リヒャルト・ワーグナー (Richard Wagner,1813-1883)作曲の歌劇『さまよえるオランダ人』(Der Fliegende Hollander)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。
解説
ワーグナーの歌劇『さまよえるオランダ人』について解説します。
歌劇『さまよえるオランダ人』は北欧の伝説を基に作曲されました。第1作歌劇『リエンツィ』に次ぐ第2作目のオペラです。
呪われたオランダ人船長と純潔な娘ゼンダを中心に繰り広げられるドラマで、その筋書きに強く影響されてかワーグナーも若いころのインスピレーションを発揮していて、ストレートで衝動的な激しい感情を露わにする場面も多く、オペラとしても見やすい作品です。
序曲は、オペラ本編の内容を凝集したような音楽で、呪われた船長の動機が金管楽器に現れ、荒れ狂う嵐の海の様子が描かれ、最後にホルンで救いのモチーフが現れ、有名な「水夫の合唱」に入ります。
おすすめの名盤レビュー
それでは、ワーグナー作曲歌劇『さまよえるオランダ人』の名盤をレビューしていきましょう。
クレンペラー=フィルハーモニア管弦楽団
クレンペラーとフィルハーモニア管弦楽団の録音です。テンポの遅いクレンペラーですが、『さまよえるオランダ人』序曲は、特に遅いとは感じないです。もともとスケールの大きな曲ですしね。音質はアナログですが、安定した録音です。リマスタリングにより生き生きとした細かい表情が聴きとれるようになりました。
冒頭は弦の高音から緊張感に包まれています。クレンペラーとしてはここまで感情表現することは珍しいのではないかと思います。次のオーボエの主題は素朴でおだやかです。しかし、また激しさを増してくると、非常に鋭い感情の入った表現で圧倒的なスケールを持ち、ダイナミックな音楽となります。フィルハーモニア管の強靭な弦のうねりと管のモチーフなども交錯してどんどん熱気を帯びていきます。圧倒的な音の洪水です。
クレンペラーのワーグナー序曲集の中でも素晴らしい名演です。
ショルティ=ウィーン・フィル
ゲオルグ・ショルティとウィーン・フィルの録音です。しっかりした録音です。ウィーン・フィルがここまで白熱した演奏をすることは少ないです。
『さまよえるオランダ人』序曲は、冒頭から白熱していて圧倒されます。静かな部分では平穏な木管のソロが聴けます。テンポが速くなると圧倒的な迫力です。弦に鋭いアクセントもついていますし、金管が全開で凄い熱気です。さらに力強くクレッシェンドしていき、白熱したウィーン・フィルの響きがまた良いです。ラストのハープは奇麗に演奏していますが、クレッシェンドして最後は荒々しく終わります。この曲は、北海の荒れた海を表現していると思うので、それに相応しい演奏です。
本当はシカゴ響との演奏の方がダイナミックなのかも知れませんが、ここまで白熱はしていません。『さまよえるオランダ人』序曲としてはウィーン・フィル盤の方が良いと思います。
マタチッチ=NHK交響楽団(1973年ライヴ)
マタチッチとNHK交響楽団は昔から「さまよえるオランダ人」序曲を得意としています。理由は分かりませんが、他の序曲で粗が目立つ場合も『さまよえるオランダ人』序曲は、迫力があって名演な場合が多いです。理由はさておき、得意な曲なんでしょうね。
このライヴ録音も最初の弦の強烈なトレモロと金管の主題から、圧倒的な迫力で引き込まれてしまいます。もちろん指揮がマタチッチだから、というのは大きいですが、マタチッチやホルスト・シュタインが指揮しても今一つの曲も多いんですよね。
弦セクションは独特のうねりで、『さまよえるオランダ人』の不気味な所を上手く描き出しています。管楽器は少々荒っぽい所もありますが、凝集されたダイナミックなサウンドで白熱した演奏になっていきます。
マタチッチ=NHK交響楽団のワーグナーの中でも最右翼の名演として挙げておきたいと思います。
オペラのDVD,BlueRay
ワーグナーの歌劇の中でも比較的短いからか、良く上演されます。
ネルソン=バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団
バイロイト音楽祭での上演です。この歌劇『さまよえるオランダ人』の演出は、少しモダンな所もありますが、歴史的でゴージャスな舞台です。また、日本語字幕もあります。
1985年上演と、映像的には少し古さを感じさせますが、クプファーの演出の良さと歌手陣の迫真の演技が素晴らしく、今でも十分現役のディスクです。
CD,MP3をさらに探す
楽譜・スコア
ワーグナー作曲の歌劇『さまよえるオランダ人』の楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュア・スコア
大型スコア
電子スコア
タブレット端末等で閲覧する場合は、画面サイズや解像度の問題で読みにくい場合があります。購入前に「無料サンプル」でご確認ください。