フィンランディア Op.26 (シベリウス)

ジャン・シベリウス (Jean Sibelius,1865-1957)交響詩『フィンランディア』作品26(Finlandia Op.26)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

フィンランディアは1899年に作曲された作品です。その後、シベリウスは合唱用に編曲したバージョンも作曲しており、フィンランドの第2の国歌とも言われています。

フィンランド以外でも人気のある曲で、多くのCDが出ています。その中でベルグルンドカラヤンC.デイヴィスなど、特に名盤と思われるものをレビューしていきたいと思います。

解説

シベリウス作曲『フィンランディア』を解説します。

フィンランドの歴史(北欧とロシアのはざまで)

まずフィンランドの歴史を書いてみたいと思います。

フィンランドは昔は同じ北欧であるスウェーデンが支配していたのですが、フィンランドではスウェーデンに対する不満が渦巻いていました。1808年ロシア帝国はスウェーデンに宣戦布告し、フィンランド戦争が始まりました。スウェーデンは、ここでロシアに大敗し、フィンランドはロシア帝国に組み込まれることになりました。

しかしロシア皇帝のアレクサンドル一世は、フィンランドを立憲君主制のフィンランド大公国とし、自身がその大公の地位につきました。フィンランドにとって「自由の時代」となり、この時期にフィンランドは民族意識を高めていきます。フィンランド文化も花開き、1835年に民族叙事詩カレワラが出版されます。

フィンランドのロシア化政策

1871年にドイツ帝国が誕生すると、その対策としてロシア帝国は国内の引き締めを始めます。1899年にロシア皇帝ニコライ2世はフィンランドの自治権を廃止し、ロシア化政策を行いました。ロシア語を強制され、フィンランド軍も解散させられてしまいます。

そんな中、フィンランド人の民族独立の意識が高まっていきます。
最初、シベリウスは8曲から成る組曲「フィンランドは目覚める」を作曲しましたが、ロシア政府はこの曲を演奏禁止処分にしました。

曲名を変更するなどして、『フィンランディア』の初演は1900年にヘルシンキで行われました。

3部形式ですが、主部はフィンランディア賛歌の部分であり、それを2種類の序奏が囲む形となりました。A-B-Aの形式ですが、Bが主部、Aはあくまで2種類の序奏という形で作曲されています。

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第二の国歌:フィンランディア賛歌

フィンランドはその後、ロシア革命の隙をついて独立を果たし、フィンランド共和国が成立します。しかしソヴィエトの侵略など、何度も危機を迎えます。

そこで、1941年に詩人のヴェイッコ・アンテロ・コスケンニエミによって歌詞がつけられ、シベリウスは合唱用に編曲したバージョンである、『フィンランディア賛歌』を作曲しました。

この曲は今でもフィンランドの第2の国歌と言われ、親しまれています。

おすすめの名盤レビュー

ここでは、交響詩『フィンランディア』おすすめの名盤をレビューしていきます。

民族的な情熱を感じる演奏は、やはり北欧の演奏家に多く、フィンランドのヴァンスカ、ベルグルンド、オッコ・カムはそれぞれ素晴らしいです。ネーメ・ヤルヴィもかなり共感をもって演奏していることが伝わってきます。また、北欧の演奏家は独特のテンポ取りや盛り上げ方が目立ちますね。

一方、カラヤンやイギリスの演奏家たちもこの曲を得意としていますが、テンポ取りはスタンダードです。いかにもフィンランディア、という演奏が多いです。カラヤンは力強くパワーもあって、その中でも特に名盤です。コリン・デイヴィスなど、イギリスの演奏家は、もう少し落ち着いた演奏が多いですね。

いずれも『フィンランディア』の特徴の一面を持っているので、どれが一番、というのは難しいですが、筆者の主観も交えてレビューしていきます。

ヴァンスカ=ラハティ交響楽団

  • 名盤

超おすすめ:

指揮:オスモ・ヴァンスカ、ラハティ交響楽団
録音:1992年~1999年 DDD

序奏は遅く重めに始まります。ティンパニのロールが力強いです。金管が入って情熱的に盛り上がります。やはり地元の演奏だけあって、感情が入っていますね。少しくすんだラハティ交響楽団の民族的な響きが印象的です。

主部に入ってもテンポは中庸か少し遅めです。力強く、響きに味があります。テンポアップして、情熱的に盛り上がりますが、民族的な響きはそのままなのがいいですね。

中間部は、標準的なテンポで演奏しています。弦セクションのくすんだ響きが印象的です。最後はトロンボーン中心にダイナミックに盛り上がります。

民族愛に満ちた演奏ですが、ベルグルンドとは違って標準的なテンポ取りですが、ヘルシンキ・フィルほどのパワーはない代わりに、それを補って余りある土の香りがする響きが心地よいです。

フィンランディアの代表的な名盤として万人にお薦めできると思います。

ベルグルンド=ヘルシンキ・フィル

  • 名盤
  • 民族的名演

超おすすめ:

指揮:ベルグルンド(パーヴォ)、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

ベルグルンドは、シベリウスの交響曲を深く理解し、3つの交響曲全集を録音した指揮者です。非常に情熱的な演奏です。

ただベルグルンドのフィンランディアは、他の一般的な演奏と少しテンポが違う箇所があり、最初は少し戸惑うかもしれません。でも熱気のある名演ですので、興味がある方は是非聴いてみてください。

序奏の段階からかなりの情熱で、独特のレガートで押していきます。前に前にという感じで、主部に入るとかなりのテンポの速さです。ヘルシンキ・フィルの弦の響きが印象的です。有名な中間部もそこまで遅くはしません。熱気を保ったまま演奏してきます。弦楽器も入って盛り上がった後、そのままの勢いで速いテンポで再現部に入り、フィナーレは盛り上がって終わります。

最初から最後まで一直線で、感情の入れ方は半端じゃないですし、熱気が凄いです。

ちなみに有名な交響曲第2番は名演で、非常に選曲の良いCDです。

ネーメ・ヤルヴィ=エーテボリ交響楽団

  • 名盤
  • 民族的名演

おすすめ度:

指揮:ネーメ・ヤルヴィ、エーテボリ交響楽団

エストニアのネーメ・ヤルヴィとノルウェーのエーテボリ交響楽団の演奏です。どちらも、強国であるデンマークやロシアの近くにあって、民族意識の高い国ですね。いずれも独立に苦労した国です。フィンランディアは非常に共感が感じられる、情熱的な演奏です。

序奏は標準的なテンポで始まりますが、ほの暗さを伴っていて、共感の度合いが高いです。徐々に力強く盛り上がり、主部に入ります。

中間部は木管群が自然体で歌った後、弦セクションは情熱的に盛り上がります。最後は情熱的でダイナミックに盛り上がって終わります。

とても民族的な土の香りがする演奏です。技術的にはラハティ交響楽団より上ですけど、やはり比べてしまうとフィンランドのオケのほうがフィンランディアに合っていますね。でも、このCDも名盤です。

カラヤン=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮:カラヤン(ヘルベルト・フォン)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

シベリウス:作品集
4.4/5.0レビュー数:20個

シベリウス:管弦楽作品集
4.4/5.0レビュー数:28個

カラヤン=ベルリンフィルはいつものように小曲でも容赦なく、派手に演奏してくれます。「フィンランディア」のような国民的な曲ならなおさら、力を入れて演奏しますね。

特に1970年代の旧盤が素晴らしいです。「定番」といえる名盤だと思います。カラヤンの旧盤は、おそらく全部のフィンランディアの中で、一番スタンダードで迫力のある名盤だと思います。

1980年代に再録音していますが、こちらは派手さが収まってスケールは大きいのですが、旧盤に比べると音質は良く鳴ったものの、旧盤にあった良さがかなり失われてしまっていますね。

オッコ・カム=ヘルシンキ・フィル

  • 民族的名演

超おすすめ:

指揮:オッコ・カム、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

オッコ・カムの演奏は爆発的な盛り上がりを見せています。それだけではなく、ここではスタンダートで落ち着いたテンポ取りも見せていて、全体的にバランスが取れています。

ヘルシンキ・フィルハーモニーの金管楽器がちょっと弱いのが難点ですね。単に収録のダイナミクスが悪かっただけかも知れませんけれど。これでベルフィン・フィルだったら、圧倒的な名演奏だったかも知れません。あと、少し録音も古いですね。

この名盤をどこに位置付けるかとても迷う所ですが、やはり録音が古いので、ファーストチョイスには難しいかな、と思いました。

でも、フィンランディアの名盤を色々聴いてみたい人は、オッコ・カムの演奏は是非加えてください。

C.デイヴィス=ボストン交響楽団

  • 名盤

おすすめ度:

指揮:デイヴィス(サー・コリン)、ボストン交響楽団

シベリウス:交響曲第2番、他
5.0/5.0レビュー数:2個

コリン・デイヴィスとボストン交響楽団の演奏も素晴らしいですね。ボストン交響楽団が太くて厚みのあるサウンドで名演です。

テンポはちょっと速めで、序奏は良いですが、主部をもう少しじっくり聴かせてくれるともっと良い気がします。ただ、色々比べてみると名盤の範疇に十分入ります。

ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2015

ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサートのラストにフィンランディアが出てきます。それまでグリーグを中心にやっていたのになぜか急にシベリウス、という気もしますが、違和感はありません。

ヤンソンスはロシアの指揮者なのですが、ロシア人でシベリウスの名演をする演奏家はかなり多いのです。

前奏はかなり遅いテンポでダイナミックですが、じっくり演奏しています。力強く盛り上がったところで、主部に入ります。ウィーン・フィルなので、北欧のオケとは大分違うものだなと感じますね。ウィーン・フィルは民族的な響きも出せるオケですが、ハンガリーとか南ロシアあたりの響きに近い気がします。

主部もスケールが大きく、盛り上がります。中間部は標準的なテンポですが、ウィーン・フィルの木管は上手いですね。弦セクションも圧力を感じる位で、レヴェルの高さを感じます。最後は、スケールの大きな演奏で終わります。

このコンサートはグリーグのピアノ協奏曲とペールギュントも入っていて、豪華な演奏家で北欧音楽を楽しめます。野外コンサートとは思えない音質の良さです。

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