セルゲイ・プロコフィエフ (Sergeevich Prokofiev,1891-1953)作曲の交響曲第7番 嬰ハ短調『青春』Op.131 (Prokofiev Symphony No.7)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
解説
プロコフィエフの交響曲第7番『青春』Op.131について解説します。
最初から大成功
プロコフィエフの交響曲第7番「青春」嬰ハ短調 作品131は1952年に完成しました。初演は、1952年10月18日にモスクワでサモスードの指揮によって行われ、大成功しました。
ソヴィエトの青年に捧げる意向で作曲され、プロコフィエフ自身が「青春交響曲」と呼んでいたことから、「青春」の標題が用いられます。
ジダーノフ批判の影響
なぜ急に「青春交響曲」を作曲したかについては、一つ前の交響曲第6番でソヴィエト当局からジダーノフ批判を受けたためです。ソヴィエト当局の意向に沿った一般大衆にも分かりやすい音楽を作曲するということで、理解しやすい交響曲第7番が作曲されました。
1951年に療養先のニコーリナでソ連放送国家委員会・児童ラジオ部の依頼を受けて、作曲しました。当初は、”軽い交響曲”を依頼されたのですが、1952年7月5日に書きあげられた作品は、それなりの規模の交響曲でした。
交響曲第7番「青春」は、バレエ音楽のように明るく色彩的な主題が多く現れます。
初演は1952年10月11日にモスクワでサスモード指揮モスクワ放送交響楽団で行われました。第4楽章の最後は消え入るように終わる交響曲でしたが、初演指揮者サスモードの提案により、新たに20小節程度書き直され、急に盛り上がって終わる形に修正されました。
そのため、表面的にはソヴィエト当局の意向に沿う曲になりましたし、ソヴィエトの聴衆たちも最初から拍手喝采で迎え入れたのです。
ただ、現在は消え入るように終わるバージョンが演奏されるのが一般的です。付録的に盛り上がって終わるバージョンの譜面も付けられていますが、ディスクの場合も消え入るほうを使うのが一般的です。両バージョンを録音している場合も多いです。
ただの「青春交響曲」なのか?
一方で交響曲第7番は、なかなか深みがあり、味のある曲に仕上がっています。ソヴィエト当局の意向に沿ったとはいえ、プロコフィエフの表現したいことはかなり入っていると思います。ところどころでしみじみと人生を振り返るような哀愁に満ちた音楽が入っています。「青春」というには幼過ぎる表現もあって、生まれてから青春までの時代を振り返っているように思えますね。
プロコフィエフは実は56歳の時に転倒事故で入院してしまいます。そして、交響曲第6番、第7番は頭痛とめまいによる不調に悩まされながら病床で作曲されたそうです。これらの症状は次第に悪化していき、1953年に62歳で亡くなりました。
おすすめの名盤レビュー
それでは、プロコフィエフ作曲交響曲第7番『青春』Op.131の名盤をレビューしていきましょう。
この曲は、味わいがあるかどうか、色彩感など、演奏家を選ぶ曲で、面白い演奏で聴かないと良さが分かりにくいと思います。演奏家がこの曲に共感していないと、つまらない曲に聴こえてしまいます。
ロジェストヴェンスキー=ソヴィエト文化省交響楽団
ロジェストヴェンスキーは、インテンポでバレエのように色彩的に演奏しています。確かに、交響曲第7番「青春」はバレエとのつながりもあり、バレエ「石の花」との関連があると思います。
そういったバレエらしいメロディーを非常に上手く演奏していて、それが「人生、酸いも甘いも…」のような深い表現に繋がっている所が面白いですね。
色彩感のあるバレエのような演奏なら、ロジェストヴェンスキーに敵う指揮者はなかなか居ないと思います。じっくり聴いて楽しめる名演奏です。
キタエンコとケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の録音です。非常に丁寧な演奏です。またキタエンコの円熟によるものもあると思いますが、非常に味わい深い名盤です。
弦楽器の微妙な厚みの変化やパーカッションの色彩的なところは、新しい録音だけに非常にきれいに録音されていて、そこも有利ですね。
特に静かな場面で味わい深いのもこの演奏の特徴です。第4楽章は消え入るように終わるバージョンです。
小澤征爾とベルリン・フィルの録音です。小澤征爾はプロコフィエフを得意としていますが、全集だと名演と凡演が半々くらいです。第5番、第6番のように、他には無い素晴らしい演奏もありますが、あまりうまく行っていないものもあります。
第7番はどうも曲への共感に欠けるようで、色彩感がありません。もちろんうまい演奏ですが、味わいが感じられないのです。丁寧に演奏していますが、そういう演奏の仕方は、この第7番には合わないような気がします。
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楽譜
プロコフィエフ作曲の交響曲第7番『青春』のスコア、楽譜を挙げていきます。
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スコア プロコフィエフ 交響曲第7番 嬰ハ短調 作品131 (Zen‐on score)
解説:安原 雅之
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