ブルックナー 交響曲第5番

アントン・ブルックナー (Anton Bruckner,1824-1896)作曲の交響曲 第5番 変ロ長調 (Symphony no.5 b-dur)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

お薦めコンサート

🎵ミンコフスキ、東京都交響楽団

2023/6/25(日) 14:00 開演 ( 13:00 開場 ) 東京芸術劇場 コンサートホール (東京都)
第977回定期演奏会
ブルックナー(交響曲第5番変ロ長調-ノヴァーク版)[指揮]マルク・ミンコフスキ

2023/6/26(月) 19:00 開演 ( 18:00 開場 ) サントリーホール 大ホール (東京都)

第978回定期演奏会
ブルックナー(交響曲第5番変ロ長調-ノヴァーク版)[指揮]マルク・ミンコフスキ

解説

ブルックナー交響曲 第5番 変ロ長調について解説します。

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この交響曲第5番はブルックナーの交響曲の中でも、特に全曲を整然とした構成となっています。そのためしばしば「コラール風」「信仰交響曲」と呼ばれます。

ブロムシュテット=ゲヴァントハウス

1875年に作曲が開始され、約半年の期間をかけて、1876年5月16日に全曲をオーケストレーションも含めて完成しています。いつものように、細部の構成に満足できず、約1年後の1877年5月ごろにチューバを加えるなどの補筆を行っています。しかし、それ以降は一度も改訂されておらず、第1稿のままとなっています。そのため、ハース版とノヴァーク版にはほとんど差がありません

初演:シャルク版

初演は1894年4月8日にF.シャルクの指揮で行われています。ブルックナー自身は病気で行くことが出来ませんでした。このシャルクが初演したヴァージョンには実は大きくスコアが改竄され、カットされていました。これがシャルク版で、ロジェストヴェンスキーが演奏していたヴァージョンです。

信仰交響曲

さて、第5番は「信仰交響曲」等の呼ばれ方をしていますが、他の交響曲にも増してブルックナーらしさがあり、交響曲第8番と同様、遅いテンポで楽譜通りに演奏するのが良い、という考えが多いようです。

ブルックナーは楽譜通りに一定のテンポで演奏しなければいけない、と決めたのは誰なんでしょうか?朝比奈隆や晩年のヴァントが広めた演奏スタイルなのではないかと思います。でも朝比奈隆シカゴ響では、そこが理解されず、少し単調な演奏になってしまいました。これも一つのスタイルですが、この演奏スタイルに固執する必要はないと思います。

ヨッフムにしろ、マタチッチにしろ、ヨーロッパではテンポを変化させるのが当たり前で、フルトヴェングラーなどさらに自由自在にテンポを変えています。評価の高いシューリヒトもテンポの変化は大きいですね。クナッパーツブッシュは比較的遅めのテンポで安定していますが、それでも、一定のテンポを保つという訳ではなく、ワーグナーのようなドラマティックな演奏もしています。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ブルックナー作曲交響曲 第5番 変ロ長調名盤をレビューしていきましょう。

マタチッチ=チェコフィル

マタチッチ最大の遺産
  • 名盤
  • 定番
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ロブロ・フォン・マタチッチ
演奏チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1970年11月2-6日,プラハ,芸術家の家 (ステレオ/アナログ/セッション)

マタチッチ=チェコフィル盤定評のある名盤です。オケもチェコフィルですから、かなり技術レベルも安定しています。

第1楽章は、フォルテで入るユニゾンが野性的でダイナミックです。全体的に速めのテンポを取って軽快に進みます。最後はほとんど熱狂的と呼べるくらいの盛り上がりになっています。第2楽章は重厚なコラールが聴き物です。純粋なドイツ的というよりも、少しスラヴ的な民族色が入っているようにも思います。いずれにしても信仰交響曲に相応しい演奏となっています。

第3楽章は、結構テンポのアップダウンがあり、マタチッチらしくダイナミックに面白く聴かせてくれます。マッシヴで強烈なリズムです。第4楽章は、強弱も良くつけていますが、ニュアンスの違いを上手く表現していて、味わい豊かです。ダイナミックにクレッシェンドする箇所では少しアッチェランドがかかります。コラールはダイナミックですが、スラヴ系の音楽のようで、そういう味わいもあります。

全体的にマタチッチの長所が活かされています。ブル5は下手をするとストレートなだけに逆に単調に聴こえてしまいがちですが、マタチッチは上手くテンポの変化をつけて、曲の本質を引き出しながら、飽きることはほぼありません。マタチッチらしい名盤です。

朝比奈隆=大阪フィル(1973年)

朝比奈隆のブルックナーの原点、白熱の名演!
  • 名盤
  • 神々しさ
  • 白熱
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮朝比奈隆
演奏大阪フィルハーモニー管弦楽団

1973年7月24日,東京文化会館 (ステレオ/アナログ/ライヴ)

朝比奈隆のブル5といえば、まずはシカゴ交響楽団との共演を思い出します。シカゴ響との演奏は朝比奈の懐の深い響きが逆にあだとなってしまい、少し平板に聴こえる演奏でした。シカゴ響との演奏は超一流オケからの招聘なので大きな勲章でしたが、大分文化が違うので、急に朝比奈の理想の響きを要求しても難しいですよね

生演奏で都響との演奏を聴いたのですが、こちらも少し平板でした。同時期の大阪フィルとの演奏は良かった気がします。朝比奈の理想とする響きはオリジナリティが高い分、同じ日本のオケでも難しいと思います。

今、評価が高いのは朝比奈隆の1970年代のこのディスクです。昔の演奏だと大阪フィルの技術面が気になりますが、実際聴いてみると想像よりもずっと良い演奏で驚きました。1970年代と言えば、聖フローリアンの第7番です。これは名演ですが金管のミスが多く、同じ1970年代~1980年代の第7番~第9番は、東京カテドラル大聖堂での録音を聴いていました。第5番と言えば、朝比奈隆が得意としている曲と聴いていましたが、これまでそれを感じられる名盤に巡り合えていませんでした。

さて、この第5番は少し残響がドライな東京文化会館でのライヴです。

第1楽章は冒頭から凄いスケールで大阪フィルの響きは格調が高く神々しいのです。これだけ格調が高い響きが当時の大阪フィルで出せるものなのか、と感心します。確かに東京文化会館は弦楽セクションは上手く響かせると木の響きになりますけど、当時と今では音響が大分変ったのでしょうかね。

朝比奈隆はまだ若々しさがあり、大阪フィルをダイナミックにドライヴしていきます。テンポも遅いですが、晩年よりは速めで、このライヴでは熱気で大阪フィル全体が沸き立つような凄さです。

第2楽章は第2主題の弦セクションが分厚くて素晴らしい響きです。フォルテの所は分厚く壮麗な響き、ピアノの個所は細かい表情が付いていて、味わい深いです。後半は、神々しさがまた出てきて、天上へ向かう音楽のようです。壮麗でありながら穏やかさもあり、そういえば朝比奈隆の宗教観は知らないのですが、キリスト教の大聖堂で演奏するのに相応しい美しさです。

第3楽章は晩年の演奏よりもリズミカルです。テンポも速めで楽しんで聴けます。テンポが遅い部分は弦セクションの響きのブレンドが良く、少し重いですが晩年の演奏に近いかも知れません。

第4楽章は、非常にダイナミックで白熱した演奏です。晩年ほど素朴ではなく、マタチッチのような、とまでは言えませんけど、メリハリのあるドラマティックな盛り上がりを見せています。最後は物凄い盛り上がりを見せ、会場も大拍手です。

確かにこの第5番は名盤ですね。こんな壮麗な演奏が、しかも東京文化会館で出来るだけのパワーが当時の大阪フィルにあったとは思いませんでした。

解説書によれば、この演奏で、朝比奈隆は「自分はブルックナーをやっていける」と確信したとのこと。すなわち、この演奏は朝比奈隆のブルックナーの原点だったということです。聖フローリアンの第7番が1975年であることを考えると、1970年代にはもうブルックナーの演奏スタイルを確立していたのかと思っていました。

思うに第5番に関しては、晩年の少し平板な演奏よりも、1970年代のこの演奏のほうが素晴らしいですね。

朝比奈隆=新日本フィル

  • 名盤
  • ライヴ

指揮朝比奈隆
演奏新日本ハーモニー管弦楽団

1992年9月2日 サントリーホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

朝比奈隆と新日本フィルの録音です。とても相性の良い組み合わせで、新日本フィルの金管のパワーと朝比奈隆の円熟したスケール感が上手くマッチしています。この録音も非常に高い評価を受けています。

シューリヒト=ウィーン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • ライヴ
  • モノラル

超おすすめ:

指揮カール・シューリヒト
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1963年2月24日, (ステレオ/アナログ/セッション)

シューリヒトは、思ったより遅めのテンポで第1楽章を演奏しています。ただ随所にみられる細かい音符の小気味良い処理で、必要以上に重さを感じさせません。管楽器のユニゾンにもリズムの軽さがあります。また、対位法的な部分の処理が上手いですね。ドラマティックではありませんが、必要以上に重くなったり、きつくなったりすることなく響きを楽しめる演奏です。

第2楽章も遅めのテンポで、神妙な中にもオーストリア風の歌いまわしが感じられます。コラール風の主題も味わいがあります。シューリヒトの音楽にはそれほど厳しさはなく、オーストリアの自然を感じるような、自然な信仰心を感じます。

第3楽章はテンポはかなり速めで、それまで遅めだった分を取り返すようにリズミカルで軽妙に、ダイナミックに演奏しています。アゴーギクも相当付けています。面白いのは中間部です。テンポを落として文章にできない表現ですが、ここはいい演奏です。第4楽章は最初の回想部分は神妙に遅いテンポで始まります。対位法の部分にくるとテンポアップします。シューリヒトの演奏は対位法の所が明快で聴きやすいですね。それぞれの表情に合わせて大きくテンポを変化させていることも特徴です。第4楽章で出てくる主題は基本的に速めなテンポで演奏しています。後半はダイナミックに盛り上がり、最後は凄いスケールの大きさで終わります。

このシューリヒト盤は、第5番を理解するのに良いと思います。特に第4楽章の対位法の演奏は分かり易く、恣意的な表現もないですし、全曲の全体像を把握するにはとても良いディスクです。

レーグナー=ベルリン放送交響楽団

オーストリア的な雰囲気とリズム感のある名演
  • 名盤
  • しなやか
  • 個性的

おすすめ度:

指揮ハインツ・レーグナー
演奏ベルリン放送交響楽団

1983年9月,1984年1月,ベルリン放送局 (ステレオ/アナログ/セッション)

旧東ドイツの名指揮者ハインツ・レーグナーと手兵のヘルリン放送交響楽団の録音です。レーグナーの音楽作りは最近見直されてきていますが、ブルックナーは特に相性が良いです。

ヴァント=ベルリン・フィル

ドイツ的で重厚な名演
  • 名盤
  • しなやか
  • 個性的

おすすめ度:

指揮ギュンター・ヴァント
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1996年1月12-14日,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/アナログ/ライヴ)

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楽譜・スコア

ブルックナー作曲の交響曲 第5番 変ロ長調の楽譜・スコアを挙げていきます。

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