プロコフィエフ 交響曲第4番 (Op.47,Op.112)

セルゲイ・プロコフィエフ (Sergeevich Prokofiev,1891-1953)作曲の交響曲第4番 ハ長調(Op.47,Op.112)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

プロコフィエフの交響曲第4番はとても機転が利いていて面白く、とても楽しめます。有名とは言えないのでアマチュア・オーケストラで演奏されることは少ないですが、この曲を知っている人は皆隠れた名曲扱いです。バレエ音楽の引用も含め、色彩的で底抜けに明るく、プロコフィエフ好きな筆者も第7番『青春』と並び一番良く聴く交響曲です。

解説

プロコフィエフ作曲の交響曲第4番を解説します。

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初版はプロコフィエフの亡命時代

プロコフィエフ交響曲第4番 ハ長調はソヴィエトから亡命していた時代に、アメリカで作曲されました。
ボストン交響楽団創立50周年記念の委嘱作品として1929~1930年に作曲され、1931年にクーセヴィッツキーの指揮、ボストン交響楽団によって初演されました。

バレエからの転用

プロコフィエフの交響曲は自作のバレエやオペラのモチーフを転用することが多いのですが、この交響曲はバレエ音楽「放蕩(ほうとう)息子」の素材を転用しています。
バレエ音楽「放蕩息子」はディアギレフ率いるバレエリュスのために作曲された作品で、初演した年のシーズンオフにディアギレフが亡くなったため、バレエリュスは解散し、最後の作品となりました。
第3楽章は初版ではほぼそのまま転用されています。第1楽章では盛り上がりの最高潮で、時計の音が。バレエ「シンデレラ」からの転用でしょうね。「3つのオレンジの恋」からの転用もあるようです。

このように交響曲第4番はバレエからの素材転用が多いのが、楽しめる要因の一つにあると思います。

2つのバージョン

ヴァージョンが2つあります。大幅な改定であったため、プロコフィエフは作品番号を新たに付与しました。

2つのヴァージョン


・1930年オリジナル版(作品47)
 アメリカで初演された初版
・1947年改訂版(作品112)
 ソヴィエトに戻った後、1947年に改訂されたバージョンです。
 交響曲第5番より後に改訂されており、作曲技術が大幅に高まっています。
 第1楽章と第4楽章が大幅に拡張され、演奏時間が25分前後だった本作は45分程度の規模になりました。

現在、通常は1947年改訂版が演奏されます。いくつかのCDでは、初版と改訂版の両方を録音しています。

第1楽章:アンダンテ – アレグロ・エロイーコ
第2楽章:アンダンテ・トランクィッロ
第3楽章:モデラート、クヮジ・アレグレット
第4楽章:アレグロ・リゾルート

交響曲第4番は意外な人気曲

プロコフィエフの交響曲第5番、第7番「青春」に比べると、標題もありませんし少し地味な感じもしますが、なかなか面白い曲で、プロコフィエフ・ファンからは人気のある曲です。
第一楽章のアレグロを聴いただけでも楽しくなってきますし、盛り上がってウッドロックが時計の針を刻むなど、面白い仕掛けがある曲ですね。
だたCDを買おうとすると分売されているものが少ないので、どうしても全集を買うことになるでしょう。

おすすめの名盤レビュー

プロコフィエフ交響曲第4番のおすすめの名盤をレビューしていきます。

キタエンコ=ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ドミトリー・キタエンコ
演奏ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

キタエンコはプロコフィエフ指揮者ですね。面白い所をきちんと押さえていて、ロジェストヴェンスキーと双璧です。モスクワ・フィルとも録音していますが、こちらは音質がかなり悪かったため名盤とまでは行きませんでした。

第1楽章のアレグロも面白いです。ロジェストヴェンスキーよりは真面目ですが、ウェラーほどきちっとしていない、という感じでしょうか。第1楽章のウッドブロックの部分は、バレエ「シンデレラ」と関係あると思っていたのですが、ここではかなり荒っぽい演奏になっていて、解釈が違うようです。他にも細かい違いはありますが、色彩的なバレエ音楽の引用も楽しく演奏しています。聴いていて満足できる演奏です。

また、音質の良さは全集の中でも新しく、抜きんでています。こういう色彩的な曲の場合は、音質がいいのはとても効果的ですね。

ロジェストヴェンスキー=モスクワ放送交響楽団

  • 名盤
  • 定番

指揮ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー
演奏モスクワ放送交響楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

ロジェストヴェンスキーはプロコフィエフ交響曲第4番をいくつか録音しています。一番、有名なのはソヴィエト文化省交響楽団との全集です。モスクワ放送交響楽団とも全集を作っていて、こちらも爆演ですね。ソヴィエト文化省オケと違って本当に実力があるので、ダイナミックなところは本当に大迫力です。

ロジェストヴェンスキーとしては遊びが少ないかも知れませんが、交響曲第4番を聴くなら、こういう上手い演奏が良いですね。ロジェストヴェンスキーはバレエ指揮者として活躍した人なので、第4番のような色彩的な交響曲は得意ですし、他の演奏では聴けない表現が聴けて面白いです。

ウェラー=ロンドン・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮ワルター・ウェラー
演奏ロンドン・フィルハーモニック

1974-1978年,ロンドン,キングズウェイ・ホール,ステレオ(アナログ/セッション)

ウェラーとロンドン・フィルのの全集は、まじめというか、破天荒さはない全集ですね。聴いた限り、一番良いのは、交響曲第4番だと思いました。テンポ取りも良いですし、オーケストラのパワーやテクニックもあります。

バレエからの引用が多いように色彩的で、遊びが多かったり、じっくり聴けるところもあったりするのですが、ウェラーは割と速いテンポで通り過ぎてしまい、バレエが得意な指揮者ではないようですね。

でも、つまらない演奏ではありません。シンフォニックでスマートですが、テンポがかなり速いですし、迫力のあるところは気分よく楽しめます。

ネーメ・ヤルヴィ=スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 民族的

おすすめ度:

指揮ネーメ・ヤルヴィ
演奏スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

こちらも全集ですが、交響曲第4番は初版と、1947年改訂版の両方を録音しています。ネーメ・ヤルヴィはプロコフィエフが得意で、細かい所は力で押している傾向もありますが、聴いていて素直に楽しめるダイナミックさと、ロシアのオケでは得られない音質の良さが魅力です。キタエンコ盤も良いですが、ネーメ・ヤルヴィ盤はプロコフィエフのユニークさを前面に押し出しているので、シリアスさの少ない第4番に相応しいです。

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楽譜

プロコフィエフ交響曲第4番の楽譜・スコアを挙げていきます。

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