが聴けます

やはり楽しんで聴ける録音です。この曲自体がフランスのエスプリの範疇を超えているので、好みが分かれそうですが、この色彩感の見事さとアルゲリッチの余裕を感じる解釈で、とても楽しめます。

アルゲリッチ,クレーメル,マイスキー,他

名手ぞろいのスリリングな名演
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩的
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

ピアノマルタ・アルゲリッチ
ヴァイオリンギドン・クレーメル
チェロミッシャ・マイスキー

1985年4月 (ステレオ/デジタル/セッション)

アルゲリッチ、ギドン・クレーメル、ミッシャ・マイスキー、その他、とてもゴージャスな顔ぶれの演奏です。オーケストラ版ではなく室内楽版です。美しいメロディも、皮肉も良く入っていて、品格も保っており、この演奏があれば十分な気もする位です。

まず全曲を通してアルゲリッチとネルソン・フレイレのピアノは流麗かつ色彩的で素晴らしいです。「白鳥」のソロミッシャ・マイスキーです。艶やかなチェロのソロで非常にレヴェルが高いです。クレーメルは意外にヴァイオリン・ソロが無いので何とも言えませんけれど、弦楽パートを小気味良くまとめています。最後の「終曲」も豪華で、サン=サーンスの原曲を超えているんじゃないか、と思う位の名演です。

デュトワ⁼ロンドン・シンフォニエッタ

レヴェルの高いオケと色彩感あふれる高音質な名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 色彩的
  • 高音質

おすすめ度:

ピアノパスカル・ロジェ
ピアノクリスティーナ・オルティス
指揮:シャルル・デュトワ
演奏ロンドン・シンフォニエッタ

1980年3月,ロンドン (ステレオ/デジタル/セッション)

サンサーンスを得意とするデュトワとロンドン・シンフォニエッタの録音です。ピアノのパスカル・ロジェはフランス音楽の第一人者として有名です。デジタル録音で音質も良く、オーケストラ版で一番スタンダードなディスクと言えます。

第1曲「序奏とライオン王の行進」からパスカル・ロジェの色彩感のあるピアノに先導され、ロンドン・シンフォニエッタがしっかりした響きで支えています。パスカル・ロジェのピアノは、やはりフランス的な色彩感と技術が素晴らしく、アルゲリッチとは違った良さがあります。第2曲「雌鶏と雄鶏」ではクラリネットのソロが素晴らしい技術と表現で楽しませてくれます。第7曲「水族館」は素晴らしい演奏で、オケも繊細でとても色彩感に溢れています。ロジェのピアノも透明感があり、グラスハーモニカがとても神秘的な雰囲気を出していて、聴きごたえがあります。第9曲「森の奥のカッコウ」はとても静かで神秘的で、まるで森の中にいるかのようです。第13曲「白鳥」は落ち着いた味わい深いチェロが聴けます。終曲は軽快に小気味良い演奏で締めくくります。

こういった曲にも真摯に取り組むデュトワには好感が持てます。カップリングのサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付き』も色彩的で定番の名演です。

小澤征爾=ボストン交響楽団、他 (オーケストラ版)

オーケストラの有名な入門曲を集めたディスク
  • 名盤
  • 定番
  • しなやか

おすすめ度:

ピアノジョン・ブラウニング
ピアノギャリック・オールソン
指揮小澤征爾
演奏ボストン交響楽団

1992年2月14&15日,ボストン,シンフォニー・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

小澤征爾とボストン交響楽団の演奏です。オーケストラの分かり易く、有名な入門曲が3曲入っています。冒頭にナレーションが入っています。

小澤氏ならではの、小気味良くスリリングな演奏が楽しめます。ピアノのブラウニングやボストン交響楽団も息がぴったりで、この組み合わせの良い所が出た演奏だと思います。第7曲「水族館」などは、鋭敏な響きへの感性が良く感じられます。第13曲「白鳥」線の細く繊細なチェロの表現で、表情豊かです。終曲は速めのテンポで明るく盛り上がり、とても楽しめます。

『動物の謝肉祭』も有名なメロディが入っていますが、ブリテンの『青少年のためのオーケストラ入門』も有名な曲ですね。

プレートル=パリ音楽院管弦楽団

古き良きフランスの香りを存分に味わえるオーケストラ版
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩的
  • フランスの香り

おすすめ度:

ピアノアルド・チッコリーニ
ピアノアレクシス・ワイセンベルク
指揮ジョルジュ・プレートル
演奏パリ音楽院管弦楽団

1966年,パリ,サル・ワグラム (ステレオ/アナログ/セッション)

プレートルとパリ音楽院管弦楽団の古き良き名盤です。オーケストラ版での演奏です。プレートルリズミカルで溌剌とした指揮でオケを上手くリードしています。オケも好調で、色彩感としっかりしたアンサンブルと両方持っています。録音も良く、色彩的な響きを良く捉えています。

オーケストラ版第1曲からダイナミックです。2台のピアノが主役なのは変わりません。エキゾチックな行進曲です。第2曲の鶏はヴァイオリン・パートの鮮やかさが印象的です。第3曲もオケの方が重さがあってより面白いですね。第7曲「水族館」オケ版は非常に色彩的です。グラスハーモニカの音も綺麗に聴こえます第8曲切れ味鋭いヴァイオリンです。第12曲「化石」は色々な引用が重なるように出てきて楽しめます。第13曲「白鳥」はオケが入らないので室内楽版と同じですが、エスプリを感じる良い演奏です。終曲色々なモチーフが出てきてとても色彩的でゴージャスです。

カップリングのプーランク『模範的な動物たち』がカップリングされている所がいいですね。

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楽譜・スコア

サン=サーンス作曲の動物の謝肉祭の楽譜・スコアを挙げていきます。

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