ワルキューレ(ワーグナー)

リヒャルト・ワーグナー (Richard Wagner, 1813~1883)楽劇『ワルキューレ』(Walkure, Valkyrie)について、解説とおすすめの名盤をレビューしていきます。

管弦楽曲として『ワルキューレ』を見ると『ワルキューレ騎行』がとりわけ有名です。『魔の炎の音楽』も良く知られています。オペラとしては全4夜のリングの中に入っていて、観るのに時間がかかりますが、見どころが多く面白いオペラです。

解説

楽劇『ワルキューレ』について解説していきます。

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楽劇『ワルキューレ』は、4晩ある『ニーベルングの指環』の2番目にあたります。『ニーベルングの指環』は壮大な物語ですが、北欧の神話で内容は親しみやすいです。その中でもワルキューレブリュンヒルデをリーダーとした有名な9人の女戦士が登場し、親しみやすさのある物語です。

『ワルキューレ騎行』でワルキューレが登場します。そして『魔の炎の音楽』では、ブリュンヒルデが岩山に炎で封印されます。

『ワルキューレ騎行』:テンシュテット=ロンドン・フィル
魔の炎の音楽

作曲と初演

ワルキューレは、1854年にスケッチを行い、1856年3月に作曲されました。その後、『ニーベルングの指環』4部作の他の作品の作曲も進められましたが、全体の完成を待たずに1870年に単独で初演が行われました。

おすすめの名盤レビュー

ワーグナーの『ワルキューレ』のおすすめの名盤をレビューしていきます。

管弦楽曲として聴く場合は、全曲だと長いので、抜粋が良いと思います。全曲聴きたい方は、CDよりもオペラを見たほうが良いですし、『リング』として、4つのオペラから構成されていますので、順番に見ていかないとストーリーが分かりませんので、DVDのほうをご覧ください。

テンシュテット=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • スリリング

超おすすめ:

指揮クラウス・テンシュテット
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1982-1983年 (ステレオ/デジタル/セッション)

テンシュテットとベルリンフィルのワーグナーは、最初聴いたときには衝撃でした。テンシュテットの熱気は物凄いし、ベルリンフィルも凄い迫力で完璧に演奏しています。技術レヴェルはロンドンフィルとは圧倒的な違いです。

上のYouTubeで来日公演を見ることが出来ますが、ベルリン・フィルの凄さは桁が違います

テンシュテットのワーグナーは、迫力だけでは無く、昔のクナッパーツブッシュの名演を思い出すほど名演奏です。白熱しているだけではなく、ワーグナーの本質を理解しているからこそ、これだけの演奏が出来るのですね。

テンポ感も表現もわざとらしいところは全く見られず、オペラ座のピットに入っていないのが不思議なくらいです。ですが軒並み廃盤ですね。中古でも入手出来たらラッキーということで紹介しておきます。少し高くても新品を買うことが出来るなら超ラッキーです。

テンシュテット=ロンドン・フィル (1992年ライヴ)

テンシュテットの気迫を感じる名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 白熱
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮クラウス・テンシュテット
演奏ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

1992年8月20日,ロイヤル・アルバート・ホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

テンシュテットが手兵ロンドン・フィルを指揮したイギリス、ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録音です。テンシュテットの渾身の指揮に応えて、圧倒的な迫力はロンドン・フィルも燃え上がらせ、弦は熱気を帯び、金管はダイナミックで、とても密度の濃い演奏です。カップリングの序曲集も熱気が凄く、テンシュテットでなければ聴けないものです。

技術ではベルリン・フィル盤の方が上ですが、気迫と熱気ではロンドン・フィル盤も凄いです。1992年録音で音質の良さもあります。どちらを選ぶか難しいですが、どちらもそれぞれに良さがあり、ワルキューレやワーグナーが好きなら両方聴く価値があります。

来日時の映像もあります。この公演での気迫も素晴らしく、テンシュテットの指揮ぶりも気合いが入っており、おすすめです。

テンシュテット=ロンドン・フィル (1988年来日ライヴ)

テンシュテット白熱の来日ライヴ
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 白熱
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮クラウス・テンシュテット
演奏ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

1988年10月18日,サントリーホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ショルティ=ウィーン・フィル

ウィーン・フィルをダイナミックに鳴らした名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 迫力

おすすめ度:

指揮ゲオルグ・ショルティ
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1965年,ウィーン (ステレオ/アナログ/セッション)

ショルティとウィーン・フィルの定評ある名盤です。ショルティらしいテンポが速く力強いスリリングな名盤です。ウィーン・フィルもパワー全開です。

テンシュテット=ベルリン・フィル盤が凄すぎますが、ショルティらしい筋肉質のダイナミックさがあり、ウィーン・フィルを鳴らし切っていて素晴らしい演奏です。ショルティとウィーン・フィルはワルキューレ全曲を含めた『ニーベルングの指環』が凄いキャストで名盤として知られています。

管弦楽曲集では、ワルキューレは『ワルキューレ騎行』『魔の炎の音楽』が収録されています。

バーンスタイン=ニューヨークフィル

速めのテンポで爽快感のある演奏
  • 名盤
  • シャープ
  • スリリング

おすすめ度:

指揮レナード・バーンスタイン
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック

1967,1968年,ニューヨーク,フィルハーモニック (ステレオ/アナログ/セッション)

若いバーンスタインとニューヨーク・フィルの録音です。少し古いですが、音質は安定しています。

『ワルキューレ騎行』は、速いテンポでとてもスリリングです。バーンスタインの若さもあって、爽快さのある演奏になっています。ニューヨーク・フィルの金管も良く鳴っていますし、弦は子気味良い演奏です。『魔の炎の音楽』速めのテンポですが、ロマンティックさに溢れています。ダイナミックになってくると金管はシャープさのある演奏で粘りとか重さはあまりなく、リズミカルかつスリリングで爽快感があります。

カップリングの『さまよえるオランダ人』序曲は速めのテンポの名演です。軽快さや爽快さは好みが分かれるかも知れませんが、センスの良さを感じる名盤です。

クナッパーツブッシュ=ウィーン・フィル (第1幕全曲)

ワルキューレの本質を描き出した名盤
  • 歴史的名盤
  • 奥深さ
  • 神々しさ

おすすめ度:

指揮ハンス・クナッパーツブッシュ
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1963年,ウィーン,ゾフィエンザール (ステレオ/アナログ/セッション)

ワーグナーを得意としていたクナッパーツブッシュの名演です。オケがウィーン・フィルというのも良く、非常にしなやかな演奏です。残響も適度にあり、聴きやすいです。

クナッパーツブッシュの指揮ぶりは、とてもノーブルですが、晩年のムラヴィンスキーにも似ていて、崇高な雰囲気を醸し出しています。ウィーン・フィルも大指揮者との演奏だと神々しい音色が出ますが、まさにこの演奏は神々しさに溢れていますワルキューレ第1幕なので、ワルキューレ騎行などの有名な曲は入っていませんが、劇的でスケールが大きく大迫力で、かつ奥深く味わい深い名演です。

オペラDVD

楽劇『ワルキューレ』は、リングの2夜目に上演されるオペラです。初日は「序夜」なので、本編の最初が『ワルキューレ』とも言えますが、筋書きを追うのでしたら、『ラインの黄金』を見てからですね。楽劇『ワルキューレ』は、女戦士が8人出てきたり、最後には火で封印されたり、とスケールの大きな見どころの多い舞台です。

レヴァイン=メトロポリタン歌劇場 (1989年)

壮大な舞台、伝統的で豪華な舞台セット、定番の映像
  • 名盤
  • 定番
  • 華麗
  • スケール感

超おすすめ:

ジークリンデジェシー・ノーマン
ジークムントヒルデガルト・ベーレンス
ヴォータンジェイムズ・モリス
ブリュンヒルデヒルデガルト・ベーレンス
指揮ジェームズ・レヴァイン
上演メトロポリタン歌劇場

1989年4月,メトロポリタン歌劇場 (ライヴ)

レヴァインとメトロポリタン歌劇場の上演です。ストーリーを理解するには『ニーベルングの指環』の4夜分を揃える必要がありますが、このDVDの場合、質が高い上演にもかかわらず、一夜2500円程度で買えるため、コストパフォーマンスも良いです。

舞台セットはモダンなものではなく、歴史的でゴージャスなものです。メトロポリタン歌劇場の広さも『ワルキューレ』のスケールの大きさに合っています。そして、ジェシー・ノーマンをはじめとした豪華なソリスト陣が素晴らしく、定番としての地位を長らく保っています。

ワルキューレ達は、歌唱力重視で少し体格が良くて声が太い歌手が多く、劇を楽しむには十分な舞台です。レヴァインの指揮も現代的なテンポ取りで、リズム感が良くダイナミックさがあり、スケールも大きく、オペラ座らしいしっかりした名演です。

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楽譜・書籍

ワーグナーのワルキューレの楽譜を挙げていきます。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

ミニチュア・スコア

大型スコア

対訳本

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