プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第2番 Op.63

セルゲイ・プロコフィエフ (Sergeevich Prokofiev,1891-1953)作曲のヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 Op.63 (violin concerto no.2 g-moll Op.63)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ヴァイオリン協奏曲第2番は、聴衆に理解されるのに時間のかかった第1番と比べ、非常に聴きやすい作品です。それで居ながらプロコフィエフの良さを持っており、インスピレーション溢れる名作です。

解説

プロコフィエフヴァイオリン協奏曲第2番について解説します。

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故郷への哀愁

プロコフィエフは革命の混乱が続く故郷のロシア(ソヴィエト連邦)から1918年に日本を経由してアメリカに亡命します。当時の日本なので満州国はまだ出来ていませんが、日露戦争後に南満州鉄道の権益をロシアから譲り受け、ロシアが革命でソヴィエトになるまでの間は割と平和で日本との貿易も盛んでした。日本の運営する南満州鉄道は周囲の都市を整備し、日本からヨーロッパに行く際にも満州鉄道~シベリア鉄道のルートが使われていました。ソヴィエトから亡命する場合は、ソヴィエト国内を通ってシベリアに行き、そこから満州鉄道に乗れば実質日本の統治下に入れます。

日本では京都にも滞在しています。その後、アメリカに渡り、ヨーロッパとアメリカでも高く評価され、ピアノ演奏や作曲に充実した日々を送っています。

しかし、1925年にプロコフィエフはモスクワ公演のためにソヴィエトに戻り、ロシアの音楽家たちと親交を持ちます。その辺りがきっかけとなり、プロコフィエフは故郷ソヴィエトに戻ることを考えます。さらに1930年代に世界恐慌が起きたことで、西側の状況は不安定になります。ソヴィエトは共産主義なので、世界恐慌を免れた唯一の国です。プロコフィエフはソヴィエトからの依頼で作曲もしましたし、モスクワとヨーロッパを行き来するようになりました。そして1936年にソヴィエトに帰国します。

ヴァイオリン協奏曲第2番を作曲した時期は、ちょうどロシアへのホームシックが強くなった時期でもあります。

庄司さやか、テミルカーノフ=サンクトペテルブルク・フィル

作曲の経緯

プロコフィエフはフランス人のヴァイオリニスト、ロベール・ソエタンとヨーロッパ各地を巡る演奏旅行を行っていました。この時にソエタンのパトロンからヴァイオリン協奏曲の作曲を依頼されます。

プロコフィエフの他の作品の初演などでソエタンのヴァイオリン演奏を高く評価していたプロコフィエフは、この依頼を受け作曲を開始しました。ソエタンの演奏旅行に合わせて、第1楽章はパリ第2楽章はロシア南西部のヴォロネジで作曲されています。ピアノ・スコアを書きあげ、カスピ海沿岸で当時ソヴィエトだったバクーでオーケストレーションを行い、1935年に完成しました。

演奏旅行(フランス~ヴォロネジ~バクー~スペイン)

初演ロベール・ソエタンのヴァイオリン独奏でスペインのマドリッドで行われました。作品はロベール・ソエタンに献呈されています。

ただ、ロベール・ソエタンはヴァイオリン協奏曲第2番の真価を発揮できず、曲の評価はあがりませんでした。その後、ヤッシャ・ハイフェッツがこの作品を良く演奏して本当の評価を確立します。プロコフィエフも感謝の言葉を残しています。

曲の構成

伝統的な急-緩-急の3楽章構成で、演奏時間は約25分です。

第1楽章:アレグロ・モデラート

ソナタ形式です。主題はロシア民謡に関係のあるファンタジー溢れるものです。

第2楽章:アンダンテ・アッサイ

ファンタジー溢れる音楽です。緩徐楽章ですがテンポは速めです。後半にいくと表情豊かで聴きごたえのある楽章です。

第3楽章:アレグロ、ベン・マルカート

ロンド形式です。主題はスペイン風で、カスタネットが使われています。

編成

独奏ヴァイオリン
フルート×2、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2
ホルン×2、トランペット×2
大太鼓、小太鼓、トライアングル、シンバル、カスタネット
弦五部

おすすめの名盤レビュー

それでは、プロコフィエフ作曲ヴァイオリン協奏曲第2番名盤をレビューしていきましょう。

Vn:庄司さやか, テミルカーノフ=サンクト・ペテルブルグ・フィル

ロシアの音楽家をも魅了する変幻自在なプロコフィエフ
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感
  • 表情豊か
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリン庄司さやか
指揮ユーリ・テミルカーノフ
演奏サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー

2012年9月.サンクト・ペテルブルク (ステレオ/デジタル/セッション)

庄司さやかのヴァイオリン独奏、テミルカーノフとサンクト・ペテルブルグフィルの伴奏です。音質は非常に良く高音域が艶やかです。上にYouTubeを貼っていますが、CDはフランスでのライヴよりさらに表情豊かでずっと高音質です。

第1楽章艶のある妖艶なヴァイオリンで始まり、かと思えば、いきなりシャープになり、冒頭から強いインスピレーションの演奏で目まぐるしい位です。オケも上手く、ホルンや木管ソロは凄く上手く、庄司さやかのヴァイオリンに合わせて、そんな演奏で返してくるのか、と感心します。後半になると庄司さやかは自由自在の演奏で、この曲の面白さを最大限に引き出しています。

第2楽章はテミルカーノフの絶妙なテンポ感で、ヴァイオリンはファンタジー溢れる演奏です。伸びやかな高音域はこの録音の良い所です。ヴァイオリンとオケの絡みも良く、サンクト・ペテルブルク・フィルの格調ある管楽器が上手く絡んでいます。

第3楽章は庄司さやかは鋭い音色で主題を弾き、スペイン的な情熱的なパッセージはしなやかに弾いてみたり、モチーフごとに弾き方が違う位、多彩なインスピレーション溢れる演奏です。バックのオケの上手さが印象的です。スネヤも思い切り打ち込んできますし、カスタネットも思い切り鳴らしてきます。

聴けば聴くほど面白みに気づかされる名盤です。庄司さやかのインスピレーションとそれに応えるテミルカーノフとサンクト・ペテルブルク・フィルのハイレヴェルな名盤です。

Vn:オイストラフ, ガリエラ=フィルハーモニア管弦楽団

しなやかで自然体、ファンタジー溢れるオイストラフの名演
  • 名盤
  • 定番
  • しなやか
  • 品格
  • 芳醇
  • モノラル

超おすすめ:

ヴァイオリンダヴィッド・オイストラフ
指揮アルチェオ・ガリエラ
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1958年5月,ロンドン,アビー・ロード第1スタジオ (モノラル/アナログ/セッション)

昔からの名盤で、ヴァイオリン独奏はオイストラフ、伴奏はガリエラ=フィルハーモニア管弦楽団の録音です。録音はモノラルです。オイストラフは、このヴァイオリン協奏曲の面白さを大いに引き出していて、録音は安定した音質で十二分に楽しめます。

第1楽章ヴァイオリンはロマンティックに始まり、ヴィブラートは少なめで自然体で展開していきます。ガリエラとフィルハーモニア管の伴奏も結構レヴェルが高く、オイストラフとの息はぴったりです。色々な表現を聴けますが、ファンタジー溢れる所も良い音色です。段々とテンポを上げ、中間あたりになると大分速いテンポになっていきます。ハイフェッツのように技巧中心ではなく、プロコフィエフの音楽をしっかり表現しています。

第2楽章ファンタジー溢れる演奏です。オケも色彩感があり、1958年の録音とは思えません。ヴァイオリンの高音域はとても艶やかに響きます。表情豊かですが、過剰な表現はなく、奥ゆかしいですね。第3楽章はヴァイオリンはアクセントがあってもシャープになりすぎず、ふくよかさのある音色で弾いていきます。テンポは少しずつ速まり、盛り上がっていきます。技巧は難易度の高い個所でも終始安定していて、品格があります。

Vn:リサ・バティアシュヴィリ,セガン=ヨーロッパ室内管

色彩的なファンタジーと大人っぽい格調高さ
  • 名盤
  • 定番
  • 品格
  • 表情豊か
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリンリサ・バティアシュヴィリ
指揮ヤニック・ネゼ=セガン
演奏ヨーロッパ室内管弦楽団

2015年7月.バーデン=バーデン (ステレオ/デジタル/セッション)

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リサ・バティアシュヴィリはプロコ弾きと言ってもいいかも知れません。もっともリリースするアルバムはプロコ以外の曲も演奏レヴェルが高く、インスピレーションが必要な箇所もセンシティブで素通りすることはありません。伴奏はヤニック・ネゼ=セガンとヨーロッパ室内管弦楽団でゴージャスな組み合わせです。2015年デジタル録音で音質はとても良いです。

第1楽章しなやかで自然体の表現ですが、音色に格調の高さがあります。インスピレーションに溢れた演奏ですが、大人っぽい音色です。テンポはメリハリがあります。バックは色彩感があり、ネゼ=セガンはバティアシュヴィリのインスピレーションに上手く合った伴奏を展開しています。第2楽章オケに色彩感があり、その上でヴァイオリンの滑らかで情熱的な演奏が展開されます。第3楽章のヴァイオリンは少し速めのテンポでシャープです。ユーモアもありますが、あくまで奇麗な響きの範囲内です。色々な表情を見せてくれます。バックも色彩的で、ソロと伴奏の絡みもクオリティが高いです。徐々にテンポを速めつつ盛り上がります。

バティアシュヴィリはこのファンタジー溢れる協奏曲にあって、大人っぽい品格のある響きです。一方インスピレーション溢れる箇所も逃さず表現してきます。伴奏は知的な演奏で、少し自然さに欠ける気もしますが、意外性のある演奏を繰り広げています。初心者から玄人までお薦めできる名盤です。

Vn:チョン・キョンファ, プレヴィン=ロンドン交響楽団

とても情熱的で技巧のレヴェルも高い名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱的

おすすめ度:

ヴァイオリンチョン・キョンファ
指揮アンドレ・プレヴィン
演奏ロンドン交響楽団

1975年 (ステレオ/アナログ/セッション)

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ヴァイオリン独奏をチョン・キョンファ、バックをプレヴィンとロンドン交響楽団が務めた録音です。チェン・キョンファは情熱的な演奏をするヴァイオリニストで技術的にもかなりハイレヴェルです。録音は1970年代のアナログ録音でしっかりしたものです。

第1楽章チョン・キョンファのヴァイオリンは情熱を秘めた音色で盛り上がっていきます。技術的な安定度も抜群です。情熱的な中にしなやかさもあります。テンポは少し速めでオケを引っ張っていきます。バックは落ち着いた演奏で、プラヴィンらしく上手くソロにつけています。ヴァイオリン・ソロは優美でロマンティックに歌いこみます

第2楽章軽やかで穏やかな表現です。バックも色彩的な音色でソロを支えます。段々とヴァイオリンは情熱的に盛り上がっていきます。オケの方は冒頭のテンポを保って、テンポアップしないように支えています。

第3楽章は熱気のあるチョン・キョンファの演奏が生きています。強めなアクセントをつけ、あまり汚い音色は使わず、情熱的で技巧を見せつける所でテンポアップしていきます。プレヴィンは落ち着いてヴァイオリン・ソロを支えています。ラストはそこそこ盛り上がって終わります。

とても情熱的なプロコフィエフで技巧のレヴェルも高い名盤です。特にプロコが得意、という程ではないと思いますが、ある意味普通の演奏です。それでも聴いて物足りなさはありません。

Vn:ハイフェッツ, ミュンシュ=ボストン交響楽団

  • 歴史的名盤

おすすめ度:

ヴァイオリンヤッシャ・ハイフェッツ
指揮シャルル・ミュンシュ
演奏ボストン交響楽団

1959年2月,ボストン,シンフォニー・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

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プロコフィエフの第2番はハイフェッツが2回録音しています。この曲を良く取り上げ、世間に広めた功績があります。2回目の録音はミュンシュ=ボストン響が伴奏を務めています。録音は悪くはありませんが、良いとも言えないです。

第1楽章ハイフェッツらしくストレートな演奏です。技巧的な所を強調して、ミュンシュ=ボストン響を置き去りにして、速いテンポでの演奏を繰り広げます。雰囲気が出ていてレコードで聴くには良い演奏かも知れません。第2楽章は普通のテンポで始まります。バックの演奏は色彩的です。ハイフェッツはヴィルトゥーゾらしい表現で、艶やかで上手いです。そしてハイフェッツはテンポをどんどん上げていき、結果としては面白みが感じられます。

第3楽章かなり速めですが、シャープで面白みが感じられる演奏です。伴奏のミュンシュ⁼ボストン響は結構インスピレーション溢れる伴奏を繰り広げています。後半の盛り上がりはさすがで、ハイフェッツの演奏も凄いですが、バックの力も大きく、自然に妖しさのある舞曲になっています。

どちらかというとプロコフィエフは迷演かな、と思いますが、テンポが速さが面白い感じです。一方、カップリングのメンデルスゾーンは昔から定番の名盤です。

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楽譜・スコア

プロコフィエフ作曲のヴァイオリン協奏曲第2番の楽譜・スコアを挙げていきます。

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