ドビュッシー『海』

クロード・ドビュッシー (Claude Debussy, 1862~1918) 作曲の交響詩(交響的素描)『海』(La Mer) は、当時フランスの絵画を席巻していた印象主義を音楽に持ち込んだ音楽です。このページでは、解説の後、おすすめの名盤をレビューしていきます。ワンストップでスコア・楽譜まで紹介していきます。

交響詩『海』は、ドビュッシーの管弦楽曲を代表する曲で、とても人気があります。また吹奏楽でも良く演奏されます。

解説

ドビュッシー交響詩『海』について解説します。

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『海』は音楽の印象派

ドビュッシーは「音楽家にならなければ、海員になるつもりだった」と友人への手紙に書いている位、海が好きな作曲家でした。

葛飾北斎の海の描写に大きな影響を受けました。ドビュッシー自身のリクエストで初演時のオーケストラのスコアには葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」が印刷されました。海が好きなドビュッシーですから、この浮世絵を見たとき、よほどの衝撃を受けたのでしょうね。

なにしろ海の白波は細かく分かれて描かれているし、大きな波に囲まれるようにして、富士山が見えるのですから、マンガでもありえないような構図です。それで十分『海』の荒波を描けているし、写実的が画家からすれば、ショッキングだったに違いありません。この絵や他の浮世絵は、ご存じの通り、ドビュッシーだけではなく、印象派の画家たちにも大きな影響を与えています。

ちなみに『海』といっても浮世絵の海を音楽にした訳ではありません。「写実的でなくても、もっと自由に感じたままに描いてよいのだ」ということに気づかされた、という訳です。ドビュッシーは日本に来たことはありませんから、5音音階を使っていて、浮世絵からインスピレーションを受けていても、本当の日本についての知識はありません。あくまで印象派の影響を受けたフランスの音楽です。

作曲と初演

1903年に作曲を開始し、1905年に完成しました。途中構想を修正するなど、苦心を重ねながらの作曲でした。初演は、1905年10月15日にパリでシュヴァイヤール指揮ラムルー管弦楽団により行われました。

しかし、初演は聴衆や批評家の理解を得られませんでした。その前の1902年に初演されドビュッシーの出世作となったオペラ『ペレアスとメリザント』の印象が強く、交響詩『海』はこのオペラと全く作風が異なることも聴衆の期待を裏切るような形になってしまいまいsた。音楽評論家のピエール・ラロは、

「自然の複製品」

「海を感じることができない」

などと批判しています。さすがに「海」を感じられない、というのは批評家側の問題のような気もしますが。各地で再演された際も、聴衆の反応は芳しくありませんでした。

交響詩「海」の曲の構成

交響詩「海」は3楽章から構成されています。

交響詩『海』

第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」
静かに始まり、やがて段々と夜が明けていきます。フルートが主要主題を提示します。低弦にリズミカルなモチーフも現れ、最後は金管楽器も加わってダイナミックに日の出を表現します。

第2楽章「波の戯れ」
木管とハープがさざ波を表現します。葛飾北斎の白波の先端のように各パートの細かいアンサンブルの絡み合いとなります。

フランス系の昔の演奏は曖昧にアンサンブルしていましたが、アバド以降の演奏はきちんと譜面通りに細かく演奏してアンサンブルも合わせるという、超絶技巧が流行しています。

第3楽章「風と海との対話」
トランペットが嵐の到来を知らせます。激しい風やそれに煽られて激しくなる波を金管と弦楽器で表現しています。フィナーレではダイナミックなクライマックスを形成し、輝かしい金管とティンパニによって曲を閉じます。

曲の形式は、従来のソナタ形式などの確固とした構成はもっておらず、「循環形式」で柔軟に展開していきます。

おすすめの名盤レビュー

ドビュッシー作曲の交響詩『海』おすすめの名盤をレビューしていきます。

マルティノン=フランス放送交響楽団

定番の名盤、『海』はフランス的でスリリングな名演!
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ジャン・マルティノン
演奏フランス放送交響楽団

1973-1974年,パリ,サル・ワグラム (ステレオ/アナログ/セッション)

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マルティノンフランス放送交響楽団ドビュッシー管弦楽曲集は、フランス風のエスプリを持っていると共に、高い技術やダイナミックさ、スピード感も同時に併せ持った名盤です。録音は艶やかさがあり、色彩感を良く捉えています。昔からの定番ですが、筆者も愛聴してきて、今でも一番の名盤です。

交響詩「海」は、ただ海を描いただけではなく、波や強風なども描かれています。マルティノン=フランス放送交響楽団はダイナミックな部分で非常にスリリングな演奏をしています。フランス系の演奏家でこういったタイプの演奏は少なく、聴いていてスッキリします。

第1楽章は冒頭から早朝の爽やかな海のきらめきをブリリアントに描写しています。爽やかで味わい深いです。段々とエネルギーに満ちてきて盛り上がります。金管やパーカッションも凄くダイナミックです。第2楽章きらめきも素晴らしく、非常に色彩的です。トランペットやクラリネットなど管楽器のレヴェルが高く、鮮烈と言っても良い位です。第3楽章は一番の聴き物で、とてもスリリングです。始まりの低音域からエネルギーを秘めていて、その後トランペットが上手く素晴らしいソロを聴かせてくれます。凛とした響きでスリリングに盛り上がり、シャープな弦の響きや金管の咆哮が印象的です。ラストは金管とパーカッションを思い切って鳴らして白熱し、曲を締めます。

こういうスリリングで鮮烈さのある演奏は、これまでフランスのオケからは聴けなかったものです。それでいて色彩的な響きの美しさが損なわれることもなく、リマスタリングで音質も大きく向上しています。『海』の魅力を十二分に伝えた超名盤です。

ロト=レ・シクエル ()

フランス系のピリオド奏法でドビュッシーが楽しめる
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感
  • フランスの香り
  • ピリオド奏法
  • 高音質

超おすすめ:

指揮フランソワ=グザヴィエ・ロト
演奏レ・シエクル

2012年4月13日サンタチェーチリア,ローマ (ステレオ/デジタル/セッション)

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ロトもレ・シクエルもフランス系の演奏家です。フランス系のピリオド奏法のオケで、ドビュッシーの『海』が聴けるのはとても興味深いです。当時の楽器を使っているわけですが、20世紀初頭とはいえフランスの場合、バスーンなど、特有の楽器も多いので、響きが大分違ってきます。

第1曲美しい響きで始まります。弦セクションも色彩的です。とはいえ、パリ音楽院管のようなフワッとした曖昧な響きではありません。それとロトはスフォルツァンドを強めに演奏します。録音もかなり良いですが、特に残響が長い訳ではないですが、木のぬくもりのある昔ながらの録音会場はやわらかく芳醇な響きです。第2曲はとても綺麗で色彩がありフランス的です。弦セクションが弱いですが、無理に強い音を出さなければ、色彩的なサウンドになるのですね。アバド盤のような明晰さはありません。第3曲は速めのテンポで進みます。ロトのアーティキュレーションは独特ですね。後半の追い込みは凄く圧倒的な迫力です。ただ金管も音が細く、今のオケとは全然違う響きです。一方でフランス的な芳醇さが良く出ています

いずれの曲も技術レヴェルの高い演奏で、初演時のオケだったら全然迫力は出なかっただろうと想像します。でもロト=レ・シクエルの演奏は繊細な色彩感と共に、今でも聴けるようにダイナミックさを出しています。

カラヤン=ベルリン・フィル (1985年)

カラヤンはドビュッシーが得意、ベルリンフィルのソロも凄い
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1985年12月,1986年2月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/セッション)

カラヤン=ベルリンフィルは、昔からドビュッシーを得意としています。ベルリンフィルはドイツのオーケストラでカラヤンはオーストリアの指揮者ですが、個性、音色、技術といった所がドビュッシーに合っているのだと思います。カラヤンの指揮には奥深さがあり、ベルリン・フィルの艶やかな音色でダイナミックな弦楽セクション、名ソリスト揃いの管楽セクションで、豪華ともいえる演奏をしています。

特にこの1985年盤は、有機的なアンサンブルが素晴らしいです。カラヤンの円熟により表現が非常に細やかで繊細です。第1楽章は透明感のある響きで始まり、ソリストたちの精緻なアンサンブルが繰り広げられます。中盤の弦の厚みと躍動感が凄いです。ダイナミックな所もスケールが大きく迫力があります。第2楽章は穏やかな「海」表情が良く表現されています。その上で透明感が高く、精度の高いアンサンブルが楽しめます。第3楽章は冒頭の緊張感とダイナミックさがいいですね。トランペット・ソロの上手さもやっぱり凄く、しっかりした音色の安定した演奏でオケを引っ張っています。ラストのスケール管のあるダイナミックさも凄いし、最後までクオリティが高いです。

演奏スタイルも技術レヴェルを見ても、交響詩『海』の定番というに相応しい名盤です。

ブレーズ=ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

若いブレーズのシャープでスリリングな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 緻密
  • 色彩的
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ピエール・ブレーズ
演奏ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

1966年12月,ロンドン,パーキング・タウン・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

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ブレーズ旧盤です。演奏はニュー・フィルハーモニア管弦楽団です。ブレーズ旧盤は若いこともあってか、シャープでダイナミックさのある演奏も多く、旧盤のほうが評価が高い曲も多いです。録音は1966年なので古めですが、ノイズやザラツキもなくしっかりしていてリマスタリングの効果もありそうです。

第1曲ティンパニのロールからして大分違います。朝の情景も力強く表現されています。その後、テンポも速くなり、ダイナミックになっていきます。旧盤はやはり音がシャープで、弦楽器の出だしも特にしなやかな演奏してはいないようです。フィルハーモニア管は独特の重厚さがあります。第2曲はテンポが遅めですが、確かにこのテンポで演奏すると味わいがありますね。今のように細かいテクスチャを正確なアンサンブルで再現するよりは、色彩的な響きを聴かせてくれます。第3曲は最初から迫力があります。パーカッションなども鋭く響かせて、嵐の情景を描いていきます。テンポもどんどん畳み込みを掛けていき、最後は速いテンポでダイナミックに終わります。

ブレーズ旧盤の演奏は、アンサンブルは1960年代とは思えないクオリティの高さです。当時は相当鮮烈だったのでは?と想像します。とてもシャープでダイナミックな名演です。

ブレーズ=クリーヴランド管弦楽団 (1993年)

クリーヴランド管のレヴェルの高さ、クオリティが高く色彩感溢れる名盤
  • 名盤
  • 定番
  • クオリティ
  • 色彩感
  • フランスの香り
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ピエール・ブレーズ
演奏クリーヴランド管弦楽団

1993年3月,クリーヴランド,マソニック・オーディトリアム (ステレオ/デジタル/セッション)

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ブレーズ=クリーヴランド管弦楽団『海』はクオリティの高い演奏です。クリーヴランド管弦楽団は管楽器のレヴェルが高く、アンサンブルも精緻です。ブレーズはクリーヴランド管からフランス的な色彩感を引き出しています。録音は非常に良いです。

第1楽章は冒頭は非常に澄んだ響きで爽やかで、しなやかな響きが印象的です。ソロも上手いですね。盛り上がるところは、他の演奏ほど鋭角的ではありませんが、スケールが大きいです。第2楽章はこの演奏の白眉で、非常にクオリティの高い緻密な演奏です。ブレーズはわざと輪郭をしなやかに演奏させて、色彩感を引き出しています。ヴァイオリン・ソロのレヴェルも高いです。第3楽章は弦楽器のまろやかな響きがベースで色彩感があります。シャープさがあり、トランペットのレヴェルが高いです。後半に向かってスケールを大きくすることで盛り上げていきます。最後まで荒くなることは無く、クオリティの高さを保っています。

ブレーズ新盤は、交響詩『海』をフランス的、色彩的に上手く描き切っているクオリティの高い名盤です。

ラトル=ベルリン・フィル (2004年)

ベルリンフィルの機能性を発揮しきったダイナミックな演奏!
  • 名盤
  • 洗練
  • 知的
  • ダイナミック
  • 高音質

おすすめ度:

指揮サイモン・ラトル
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2004年9月 (ステレオ/デジタル/セッション)

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ラトルの『海』は、非常に整理されていて、ベルリン・フィルを上手く鳴らしている演奏です。録音も非常に素晴らしく、弱音でもダイナミックな響きでもきちんと捉えています。ラトルは、普段は鳴り過ぎのベルリンフィルを抑え気味に演奏していますが、交響詩『海』では、ここぞという時にしっかり鳴らしてきます。オーケストラの機能性が求められる曲なので、ベルリンフィルが実力を発揮してくれることが大事です。

ラトルは『海』の持っているストーリー性を上手く整理して表現してきます。オーケストラも何をすればよいか、すぐ分かるという感じです。結構自由自在にやっていますが、ドビュッシーの音楽の範疇を超えることはありません。例えば、第2曲の後半のテンポアップはなかなか効果的です。第1曲の後半、第3曲のラストなど、ダイナミックに演奏すべきところは、思い切りダイナミックに演奏しきっています。ここまで鮮やかに演奏しているCDは他にはないかも知れません。聴いていて本当にすっきりします。

ミュンシュ=ボストン交響楽団 (1956年)

爽やかさとダイナミックさのある名盤
  • 名盤
  • 色彩的
  • フランスの香り
  • 情熱的
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮シャルル・ミュンシュ
演奏ボストン交響楽団

1956年12月9日,ボストン,シンフォニー・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

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ミュンシュはボストン交響楽団の指揮者を務め、同時代の作曲家の音楽を初演したり、重要な活躍をしました。ミュンシュは常に音楽に対するフレッシュな情熱を失うことはありませんでした。このCDは録音は古くあまり良いとは言えませんが、ミュンシュの爽快で熱気のある音楽は伝わってきます。

第1曲は冒頭は爽やかで、まさに日の出の爽快さです。テンポは速めで爽快に進み、スリリングに盛り上がりダイナミックになっていきます。第2曲海のきらめきがダイレクトに伝わってくる演奏です。シャープさがあり、ボストン響のアンサンブルも綿密です。速めのテンポでとてもフレッシュで生き生きしています。古い録音なのに爽やかな風が吹き抜けるようで、聴いているほうも高揚してきます。第3曲は最初から速いテンポで始まり、熱気があります。ミュンシュらしく、どんどんオケをあおっていきますが、ボストン交響楽団は慣れているのか、必要以上に速くはなりません。ラストはダイナミックに終わります。

やはり交響詩『海』は理屈はさておきこの位、生き生きした爽やかさがあると、聴いていて気分が良いですね。

バレンボイム=パリ管弦楽団

パリ管のさわやかで色彩的な弦セクションが素晴らしい
  • 名盤
  • 色彩感
  • スケール感
  • フランスの香り

おすすめ度:

指揮ダニエル・バレンボイム
演奏パリ管弦楽団

1981年 (ステレオ/デジタル/セッション)

バレンボイムはダイナミックな演奏をさせたら超一級の演奏をする時があります。一方、パリ管は、元パリ音楽院管弦楽団でフランスのエスプリを持つオケですが、アンサンブル力は△でしょうか。それもフランスのオケの特色とも言えますけど。

第1曲目の最初はバレンボイムらしく遅めのテンポで始まります。指揮とオケの息が良く合っていて、パリ管の色彩的な管楽器や独特のサウンドの弦セクションが盛り上げて、ダイナミックで素晴らしい演奏です。第2曲はも色彩的でフランス的な演奏です。非常にいい雰囲気でパリ管の演奏は絶妙です。第3曲は金管楽器、特にトランペットが上手く、きれいで伸びのある音を出しています。パリ管の個性やフランスらしさも残したうえで素晴らしいアンサンブルです。フィナーレもスケールが大きくダイナミックで素晴らしい演奏でした。

バレンボイムのダイナミックさがパリ管からスケールの大きな響きを引き出した名盤です。

アバド=ルツェルン祝祭管弦楽団

細かい音まで再構築して再現、凄い表現とテクニック!
  • 名盤
  • 精緻
  • 洗練
  • スリリング
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮クラウディオ・アバド
演奏ルツェルン祝祭管弦楽団

2003年,ルツェルン音楽祭 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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アバドはイタリア人の指揮者で、イタリア物を得意としていますが、かなり力を入れてドビュッシーに取り組んできています。少なくとも「海」は3種類のディスクが出ています。また歌劇「ペレアスとメリザンド」という大作にも取り組んでいますので本格的です。「海」はこのルツェルン祝祭管弦楽団との演奏が素晴らしいです。

アバド「海」第2楽章が特徴的ですが、リズムを曖昧(あいまい)にすることはなく、複雑なリズムをパッチワークのように組み合わせています。こういったところがフランス系演奏家と違う所でしょうね。実力のあるオケですので、ダイナミックなところもしっかり演奏しています。

交響詩「海」はアバドの緻密な所が良く出ていて、ルツェルン祝祭管は精度の高いアンサンブルで演奏しています。他では聴けないタイプの名盤だと思います。

マゼール=ウィーン・フィル (1999年)

ウィーンフィルが自然体で紡ぎだす印象派の響き!
  • 名盤
  • 芳醇
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ロリン・マゼール
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1999年1月,ウィーン,ムジークフェラインザール(ステレオ/デジタル/ライヴ)

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マゼール盤はウィーン・フィルのくすんだ響きを活かした面白い演奏です。フランス物の割に、フランス的な演奏が少ないですね。マルティノンが素晴らしいですが、マゼール=ウィーンフィルは、ウィーンフィルの持っているくすんだ響きを活かした演奏をしています。『夜想曲』ではこれが本当に良い方向に出ていました。

第1曲は、やはりウィーンフィルのくすんだ響きが良く出ていて、早朝のまだ日が昇り切らない雰囲気をよく再現しています。マゼールも遅めのテンポでじっくり聴かせてくれます。ダイナミックな曲は苦手そうなウィーンフィルですが、マゼールが上手くテンポ設定して上手く演奏しています。無論、ベルリンフィルのようには行きませんけれど、昔のウィーンフィルに比べるとかなり良いです。第2曲も少し遅めのテンポでウィーンフィルらしい響きを活かしています。フランスのオケのような色彩感は少ないのですが、絵画の印象派のような独特の響きになっています。第3曲も同様です。結構、ダイナミックな所も勝手知ったるマゼールの指揮のもと、しっかり演奏しています。この演奏の長所はダイナミックさではないと思いますが、そこがマイナスポイントになることは無いと思います。最後も金管とティンパニでビシッと締めています。

マゼール=ウィーンフィルのユニークな試みですが、結果として想像以上に上手く行っていると思います。

ミュンシュ=パリ管弦楽団 (1967年ライヴ)

ミュンシュらしい気合いの入った壮絶ライヴ!
  • 歴史的名盤
  • 壮絶
  • スリリング
  • ダイナミック
  • ライヴ

指揮シャルル・ミュンシュ
演奏パリ管弦楽団

1967年11月14日 (ステレオ/アナログ/セッション)

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ミュンシュはパリ管の初代指揮者です。この演奏はライヴでパリ音楽院管からパリ管に生まれ変わった時のお披露目コンサートの様子です。この日のミュンシュは凄く気合いが入っています。このCDにカップリングされている後半の「幻想交響曲」の演奏は伝説的です。

ドビュッシー『海』は最初は遅いテンポで入るのですが、段々熱気を帯びてくるとテンポも速くなってきます。ただ技術的にはパリ管は意外とハイレヴェルで、特に金管は思っていたよりずっと良い演奏です。テンポが速くなってきても、そのテンポで演奏できています。ライヴなので録音状態はあまり良くない気がします。第2曲は最初から速めのテンポです。アンセルメの第2曲も速めだったので、当時のスタンダードなのかも知れませんけど。

第3曲は最初は遅めに入りますが、すぐに盛り上がって速くなってきます。終盤は、ちょっと速すぎてオケが音を出す時間が無い感じです。それと途中で何か声が入っています。ミュンシュの叫び声のようです。フランス語で何か言っているように聴こえます。もう少し遅めのテンポのほうが、管楽器などしっかり音が出る気がしますが、もうそんな精神状態ではないみたいです。さらにテンポアップして詰めていって、最後はダイナミックに終わります。

演奏後はまだ前半なのに盛大な拍手が入っているので、会場で聴いたら相当白熱した名演だったでしょうね。ここまで気合いの入ったコンサートなんて滅多にないと思います。

アンセルメ=スイスロマンド管弦楽団 (1957年)

意外に速めのテンポ、アンセルメもオケも頑張っているが録音に入り切っていない
  • 歴史的名盤
  • スリリング
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮エルネスト・アンセルメ
演奏スイス・ロマンド管弦楽団

1957年10月,ジュネーヴ,ヴィクトリア・ホール

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アンセルメ=スイスロマンド管の演奏は、録音も古いですし、ダイナミックさに欠けるので交響詩『海』に関しては、あまり高い評価の演奏とは言えません。でも、1960年代以前の演奏は皆こんな感じだったと思います。ということで、再度聴いてみたいと思います。

第1曲からかなり速いテンポです。昔のほうがテンポは速かったのですかね。アンセルメは理知的な印象があったので、もう少し余裕を持ったテンポかと思っていました。ダイナミックな演奏ですが、録音に入り切っていません。特にティンパニはあまり鋭い音ではないですね。第2曲もかなり速いテンポで巻いていきます。このテンポだと正確に演奏するのは難しいです。でも、ある程度速いテンポのほうがさざ波の雰囲気はでます。

第3曲良く聴くと意外にダイナミックです。弦と打楽器は弱めですが、管楽器が健闘しています。アンセルメも速めのテンポを基調にかなりテンポの変化をつけています。最後はダイナミックなのですが、ティンパニが鋭くないことと、録音に入り切っていないことで、物足りない感じがします。

このテンポの速さはちょっと意外でした。技術面は録音が悪すぎて分かりにくいのですが、今のオケに比べるとダイナミックさは物足りないと思います。しかし、学生の時に聴いた印象から比べると意外に頑張っていたんだなぁと思います。

演奏の映像(DVD, BlueRay)

歴史的な映像や貴重な映像など、多くの映像が残っています。

ミュンシュ=ボストン交響楽団

ミュンシュの『海』、貴重な映像
  • 名盤
  • 色彩的
  • フランスの香り
  • 情熱的
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮シャルル・ミュンシュ
演奏ボストン交響楽団

1958年10月28日,ハーヴァード大学,サンダース・シアター (モノクロ/ライヴ)

ミュンシュと手兵ボストン交響楽団のコンサート映像です。ミュンシュは指揮ぶりがエネルギッシュで見ごたえがあります。ボストン響とのCDも名演ですが、その指揮ぶりを見ることが出来ます。

Claude Debussy 「La Mer」 Edition

アバド、バレンボイム、オーマンディの3種類の『海』を収録!
  • 名盤

超おすすめ:

演奏アバド=ルツェルン祝祭管弦楽団
演奏バレンボイム=シカゴ交響楽団
演奏オーマンディ=フィラデルフィア管弦楽団

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アバド&ルツェルン祝祭管(2003年)、バレンボイム&シカゴ響(2000年)、オーマンディ&フィラデルフィア管(1977年)の3種類の『海』が収録されています。

アバドはCDでもリリースされている緻密な名演です。注目はバレンボイム=シカゴ交響楽団の新しめの2000年の映像でしょうか。シカゴ交響楽団との『海』を見ることが出来ます。

またオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の映像は貴重です。以前より『惑星』とのカップリングでリリースされていました。

『海』が3つも入っていて、いずれも名演という面白いDVDです。輸入盤ですが、ドキュメンタリーも収録されています。

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楽譜

ドビュッシーの交響詩『海』の楽譜をリストします。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

ミニチュア・スコア

スコア ドビュッシー 「海」 (Zen‐on score)
解説:菅原 明朗
4.3/5.0レビュー数:3個

大判スコア

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