
セルゲイ・プロコフィエフ (Sergeevich Prokofiev,1891-1953)作曲の交響曲第1番『古典』ニ長調 Op.25 (Symphony No.1 Op.25)、通称「古典交響曲」について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
解説
プロコフィエフ作曲の交響曲第1番『古典』について解説します。
プロコフィエフ最初の交響曲
交響曲第1番『古典』は、プロコフィエフが音楽院在学中に、
ハイドンが生きていたら書いたであろう作品
という課題を与えられて書いたものです。
いかにも才気にあふれた若い作曲家が、「古典派の曲なんて簡単に作れるよ」とばかりに、サラッと書き上げたイメージです。
実際、若書きなところはあると思うのですが、当時台頭してきた新古典主義の流れに乗っていると思います。古典派以前の音楽とみてどうか?と言われると、ハイドンというよりコミカルな曲を作曲したような感じです。でも曲のクオリティも高いですし、ガヴォットなどは将来バレエを沢山作曲する才能を既に示しているように思います。頻繁に演奏会に取り上げられる理由も分かりますね。
新古典主義的
全体的に小編成でも演奏できるところなどは、新古典主義的です。中でも第3曲のガヴォットはバロックの舞曲ですね。バレエ「ロミオとジュリエット」に転用されるので、きちんと踊れるまともなガヴォットなのです。これがちゃんと演奏できるかで、『古典』の価値が決まりますね。
といっても『古典』を古楽器オケなどが取り上げたことは聴いたことがないので、ガヴォットをちゃんと演奏できているCDにはお目にかかったことがないですね。第4楽章に至っては、スピード勝負みたいになっています。まあ別にいいですけど、古典とあまり関係ないような。。
速い演奏と遅い演奏
この『古典』交響曲は、スリリングさを重視したテンポの速い演奏と、しなやかさを重視したテンポの遅い演奏がありますね。テンポの速い演奏は、演奏者のテクニックを見せつけるのに最適な曲なので、そういう目的には効果的ですが、何か面白みに欠けるような気もします。
テンポの遅い演奏は、楽譜を丁寧に見ると、実にしなやかに書いてあるので、上手くいけばなかなか名演奏になります。いままで聴いた中で一番良かったのは、小澤征爾=水戸室内管弦楽団です。TVで録画したのを観たのですが、とても素晴らしい演奏でした。なぜ、これをCD化しないでベートーヴェンに力を入れたのか、今考えると勿体ないことです。他に、ジュリーニやアンセルメの演奏は丁寧です。チェリビダッケまで行くと、正直どうしたいのか分かりません。いずれにせよ、しなやかさで、小澤征爾=水戸室内管弦楽団を超える演奏はまだ無いのですよね。
曲の構成
古典的な4楽章形式です。演奏時間は約15分です。
フルート×2、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2
ホルン×2、トランペット×2
ティンパニ
弦五部
おすすめの名盤レビュー
正直言うと、小澤征爾=水戸室内管弦楽団を聴いてしまったので、それを超えるCDがないのです。小澤征爾はベルリンフィルとディスクを残していますが、この演奏はベルリンフィルが重いです。他にスバ抜けた素晴らしい演奏は見当たりません。その中で良い演奏を選んでみたいと思います。
デュトワはプロコフィエフで名演となることもあるし、凡演になることもあり、得意なのかどうか、良く分からない指揮者です。
しかし、このアルバムは良い演奏で、かなり楽しめます。『古典交響曲』は透明感と色彩感のあるモントリオール交響楽団の響きを堪能できます。正攻法の演奏です。第1楽章はスタンダードな演奏、第2楽章は自然体で意外に味わいがあります。第3楽章ガヴォットは非常にリズムが良い演奏で、このページの中でも一番いいと思います。第4楽章は一転して速いテンポで、スリリングです。
カップリングの曲目が良いですね。『キージェ中尉』『3つのオレンジの恋』は選曲が良いです。プロコフィエフ初心者で何か親しみやすいCDを聴きたい場合は、最右翼ですね。
テミルカーノフはロシア人指揮者で、プロコフィエフも得意な曲目です。直接的な表現は避け、常に紳士的に格調の高い演奏をする指揮者です。サンクトペテルブルク・フィルの響きにもよく合っています。
この『古典』交響曲は、割と速めのスタンダードなテンポ取りですが、サンクトペテルブルク・フィルのロシア的な響きとテミルカーノフの格調高い表現で、味のある演奏になっています。第4楽章もスリリングです。ロシア的な古典交響曲の名演です。
カラヤン=ベルリンフィル
カラヤンの演奏は、少し遅めのテンポで丁寧にまとめた名盤です。プロコフィエフの交響曲は全集が多いので、個別に入手したい場合はカラヤン盤は最適と思います。1981年の録音で、カラヤンの円熟が聴かれ、テンポは少し遅めです。丁寧で味わいがあり聴きごたえがある名盤です。筆者的にはガヴォットはもう少し軽妙に聴かせてほしかったですけれど。
カップリングの交響曲第5番は正道をまっすぐ進むような演奏で、こちらも迫力のある名演です。
既に書きましたが、小澤征爾のテンポはいつもと同じですが、遅いテンポなので重くなってしまっています。ベルリンフィルは編成が大きいのか、結構重いのです。
なので、数ある古典交響曲の中では面白いほうの演奏なのですが、ちょっとしなやかさに欠ける部分があります。ガヴォットももっと軽快にしなやかにやらないとフランスの舞曲の雰囲気が出ないですね。
カップリングの交響曲第5番や交響曲第6番は凄い名演です。基本的に小澤征爾はプロコフィエフが得意なので、色々聴いてみると面白いと思います。
オルフェウス管弦楽団は技術的にも音楽的にも理想的な演奏をしています。テンポは中庸で丁寧な演奏です。指揮者がいないので、ちょっと表現の限界もあるのですが、筆者が知っている中では一番素晴らしい演奏です。ガヴォットも完璧ですし、第4楽章もとてもスリリングです。
キタエンコは、中庸のテンポで丁寧なスタンダードだと思います。しなやかさもあって、第2楽章は味わい深さもあります。第3楽章ガヴォットも良い演奏です。第4楽章は速くはありませんがスリリングです。新しい録音なので高音質なところが良いです。
ゲルギエフ=ロンドン交響楽団
ゲルギエフは、割と標準的なテンポで演奏しています。スリリングなスピードを追い求めている部分と、品の良いバレエ的なリズムを求めていることろの差もついています。ただ、ちょっともう少し丁寧だといいかなと思いました。
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交響曲第1番「古典」の楽譜
プロコフィエフ作曲の交響曲第1番『古典』のスコアをご紹介します。